H22年度税制改正大綱について

 事務所通信vol.86

平成22年2月20日

顧問先各位  

毎々、格別のご高配を賜りありがとうございます。顧問先の皆様におかれましては益々ご健勝のことと存じます。

 政権交替が起こり民主党を中心とした政策運営に変更されて来ています。中小零細企業にとっては、どの政党であっても景気の回復、雇用の創造が重要課題と思われます。昨年の12月22日に政府から税制改正大綱が発表されました。今までの大綱とは異なり、前段では今後の税制の方向性についても記述されております。例えば、現行税制が「十分性の原則」を満たせなくなっているとの記述がありますが、これは現在の行政の執行を行うには、現状では歳入欠陥であるということを認めているものです。逆に言うと、近い将来増税方向に向いていることを示唆しております。この事は社会保障においても同様で、少子高齢化の問題を如何に克服していくかと言った問題は、日本が今抱えている大きな課題です。

今回は平成22年度の税制改正大綱の中で中小企業者に関係のあるものについて説明します。(ご注意:法律として確定したものではありません)

 

1.個人所得課税

@扶養控除の見直し

子供手当ての支給にともない、16歳未満の扶養控除を廃止します。特定扶養親族で19歳未満の場合、控除額が38万円に引き下げられます。

(H23年分以降)

A金融証券税制

 非課税口座内の少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等の非課税措置の創設(1年1口座、合計額100万円まで新たに取得上場株式等)

 (H24年分以降)

B生命保険料控除

介護・医療保険について、一般保険料と別枠の所得控除創設

この為、生命保険料控除は、一般・個人年金・医療介護の3種類となり合計最大12万円まで控除額となります。(H24年分以降)

D小規模共済

 共同経営者が加入対象者と改正される予定です。この掛金は、共同経営者の所得控除や受給時の取り扱いも、経営者同様となります。

E退職共済

 同居親族のみを雇用する事業の従業員も対象者と改正される予定です。この内容によれば、同居親族のみを雇用する場合、専従者にも退職共済加入が可能となります。

 

2.法人課税

 @100%グループ内の資産譲渡取引

  100%グループ内の一定の資産を譲渡した場合の損益は、その資産のグループ外への移転時まで、損益の所得計算が繰り延べられます。一定の資産とは、固定資産や有価証券等で、帳簿価額1,000万円未満のものは除かれるとなっておりますが、これにより100%グループ内関連会社の資産の移動で時価で譲渡しても、時価の低下による損失の所得計算は、出来ないこととなります。(H22年10月1日から適用)

 A清算所得課税

  解散後の清算所得課税を廃止し、通常の所得課税に移行します。その際、期限切れ欠損金の損金算入制度を整備する等の措置を講じます。

  現行法では、会社解散後は財産方による所得計算でしたが、改正により解散後も通常の損益計算となります。(H22年10月1日から適用)

B租税特別措置法透明化法

 租税特別措置の適用を受けようとするものは、適用額明細書を申告書に添付しなければならないこととなります。(H23年4月1日以後終了事業年度から適用)

 

3.資産課税

@直系尊属意から住宅取得資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税限度額の措置について、現行の500万円から、平成22年中に受けた場合1,500万円、平成23年中に受けた場合1,000万円に引上げられます。

(H22年1月1日以後の贈与から適用)

A住宅取得資金の贈与に係る相続時精算課税制度の特例について、上乗せされていた1,000万円の特例が廃止されます。

B小規模宅地の特例

 相続人等が申告期限まで事業又は居住を継続しない宅地等を200uまで50%減額していた適用が除外されます。また一部でも特定居住用建物の敷地に該当していた場合、全体が80%減額の対象とされていましたが、取得割合ごとの適用と変更されます。(H22年4月1日以後の相続等から適用)

C定期金に関する権利の評価

 被相続人が、相続人が受け取る生命保険年金等をかけていた場合の相続税評価額が、解約返戻相当額、一時金相当額のいずれか多い額となります。(H22年4月1日以後に係る相続及び贈与について適用)