フィリス先生奮闘中……休日の朝でも奮闘中


Written by 小島



この作品はJANIS/ivoryより発売されている「とらいあんぐるハート3 Sweet Songs Forever」を元ネタとしており
ます。
この作品は、ネタばれを含んでいます。
この作品は、フィアッセ・クリステラED〜エピローグの間の時間を想定しています。
この作品における方言はかなり適当です、こんなの関西弁(鹿児島弁)じゃないという方がいてもおおめに見ていただ
けると嬉しいです。



 PiPiPiPiPi………まだ薄暗い、マンションの一室に無機質な電子音が鳴り響く。どうやら目覚まし時計が鳴っているよ
うだ。
 PiPiPiPiPi…………………全然止まらない(汗)。ちなみにデジタル式のその時計(少女趣味なパステルピンクのボデ
ィをした可愛らしいものだ)が表示している情報からすると現在は日曜日の午前6時のようだ。そしてこの音を止めるべ
き人物はいまだにベッドで熟睡しているようである。
 ちょっと派手な、有体に言えば少女趣味全開なピンクの地に赤・青・黄色の3色で花の絵柄が描かれた布団のかかっ
たベッドの脇にある、ピンク色のマガジンラックの上に目覚まし時計が乗っているが、一向にそれを止める気配は無
い。
 ベッドで寝ている人物はどうやら余程疲れているのか、ベッドの中で丸まったまま寝ていて動く気配は無い。僅かに覗
いた頭部を飾る色彩は優しく光る銀色。
 5分経過………
 10分経過……
 15分経過……
 20分経過……「もう、今日はお休みなんだから、もう少し寝かせてよ」
 そんな声と共に、やっぱりピンク色でフリルのたくさん付いた可愛らしいパジャマに包まれた(成人女性としては)小さ
な手がベッドの中から伸びて電子音を止めると、再びベッドの中に引っ込んだ。


 2時間ほど経過。

 すでに、薄暗かった部屋は明るい陽射が差し込むようになっており、部屋の様子がよくわかるようになっていた。
 この部屋を成人男性に一言で評価してもらうと、「ピンクの城」あるいは「少女趣味の権化」という言葉が出てきそうで
ある。
 それぐらい、ピンクでフリルでヌイグルミな部屋だ。
 ちなみに、こういった部屋に男性が案内されると取る態度はきわめて限られる。
 すなわち、居心地の悪さを愛想笑いをしながらの無難な誉め言葉でごまかすか、同様に愛想笑いしながら引き下が
るかだろう。
 さて、逸れた話しを戻すことにしよう。時計が8:30分の表示を出してしばらくして、ベッドの中の人物が起きあがって
きた。
 起きあがってきたのは美しい銀色のロングヘア(今は寝るのに邪魔にならないようにピンク色の髪留めで纏めてい
る)をした、小柄でスレンダーな身体つきの女性のようだ。
 まだ半分寝ているような、半開きの目の瞳は澄みきったブルー、ピンクのフリフリパジャマから僅かに覗く肌は、白磁
の器のように白く滑らかだ。
 起きあがったその女性は寝ぼけ眼をマガジンラックの上の時計に向けた途端、一気に目を覚ました。
「嘘!!もうこんな時間!!」
 そして、急いで箪笥の中から素早くピンク色の下着(僅かに垣間見た引出しの中はピンクをはじめとして、色々なパス
テルカラーが溢れていた)を上下で取り出すと、ユニットバスに駆けこんで、まずは歯磨き。そして冷たい水で顔を洗い
 しっかりと目を覚ますと、躊躇無く着ていたパジャマ、それから下着を脱ぎ、傍らに置いた洗濯籠に放りこむ。
「急がないと。10時にはリスティが迎えにきちゃうのに」
 バスキャップに髪をしまいながらバスタブの方に移動して、間仕切り用のカーテンを閉めると、その白磁の肌にシャワ
ーを浴びせていく。
 華奢な肩から控え目な胸、白く滑らかな腹部を経て、頭髪と同じ色をした極薄いアンダーヘアに覆われた下腹部、そ
して脚へとシャワーを浴びせると、今度はスポンジを手に取るとボディーシャンプーを適量つけたあと、素早く、だけど丁
寧に身体を洗っていく。
 まずは左腕。それから右腕へ、続いて首筋を洗った後は、上から順次洗っていく、最後に背中を柄のついたスポンジ
で洗ったあと1度泡をシャワ−で流してから、バスキャップを外して、軽くシャワ−で髪を湿らせてから丁寧に髪を洗い
始めた。

