たまには休日を……愛の大切な家族達


Written by 小島


この作品はJANIS/ivoryより発売されている「とらいあんぐるハート2 さざなみ女子寮」を元ネタとしております。
この作品は、ネタばれを含んでいます。
この作品における方言はかなり適当です、こんなの関西弁(鹿児島弁)じゃないという方がいてもおおめに見ていただ
けると嬉しいです。
この作品は、私作のSS「たまには休日を……」シリーズの愛視点のお話です、先に書いた耕介編、薫編、知佳編、ゆ
うひ編、リスティ編、真雪編の話を読んで頂けると少しは面白くなるかもしれません。



「おーい、朝だよ!!おっきろーーーー!!」
 最近ゆうひちゃんがくれた目覚まし時計から、可愛らしい声が聞こえてくる。
 文字盤に描かれていた可愛いい小さな兵隊さんの声なのだろうか?明るく元気な声にすっきりと目が覚める。
 窓からカーテン越しに射し込む陽射が、部屋の中を照らしている。今日もいい天気みたい。
 それから、ベッドの脇で一生懸命私を起し続けていた兵隊さんを止めてから着替えを始める。
 淡いピンクのパジャマをさっと脱ぐと昨日の夜のうちに準備しておいた下着と服を着る、今日の下着はベージュのブラ
と白いショーツ。服装はよく着る白いトレーナーと赤いスカートの組み合わせ。
 それからカーテンを開けてお日様に挨拶をする。「おはようございます」


 着替えが終わって洗面所で顔を洗って、しっかりと目を覚ます。
 いくら家族とはいえ、完全に寝起きのままの顔を耕介さんには見せたくないから、冷たい水でジャブジャブと洗ってか
らフェイスタオルで顔を拭いていると後ろから声がした。
「愛おねえちゃん、おはよう」
「おはよう、知佳ちゃん」
 私は知佳ちゃんと朝の挨拶をすると洗面台を知佳ちゃんに譲る。知佳ちゃんは今日もお日様みたいにまぶしい笑顔
を見せてくれる。
 そうして、2人でいると新たに洗面所に人が入ってきた。まるで女神様みたいに綺麗なその人はゆうひちゃんだ。
「おはようさん、二人とも」
「「おはよう、ゆうひちゃん」
 知佳ちゃんと綺麗にハモりながら挨拶をする。偶然だけどこんなに綺麗に揃うのはなんだかとても嬉しい。
 そして、ゆうひちゃんが洗顔を済ますのを待ってからキッチンへと向かう。歩きながらゆうひちゃんと話をする、といっ
てもゆうひちゃんと話をする時はほとんどゆうひちゃんがしゃべって、私が相槌を打つというのが多いんだけど。
 それでもやっぱりゆうひちゃんと話すのは面白い。それだけゆうひちゃんが話し上手だという事だろう。
 でも、そのゆうひちゃんと話す事が最近は減ってしまった。ゆうひちゃんがイギリスと日本を行き来するようになったか
らだ。
 もちろんゆうひちゃんが自分の夢をかなえる為に頑張っているのは知っているし、その事を心の底から応援してい
る。だけど、いつかこうして話す日が来なくなるかもしれないと考えると寂しくてたまらなかった。



