会社法の改正について

 

事務所通信  vol.58

                        平成17年8月20日

顧問先各位

 

 毎々、格別のご高配を賜りありがとうございます。顧問先の皆様におかれましては益々ご健勝のことと存じます。

 今般、平成17年度商法改正(新会社法)の改正が行われました。戦後最大の改正であるといわれております。株式会社・有限会社ともに大きく改正が行われました。平成18年4月以降に施行される予定ですが、中小企業に関わる事項も多いので主な改正点について説明します。

 

1.株式会社を設立する際の最低資本金制度の廃止

従前は債権者保護の観点から、株式会社1,000万円、有限会社300万円以上の資本金を有する事が必要とされていましたが、新会社法では規制改革の考え方から新規参入を容易にする観点から株式会社の設立に際し「最低額」の下限額の規制がなくなることになりました。この結果、資本金1円の会社を設立することが出来ます。 

 

2.今後、新たに有限会社を設立することはできません

新会社法では、従来認められていた有限会社の制度を、株式会社で採用する代わりに従来の有限会社制度による新規設立は廃止されました。従来は法律制度では大規模会社は株式会社制度、小規模会社は有限会社と棲み分けをしていました。しかし実務では小規模な会社であっても株式会社形態を採用している会社が多く見受けられました。このため、新会社法ではこれらの制度を株式会社制度に一本化しました。

なお、従前の有限会社は、経過措置として当分の間「特例有限会社」として、従前の制度のまま存続することが認められています。

 

3.譲渡制限会社では、役員任期の延長可能

譲渡制限のある株式を発行する小規模株式会社では、取締役・監査役の任期を定款の定めで最高10年とすることができます。従来の取締役の任期2年、監査役の任期4年ごとに役員変更登記を行う必要がありましたが、同族会社等で役員に変更が無い場合、定款で定めることにより登記の負担が軽減されることとなります。

 

4.会計参与制度の新設

会社の機関として、「会計参与」を設けることが出来るようになりました。会計参与の役割は、取締役等と共同して計算書類を作成することです。また、株主総会で、計算書類に関して説明しなければなりません。制度創設の目的は、中小会社の決算書の適正性確保が目的です。作成した計算書類の内容に対し取締役と同等の責任が生じます。会計参与になれるのは、公認会計士(監査法人を含む)・税理士(税理士法人を含む)です。

 

5.譲渡制限会社では、役員人数の縮小可能

従前、株式会社の取締役の員数は、3名以上とされており、新会社法でも原則3名以上と言う点は変わっておりません。但し、株式譲渡制限会社で取締役会を設置しない会社については、定款で定めることによりその員数を一人まで縮小することが可能となります。

また、上記の取締役会を設置しない会社のケースでは、監査役の設置は任意となり、従前の有限会社の一番シンプルな形態と同様の形態とすることが可能です。

 

6.決算広告は必要

有限会社では強制されていなかった決算公告ですが、新会社法においては株式会社の規模・機関の内容に関わらず、決算公告を義務づけています。この点は、新会社法で、譲渡制限会社が定款の定めにより従来の有限会社の制度を取り入れられるようになっている点と大きく相違しています。

経過措置の有限会社だけが、決算公告義務がない事となります。なお、ホームページで開示を行う場合には、貸借対照表そのものを開示する必要があります。

 

7.株主持分変動計算書の作成

 新会社法では、利益処分は一定の手続きを行うことにより、いつでも行うことができるようになったため、従来の利益処分案にかわり、株主持分変動計算書の作成が必要となります。「株主持分変動計算書」とは、期中における資本金、準備金、剰余金等の変動を表した計算書です。

 

8.合併や会社分割の手続きの緩和

 吸収合併の際に、株主総会の決議を要しないこととなる要件が緩和されました。また、吸収分割における承継会社、株式交換における完全親会社となる会社及び営業全部の譲受けにおける譲受会社についても、一定の要件を満たす場合には、株主総会の決議を要しないものとされます。