第3話前編


Written by 青大将(藤木 高志)


数分前
「藤木、生活安全課の徳さんが探していたぞ。」
そう切り出したのは最近大きな事件が無くデスクワークに飽き飽きしていた真雪であった。
「生活安全課の徳さんが?」
「ああ。何でも男手が必要なんだとよ。真一郎や耕介も呼ばれてたぞ。」
「ふむ…じゃちょっと行って来ます。」
「ああ、楽しんでこいよ。」
藤木は真雪の「楽しんでこいよ」という言葉が頭にひっかかったが生活安全課の部屋に向かった。

「で…「楽しんでこいよ」というのはこの意味だったのか…。」
「だったみたいですね。」
「まさかとは思ったけど。」
生活安全課に呼ばれた藤木、耕介そして真一郎はモニターの画面を見ながら再生されているビデオの内容を見てい
た。その内容とはとてもとても健全と言える代物ではなかった。
「どうだ。上物だろう?」
そういって隣のモニターを見ている徳さんこと生活安全課の徳川課長はニヤリと笑いながら藤木達に声をかけた。
「確かに借りて見るのとはぜんぜん違いますけどね。」
真一郎は苦笑しながら答えるしかなかった。
「ははは…面白いこと言う相川君は。まあ、まゆちゃんに捜査一課の協力を頼むといったらちょうどいいのが3人いると
いって呼んだのがこの面子だしな。」
徳川は豪快に笑いながら真雪が3人を生活安全課に呼んだ経緯を話した。
「で…徳さん。俺たちを呼んだということは何か事件かい。」
そう切り出したのは耕介であった。
「相変わらず鋭いな、槙原君は。そういうことさ。このビデオはこの前4課とヤーさん経営のビデオ屋をガサ入れしたと
きに押収したものなんだが…最初の目的はヤクの押収だったんだが、隠し部屋を探したたらこれが出てきてな。」
そういうと山積みにされたダンボールを指差しながら徳川は苦笑した。
「でこれを撮影して編集している連中をアゲると言うわけですか。」
藤木は煙草を咥えながら徳川に話し掛けた。
「まあそういうことだ。中には被害届けの出てるものもあるからな。ほっとくわけに行かないだろう?」
「まあそうですが…後何本見るんですかこれ。」
真一郎の困り果てている声に徳川はニヤリとしながら答えた。
「3人でこのダンボール一箱だ。」
3人は顔を見合すと同時に天を仰いだ。

それから数時間後、捜査一課では聞き込みから帰ってきた、葉弓と楓が部屋でお茶を飲みながら話をしていた。
「なあ葉弓ちゃん。ちとええか?」
「なに?楓ちゃん。」
「この前のヤマが終わってもポニーテールのままなのはなんでや?」
楓の突っ込みに葉弓は思わず動きを止めた。
「そりゃ葉弓が藤木を気にしているからだろう?」
追い討ちをかけるようにデスクワークをしていた真雪が眼鏡を光らせ、口元を笑わせながら顔を上げた。
「そ、そ、そんなことは無いですよ。ただただイメージチェンジで。」
葉弓は少しあたふたしながら二人の口撃をさばいていた。
「そうそう楓ちゃん。聞き込みの結果を徳さんに報告にいかないと。」
「あー葉弓、待て今は行ったらマズイ!!」
葉弓は真雪の忠告を聞かずに部屋から駆け出していった。
「仁村さん葉弓さんがあわてて出て行きましたけど何かあったのですか?」
ちょうど擦れ違いで戻ってきた薫と瞳は頭に疑問符を浮かべて真雪の顔を見ていた。

