
3.お世話になった人たち
ドライバーのトニー
旅行中、ロンドンまでお世話になったバスの運転手のトニーは、とってもナイス・ガイ(死語かしら?)だった。これまでの話と矛盾するようだけど、ほんとにプロフェッショナルなドライバーで、おかげでツアーの予定が遅れることもなかった。
仕事柄、いろいろな場所に詳しいらしい。コッツウォルズのチッピング・カムデンでのこと。バスを降りる時、添乗員さんが冗談半分で「トニーにも一緒に行ってもらいましょうか?」と言ったら、メンバーのおばちゃんたちが大喜び(今回のツアーは12名全員女性でした。気楽でよかった)。添乗員さん「トニー、みんな一緒に行ってほしいって言ってるよ」 トニー「なんで?」 添乗員さん「わかんない」なんて言いながらも、一緒に降りて、ガイドをしてくれた。街の中の有名な建物を紹介しながら歩いていく。よく知ってるな〜と感心。やがて街はずれまで来ると、メイン・ストリートを外れて、ずんずん奥へ入って行く。どこへ行くのかと思ったら、かわいいかやぶき屋根の家がいくつもある場所へ連れていってくれたのだ。添乗員さんも、これにはびっくり。
そんなトニー、忙しかったせいか「2週間も家に帰っていないんだ」と言っていて、その間、着替えなんかはいったいどうしているんだろう? と思っていたら、気づいてしまった。一緒に食事に行く時、前を歩いているトニーのズボン、お尻の縫い目のところがとけそうになっているのを……。ごくろうさま、トニー。
ガイドさん
湖水地方の現地ガイド、キュートなバーバラについては、まだまだエピソードがある(ほかの話は→食事 動物たち)。
ウィンダミアのはずれの植物園へ行った時。バスに戻る途中で、道端のシャクナゲを「珍しい色だわ」と見ている。さすがガーデニングの先生、と感心していたら、がさがさと入っていって一枝折りとってしまった。見ていた日本人から「あ〜、バーバラ!」と非難の声があがったのを感じ取ったのか、着ていたオレンジのウィンドブレーカの中に花を隠し、そしらぬ顔でバスに戻る。そして、ツアーのメンバーの中で一番元気で英語もしゃべれる人なつこいおばさんに、「ハイ、あなたのために取ってきてあげたのよ」と押し付けてしまったのだ!
また、一緒に昼食を食べた時。着ていたウィンドブレーカをおもむろに床に広げ、ひざをついてそれは丁寧にたたんでいた。日本人もびっくり。その時はトニーも一緒だったのだが、あとで添乗員さんは「トニーは、バーバラが苦手みたい」と言っていた。「だってね、突然真顔で『ジェリービーンズの中で何味が一番すき?』って言い出すんだもん」…それは困るよなあ。
ロンドンのガイドは、日本人だった。これがまた、なんだか異常にテンションの高いおもしろいおじさんだった。とにかくやたらと「奥様!」を連発する。誰か遅れたり、違う方に行ってしまいそうになると、「おくさま〜、こちらですよ〜!」と叫ぶ。バスの中での案内も、所々に寒いおやじギャグを織り交ぜつつ、朗々と立て板に水のごとくしゃべり、突然「…ああ!奥様!右手をご覧ください!!イギリスの公団住宅です!!!」と叫んだりする。でも、そんな彼も休日には、ホームレスへの食事の配布などのボランティアをしているのだそうだ。
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I LOVE Mr. Bean!
ロンドンのガイドさんから聞いた話だが、イギリスは社会福祉が充実していて、まさに「ゆりかごから墓場まで」。出産費用も葬式の費用も国が負担してくれるのだとか。老後の心配をして貯金をする必要もない。
だから、日本人のようにあくせく働く人が少ないのかもしれない。店が閉まる時間も早い。夏の日の長さを考えると、日本人はつい「もっと開けとけばもうかるのに」なんて思ってしまう。ただ、24時間営業のスーパーなども最近になって増えてきているそうだけど。
日本人はよく「働き者だ、まじめだ」と言われる。今まであまりピンと来なかったが、中華料理の店員さんにほれぼれしたことを思うと、なるほどと納得。イギリス人だって、ヨーロッパの中では働き者の方なんじゃないだろうか。「プロヴァンスの12ヶ月」をBBCのドラマで見たことがある。脱サラしてプロヴァンスに移住したイギリス人が、古い農家を買い取って修復するのだが、フランス人の配管工たちの仕事ぶりがあんまりのん気なので、ちょっとイライラする場面があった。それを考えると、日本人の働きすぎは、むしろあきれられちゃうかも。
たしかに冒頭の添乗員さんの言葉のように、イギリス人にイライラする日本人もいるかもしれない。でも、彼らはけっして怠けているわけでも、いいかげんなわけでもない。それが、彼らなりの一生懸命さなんだと思う。
Mr. Beanがだいすきで、ビデオは全部見た。映画版のビーンも見たけど、なんだかすきになれなかった。イギリスに行くまでは、どうしてなのかわからなかった。でも、旅行から帰ってきて、ビーンの好きな友人におもしろいイギリス人たちの話をしたら、彼女が言ったのだ。「じゃあ、みんなビーンなんだ!」
それでわかった。映画版はビーンがアメリカへ行って一騒動起こすのだが、なんだかアメリカとビーンがしっくりこないんだ。アメリカ人の中では、ビーンは「気味が悪い」「異常な」存在という感じで、居場所がなさそうだった。
ドラマの方でも、ビーンが突拍子もないことをすると、周囲のイギリス人はびっくりしたり居心地が悪そうな顔をしたりするけど、なんだかしっくりしている。周りの人はむしろ、どことなく「他人事と思えない」感じがしているのではないだろうか。「自分も同じようなことをしている」と、思い当たるところがあるような…ただ、それがあまりにも凄いというだけで。この考えって、そんなに的外れじゃないと思うんだけど。
この旅でわたしは、そんな、ビーンたちがのんびり暮らすイギリスが、だいすきになった。
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