情景 〜瞳〜 (改訂版)


Written by タケ



―はじめに―

この物語は、「とらいあんぐるハート」の、千堂 瞳シナリオを基に執筆されています(多少DVDおまけシナリオも参考に
してはいますが)。
その為、"瞳ちゃん"シナリオをクリアしてからお読みいただく事を、おすすめいたします。

では、つたない物語にどうぞ、お付き合い下さいませ。










 夜が明ける。
 スズメ達が朝を告げるかのようにさえずりつつ、窓の外で飛び回っている。
 それは、いつもの朝の光景。

 千堂瞳は目を覚ましていた。
 しかし、全身は気だるく動くのみで、起きる事を拒否していた。
 普段は寝起きが良く、朝、目を覚ますと必ず起き上がるのが常の彼女にしては、非常に珍しい事である。
 今日は休日、ついでに護身道部の練習は休み。
 しかし、それを差っ引いてもこれほど"気だるさ"を感じる朝は初めてだった。
「・・・・・・う、うぅ〜ん・・・・・・」
 不意に、"瞳の下から可愛い寝言"が聞こえてくる。
「・・・・・・むにゃ・・・・・・」

 ふと、瞳は"何の脈絡も無し"に学園祭での事を思い出した。





 ・・・・・・海鳴大。

「さて、と。そろそろ時間かしら?」

 受験戦争のせめてもの息抜きにと、瞳は真一郎を学園祭に招待していた。
 高校3年生のお約束、「勉強勉強、また勉強」でいい加減くたばりかけていた(笑)真一郎は、それこそ二つ返事でO
K。
 とりあえず、当日の待ち合わせ場所を大学正門と決めていた。

 その日、午前10時50分。
 学祭ならではの喧騒の中、心なしか瞳の歩調も軽い。
「・・・・・・?千堂、どこ行くんね?」
「ああ、薫。今待ち合わせしてるの。そろそろ時間だから♪」
 口調も浮かれている。
「待ち合わせ?・・・・・・ああ」
 薫が納得した、と首を縦に振る。「ああ」のところで多少笑顔がひきつり気味になったのは、事あるごとに瞳が「真一郎
の事なんだけどぉ♪」とのろけるのを、散々聞かされてきたからである。
 薫も一応、「さざなみ女子寮」の面々を出迎えに出るところだったから、結局一緒に正門へ行く事になった。
「薫も、誰か呼んでるの?」
「ああ、うちは寮の人たちば、呼んじょるし」
「という事は、耕ちゃんも?」
「ああ、それが、耕介さんは外せない用事があるから、って」
「あら、そうなの?」
「そっちはどげんね?」
「うん・・・・・・真一郎の他に鷹城さんと野々村さんが来るって言ってたけど、別々みたいね」
 瞳と薫、二人の美人が揃って歩く様は、大学内でもそうそう拝めるものではないらしく、自然と二人に注目が集まる。
外に出た二人は、正門へと近付き――

「・・・・・・ん?」
「・・・・・・何かしら、あの人だかり?」

 正門のところに十数人の男女が密集していた。
「何かあったのかも」
「行ってみましょう」
 二人が急いで正門に近付くと・・・・・・。


(以下のセリフから、読者諸賢には状況を想像して頂けると幸いです)


「ねえねえ、君ぃ、誰と待ち合わせ?」
「いやぁ〜ん、可愛いぃ〜!ねぇねぇ、おねえさんと一緒に中見て歩かない?」
「あ、いや・・・・・・あのぉ」
「っつうか、女に女が声かけてど〜すんだよ!」
「何言ってんのよ、可愛いからいいじゃない!?」
「あ・・・・・・あのぉ・・・・・・おれ、男・・・・・・」
「うそぉ〜ん!?」
「マジかぁ!?」
「いいわぁ、あたしと周らない?ボク?」
「どあほう!信じられるかぁ!?きみぃ、"女"だよな?女だな!?女だと言ってくれぇ!!」
「い、いや、おれ、ほんとに男っす・・・・・・」
「No〜〜〜!!」
「君、ひとりぃ?だったらなおの事だわ、あたしとまわろ?」
「だめぇ、あたしとよぉ」
「・・・・・・っていうか、この際男でもいいかも・・・・・・」
「あ、あの、待ち合わせ・・・・・・してるんですけど」
「えぇ〜、誰と!?」
「まだ来てないじゃん、どうせすっぽかされてるわよぉ、きみぃ」
「いや、あの、ひとみちゃ・・・・・・千堂さんと・・・・・・」
「ええ!?きみって、"あの千堂さん"の、もしかして・・・・・・?」
「は、はい、か・・・・・・」
「弟君なんだぁ〜!!」
「なにぃぃぃ!?」
「千堂さんの、弟ぉ?」


 ・・・・・・完全包囲されて身動き取れなくなっているのが真一郎だという事は、二人には充分過ぎるほど分かった。
「凄か事、なってるな、千堂・・・・・・って、千堂!?」
 瞳がずいっと前進する。
 そのあふれ出す気迫が、薫に声をかけるのをためらわせる。
「真一郎!!」
 瞳が呼ぶ。
 ざわっとしたどよめきの中、人ごみが開いて真一郎の姿が見えた。
「あっ、瞳ちゃん!」
 真一郎が助かった、とばかりに応える。
 途端に「ざわっ」が「どよどよ」に変わった。
「一体どうしたの、真一郎?この人だかり」
「ああ、そのぉ、瞳ちゃん待ってたらいつの間にか・・・・・・」
 そこに。
「千堂さん!」
「・・・・・・何ですか?」
「その、真一郎君、ですか?お姉さん、是非とも私の"嫁"・・・・・・でなかった、私に下さい!」
 ・・・・・・いきなりか(汗)。
「もう"弟"でも、"妹"でもいい、俺にくれぇ!」
 いや、まずいだろうあんちゃん、それはよ・・・・・・。
 あげく真一郎の肩に手をやって、
「真一郎さんは、あたしが幸せにします、お姉さん!」
 マジかい!?そこの電波系ね〜ちゃん(^^;・・・・・・力説してどうする?
 ・・・・・・あ。
「うわっ、うぷっ!?」
 動きはいきなりだった。
 瞳は真一郎の腕を掴んで、引き寄せざま抱き締めると、周囲に「睨み」を利かせながら大声を張り上げてのける。

