学内バスの終焉−平成17年

■学内バス、変化への兆し
「学内バス '05年度有料化も」という見出しで、2004年12月の『筑波大学新聞』234号(筑波大学新聞編集委員会発行)に記事が掲載されました。それによると、運転手の定年退職が続き、数年のうちに運行人員の確保が困難になるため、学内バスの運行を見直すということです。今後は
・運転を業者に委託する
・学内バスを廃止し、代替措置として学内の路線バスに乗れるフリーパスを発行する
などの選択肢があるとしています。学内の交通問題に詳しい石田東生教授(システム情報工学研究科/専門:交通工学)は、筑波大学新聞の取材に対し、学生サービスなどの見地から(バスサービス自体の)廃止は考えらにくいが、受益者負担の観点から有料化を考えている、と説明しました。

■将来を検討するプロジェクトチーム
2004年6月には、大学の手により「新学内交通システム検討プロジェクトチーム」が設置され、約1年にわたりこの問題を検討しました。石田教授を主査とし、教職員・学生の代表などから構成されるものです。1〜3学期を通じて6回の会議を開催、現状の問題点と代替案について議論を行っています。
 会議では、各代替案の実行に必要な費用も明らかにされました。学生向けの広報誌「Campus」156号(全学学類・専門学群代表者会議発行/2004-9)によれば、
・運行を民間委託する場合:約2500〜3000万円
・路線バスのパスを発行する場合:約4200万円(?)
・廃止:0円
・(参考)現在の学内バス運行費用:約4300万円
です。
 7月には全学の学生・教職員を対象としてアンケートも行われています。
 11月1日には、プロジェクトチームの答申した中間報告書が学内に公表されました。報告書では、路線バスのパスを発行する案を中心に検討を行うと記ています。費用負担については
・大学が負担
・全学生・教職員が一律に負担
・バス利用者が負担
の三案を挙げていますが、報告書では三案を併記するにとどまりました。

■広聴会の開催
 11〜12月、多くの人の意見を聞くべく、広聴会(一般的には「聴会」と書きますが、筑波大学では「」の字を使っています)が4回にわたって開催されました。会はプロジェクトチームと全学学類・専門学群代表者会議の共催で行われ、大学側の責任者として工藤副学長も出席しました。

■最終報告書−廃止は確定的に
 中間報告に加え、公聴会などの動きも加味して、2月にはプロジェクトチームで最終報告が出されました。報告書では、路線バスのパス発行により学内バスの代替とすることが明記され、パスの販売額は月300〜700円とされました。路線は、現行では路線バスの走らない平砂〜合宿所〜本部(筑波大学中央)間にも運行することとしました。運行時間帯や本数はおおむね現状維持の方向に落ち着き、ノンステップバスの運行を行うことも明記されました。実施時期はつくばエクスプレスの開業にあわせることとしました。
 これにともない、学内バスの廃止と、代替案としての路線バスフリーパスの発行は確定的となりました。

■新システムの詳細が発表される
 それからしばらくの間、水面下での動きが続きましたが、6月20日にはついに「新しい学内交通システムについて」と題する文書が発表され、新システムの詳細が明らかにされました。
 路線バスのフリーパスを発行すること、実施時期は8月24日(つくばエクスプレス開業日)とすることは、これまでの動き通りですが、新たな情報も明らかにされています。
 パスの販売は、年度単位で有効のもののみを定額で販売することになりました。これについては、「関係省庁と協議を進める中で、『将来はともかく、最初はまずシンプルな形でスタートしてほしいということになった(工藤副学長)』」(『Campus』157号、全学学類・専門学群代表者会議、2005/4)ためだそうです。価格は、この文書では未定とされましたが、その後学生用は年額4200円(現在は学生用は値上げされています)という数字が明らかになっています(2005/7/23茨城新聞)。
 路線設定は、学内バスの路線の起点をつくばセンターに変更した形に近いですが、数々の改善点が盛り込まれています。最も大きな変化は天久保二丁目を経由する路線になったことで、その他にも素通りするだけであった天久保三丁目(学生向けのアパート等が多数あります)に停留所が設けられています。一般路線バスとなることから、始終発時刻は6時〜22時過ぎまでと学内バス時代より大幅に改善されました。

■7月22日−さよならセレモニー
 2005年7月22日、学内バス最後の日がやってきました。
 新システムは8月24日からの開始ですが、学内バスは例年通り7月下旬から運休ですので、この日が最後になったのです。学内バスの最終便が本部で入庫した後、「さよなら学内バス」と題したイベントが車庫で行われました。このイベントでは、学内バス運転手をはじめとした関係者の挨拶、学内バスの写真展、懇親会(車庫建屋での立食パーティ形式)があり、また参加者には記念品としてバスの写真を用いたペーパークリップが配布されました。

■8月24日−筑波大学循環の開業
 2005年8月24日、つくばエクスプレスが華々しく開業したのに合わせ、学内バスの後継となる新路線「筑波大学循環」が開業しました。開業初年度はパスの販売枚数は伸び悩んだものの、翌年度以降は順調な推移を見せ、朝ラッシュ時にはつくばエクスプレスから乗り継ぐ乗客でバスターミナルに長い行列が見られるなど、開業前には考えられなかった光景が展開されるようになりました。

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