H19年の主な税法改正について

 事務所通信vol.68

平成19年3月20日

顧問先各位 

 毎々、格別のご高配を賜りありがとうございます。顧問先の皆様におかれましては益々ご健勝のことと存じます。

 67号でも記載しましたが今回の所得税の申告時に、電子申告の開始届けを提出させていただいた関与先の皆様のもとへ、国税庁から利用者識別番号とCD−ROMの入った封筒が送付されてきますので、中に入っている「利用者識別番号等の通知書」のコピーを事務所までご提出いただきますようお願いします。

巷では東京を中心とした大企業で業績が回復してきたり、石油関連材料の値上がり、地価の上昇と言った兆候が現れているそうですが、大阪や中小企業においては格差がより一層明確となり、経営環境の厳しさは少しも変わっていないのではないでしょうか。さて、今回は平成19年度の主な税法の改正について説明します。(内容は自民党税制改正大綱による、現在国会に於いて審議中)

1.減価償却

これまでの有形固定資産の減価償却においては、残存価額を5%として95%部分を定率法・定額法等の方法により期間に応じて費用化していましたが、諸外国では償却資産の全額を対象として費用化しているため、日本の減価償却税制が他の国と比べて不利となっておりました。そこで残存価額を廃止し平成19年4月1日以降に取得する償却資産から100%の償却をすることとなり、1円になるまで償却できます。

償却額が増加することは企業にとってメリットがあるのですが、実際にこの内容で計算するには、定率法によった場合今までと異なり、非常にややこしい方法となります。定率法では耐用年数を経過しても償却額の減少が大きいためなかなか1円まで償却できないので、定額法の償却率を2.5倍した償却率を採用することや、法定耐用年数から経過年数を控除した期間内にその時の帳簿価額を定額法で全額償却すると仮定して計算した償却額を下回るときに、償却方法を定率法から定額法に切り替えて、備忘価額まで償却すると言った計算が必要になります。(速算表が公表される予定です)

このように、手計算で定率法による減価償却を行う場合、以前に比べて計算に手間がかかる事となります。

また、平成19年3月31日以前に取得した償却資産については、耐用年数まではこれまでどおりの方法で償却し、その後に5年間で未償却残高につき均等償却を行うこととなります。

この様に、平成19年4月1日以降、償却資産の減価償却を行う場合、平成19年4月1日以前と後に資産を分けなければならない事や、定率法の場合は今までとは相当相違した方法で計算する事となり、手計算では相当複雑となります。

また、耐用年数の見直しも行われるとの事ですが、実体より短い法定耐用年数については、年数を増やす方向での改正を行うとの情報もあり、今までより必ずしも有利な改正とは言い切れないようです。 

2.リース会計基準の変更

リース会計基準が変更され、リース取引は原則売買に準じた処理となります。以前にも特定仕様の機械のリース等では売買とされるリース取引が税務においてもありましたが、今回ファイナンス・リース(所有権移転外ファイナンス・リース取引)でも、原則売買に準じた処理とされることとなります。(平成20年4月1日以降契約分)

中小企業や少額、短期のリースについては賃借料を償却費と取り扱うこととされているため、今まで通りの処理を行っていたとしても法人税の計算では従前と変わらないと思われるかもしれませんが、消費税ではこの規定がないことから、今まで通りリース料を各期間の課税仕入れとして処理した場合、仕入れ税額控除の対象額とはなりません。リース資産取得時に、全額を仕入れ税額控除することとなります。

また、リース税額控除については、リース税額控除が廃止され、通常の税額控除制度が適用されることとなる予定となり、計算の対象金額が増加するため控除額の増加が期待できますが、所有権移転外のため、本来の売買リースでは認められていた特別償却や圧縮記帳制度は適用されない予定です。 

3.留保金課税の撤廃

資本金の額又は出資金の額が1億円以下である会社は、特定同族会社の留保金課税制度の対象から除外されます。 

4.役員給与損金不算入の改正

特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入制度について、適用除外基準である基準所得金額が、現行の800万円から1,600万円に引き上げられる予定です。

5.電子証明書を取得した所得税の電子申告の税額控除

 個人が所得税を電子申告する場合、自己の電子署名を申告に添付する場合、5,000円(所得税額限度)を1回限り税額控除してもらえます。(自己の電子署名を申告に添付しない場合不可)