「真一郎は弟じゃありません!私の"彼氏"ですっっっ!!」

「せ・・・・・・千、ど・・・・・・」

 薫はあまりの事に言葉も出ない。額を片手で押さえつつ「他人のふり」が関の山。
 真一郎の顔は瞳の胸に押し付けられ埋まっていて、身体はがっちりと瞳に抱き締められ、身動きも取れない。さすが
は護身道部の面目躍如(それは違うかと)。
「う・・・・・・うらやまし過ぎる」の声もどこ吹く風で、瞳は高らかに宣言した。

「"私の真一郎"に浮気なんかそそのかしたりしたら、"コロス"わよ・・・・・・!!!」

 当然ながら、薫との待ち合わせで来た「さざなみ寮」の面々も、また遅れてやって来た唯子と小鳥も、この「決定的瞬
間」をバッチリ目撃した。
 後で、真一郎と瞳が散々冷やかされたのは、言うまでも無い・・・・・・。




 ・・・・・・真一郎♪
「この可愛い顔が、悪いんだから♪」
 眼下にある真一郎の頬を指でつつく。
「ぜぇ〜んぶ、真一郎のせいよ♪」
 寝息を立てる真一郎の可愛い寝顔に、瞳の独占欲が「暴走」を始める。
「んふ・・・・・・し・ん・い・ち・ろ・う・・・・・・♪」
 真一郎の胸板に唇を這わせながら、名前を呼ぶ。
 ちょうど、心臓の辺りを強く吸う。
 今更二人がどういう格好か?なんて"聞くも野暮なら言うのも野暮"というもの。
 真一郎がくすぐったさからか、身体をよじる。
 唇を離す。そこには見た目にも目立つキスマーク・・・・・・。
 そこにもう一度くちづけた瞳が顔を上げると、真一郎は更に身をよじりながら
「うぅん・・・・・・」と、甘い甘い呻き声をあげる。

 そのしぐさが、瞳の精神の「どこか」を"ぶつっ"と切った。

 あまりの"可愛さ"に、瞳は真一郎をぎゅっと抱き締める。真一郎の美貌が、瞳の豊満な胸に埋まる。
 初めて出会った時も、こうだったっけ・・・・・・。
 などと思いながら(・・・・・・そう、だったか?)、そのまま愛しさを込めて抱き締め続ける。少しして、また真一郎が身じろ
ぎを始める。
「ああん・・・・・・だめぇん」
 瞳は抱き締めなおす。いや、気持ちは分からんでもないけど真一郎君の命が・・・・・・(汗)。
「ん・・・・・・んんっ!?む、プハ!!」
 真一郎が、息苦しさから顔を強引に離した。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・ああ、く、苦し・・・・・・あ、瞳ちゃん、おはよ」
「・・・・・・んもう、せっかく至福の時にひたってたのに」
「え?・・・・・・あ」
「あら・・・・・・」
 当たり前な話だが、二人の身体は「これでもか」という位に密着している。それだけに、真一郎の"身体の反応"は「神
速並み」に速かった・・・・・・。
「・・・・・・あ、あはは、あははは」
「真一郎の、エッチ♪」
 などと言いながらも、朝っぱらから二人揃って抜き差しならない事になっているのは確かで。
 今日が休日である事を感謝して、瞳は普段であれば絶対に言わないであろう言葉を、真一郎にかけていた。

「真一郎・・・・・・今日は、一日・・・・・・このままでいよっか?」










 ・・・・・・後に「できちゃった結婚(爆)」する二人の"情景"である・・・・・・。





情景 〜瞳〜 了










後記

・・・・・・いかがでしたでしょうか?
って言うか、久し振りのSSが"これ"かい・・・・・・(^^;

・・・・・・ええと、「とらハ1」における自分の一押しヒロインが、実は「瞳ちゃん」こと千堂瞳なんですが、「瞳ちゃんメインの
ストーリー」を書こうと思ってはいても、実際中々いいものが出てきませんで。
んで、仕方が無く思いついたバラバラの場面場面を、それこそちまちまとノート(PCではありません、念の為)に書いて
いたわけです。それがこの作品の大本だったんですけどね。
最初はもっと"おおまじめ"なストーリーにする予定だったのに、いつの間にか、何と言えばいいやら、割かし"まじめ"に
書いているはずの自分の作品としては、かなり「壊れた」作品と化してしまった様な気が(笑)。まさか、自分の作品の
中でこうも瞳ちゃんが"カッ飛ばして"くれようとは・・・・・・。
さらに話の持っていき方が、かなり強引でいい加減なものになってしまったんではないかな?と、自分としては反省しき
りであります(汗)。
まぁ、ここは瞳ちゃんの「暴走」に免じて大目に見ていただければ、有り難いですが(苦笑)。
ちなみに、この作品の舞台は「真一郎の部屋のベッドの上」です(笑)。

・・・・・・さて、それでは誰かさんに頭かち割られないうちに、撤収しようと思います(笑)。
生命が惜しいので(爆)。

悪運強く生き延びる事ができたなら、またお会いいたしませう(マテ)。
ではでは。



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