会社法の施行と変更登記について

 事務所通信 vol.63

平成18年6月20日

顧問先各位

  毎々、格別のご高配を賜りありがとうございます。顧問先の皆様におかれましては益々ご健勝のことと存じます。

 本年5月1日より、会社法が施行され、多くの法人が影響をうける事となりました。たとえば決算書の利益処分計算書が、株主資本等変動計算書に書式及び内容とも変更されております。株式会社・有限会社ともに大きく改正が行われました。今回はその中で、事前にお問い合わせの多かった商業登記に関わるものについて説明します。

1.株式会社の役員の任期期間の延長

従前は株式会社の取締役の任期は2年、監査役の任期は4年とされていましたが、改正後は公開会社で無い場合(譲渡制限のある会社)は、定款に定めることによって、役員の任期を選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとすることができるようになりました。従って平成18年5月1日以降に定款を変更し、その後株主総会で役員を選任した場合の役員の任期期間は定款で定めた期間となります。

なお、変更しない場合は、従前通りの任期期間となります。

※ 定款の変更を明確にするために、定時株主総会議で変更決議を行い、議事録の作成を行う必要があります。

2.取締役の人数

新会社法では、譲渡制限のある会社は一人以上の取締役を置けば足りることとなりました。現在取締役会を設置している会社(会社法施行前に存在した株式会社は全て取締役会設置会社)は、改正後も3名以上でないといけないので、もし2名以下に変更したい場合は、定款を変更して取締役会を廃止し、残留取締役以外の辞任する登記が必要となります。

3.監査役の廃止

監査役については、改正前は小会社の監査役の監査範囲は会計に関するものに限定されていましたが、改正後は原則業務・会計の両方が監査範囲となりました。従って監査役の監査範囲を改正後も従前通り会計に関するものに限定する場合は定款を変更して監査役の監査範囲を会計に関するものに限定する旨を定める必要があります。(ただし、公開会社は限定できません)

つぎに、監査役を廃止する場合ですが、定款を変更して、監査役設置会社でなくなった旨および監査役の退任の登記をする必要があります。

このように改正後は非常に柔軟な株式会社組織に変更することが可能となります。上記のように取締役1名、監査役なしとし、資本金の額も少額にした場合、従前の有限会社と同様の会社となり、外部に対する信用度は今までより低下する可能性もあります。

役員の任期期間の延長も含め、登記回数を減らす事や組織を単純にすることにはデメリットもありますので、よくご考慮していただいた上で、改正法をご活用頂きたいと思います。

4.有限会社

現在の有限会社は、今まで通りの活動を行う範囲では、整備法で、経過措置が設けられているので、定款の変更や登記申請は必要がありません。法人名にしても有限会社の名称を引き続き用いることができます。

ただし、会社の組織を変更する場合や増減資など定款の変更や登記が必要となった場合は、会社法の適用をうけることとなり、従前の有限会社法での手続きと異なるため、株式会社と有限会社の齟齬が発生する場合も考えられるため定款の変更や登記実務においては十分な注意が必要となります。

5.株券の発行

改正前の株式会社では、株券は発行するのが原則とされていましたが、改正後は株券不発行が原則となります。会社法施行前に存在した株式会社は株券発行会社となります。

従前は、減資(自己株式の消却)や譲渡制限の登記に際して、株券提出広告等が必要でしたが、不発行の株式会社では必要がなくなりました。

従前の会社の場合、不発行に変更するには、定款変更及び登記が必要となります。

6.商号・目的

会社法では、商号と本店所在地が同一でなければ、類似のものであっても登記することが可能となりました。このため他の会社と誤認されるケースも発生するものと思われます。不正の目的をもって、他の会社と誤認させる商号を使用することは禁止されています。

会社法による定款の変更等、ご要望が有る場合はご相談下さい。