「耕介さん、おはようございます」
「お兄ちゃん、おはよー」
「耕介君、おはよう、今日もええ天気やね」
 耕介さんは今日もいつものようにキッチンに立っている。私はこの光景を見ると不思議と気分が落ち着いてくる事が
多いのだけど、今日は駄目だった。
「おはよう!!」
 耕介さんはいつもそうするみたいにちょっとだけ振り向いて笑って挨拶をするとすぐに顔を戻す。その様子を見ると胸
がちくりと痛んだ。
 耕介さんは、この寮の中にいる唯一血の繋がりがある私の従弟、そう従弟なのだ。
 それは私達が子供の時約束したように結婚できるということであると共に、遠く離れて暮らしてもおかしくないというこ
とでもある。耕介さんが私を選んでくれていたらきっとこんな思いをする事は二度と無かったと思う。でもあなたが選ん
だのは薫さんだった。
 今すぐではないにしても薫さんは鹿児島に帰るだろう。その時耕介さんは薫さんと一緒に鹿児島に行ってしまうのだろ
うか?
 そんな事を考えながらお休みの日のはずなのに私達の分まで朝食を準備してくれている耕介さんにお礼を言う。
「耕介さん、お休みなのにすいません」
「あはは、いいですよ、好きでやってんですから」
 そう言って耕介さんは見事な手つきで茄子の浅漬けを包丁で切り始めた。
「お兄ちゃん、手伝うね」
「ありがとう知佳。じゃあ、これを盛り付けて、テーブルに運んでくれ」
 知佳ちゃんが耕介さんの手伝いを申し出ると、耕介さんは快く受け入れる。私がそう言うと大抵『アハハ、大丈夫です
から愛さんは座っていてください』とやんわりと断られる。
 そして、耕介さんが用事が有ってどうしても御飯が作れない時などに御飯を作るように頼まれるのも知佳ちゃんで、私
が申し出ると店屋物でも取ってくださいと断る。実はこれが耕介さんに対する密かな不満だ。年上だからだとかオーナ
ーだからとか遠慮しないでもっと私に頼ってくれるといいのに。
「あ、うちも手伝うな」
「あぁ、ありがと、もう終わりだから、運ぶの手伝ってくれ」
 ゆうひちゃんがそう言われるのを見たわたしは少し悲しくなったので、その場を離れることにした。そうだついでに真
雪さんを呼んでこよう。


 真雪さんは、リビングでソファアに座ってテレビを見ていました。
「真雪さん、耕介さんがもうすぐ朝御飯ができますよって」
「ああ、それじゃあ行こうかね」
 眠いのかな?随分ぼんやりしているけど……真雪さんももう少しゆっくりできるといいのにな。


