事務所通信 vol.50

  H16年改正税法についてbQ

 

                        事務所通信  vol.50

                        平成16年5月20日

顧問先各位

 

 毎々、格別のご高配を賜りありがとうございます。顧問先の皆様におかれましては益々ご健勝のことと存じます。

 平成16年に入って大企業の一部の業績が回復してきたりとか、原材料の卸売物価が上昇してきたりとか、昨年までとは少し違った兆候が現れているそうですが、まだまだ中小企業においては経営環境の厳しさは少しも変わっていないようです。

さて事務所通信bS9号でも改正税法については略述しましたが、今回はそこで紹介できなかったその他の改正について説明したいと思います。平成16年度の改正は、過去に比べて小幅な改正となっておりますが、中小企業オーナーにとっては留意すべき改正も行われております。

 

(1)自社株式(非上場)の相続と譲渡益課税について

 

 現行法では、相続した株式をその発行会社へ自社株式として買い戻した場合には、譲渡した個人は、その譲渡価額のうち資本等に相当する金額は譲渡所得の収入金額、それを超える部分は配当とみなして課税されます。

株式譲渡による収入が、一部は譲渡所得の収入金額となり、残りは配当収入として税額が計算されることになっているわけです。また、法人に譲渡する場合には、時価の2分の1未満の価額で譲渡した場合は、みなし譲渡課税の対象とされます。さらに、みなし配当として総合課税された税額は、相対的に高くなる場合が多いです。

そこで今回の改正では、相続等によって取得した株式を、相続税の申告期限の翌日から3年を経過する日までの間にその発行会社に譲渡した場合に限って、みなし配当課税を行わないこととされました。従いまして、この場合には譲渡収入の全額が譲渡所得の収入金額とされることになります。また、相続財産である譲渡ですので、相続税額の取得費加算規定も適用されます。

この様に改正前と比べて税額負担が軽減されるケースも出てくるのではと思われます。ただし、上記で述べましたように、時価よりも著しく低い価額で法人に譲渡された場合には、時価で譲渡されたものとみなす規定がありますので、譲渡金額の設定は十分な注意が必要です。

 

 この改正は、平成16年4月1日以後の相続等によって取得した株式の譲渡から適用されます。

 

(2)非上場株式の譲渡所得課税の改正

 

 現行法では、上場株式等以外の株式を譲渡した場合には、26%(所得税20%、住民税6%)の申告分離課税とされていました、16年度改正では、この税率が20%(所得税15%、住民税5%)に引下げられました。(1)のような相続した非上場株式等を譲渡した場合もこの改正の対象になりますので、譲渡負担税額は減少することになります。

 この改正は、平成16年1月1日以後の株式の譲渡から適用されます。

 

(3)特定同族会社株式の評価減の拡大

 

 相続税において一定の要件を満たす特定同族会社株式については、小規模宅地の評価減の適用との選択で、3億円までの部分に限って10%評価減を認める特例がありましたが、改正では評価減の対象とする株式の上限を10億円まで拡大しました。

 このため、本法を適用した場合の評価減額は最高で1億円ということになります。

 この改正は、平成16年1月1日以後に相続等によって取得した特定同族会社株式から適用されます。

 

(4)中小企業投資促進税制

 

中小企業投資促進税制については、器具備品の取得価額要件が120万円以上に、リース費用要件が160万円以上に引き上げられ、適用期限が2年延長されました。

 また、一定要件を満たす中小企業の留保金課税不適用の適用期限が2年延長されました。

 この他、一定の中小企業者の場合、欠損金の繰戻還付を認める特例が2年間延長されました。