学内バスの課題と明日

 昭和52年以来、筑波大学と共に歩んできた学内バスですが、まもなく運行開始から30年を迎えようとしている今、学内バスは様々な課題を抱えています。学内バスの将来は明るいと言えるのでしょうか? ここでは、学内バスの抱える問題点を取り上げ、将来について考えてみたいと思います。

課題その1・利用者の視点から……不便なダイヤ
 利用者側から見た学内バスの問題点は、ダイヤの不便さにほぼ集約されると言っても過言ではないでしょう。
 始発8:10、終発18:15という運行時間帯は、学生にとって満足のいくダイヤとは言いがたいものがあります。宵っ張り筑波大生にとって、特に終発の早さは気になるものと言えましょう。
 そして、さらに問題なのが昼間のダイヤです。内廻り・外廻りがそれぞれ30分間隔では、とても学内の気軽な移動に使えるものとは言えません。しかも、細かくダイヤを見ていくと、わざと不便にしているのではないかと思いたくなるほど(もちろん実際はそんなことはないのでしょうが)、使いにくいダイヤとなっています。
 学内バスの利用形態は、平砂・追越学生宿舎(バス停「平砂」「追越」周辺)と第1・2・3学群棟の各教室(バス停「本部」または「第三学群」「第一学群」周辺)との間の流動が中心になっています。
 2002年9月のダイヤ改正前まで、追越・平砂宿舎から午後の授業に行こうと思うと、平砂を授業開始の13分前に発車し、本部に授業が始まる7分前に着くバスがあり、便利でした。しかし新しいダイヤでは、平砂を授業開始の10分前に発車し、本部に授業が始まる4分前に着くようになってしまいました。バス停に着くのが4分前では、教室に着く頃にはチャイムが鳴っており、その上バスは1、2分遅れることが多くあります。ということは1、2分の遅刻となってしまうわけです。
 といって一本前のバスに乗ろうとすると、授業開始の25分も前に出発しなければいけません。
 一方宿舎へ帰る場合は、授業が終わるのとまったく同時に、本部のバス停から平砂・追越方面へ行くバスが出てしまうのです。次のバスは第三学群のバス停を発車するのが授業終了の17分後と、ずいぶんと待たされてしまいます。

授業へ出るために利用するバス時刻
授業時間
授業から帰るために利用するバス時刻
平砂発8:25−(外廻り)→第三学群着8:33
……丁度良い
1時限
8:40〜9:55
本部発10:00−(外廻り)→平砂着10:06
……ギリギリで乗れない
第三学群発10:17−(内廻り)→平砂着10:21
……乗車前の待ち時間が長い(22分)
平砂発9:50−(外廻り)→第三学群着9:58
……丁度良い

2時限
10:10〜11:25
本部発11:30−(外廻り)→平砂着11:36
……ギリギリで乗れない
第三学群発11:47−(内廻り)→平砂着11:51
……乗車前の待ち時間が長い(22分)
平砂発11:50−(外廻り)→第三学群着11:54
……到着後の待ち時間が長い(21分)
平砂発12:05−(内廻り)→本部着12:11
……遅刻する
3時限
12:15〜13:30
本部発13:30−(外廻り)→平砂着13:36
……乗れない
第三学群発13:47−(内廻り)→平砂着13:51
……乗車前の待ち時間が長い(17分)
平砂発13:20−(外廻り)→第三学群着13:24
……到着後の待ち時間が長い(21分)
平砂発13:35−(内廻り)→本部着13:41
……遅刻する
4時限
13:45〜15:00
本部発15:00−(外廻り)→平砂着15:06
……乗れない
第三学群発15:17−(内廻り)→平砂着15:21
……乗車前の待ち時間が長い(17分)
平砂発14:50−(外廻り)→第三学群着14:54
……到着後の待ち時間が長い(21分)
平砂発15:05−(内廻り)→本部着15:11
……遅刻する
5時限
15:15〜16:30
本部発16:30−(外廻り)→平砂着16:36
……乗れない
第三学群発16:47−(内廻り)→平砂着16:51
……乗車前の待ち時間が長い(17分)
平砂発16:20−(外廻り)→第三学群着16:24
……到着後の待ち時間が長い(21分)
平砂発16:35−(内廻り)→本部着16:41
……遅刻する
6時限
16:45〜18:00
本部発18:00−(外廻り)→平砂着18:06
……乗れない
第三学群発18:17−(内廻り)→平砂着18:21
……乗車前の待ち時間が長い(17分)