 お風呂に入っていたらしい薫さんがキッチンに入ってきて、お互いに挨拶を交わした後、食事を始める。
 食事はいつもよりは静かに、でもきっと何処の家より騒がしく進んでいく。真雪さんが胸のことで薫さんをからかったと
き私は顔が赤くなったのが自分でもわかった、確かに2人は恋人同士だし、それに大人だ。そうなっていても別段おか
しくは無いけど今までそんなふうに思った事は無かった。私はこういう所はまだまだ子供なんだと思う。
 食事が終わるとやっぱり眠かったらしい真雪さんは部屋に戻っていき、耕介さんは残ったわたし達にお茶を淹れてく
れる。
 全員にお茶がはいったところで、何か考え事をしていたらしい知佳ちゃんが耕介さんに話しかける。
「ねぇ、お兄ちゃん?」
「何だ、知佳?」
「あのね、お兄ちゃんが食事を用意してくれたり、掃除をしてくれたりするのは嬉しいんだけど、ここのところ、日曜日で
もお兄ちゃん働いているでしょ。たまにはちゃんと休まないと身体を壊しちゃうよ」
 耕介さんはそういわれて困った顔をしている。私がずっと前から心配していた事を知佳ちゃんが言ってくれているので
私も後押しする事にした。
「そうですよ、耕介さん。日曜日は耕介さんお休みなんだから、ちゃんと身体を休めないと」
「いや、別に仕事でしてる訳じゃないですよ、料理を作るのは好きだし、みんなの分を作るのは、自分の分だけ作ると材
料がもったいないからですよ」
 私が言っても耕介さんは聞いてくれない。そこにゆうひちゃんが会話に参加する。
「でも耕介君、料理だけじゃないやろ。他にも日曜なのに皆の洗濯したり、寮を掃除していたりするやろ?」
ゆうひちゃんも心配していたのか耕介さんに注意してくれる。
「……………」
 少しは効果が出てきたのか耕介さんは口をつぐむ。
「それに耕介さん、私、前にも日曜はお休みなんだから、しっかり休んでくださいって言いましたよね?」
「………確かに、そう言われたことがありました、はい」
 私が再度注意すると耕介さんは本当に困ったような顔をしながら、言葉を返してきた。
「耕介さん、すぐに無理をしていたうちが言うのもなんですが、休養はしっかり取らないとだめですよ」
 恋人の薫さんまでもが耕介さんに注意してくるので耕介さんも観念したような表情になりる。
「そうだ、耕介様は薫と婚約までしているのに、ほとんどデートというものをしていません。たまには、薫と二人で出かけ
てきたらどうですか?」
 十六夜さんが突然そんな事を言い出した。でもそれもいいかもしれない。こんなに耕介さんが困った顔なんてそうそう
見れるものじゃないし、私もたまには真雪さんみたいになってもいいかもしれないしね。
「そうそう、十六夜さんの言う通り。お兄ちゃんが今日やろうとしていたことはわたしが代わりにやるから」
 知佳ちゃんにそう言われて真っ赤になる二人を見てわたしも悪戯心をさらに刺激される。
「あっ、知佳ちゃんええこと言うな。耕介君にはいつもお世話になっとるし、よし、うちも知佳ちゃんといっしょにやるな」
「そうですね、私も手伝いますから、薫さんとデート楽しんできてくださいね」
 気がつけば私も知佳ちゃんを手伝うと言って耕介さんを困らせていました。
「ちょっと待ってください、耕介さんがお休みするのはよかですが、うちだってさざなみ寮の一員です。うちも耕介さんの
仕事の手伝いをします」
 薫さんがそう言ってくれたとき、私は薫さんも私達を家族みたいに思ってくれているのだと再確認していました。だって
真雪さんや美緒ちゃんに本気になって怒ってくれるのはそう思ってくれているからだとわかっていましたから。
「あのね薫さん、薫さんにはお兄ちゃんを寮の外に連れていってほしいんだ。お兄ちゃんの事だから、寮に居たらきっと
何か仕事を見つけて始めちゃうから」
「でも………」
「薫ちゃん、まあ、ええやないの。薫ちゃんだって大学の剣道部とか仕事とかでなかなか遊んだりできないんだしたまに
は、はめをはずしても?」
「それじゃ、二人とも着替えたら出かけちゃってね。後はわたし達でやっちゃうから」
 そうして私が1人で感激しているうちに話はついてしまいお茶会も終わっていました、クスン。


 耕介さんと薫さんが出かけた後、知佳ちゃん達と役割分担の話し合いをする事になりました。
「うーんと、お兄ちゃんから頼まれた仕事は…キッチンのあとかたずけ、庭掃除、寮内の掃除、洗濯を頼まれたけど…
…どうしよっか?」
 今日は良いお天気だし、お庭を掃除するのもいいかもしれないね。
「それじゃあ、わたしがお庭をお掃除しますね」
「うん、じゃあ愛おねえちゃんお願いね」
「うちは……………知佳ちゃんが決めてな」
「ゆうひちゃん寮の中のお掃除やってくれる?」
「ええよ」
「それじゃあ、始めよっか!!」



「うーん、日当たり良好、今日も良い1日になりそう」
 わたしはお庭に出ると思いっきり背筋を伸ばした。身体を戻した拍子に自分の胸が大きく揺れるのを感じる。そういえ
ばさっき薫さん胸の事で色々言われていたけど、私くらいの大きさなら耕介さんも満足してくれるのかな?
 一瞬そんな事を考えた自分を恥じた。耕介さんは薫さんを選んだ。私はその想いを告げる前に耕介さんに振られた
のだ。
 1人で一晩泣いた後、二人を祝福しようって決めていたのにこんな事を考えている。こんな事じゃあ寮の住人全てを
家族だと言っている私は大嘘吐きになっちゃいます。
 少しそんな反省をしながら箒を持ってきてお掃除を始めた。


