H20年の主な税法改正について

 事務所通信vol.74

平成20年3月20日

顧問先各位 

 毎々、格別のご高配を賜りありがとうございます。顧問先の皆様におかれましては益々ご健勝のことと存じます。

 アメリカでのサブプライムローン問題を発端とした世界的な景気後退が顕著となってきており、また石油関連材料や穀物等の値上がりと言ったスタグフレーションの兆候が現れてきていますが、中小企業においてはより一層経営環境の厳しさが増しているように思われます。さて、今回は平成20年度の主な税法の改正について説明します。(内容は自民党税制改正大綱による、現在国会に於いて審議中)

1.減価償却

 昨年の改正では、償却限度額の変更を伴う大きな改正でしたが、今年度は機械装置の区分が現在390区分あったものが55区分へ簡素化されることになりました。

 また機械装置の償却耐用年数が短縮されており、平成20年4月1日以降開始される事業年度において、耐用年数の入れ替えが必要となります。

2.法人事業税の分離・地方法人特別税の創設

地域間の税源偏在の是正に対応するため、消費税を含む税体系の抜本的な改革が行われるまでの間の暫定措置として、約2.6兆円の法人事業税の一部が分離され地方法人特別税及び地方法人特別譲与税が創設されます。一旦国税として事業税の一部を課税し、再び地方へ特別譲与税として配分されます。

3.研究開発税制の強化

従来の増加試験研究費に対する税額控除率の上乗せ措置を改組し、試験研究費の総額に一定割合を乗じた額に加え、増加型と高水準型で計算した金額の選択を加えた額が税額控除できる制度が創設されます。最大法人税額の30%まで控除対象額となる場合もあります。

4.人材投資促進税制の拡充

労働費用に占める教育訓練費の割合が0.15%以上の場合に、教育訓練費の総額に、労働費用に占める教育訓練費の割合に応じた税額控除率を乗じた金額を税額控除できる制度に改組されます。

5.企業再生税制に係る私的整理要件の緩和

一定の要件を満たす私的整理において債務免除が行われた際に、評価損と期限切れ欠損金の利用が認められる場合の、免除要件に係る「金融機関等」の範囲に信用保証協会が追加されます。

6.小額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例延長

資本金1億円以下の中小企業者等が取得価額30万円未満の減価償却資産を取得した場合、取得価額の全額損金算入が認められます(年間合計300万円まで)が、平成22年3月31日まで2年間延長されます。

 7.工事収益の計上方法の見直し

工事進行基準によるべき長期大規模工事の範囲が工事期間を1年以上、請負金額要件を10億円以上に見直しされます。また、損失が生ずると見込まれる工事を追加します。

 8.中小企業の事業承継税制の創設

中小企業の事業の継続の円滑化に関する法律(仮称)の制定を踏まえ、平成21年度税制改正において、事業の後継者を対象者とした「取引相場のない株式等に係る相続税の納税猶予制度」を創設します。

一定の要件に該当する事業承継相続人が、非上場会社を経営していた被相続人から相続等によりその会社の株式等を取得しその会社を経営していく場合には、その事業承継相続人が納付すべき相続税額のうち、相続等により取得した議決権株式等に係る課税価格の80%に対応する相続税の納税が猶予されます。

 9.相続税の課税方式を遺産取得課税方式へ変更への検討

現行の相続税では、同一額の資産を相続により取得した場合でも、遺産総額により税額に相違が生じる事などに対する問題点の解消のため、事業承継税制制度化に併せて遺産取得課税方式への変更が可能か検討をすることとなりました。

 10.金融証券税制の改正

平成21年より、上場株式等の譲渡益課税の本則税率を20%となり、また上場株式等の配当所得の申告分離課税も20%とされます。また、その年分又は前年以前3年の上場株式等の譲渡損失の金額は、申告分離課税を選択した上場株式等の配当所得の金額から控除されます。

 11.電子納税の新たな納付手段の創設

あらかじめ税務署長に一定の事項を届け出た場合には、インターネットバンキングを経由しないでe-Taxによる納付手続きが可能となります。