証券税制の改正

 について

 

事務所通信  vol.41

平成14年8月20日

顧問先各位

 

平素は、格別のご高配を賜りまして有り難うございます。日々涼しさが増して、徐々に過ごしやすくなってまいりました。顧問先の皆様に於かれましては益々ご清祥のことと存じます。

 今回は、個人の株式等の証券を売買した場合の、証券税制について説明します。皆様もご承知のように、今テレビ等でも盛んに宣伝されていますが、来年1月から個人の株式等の証券を売買した場合の、証券税制が大きく変わります。一言で言えば、原則的に確定申告しなければならなくなります。

@平成15年1月からは申告分離課税に一本化

 現在の税制は、個人が株式等の証券を売買する時点で、所轄税務署に源泉分離課税か申告分離課税を選択届け出する方法となっています。源泉分離課税を選択した場合、市場での売却価格の1.05%を、証券会社が納税すればその他の所得とは別に課税手続きは完結していました。これに対し、投資家は同一年中に売却益と売却損がでた場合などは、株式の譲渡損益が通算できる申告分離課税を選択していました。申告分離課税方式を選択した場合は、確定申告書に「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」に譲渡収入及び取得原価等必要な金額等を記載して所得計算し、その他の所得と共に申告しなければなりませんでした。

 この制度が来年1月からは、源泉分離課税方式が廃止された為申告分離課税方式に一本化されました。

A分離課税の税率が26%から20%へ引き下げ

 来年からの申告分離課税で適用される税率は、証券会社を通じた上場株式の売却では、住民税込みで20%と現行の26%から引き下げられます。

B平成15年から17年までは、1年超保有の譲渡は10%に軽減

 来年以降3年間に限って、1年超保有した場合の譲渡益課税が軽減され、住民税込みで10%に軽減されます。

C長期保有株式の100万円特別控除

 長期所有上場株式(所有期間1年を超える)を平成17年末までに、証券会社を通じて譲渡した場合に、その年分の長期所有上場株式の譲渡所得について、その譲渡益から最高100万円の特別控除が受けられます。

D緊急投資優遇措置

 平成13年11月30日から14年12月末までに取得した株式等を平成17年から平成19年までに売却した場合、取得金額1,000万円までにかかる譲渡益は非課税とされます。

Eベンチャー株の課税軽課

 新規の産業育成をめざし、指定をうけたベンチャー企業の株を売却した場合、譲渡益の課税が半額に軽課されます。

F証券会社の「特定口座」制度

 証券会社に「特定口座」を開設すると、その証券会社が取り扱う上場株式等の年間の取引について「特定口座年間取引報告書」を作成して貰えます。所得金額の計算に必要な明細が記載されているので、確定申告書の添付書類として利用できます。

 また、その年の最初の取引までに証券会社を通じて税務署に必要書類を提出することで、15%の所得税を源泉徴収することができます(住民税の5%は不可)。確定申告時の納付額が大きい方等は、この制度利用により納税の円滑化を計れます。

G取得金額が不明の場合の特例

 平成13年9月30日までに取得した株式を、平成15年から22年末までに売却した場合、平成13年10月1日の終値の80%相当額を取得費とできる特例があります。また、売却価格の5%相当額を取得費とみなす制度もあります。いずれにしても、まず購入時の証券会社の「取引報告書」を良く探すこと、また無い場合でも証券会社に問い合わせをするなどして取得価格を適正に把握することが必要です。

 来年以降源泉分離課税制度がなくなりますので、譲渡益が見込まれる株式を保有している場合、今年中のクロス取引も一考の価値があると思います。