 私がお掃除を始めてから少しして知佳ちゃんがお庭に出てきた。なんだか少し怒ってるみたいだ。
「愛おねえちゃん!!」
「どうしたの知佳ちゃん?」
 どうして怒っているのかわからない私は知佳ちゃんに聞いてみた。
「ねぇ、愛おねえちゃん、いくら幼馴染みの従弟だからって、下着まで洗ってもらうのは拙いんじゃない?」
 そう言われて私は始めて気がついた。以前は神奈さんが洗濯をしていてくれたから問題は無かったけど、耕介さんは
男の人だった。
 いやだ、私もう1年以上も耕介さんに下着を洗わせていたの?新品の物だけじゃなく、月に1度来る例の物の時の汚
れた物まで……は、恥かしいーーーーーーーーー!!
「うん、そうだね耕介さんをきっと困らせちゃったね。これから気をつけるね」
 私は平静を装ってそう答えたけど、頭の中では耕介さんに私の例の周期まで完全に把握されているのがわかってし
まい、耕介さんとどういう顔をして会うのか考えこんでいた。
「うん、ちょっと細かいけどお兄ちゃんも男の人だし、それに洗い終わったものを見られるのとはちょっと違うでしょ?」
 まったくもってその通りです。
「うん、ありがとう知佳ちゃん」
 うう……。


 しばらく地面に蹲って落ち込んでましたが、こんな事があるから楽しい日々なんだと思い直し、お庭の掃除を再開する
ことにしました。
 ぽかぽかと暖かい日の光と緑の香りがする爽やかな風、この家は本当に良い所にあると再認識しました。そしてそん
な良い場所に集まって来たちょっと不思議でユニークな寮生(家族)達に囲まれて私は本当に幸せです。
 でも、朝考えていた事が頭をよぎります。私は何時までこんな幸せに浸っていられるのか?そして真雪さんをはじめと
した皆はいつまで私の側にいてくれるのか?そんな考えが振り払っても振り払っても溢れてくるのでした。



「愛、ただいま!!」
 不安を振り払う為に一生懸命になって掃除に打ち込んでいた私に聞き慣れた、でもここにはいないはずの人物の声
が聞こえる。
「リスティ、夕方まで検査じゃなかったの?」
 綺麗な銀色の髪を短く切りそろえ、晴れた日の湖みたいに蒼い瞳をした小柄な少女、私の義理の娘リスティ・槙原
だ。
 今日は夕方まで病院で検査を受けているはずなのだが、なぜか家に帰ってきている。生立ちの所為か気難しい所も
ある娘だからもしかしたら病院で何か気に入らない事があって勝手に帰ってきたのかもしれない。でもそれはそれでか
まわない。この娘は一見理不尽に見える行動をとる事も多いけど、ちゃんと事情を知るとそういった行動をとってもおか
しくないと思える事が多いから。
「ドクター矢沢に急患が入って午後の予定はキャンセルになったんだ」
 どうやら気の回し過ぎだったみたい。何も無いならその方が良いですから。
 あっ!!そうだもしかしたらお昼を食べてないかもしれないわね。
「今日は耕介さんがいないから知佳ちゃんかゆうひちゃんが御飯を作るって」
「どうして?」
「耕介さん、お休みの日もいつもいつも働いているから薫ちゃんとデートをするって口実をつけて強制的に休んでもらっ
たの」
「ああ、それで、愛が庭掃除をしているんだ」
「ええ、そうよ」
「じゃあ、午後からはボクも手伝う。でも今は勘弁すごくお腹が空いてるんだ」
 いつもはクールで薫さんみたいにあまり表情を変えない娘が心底情けなそうな表情をしたのを見て思わず可愛いと思
ってしまいました。自分では自覚していないのですが真雪さんに言わせると私は親ばからしいです。
「いいわ、それじゃあ午後からお願いね」
 私がそう言うとリスティは家に入っていきました。