 30分ほどしてバスルームから出てきた女性はスレンダーな身体にパステルピンクの下着だけを身に着けた姿で、濡
れた髪をミントグリーンのバスタオルで拭きながら、電話をかけ始める。
 30秒ほどして相手が出たようだ。
「あっ、リスティ?フィリスだけど、ちょっと寝坊しちゃったから少し遅れてきてくれない?」
 そう、この部屋の主は海鳴大学病院の新米医師、フィリス・矢沢その人である。見た目は下手すると10代半ばにしか
見えないこの女性が、新米とはいえ研修医ではなく一人前のドクターであるのはその姿を見た人全てが驚きを隠し得な
い。
「え?もう近くまで来てるの?嘘!!だって10時に来るって……あっ出先から直接こっちに来てるんだ。じゃあ私は身
支度で忙しいから、うちに着いたら合鍵使って勝手に中に入っちゃって」
 話しているのは、フィリスの姉で警察の民間協力者を仕事としているリスティ・槙原だろう。
「うん、それじゃあまたあとで」
 そう言うとフィリスは電話を切り、下着姿のまま鏡の前でドライヤーで髪を乾かし始める。


 10分後、フィリスの部屋のドアが開き、彼女とよく似た顔をしたショートカットの女性が部屋に入ってきた。
「モーニン、フィリス」
「おはよう、リスティ」
 フィリスはドライヤーをかけながら挨拶をすると、引き続きドライヤーをかけつづける。
 リスティは肩をすくめると、懐から煙草とライターを取り出して吸い始める。
 今日リスティがフィリスの部屋にきた理由は、フィリスが久しぶりに連休がとる事ができたので、たまには2人でショッ
ピングでもしないかと誘ったからだ。
 しばらく、お互いに言葉も無く時間が過ぎる。
 リスティは煙草を一本吸い終わると、鏡の前に座るリスティの近くまで来ておもむろに一言口に出す。
「やれやれ、同じ遺伝子を持っているはずなのに、どうしてこうスタイルに差が出るのかね」
 その言葉を聞いたフィリスの手が一瞬止まる。
 リスティの視線はフィリスの胸に注がれており、リスティ自身のその部分は非常に豊かに育っている(簡単にいえば巨
乳である)。
「この間見たけどアメリカにいるシェリーだってかなり良いスタイルしてたのに」
 再びフィリスの手が止まるが、震えながらもなんとか動き出す。
 シェリーというのはアメリカはニューヨークに住んでいるフィリスの双子の妹セルフィ・アルバレットの愛称で、緊急時に
出動するレスキュー隊員の仕事をしている彼女のその部分は特別大きいわけではないが、(双子の姉と比べると)充分
豊かに育っている。
「恭也君も、これじゃあ触り甲斐が無いだろうに」
「ちょっと、そこでどうしてきょう…高町さんの話が出るんです!!」
 リスティがニヤニヤしながら、そう言うとフィリスは顔を真赤にして反論した。もっとも、こういった反論は大抵反論すれ
ばするほど墓穴を掘るものだが……
 案の定、顔を赤くし、なによりいつも高町さんと言っていたはずのフィリスが恭也の事を名前を呼びそうになったことを
指摘して更にからかうのだった。
「もう!!きょう…じゃなくて高町さんにはフィアッセっていうちゃんとした恋人もいるんですよ!!」
 そう、話題に出ている高町恭也は、クールな美形で、フィリスの担当する患者の1人だ。
 彼は医者嫌いな上に、妹の美由希に家伝である御神流と呼ばれる古流剣術を指導するために色々と無茶をするの
で、色々と心配させられる患者なのだ。
 その彼も幼馴染であるフィアッセ・クリステラとの交際を彼女がクリステラソングスクールのチャリティーコンサートツア
ーに旅立つその少し前から始めていた。
 彼の診察を始めた当初は、困った人ですねという感想しかなかったのだが、少しずつ彼の優しさや心の強さを知って
いくにしたがって、フィリスはいつしか心の片隅に恭也の面影を宿すようになっていた。フィリスが二人の交際を知った
のはそんな矢先の事だったので当初は人知れず落ち込んだものだったが、今では二人の仲を応援できるようになって
いた。
「うん、フィアッセには悪いと思うが、フィリスが本当に彼の事が好きならフィアッセから恭也を奪い取るのを手伝ってや
ろう」
 リスティはいつに無く真剣な表情でフィリスにそう語る……ただし目は笑っていたが。
「そんな事はしなくていいんです!!私のことは私がどうにかしますからリスティは黙ってて!!いっこうに準備が進まな
いじゃない!!」
 そう言いつつ、フィリスはちらりと時計を見る。
「ああ、もう9時半過ぎてるじゃない。早くしないと」
 そう言うとフィリスは再び鏡の前に座って、髪を整え始める。
 リスティは、そんなフィリスの様子を見ると肩をすくめて再び煙草を吸い始める。


