情景


Written by タケ



―はじめに―

この物語は、「とらいあんぐるハート」の、野々村 小鳥シナリオを元に書かれています。
その為、小鳥シナリオをクリアしてからお読みいただく事をおすすめいたします。

では、つたない物語にどうぞお付き合い下さいませ。










 とある休日。
 それは、真一郎と小鳥が買い物を終えて帰宅する、帰り道での事。
 取りとめも無い話に盛り上がりつつ家路をたどる二人の耳に、切迫した甲高い鳴き声が、空から聞こえてきた。

チチッ、ピピピピッ・・・・・・チチッ・・・・・・!!

 何事かと、二人は上を見上げる。
 と、すうっと視界を横切るカラスより一回り小さめの鳥と、それを追いかける二羽のスズメ。
 二羽のスズメはその鳥を追いかけ、視界からあっという間に遠ざかる。
 何故か、真一郎も小鳥も、飛んで行った先から目が離せないでいた。

 もしかしたら、二羽のスズメはつがいかもしれない。だとしたら、あの鳥はスズメの雛を捕まえようとして気付かれたの
だろうか?
 二羽のスズメは、どうなるのだろう?
 真一郎は、思わず考えを巡らせていた。

「・・・・・・真くん」
「ん、なに?小鳥」
「・・・・・・大丈夫かな、あのスズメさん達」
「・・・・・・・・・」
 小鳥が気遣わしげに三羽の鳥が遠ざかっていった先を見つめている。
 さすがにどうなるのか、真一郎にも分からなかった。
 二人はただ、見つめている。

 ・・・・・・答えは段階的に返ってきた。
 少しして、遠ざかっていた方向から一羽が戻ってきた。
 更にしばらくして、もう一羽。
 あの二羽のスズメだった。
 二羽は電線に止まり少しの間戯れる。まるで、互いの無事を喜び合い、大切なものを守った喜びを分かち合うかのよ
うに。
 しばらくすると、二羽のスズメは揃って飛び立って行った。
 その先に、巣でもあるのだろうか。

「・・・・・・無事だったんだね。良かった」
「・・・・・・うん」
 真一郎はあのスズメ達を見て、正直感心していた。
 本来ならスズメの方が食べられてしまう方であるはずなのだが、あの二羽は恐らく、自分達の子供を守る為であろう、
 生命を賭して敵を追い払ったのだ。
 小鳥が真一郎を見て、真剣な口調で言葉を紡ぐ。
「ねえ、真くん。私も、あのスズメさん達の様に、大切なもの・・・・・・守れるように、なりたいな」
 これまで何かと真一郎に守られる事が多い、そう感じていた小鳥の、それは本心だった。
 真一郎は、それに応える。
「うん。二人で、大切なもの、守れるように・・・・・・」
 いつの間にか、二人は手をつないでいた。
 それを見て二人は顔を見合わせ、くすっ、と微笑み合う。
「さ、小鳥、帰ろっか」
「うん。あ、そうだ。真くん、今日うちで晩御飯食べよ?お父さんも今日は早く帰って来るし」
「うん、そだね。そうしよっか」

 二人は再び歩き出した。つないだ手はそのままに。

「後から戻ってきたスズメさん、まるで真くんみたいだったよ」
「え?そう?」
「うん。何か、小さい頃の事、思い出しちゃった」
「っていうか、今でも小鳥って・・・・・・」
「あううっ、真くんの意地悪」
「あはは・・・・・・でも、今も変わらないから」
「え?」
「小鳥を泣かすヤツは、絶対に許さないから」
「真くん・・・・・・」





 それは、陽光が優しく降り注ぐ、とある一日の"情景"である・・・・・・。





情景 了










後記

いかがでしたでしょうか?
作中、スズメに追いかけられていた鳥はチョウゲンボウというハヤブサの仲間で、本来は断崖などに巣を作っているの
ですが、近頃は都市部でも姿を見る事ができます。
これも環境の変化、というやつなのでしょうか?
主食はネズミや、スズメなどの小鳥です。
一応、補足までに。
さて、この話のネタは小鳥シナリオと、実話が下敷きになっています。
実はこの前会社の構内で、二羽のスズメがチョウゲンボウを追いかけて飛んで行った光景を、実際に目の当たりにし
ました。
その時、自分はあの二羽が絶対につがいだ、と思ったのです。
きっと、雛を守る為に「捨て身の反撃」を敢行したのでしょう。
何故か、真一郎と小鳥の姿がそこで浮かんできたのです。
もっとも、それが文章として出てくるのには少々時間を要しましたが・・・・・・(苦笑)。

さて、拙作を読んで皆様は何を感じるでしょうか?
まぁ、真一郎&小鳥の描写は自分自身「?」と思うところがありますし、内容もかなり短いものとなっておりますが、生命
を賭けたスズメのつがいに免じて、この際大目に見ていただけると幸いです。

ではでは。



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