民主党の政策集(税制)について
事務所通信vol.83
平成21年10月20日
顧問先各位
毎々、格別のご高配を賜りありがとうございます。顧問先の皆様におかれましては益々ご健勝のことと存じます。
今年は新型インフルエンザが流行すると予想されています、また失業率の上昇に伴う消費者の節約により内需は回復せず、中小企業には未だ厳しい状況が続いております。
8月30日に行われた総選挙で民主党が与党となったため、今後今までの自民党の税制政策とは異なる部分がでてくるものと思われます。現時点ではH22年の税制改正内容を知るすべはありませんが、今回はH21年7月23日に発表されている民主党の税制に対する基本政策についてポイントを記述します。
○税制改正の組織変更
これまでの税制改正論議は、主に与党税制調査会、政府税制調査会、経済財政諮問会議により行われて来ました。民主党の基本政策では、政府税制調査会に一本化するようです。
○税・社会保障共通番号の導入
所得の把握・社会保障給付の明確化のため、税・社会保障共通番号の導入をするとしています。
○所得税関係
@確定申告を原則とし、給与所得者については年末調整も選択できるという制度に変更する。
A更正の請求の期間が現行1年であるのを早急に見直す。
B所得控除から税額控除への変更
高額所得者に有利な所得控除から、各人に平等である税額控除へ変更します。
また、配偶者控除・扶養控除は廃止。
これは、民主党の政策が、標準世帯を従前サラリーマンの夫と専業主婦及び子供2人の家庭をモデルとしていたものから、共働き世帯を標準モデルとしているものと思われます。
また、扶養控除の廃止については、税負担の増加は「子供手当」の給付で手当てするようです。
C年金課税の見直し
老年者控除の復活(但し所得制限あり)し、公的年金控除を引上げるとしています。
D住宅ローン減税
全住宅に一律におこなうのでなく、主に省エネ・バリアフリーに対して重点的に行い、最大控除額については拡大しないようです。
E給付き税額控除制度の導入(負の所得税制)
今までの申告では、税額が0以下はありませんが、計算の結果がマイナスとなる場合は、納税者に給付する制度を導入しようとしています。但し、この制度導入の前提には所得の正確な把握が必要で、納税者の番号制等が必要となります。
○消費税関係
@インボイス制度を早急に導入。
A逆進性対策のため、将来的には「給付つき消費税額控除」を導入します。
○法人税関係
@租税特別措置法の全般の見直し。
・地価税や土地重課の復活等も対象です。
A中小企業にかかる軽減税率は当分の間11%とします。
B特殊支配同族会社の役員給与に対する損金不算入措置は廃止します。
○自動車関連税
@自動車取得税の廃止。
A自動車重量税及び自動車税は、保有税に一本化。
B現行暫定税率の廃止。
○その他
@罰則の強化、重加算税の引上げ。
A消費税の不正還付に係わる、調査機能を強化。
上記政策を見ると、自民党・公明党の今までの政策と比べると、富裕層に対する課税の強化、低所得者への給付制度導入と言うシフトが見てとれます。
今後、この政策理念をどこまで実現できるのか、また無駄のカットにより本当に消費税の増税なしに財源確保が可能かが、最大の課題となると思います。
また、仮に税制が大幅に変更されても、現行税制を一遍に変更することは容易ではないと思われます。このため移行措置や経過措置等が必要となり、年金制度の改革同様、税制改革も複雑なものとなる可能性があります。
ただ、戦後初めてのわが国の政権交代が、国民にとってプラスとなることを期待するのみです。