65歳雇用延長の義務化について

 事務所通信 vol.61

平成18年3月20日

顧問先各位

 毎々、格別のご高配を賜りありがとうございます。顧問先の皆様におかれましては益々ご健勝のことと存じます。

 本年4月1日より、全ての事業所において定年が60歳から65歳まで段階的に引上げなければならないよう法律が改正されました。

特別支給の厚生年金の支給が60歳から65歳まで段階的に引上げられている事との整合を計るため、高年齢者を雇用する事業主は雇用を確保するため、定年の廃止等の措置を講じなければなりません。以下要点を説明します。

 

1.最高雇用年齢の段階的引上げ

 

従来60歳までとされてきた最高雇用年齢が以下の通り段階的に引き上げられます。

平成18年4月1日〜19年3月31日     62歳

平成19年4月1日〜22年3月31日     63歳

平成22年4月1日〜25年3月31日     64歳

平成25年4月1日〜             65歳

 

高年齢者を雇用する事業主は、上記期間までに@就業規則等に定める定年を引き上げるか、A継続雇用制度を導入するかB定年制の廃止をしなければなりません。(就業規則の変更が必要となります。)

 

2.雇用延長の方法

 

@定年の引き上げ

上記該当期間までに、就業規則等の定年年齢を改訂する方法。全従業者が対象となります。

 

A継続雇用制度

現に雇用している高齢者が希望するとき、定年後も引き続いて雇用する制度で、再雇用制度と勤務延長制があります。

(1)再雇用制度

定年に達した者を一旦退職させたうえ、改めて嘱託などとして再雇用する制度。現行の定年制を存続させたまま、対象者の雇用の延長が出来る効果的な制度です。また、再雇用に際し賃金や就業内容、職務などを見直せる為、@より一層現実的な制度と思われます。

(2)勤務延長制度

定年に到達した者を、退職させることなく引き続き雇用する制度です。実質的に@の定年の延長と同じ内容となります。

 

B定年制の廃止

従来から定年制を定めていない会社も存在しますが、定められていた定年制を廃止する事により雇用延長を実現する方法です。

定年制がないため、従業員の希望によりいつまでも働くことが出来ますが、実際には人事の停滞や高齢化に伴う職務不適合、賃金の硬直化等、デメリットもあると思います。

 

3.対象者の選定

 

「高年齢者雇用安定法」の趣旨からすると、希望者全員を対象とすることが望ましいでしょうが、一般的には、若年者より高齢化に伴う職務遂行能力や意欲の低下、身体能力の低下等がみられる場合が多いと考えられます。

原則会社は、対象者の希望を募り、希望者全員を継続雇用制度の対象とすることが必要です。しかし労使協定により継続雇用制度の対象となる高齢者の基準を定めて制度を導入した場合は、継続雇用の措置を講じたものとみなされますので現実にはこの方法による場合が多いと思われます。

 

4.労使協定の基準

 

上記の記載のとおり、労使協定により対象となる高齢者を合理的に定めた場合は、継続雇用制度の措置を講じたものとみなされます。しかし労使の合意内容が「会社が特に必要と認めた者に限る」や「上司の推薦がある者に限る」等高年齢者雇用安定法の趣旨に反するものや労働関係法令に反するもの公序良俗違反などは認められません。

 

5.労使協定が締結できなかった時の措置

 

労使協定の協議がどうしても調わないときは、中小企業の事業主は平成23年3月31日まで(大企業の事業主は平成21年3月31日まで)に限り、就業規則において高齢者に係る基準を定め、その基準に基づく制度を導入できます。