 再び、言葉が少ないまま時間が過ぎていく。やがて、髪を整え終えたフィリスはクローゼットを開けて服を選び始め
る。
 ちなみにクローゼットの中身は女性用のスーツが10着ほど、その他フォーマル、及びカジュアルな服が数着づつ、そ
してフリルやお花が一杯のワンピースが30着以上という具合である。
「なぁ、フィリス?」
「何?」
 フィリスのクローゼットの中を見たリスティが、沈痛な面持ちで言葉を続ける。
「いいかげん、服の趣味とか直したほうが良いよ」
 それを聞いたリスティは再び下着姿のまま猛然と抗議を始める。
「良いじゃない、人の好みはそれぞれなんだから!!私はこう言うのが好きなの。きょう…高町さんも似合っているって
言ってくれたもの。」
 言いたいだけ言うと、再びクローゼットに向き直り、やおら一着のフリフリワンピースを取り出す。
 薄いオレンジ色をした、腰と胸の所にたっぷりフリルのついたワンピースだ。
「うん、今日はこれにしましょう」
 そうしてフィリスが着替えていると、リスティがフィリスの事を呼ぶ。
「フィリース!!」
「もう、何、リスティ?」
 着替え終えてからリスティのほうを向く。
「腹が減った、なんか作れ」
 その言葉にこめかみを引き攣らせつつ、言葉を返すフィリス。
「リースティ、これから駅前に出るんだからそれまで我慢しなさい」
「やだ!!第一窓の外を見ろ、雨が降ってきたじゃないか、こんな日は家の中にいるに限る」
 そう言われて、慌てて外を見るフィリス。
 先程まで晴れていた筈の空は暗くなり、そこから冷たい霧雨が降っていた。
「ああああ、なんで?どうして?せっかくのお休みなのに!!」
 なんとも情けない表情のフィリスだが、雨の中出かけて、服を濡らすのは嫌らしく、それでも出かけようとは言い出さな
かった。
 そして、リスティはニヤニヤと笑いながら、フィリスの肩に手を置きこう言った。
「というわけだ、さぁ早く飯を作れ!!」
 それを聞いたフィリスはがっくりと肩を落とし、キッチンに向かうのだった。


Fin


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あとがき

こんにちは、小島です。
このSSは「海鳴堂書房」HPの3万HIT記念に書いたものです。
管理人様、3万HIT達成おめでとうございます。

今回はフィリス教総本山たる、同HPのに相応しいSSをということでドクターフィリスのSSを贈ります。
つたないできで、お目汚しかとは思いますが、どうぞお納めを。

それではまたお会いしましょう、アディオス!!

メールアドレス:mk_kojima2@yahoo.co.jp



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