改正パートタイム労働法について

 事務所通信vol.77

平成20年9月20日

顧問先各位  

毎々、格別のご高配を賜りありがとうございます。顧問先の皆様におかれましては益々ご健勝のことと存じます。

 少子高齢化、労働力減少社会で、パートタイム労働者の雇用環境を改善するため、パートタイム労働法が本年4月より改正されています。今回はこの内容につき説明します。

1.パートタイム労働者の労働条件の文書による明示

 以前から「契約期間」「就労場所・内容」「始業・終業時刻」「所定時間外労働の有無」「休日・休暇」「賃金」については文書による明示が必要でしたが、改正パートタイム労働法では、これらに加えて「昇給の有無」「退職手当の有無」「賞与の有無」を文書の交付などにより、パートタイム労働者に明示することが義務とされました。

 2.パートタイム労働者への説明義務

事業主は、雇い入れ後パートタイム労働者から求められたとき、そのパートタイム労働者の待遇を決定するにあたって考慮した事項を説明する義務があります。労働条件の文書交付等、就業規則の作成手続、待遇の差別的取扱い禁止、賃金の決定方法、教育訓練、福利厚生施設、通常の労働者への転換を推進するための措置については、説明義務があります。

 3.パートタイム労働者の待遇決定

事業主はパートタイム労働者の待遇を通常の労働者との働き方の違いに応じて均衡を図るための措置を講じるよう規定されました。具体的には、職務の内容、人材活用の仕組みや運用、契約期間の3要件が通常の労働者と同じかどうかにより、賃金、教育訓練、福利厚生などの待遇の取扱いが均衡のとれたものとなるようにしなければなりません。

 4.賃金の決定方法

「基本給」「賞与」「役付手当」など職務の内容に密接に関連する賃金について、通常の労働者との均衡を考慮し、パートタイム労働者の職務の内容、成果、意欲、能力、経験などを勘案して賃金を決定することが努力義務となりました。

また、通常の労働者と比較して、パートタイム労働者の職務の内容と一定期間の人材活用の仕組みや運用などが同じ場合、その期間について、賃金を通常の労働者と同一の方法で決定するよう努めることが必要となりました。

5.教育訓練の実施

パートタイム労働者と通常の労働者の職務の内容が同じ場合、その職務を遂行するに当たって必要な知識や技術を身につけるために通常の労働者に実施している教育訓練については、事業主はパートタイム労働者に対しても通常の労働者と同様に実施することが義務とされました。

 6.福利厚生施設

「給食施設」「休憩室」「更衣室」について、事業主はパートタイム労働者に利用の機会を提供するよう配慮することが義務化されました。また、改正パートタイム労働指針では、事業主は、上記以外についても、パートタイム労働者の就業の実態や通常の労働者との均衡などを考慮した取扱いをするよう努力するものとしています。

 7.差別的取扱いの禁止

事業主は「通常の労働者と同視すべきパートタイム労働者」の賃金、教育訓練、福利厚生をはじめすべての待遇をパートタイム労働者であることを理由に差別的に取り扱うことが禁止されています。

 8.パートタイム労働者から通常の労働者へ転換

事業主は、パートタイム労働者が、通常の労働者への転換を推進するための措置を講じることが義務となっています。例えば、通常の労働者を募集する場合、その募集内容を既に雇っているパートタイム労働者に周知したり、通常の労働者へ転換するための試験制度を設けるなど、転換制度を導入するといったような場合です。

 9.パートタイム労働者の苦情・紛争解決

事業主がパートタイム労働者から苦情の申出を受けたときは、事業所内で自主的な解決を図るよう努めなければならなくなりました。事業主は、パートタイム労働者から苦情の申出を受けたときは事業所内の苦情処理制度を活用するほか、人事担当者や短時間雇用管理者※が担当するなどして、事業所内で自主的な解決を図ることが努力義務とされました。

 ※ 短時間雇用管理者とは、常時10人以上のパートタイム労働者を雇用する事業所で、パートタイム労働者の雇用管理改善などを担当する者をいいます