Written by タケ
―はじめに―
この物語は、「とらいあんぐるハート さざなみ女子寮」のヒロイン、椎名 ゆうひのシナリオと「ラブちゃ箱ミニシナリオ
猫たちの午後」を基に執筆されています。
その為、「ゆうひシナリオ」「猫たちの午後」をクリアしてからお読みいただく事をおすすめします。
なお、作中の関西弁(らしきもの)はどこまでもいいかげんですが、この辺りは何卒大目に見ていただけると幸いです。
また、ゆうひシナリオと「猫たち〜」との整合性を鑑み、「猫たち〜」シナリオが「ゆうひシナリオの中で起こった出来事と
仮定」して執筆されている事を、あらかじめお断りしておきます。
読者諸賢には、何とぞ御了承頂いてお読み下さい。
では、つたない物語にどうぞ、お付き合い下さいませ。
昼過ぎのひととき。
耕介はさざなみ寮のリビングにいた。
管理人としての仕事も時に時間が空いてしまう事がある。
この日、寮のみんなは出払っていて、耕介の他には猫の「ことら」とその子供・・・・・・ではない、孫達だけ。
相方の「次郎」は午前中に一度顔を見せた後、なわばりの巡回であろう、息子達と共に再び外へ出ていた。こんな
時、猫社会としては珍しくことらは息子達の子供を預かる形で、さざなみ寮にやって来るのだ。これは美緒の薫陶なの か?などと耕介は考えたりするが、こうして見ると猫より人間の方が余程情けなく思えてきたりするのだった。
子猫達はまだ危なっかしいヨチヨチ歩きで、ソファに座る耕介にまとわりついている。
「み〜」
「みゃ」
「みゃ〜」
「みゃあん」
「うみゃ〜ん」
「んみゃん」
「ああ、よしよし。・・・・・・おい、ことらぁ。おまえもついに"おばあちゃん"になっちまったなぁ」
「にゃあん♪」
ことらが何故か自慢げに耕介に応える。
最初のうちこそ午後のテレビ番組なぞ見ていた耕介だったが、こうなってしまうと子猫の相手が優先。それでなくとも、
今の耕介にとってテレビ番組は"たまさかの暇つぶし"でしかないわけで遊び相手がいるとなると話は別だ。
都合6匹の子猫(いや、この場合は孫猫か?)が我先にわしわしと耕介の身体を登っていく。
「あああ、こらこら、爪を立てるな」
とか言いながら耕介は笑顔で子猫達のなすがままに任せている。時折猫たちの背中など撫でてやりながら。
しばらくして。
――さあ、私と共に行きませんか?
ここは"天空の回廊"。
祝福されし者達が集い語らう「祝福の園」への道標。
そこに至る者、全ての苦しみより解き放たれ、
愛の翼持ちてとこしえに揺るぎ無し。
空は青く澄み渡り、風はそよぐ。
花はかぐわしく香りて咲き誇り、
鳥達は祝福の歌を奏でる。
降り注ぐは全てを愛する者よりの祝福の柔らかき光。
――さあ、私と共に行きませんか?
ここは"天空の回廊"。
それは愛と喜びの道標。
そして、「祝福の園」へ――
甘く、麗しい歌声が耕介の耳に届く。
「ただぁ〜いまぁ」
と、リビングに入ってきたのは、ゆうひだった。
お出かけから帰ってきたようだ。
先程までゆうひが歌っていたのは、お気に入りの曲のひとつ「天空の回廊」の第2楽章。
アルマ・ライナという作曲家が書いた、どちらかというと交響曲に近い曲なのだそうだ。
ゆうひとの3年ぶりの再会――あれからまたいくばくかの時が過ぎた。
イギリスから帰ってくると、ゆうひは必ず「さざなみ寮」で過ごす。
ここは、ゆうひにとって「帰るべき場所」だから。
ここに、愛する「耕介くん」がいるから。
「おろ、耕介くんがにゃんこに占領されとる」
そう言うゆうひは大の猫好き。
「おかえり、ゆうひ。ま、見ての通りだよ」
「あははぁ。ただいま、ことら」
「にゃあ」
ゆうひはことらをひと撫ですると耕介の隣に陣取り、耕介の身体をよじ登る子猫達の一匹を優しく抱き上げ、
「ほれ、耕介くん」
ぺし。
「み〜」
ぺしぺし。
「みゃん」
「うりゃ、ねこぱんち、ねこぱんちぃ〜♪」
「みゃ、みゃあ」