 それからしばらくして、正面のお庭のお掃除が終わり、家の裏に回ってみると、なんだか草が伸びてきてるみたい。か
わいそうだけど抜かなくっちゃ。確か雑草って草はないって仰ったのは昭和天皇陛下だったわよね、なんてちょっと余
計なことを考えてみる。
 そうして草むしりを始めてからしばらくしてリスティがやって来る。
「愛、知佳がもう御飯ができるって」
「え、本当?それじゃあ今行くね」
 リスティは本当にお腹が空いてるのか、私の手を引いて寮に戻り、洗面所で手を洗う。
 それからキッチンに戻ると知佳ちゃんとゆうひちゃんがオムライスを作っていました。
「愛、どうしてリスティがいるんだ?」
 リスティが知佳ちゃん達を手伝い始めたのを見た真雪さんが私に声をかけてくる。
「えっ!…ああ、矢沢先生に急患が入って午後の検査がキャンセルになったんですって」
 私がそう言うと真雪さんは興味を無くしたみたいで、大好物のビールを飲み始めました。
 そういえば最近真雪さんに影響を受けたのかリスティがお酒と煙草に興味をもったみたいで時折物欲しそうに真雪さ
んを見ているのを知っている。できればやめて欲しいんだけど……。
 そんな事を考えているうちにお昼の仕度が終わったみたいですでにスープまで盛り付けてあり、皆が席につく。
「それじゃあいただきましょう」


 お昼の最中、リスティと真雪さんとゆうひちゃんの3人で何やら内緒話をしている。リスティがこの家の皆と仲良くなっ
てくれて本当に嬉しい。
 皆が楽しそうに笑っているのを見てこんな時間がいつまでも続けば良いのにそう思っていました。
 そんな事を考えているうちに楽しい昼食の時間は終わり

 午後は、先程の続きで草むしりをする事にする。約束した通りリスティが手伝ってくれる事になった。
 最初のうちはお互い話しをしていたけど、草むしりは見た目より結構重労働だからしだいに黙々と草をむしり続けるこ
とになる。
 そうなると、また不安が押し寄せてくる。私の娘という事になっているけどいつまでリスティはここにいてくれるんだろう
とか、そんな考えを振り払う為に私はひたすら草を抜く事に没頭する。
 しばらくそうしていると、ふと見覚えのある草を見つけた。幼い頃小学校の友達と草相撲した草だ、思わず、一人で草
相撲を始めてしまう、そうするといっしょに草相撲した友達は転校して行ってしまった事とか、当時はまだお爺様が生き
ていた事とかそんな考えが次々と湧き出してきた。
「愛、どうしたの?さっきからぜんぜん進んでないよ」
「えっ、リ、リスティ……ごめんねちょっとボーっとしていたみたい」
 私がボーっとして草相撲をしていたら、リスティから声がかかる。いけない、いけない。自分から始めておいてリスティ
1人に草むしりを押し付けるところでした。
「うん、何か悩み事でもあるの?ボクじゃあ頼りにならないかもしれないけど聞くぐらいはできるよ」
 そうリスティが言ってくれた時、一瞬私は当り障りのない事を言ってごまかそうと思いましたが、そんな嘘を言うのをや
めて正直に話す事にしました。
「うん、今の寮のメンバーであと何回こういったお祭り騒ぎができるのかなって考えてたの」
 リスティの瞳が私を正面から捉える。その眼差しはいつになく真剣でそれでいながら深い優しさを秘めていた。
「そうだね、できるだけ多い方がいいよね。でもたとえ皆がこの寮から巣立ってもボクはここにいるよ。だってボクのお母
さんは愛で、愛がここに住んでるんだもん。出て行くはず無いじゃないか」
 リスティの言葉は私の心にわだかまっていた不安をたちどころに打ち消してくれた、そう私には家族がいたんだ!!
なんてバカだったんだろう、リスティは私の娘、確かに血は繋がってないけどそれは紛れも無い事実。
 そして、寮に住む皆を家族だと言っておきながら離れる事を恐れるなんて。そう、例えこの寮を卒業しても私達は家族
だ!!ここで共に暮らした記憶、そして心の繋がりは消えはしない!!そして何よりも重要な事は別れがあれば出会
いもあるということ!!そう私の家族は増えていくのだ、1人また1人と。
 そんな大切な事を思い出させてくれたリスティの言葉に私は涙をこらえる事ができなかった。だからリスティを心配さ
せないために彼女の背後にまわって抱きしめた。
「リ、リスティ、ありがとうね、それにずっといっしょにいてね」
「うん、約束だよ」
 そうして私達が親子の絆を深めていると、しばらくして寮のほうから凄い悲鳴が聞こえてきました。
「イヤーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!ゴキブリーーーーーーーーーーーーー!!」
 私達は顔を見合わせると寮へと駆け戻りました。


