一人会社の給与損金不算入について

 事務所通信vol.65

平成18年9月20日

顧問先各位

 毎々、格別のご高配を賜りありがとうございます。顧問先の皆様におかれましては益々ご健勝のことと存じます。

さて、小泉内閣の任期はあとわずかですが、増税改革はこれから本格化していきます。 

平成18年4月1日以後開始事業年度から適用される法人税法の改正で、特殊支配同族会社が業務を主宰する役員に対して支給する給与額のうち給与所得控除額に相当する部分として計算される金額が損金の額に算入しないこととされました。

簡単に言うと、表題に書きましたように、一人同族会社の役員報酬に計上した額のうち、給与所得控除額部分が所得に加算され法人税等の対象とされることとなりました。

@特殊支配同族会社とは

ここで言う特殊支配同族会社とは、同族会社の業務を主宰している役員(業務主宰役員)及びその役員と特殊の関係のある者が発行済株式の総数の100分の90以上の数を有し、かつ業務主宰役員グループの常務に従事する役員の総数が常務に従事する役員総数の過半数を占める場合の同族会社を言います。

A常務に従事する役員

 常務に従事する役員に該当する役員とは、会社の経営に関する業務を役員として実質的に、日常継続的に遂行している役員を言い、監査役や会計参与は経営に対する権限がないことから上記常務に従事する役員には含まれません。また、従業員を名目上役員として登記したような場合や使用人兼務役員については、実態的判断により判定されるが、取締役会の採決の参加だけでは日常継続的に遂行しているとは言えないため、常務に従事する役員には該当しません。

B発行済株式の総数の100分の90以上

業務主宰役員及びその役員と特殊の関係のある者が発行済株式の総数の100分の90以上の数を有するとは、この場合の株主とは実質的な所有を言い、例えば従業員持株会や顧問税理士が株式を取得したとしても、オーナーの圧力等で経営に関与出来ない場合等、形式だけの株式保有となる場合は、みなし規定により業務主宰役員が有する株式と同一として判定されます。

C適用除外

上記に該当する同族会社の業務主宰役員のうち給与所得控除額は損金の額に算入されませんが、イ)又はロ)の場合は、適用除外となります。

イ)基準所得金額が800万円以下

ロ)基準所得金額が800万円超3000万円以下で

  業務主宰給与額の平均年額が50%以下の場合

※基準所得金額とは

(1)基準期間がある特殊支配同族会社

前3年内開始事業年度の業務主宰役員給与支給前の平均所得金額をいいます。(開始してから3年以内の場合はその期間、また3年以内に該当しない年度がある場合は、直近の該当する年度以降の期間)

(2)基準期間がない特殊支配同族会社

当事業年度の業務主宰役員給与支給前の所得金額をいいます。

ただし、該当する年度に青色欠損金がある場合、各年度に本法の適用があったものとした場合の欠損金額を控除したのちの金額が対象となる所得金額です。

D損金不算入額

業務主宰役員給与  損金不算入額
65万円以下  業務主宰役員給与(以下単に給与)の全額
65万円超180万円以下  給与×40%(65万円未満は65万円)
180万円超360万円以下   72万円+(給与−180万円)×30%
360万円超660万円以下 126万円+(給与−360万円)×20%
660万円超1000万円以下 186万円+(給与−660万円)×10%
1000万円超     220万円+(給与−1000万円)×5%

平成18年4月1日以後開始事業年度から上記、業務主宰役員の給与所得控除額損金不算入制度が適用開始されます。

定期同額給与の損金算入制度見直し等、役員給与の損金不算入制度については大幅に整備されておりますので十分な検討・確認が必要となっております。

役員給与に関するQ&Aのアドレス

http://www.nta.go.jp/category/tutatu/sonota/houzin/5126/5126.pdf