子猫の前足を持って、耕介のほっぺに肉球をぺしぺしと当てる。
「おわ、おいゆうひ、こら、やめぇ」
「あはは、やめへぇ〜ん♪」
「うみゃ」
ぺしぺし、ぺしぺし。
「どや、まいったかぁ♪」
子猫がひっついている他にゆうひまでもちょっかいを出してくるから、耕介はやられ放題。
もっとも、耕介はむしろこうしてゆうひがじゃれてくるのを楽しんでいるだけに、ますますなすがまま、されるがまま。
「あははっ、参った、まいった」
ひと時、耕介とゆうひは「二人きりの時間」を楽しんだ。
・・・・・・遊びつかれた子猫達がことらに寄り添い、耕介とゆうひの向かい側のソファで可愛い寝息を立てている。ことら
は時々子猫達の毛づくろいをしながらひとときの憩いを過ごす。
それを見ながら、ふとゆうひが口を開いた。
「・・・・・・うん、やっぱ、ええなぁ」
「ん、何がさ?」
「子供・・・・・・ええなぁ、って」
「ん、ああ・・・・・・見てみろ、可愛いもんじゃないか」
「・・・・・・なぁ、耕介くん」
「うん?何?ゆうひ」
「・・・・・・子供、作らへん?」
「い、いきなりだなぁ、ゆうひ・・・・・・まぁ、それはいいけどおまえ、歌手の仕事どうすんの?」
「かまへんよぉ、そんなん。出産休暇に育児休暇、どうせ取るなら"子作り休暇"や!」
「おいおい・・・・・・ふふっ。まぁ、いいか・・・・・・俺も、やっぱ・・・・・・欲しいな、子供」
「うふっ。うちなぁ、男でも女でもええんよ、せやから最低二人は産みたいなぁ♪」
耕介に寄り添っていたゆうひが、彼の頬に口づけて、
「・・・・・・耕介くぅん?・・・・・・もう"外"はあかんよぉ♪」
と、イタズラっぽくささやく。
「んなっ!?・・・・・・あ、あはは・・・・・・こりゃ、もう自分の部屋で寝る必要もないな(笑)」
耕介は態勢を変えて、ゆうひをすっぽりと抱きかかえる。
耕介の身体に全てを委ねきったゆうひ。
「うふふっ♪・・・・・・ああ、やっぱ耕介くんとこうしてるのが、最高やぁ〜♪」
そのまま、愛し合う二人は「これから」を話しながら、更なるひとときを過ごす。
もっと、ずっと、愛し合えるように。
もっと、ずっと、二人が二人である為に・・・・・・。
・・・・・・それは、夕暮れ間近の、とあるリビングの"情景"である・・・・・・。
情景 〜リビング〜 了
いかがでしたでしょうか?
この作品は一応、「情景」と銘打たれた物語の三作目、という事になります。
登場する動物は、今回「猫」です(笑)。
「さざなみ女子寮」をモチーフにした作品を未だ書いた事がなかっただけに、どうも書き方がちぐはぐと言うか、ぎくしゃく
していると言うべきか・・・・・・。
ああ、「3」の方のネタもまだ手付かずだっけ(汗)。
さて、これを書こうと思ったきっかけは、ちょっとした拍子に浮かんだヴィジョンでして。
それは、
「ソファに座る耕介の身体をよじ登る子猫達」
皆さん、少し想像してみて下さい。
「猫たち〜」のシナリオをちょっとだけ引っ張ってきたのは、それが理由です。
ここにゆうひの「ねこぱんち」を入れて・・・・・・「さざなみ女子寮」の日常のひとコマ、一丁上がり!・・・・・・とは、ちと強引
か?
何にせよ、ゆうひと猫たちのおかげでどうにか形にはなったかなぁ、と思っております(本当か?本当にそう思ってる
か!?)。
もうひとつ、ゆうひが歌っていたとされる、「天空の回廊:第2楽章」なる曲の歌詞。
とらハ本編にはどこをどう引っ繰り返しても出てこなかった為、敢えて無い知恵を必死に振り絞りながら、歌詞を書いて
みましたが・・・・・・なんか・・・・・・センスねぇよ、自分(爆)。
日常を題材にした割に、どうも描写不安定な感じですが、まぁ、こんなものか、と読み流していただければ幸いでありま
す。
次は・・・・・・高町家、かな?果たしてネタが浮かぶのはいつの日か(自爆)。
ではでは。
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