課題その2・運営者の視点から……利用者の減少
 学内バスの利用者数は、1999年度現在で一日平均352 人。1便あたり7.8 人という数字になります。ですが、これは自転車通学者の少ない入学式前後や雨の日など、利用者の多い時を含めての数字で、便によっては乗客0で運行されることも珍しくありません。
 しかも、利用者は毎年減り続けています。筑波大学が5 年おきに実施している『学生生活実態調査』の中に、学生が主に利用する通学手段を尋ねる項目が設けられています。その中で、晴天時の通学に利用する主な交通手段が『学内バス』と答えた学生は22年前の調査でも10%を切っており、1998年の調査では僅かに0.8%。雨天時には利用率が上昇するものの、これも1998年の調査では7.2%と、低い値に留まっています。
 大学全体としての限られた予算の中で、あまりに利用者の少ないものにお金をかけるのはいかがなものか、という議論は出てくることでしょう。
 しかし一方で、車椅子を利用している・骨折して松葉杖をついているので移動はバスに頼らざるを得ない、雨が降っている、自転車がパンクしたなどの場合のために、バスの必要性はなくなることはないでしょう。また、バスが不便になれば自動車を利用する人が増え、ただでさえ足りない駐車場が余計に足りなくなる、排ガス公害や交通事故が増えるなどの問題が発生する恐れもあります。地球温暖化防止の観点からも、公共交通の利便性を確保していくことは欠かせないでしょう。

課題その3・運営者の視点から……運転手の減少
 いま少子化の時代です。筑波大学の募集定員も、少しではありますが減ってきています。しかし、学生数が減ったのに職員数がもとのまま、という訳にはいかず、職員数も減らす流れになっており、学内バスの運転手もその例外ではありません。これまででも運転手さんの人数は減ってきており、かつては26 人だったものが現在では12 人になりました。そして、これからも減っていく可能性は十分にあります。
 いずれは運転手の減少により、現行体制での運行ができなくなる時期が来ると考えられています。そうなれば、いやがおうにも学内バスは何らかの形で変化せざるを得くなることでしょう。

学内バスの将来
 学内バスの今後については、大学としては何も決まっていませんが、上記のような問題があり、情勢は明るくないといえます。とはいえ、学内の駐車場不足が大きな課題となり、自動車による環境破壊や交通事故も問題となる現在、バスの必要性は薄れません。
 そこで、単に学内バスの存続を心配するだけでなく、いろいろな道が模索されているようです。例えば、交通工学の専門家である石田東生教授(社会工学系)は、学内バスについて(個人的考えであると断った上で)「学内バスを廃止して、関鉄バスの利便性を向上することを考えている」という発言を行っています。また、1999年に実施された学内交通問題についてのアンケートでは、つくばセンター〜大学内の関鉄バスフリーパスや割引回数券の利用意向についての質問がなされたこともありました。学内バスの運行を担当する総務部総務課でも、廃止も選択肢の一つではあるものの、その代替となる措置は必要であろうという考えを(担当職員の個人的意見というレベルではありますが)持っているようです。
 ただ、あくまでも大学全体としてはまだ何も公式には決定されておらず、大学として決まらない限り廃止もありえないことを念のため書き添えておきます。

※本ページの内容は、私が筑波大学全学学類・専門学群代表者会議広報委員会の広報誌『Campus』及びウェブサイト「OnlineCampus」に掲載したものを加筆・修正の上再掲載したものです。

参考文献
『Campus』143号 筑波大学全学学類専門学群代表者会議広報委員会 2001
『筑波大学学生生活実態調査』昭和54,59,63 年版・平成5,10 年版 筑波大学
『筑波大学新聞』各号 筑波大学新聞編集委員会

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