H21年度自民党税制改正大綱について

 事務所通信vol.78

平成21年1月20日

顧問先各位  

毎々、格別のご高配を賜りありがとうございます。顧問先の皆様におかれましては益々ご健勝のことと存じます。

 アメリカに端を発した不況が全世界に広がり、また日本では政局の動向によっては自民党を中心とした現体制が維持できなくなる可能性もでてきました。大阪や中小企業においては格差がより一層明確となり、経営環境の厳しさは一層深刻なものになってきているのではないでしょうか。そんな状況下ですが、今回は平成21年度の自民党税制改正大綱の中で中小企業に関係のあるものについて説明します。(ご注意:法律として確定したものではありません)

1.中小企業の法人税率の軽減

中小企業に対する軽減税率の時限的引き下げが行われる予定です。平成21年4月1日から平成23年3月31日までの間に終了する各事業年度の所得の金額にうち年800万円以下の金額に対する法人税の軽減税率を現行の22%から18%に引き下げられる予定です。

2.中小企業の欠損金の繰戻し還付の復活

中小法人等の平成21年2月1日以後に終了する各事業年度において生じた欠損金額については、欠損金の繰越しによる還付制度の適用ができることとされます。

※税務調査が前提となるためこれまであまり利用されてきませんでした。

3.中小企業等基盤強化税制の適用期限を2年延長

試験研究費等の支出に対し一定の額まで税額控除する制度が2年延長されます。また教育訓練に対する支出がある場合も延長される見通しで、従業員に教育訓練を実施した場合は、一定の額を税額控除されます。

4.住宅取得の税額控除

平成21年から平成25年までの間に認定長期優良住宅に該当する一定の家屋を取得し居住の用に供した場合住宅借入金等の年末残高に対して最大600万円を控除する制度に改修します。また所得税から控除し切れない額を住民税から控除することや、一定の省エネ・バリアフリー改修や、自己資金で長期優良住宅を新築する場合にも税額控除を認める等、今回新たな措置が講じられています。

5.平成21年・22年に取得した土地の特別控除制度

 平成21年及び平成22年中に取得した土地等を所有期間が5年を超過したのちに譲渡した場合には、長期譲渡所得の金額から1,000万円までを控除する制度が創設されます。(なお法人税に於いても同様の措置がされます。)

6.事業継承税制

中小企業の事業承継を円滑化するため、非上場株式等に係る相続税および贈与税の納税猶予制度が創設されます。

相続税の納税猶予制度とは、事業後継者が、先代経営者より株式の相続を受けた場合(発行済完全議決権株式総数の2/3に達するまでの部分)に、株式の課税価格の80%に対応する相続税額の納税を猶予する制度です。なお、この適用を受けるためには計画的な承継に係る取組を行い、先代経営者の要件、後継者の要件、事業継続要件などを満たす必要があります。(平成20年10月1日以後の相続から適用)

贈与税の納税猶予制度とは、事業後継者が、先代経営者より一括で株式の贈与を受けた場合(発行済完全議決権株式総数の2/3に達するまでの部分)に株式の課税価格の80%に対応する贈与税額の納税を猶予する制度です。なお、この適用を受けるために相続税と同様に一定の要件を満たす必要があります。(平成21年4月1日以後の贈与から適用)

7.金融・証券税制

1.上場株式等の配当所得及び譲渡所得に対する税率

平成21年1月1日から平成23年12月31日までの間、10%に軽減税率とされます。(平成20年までの軽減税率が3年間延長されました。)

 

2.少額の上場株式等投資のための非課税措置

20%の本則税率が実現する際に、5年内の各年において金融商品取引業者等の営業所に一定の金額までの非課税口座を開設することができます。(一の年につき一口座に限り、100万円まで)

非課税口座を開設した日の属する年の1月1日から10年以内に生ずる上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等に対して所得税・住民税が非課税となります。

 

5.電子証明書を取得した所得税の電子申告の税額控除

 個人が所得税を電子申告する場合、自己の電子署名を申告に添付する場合、5,000円(所得税額限度)を1回限り税額控除してもらえますが、この適用期限が2年間延長されます。(自己の電子署名を申告に添付しない場合不可)