 その後、知佳ちゃんとゆうひちゃんの2人が真雪さんに怒られ続ける事になり、私が必死に庇ったのですがまるで効
果なし。ごめんね知佳ちゃん、ゆうひちゃん。
 確かに洗濯機も掃除機も安いものじゃないですけど、二人が怪我したりするよりそういった物が壊れただけの方がい
いです。知佳ちゃんもゆうひちゃんも悪気はまったくなかったんですから。
「ゆうひは、本当に機械音痴だね、ゴミパック換えるだけでどうやって壊すんだか…?」
 私の隣にいて手を繋いでいたリスティからまるで面白がっているような言葉が聞こえます、私も不思議ですけどね。そ
うしてしばらく真雪さんたちを見ていましたが、リスティに手を引かれてやりかけの草むしりに戻る事になりました。
「さあ、まだまだ沢山あるからがんばろう、愛」
「そうね、がんばらなくっちゃね」
 二人のことが気がかりでしたけど、いつも頼りっぱなしの耕介さんを手伝うと言う当初の目的を達成するためにも、私
達は一生懸命草むしりに励みました。
 今の家族達とすごすのがいつまで続くのかわからないけど、その一瞬一瞬を大事にして生きていきましょうね、リステ
ィ!!




おまけ
 帰ってきた耕介さん達を出迎えると、真雪さんとゆうひちゃんとリスティが薫さんの手を引いてどこかに連れていってし
まいました。そして私は耕介さんに謝る知佳ちゃんとそれを優しく許してくれた耕介さんを見ながら、ああやっぱり家族っ
て良いな。そんなことを思うのでした。後ろから聞こえる声を無視して……。
「さあ、薫ちゃん今日は何処に言ってきたんや?」
「薫、素直に吐いたほうが良い、楽になれるよ」
「神咲ぃー、耕介とキスぐらいはしてきたんだろ?正直に言え」
 えーと、本当に家族って良いですよね!ね!!ね!!!ね!!!!










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あとがき


こんにちは、また御会いできてとても嬉しい小島です。
ついに「たまには……」シリーズ本編の最後を飾る愛編をお送りする事ができました。
ようやく終わったと肩の荷を下せる安堵感と少し寂しい気持ちが絡まりあってなんだか本当に複雑な気持ちです。
さて、愛編はいかがだったでしょうか?
このシリーズを始める時から決めていた事ですが、もし続けることができるならトリは愛さんにしめてもらおうと。
さざなみ寮の平穏の象徴でもある彼女にとって平凡だけど楽しい日々、別れを嫌う彼女にリスティという娘ができた事
がどういう影響を与えるのか?そんな事を当初から考えていましたが、なかなか上手くいかず5回書き直しました、まっ
たく駄目作家ぶりを見事にさらしています、困ったもんです(苦笑)。
少しは面白くなっているといいのですが……。

さて、駄文に付き合っていただきありがとうございます、「たまには休日を……」シリーズは残すところ「海鳴堂書房」HP
の記念ヒット用に書こうと思っている外伝だけとなりました、今のところ書く予定があるのは真一郎&さくらのさくら編、
十六夜編、耕介&薫のタンデムツーリング編、それとみなみちゃん編といった所でしょうか?
美緒編はどうしたとか、見事に白パンを見せてくれたフィリスの話はないのかという方は感想掲示板やメールでお聞きく
ださい、電波が届きやすくなるかもしれません(微笑)。

さて今回も私の駄文シリーズをこれまでHPに掲載し続けてくださった管理人様に深い感謝の念を捧げつつ終わりたい
と思います。
どうもありがとうございました。

それでは外伝か別の作品でまたお会いしましょう、アディオス。

メールアドレス:mk_kojima2@yahoo.co.jp

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