「真一郎君、耕介さんそっちは終わりました?」
藤木は疲れ果てた声を上げてほかの二人の進行状況を聞いていた。
「俺と相川君はこれで終わりです。」
「そうです。」
同じく二人も疲れ果てた声を上げていた。
数分後……
「よし終わった…。」
「こっちもです。」
自分の割り当てが終わった二人は背伸びをして終了を宣言した。
「終わったなら外で空気を吸ってきたらどうだ?」
「ええそうします。行こうか相川君。」
「そうですね槙原さん。この部屋からとりあえず出たいです。」
徳川の提案に耕介と真一郎はドアを開け部屋の外へ出て行った。
「で…徳さん本題ズバリ言っていいか?」
「おおいいぞ。どうぜそろそろ来る頃だと思ったし。」
藤木は徳川に煙草に火をつけながら質問をした。
「これ…同一人物の犯行だろう?」
「わかったか…まあマニアの悪い成れの果てがこれさ。」
徳川は苦笑しながら藤木と同じく煙草に火をつけた。
「しかし…制服だらけとは。」
藤木は煙草を咥え大きく吸い込むとため息のように吐き出した。
「まあ後はどっかと合同でホシを挙げるさ…今のところ4課が有力だが。」
「徳さん…犯人が気の毒だ。」
徳川の口から出た言葉に藤木は苦笑するしかなかった。
「失礼します、徳川課長………。」
そんな会話の中、生活安全課のドアを開けた葉弓はモニターから流れている画像を見て絶句していた。
「ああ…葉弓君。聞き込みの結果はどうだった?葉弓君?」
葉弓はまるで人形のように徳川の呼びかけにも固まったままだった。
「おーい神咲さんどうしたんだ?」
『バチーン!!』
今度は藤木が声をかけると葉弓は、はっとして藤木の頬に平手打ちをした。
「ふ、不潔です藤木さん!!」
一言言うと葉弓はまた部屋から飛び出していった。
「あれ…葉弓さん飛び出していきましたけど…藤木さんどうしたんですかその顔は。」
しばらくして戻ってきた真一郎と耕介は頬の赤くなった藤木の顔を見て驚いていた。
「さすがに女の子にはきつかったか。それにしてもいい音だったな。」
徳川は藤木を見て苦笑した。

「何で署内であんなビデオを…ブツブツ。」
葉弓は1課の部屋に戻ってくると自分のデスクに座り、書類を書きながらブツブツと独り言を言い出した。
「だから行くなといったのに。」
「真雪さんから事情は聞きました。葉弓さんたまには真雪さんの言うことも真面目にとらえんと。」
真雪と薫は苦笑しながら独り言を言っている葉弓に声をかけていた。
「たまには真面目っていつもオフザケしているわけじゃないぞ私は。」
「でも私から見てもたまにそう見えますけど?」
「唯子もそう思うことが…」
「うちもや」
そのとき捜査1課の部屋に居た面々は同じ意見であり、真雪はさらに顔をしかめた。
「とにかく藤木さんは不潔です。いくら捜査のためとはいえあんなビデオを見ているなんて…私許せません。」
「あぁ…あれ見ていたのは藤木だけじゃないんだよな…耕介に相川君も徳さんに呼ばれて見ていたんだよな。」
真雪の言葉に捜査1課の面々は苦笑していたが、これも仕事なので誰も非難をしなかった。
「でも私は許せません。」
葉弓はそういうとまたデスクに向かって黙々と書類を書き始めた

同刻海鳴署駐車場
「……はぁ…女の子に叩かれたなて何年ぶりだ。」
藤木は一人ぼやきながら駐車場の一角で煙草を吸っていた。
「おろ…藤木くんどうしたん?」
「サボりは良くないですよ。藤木さん。」
「椎名さんに野々村さん…サボりじゃないですよ。一服中です。」
藤木は警邏から帰ってきたゆうひと小鳥に苦笑しながら答えた。
「そういえばなぜ頬に手形が付いているのですか?」
「そういえば…ははぁんさては女の子に振られたん?」
「ははは…それに近いかな生活安全課の手伝いを目撃されたからね。」
小鳥とゆうひの言葉に思わず藤木は苦笑するしかなかった。
「で本当の所は何しているん?」
「この前購入した車の納車を待っているんですよ。お、来た来た。」
「はわわ…凄いスポーツカー。」
「本当や…うちらのミニパトじゃ捕まえられん車や。」
警察署の入り口から、メタリックブルーに輝く車がゆっくりとこちらに向かってくると、ゆうひと小鳥が驚きの声を上げた。
「やっと手に入ったな…頭金と3年ローンで…BNR34スカイラインGT−Rが…」
藤木が感傷に浸っていると車は駐車スペースに重低音のエグゾーストノートを響かせながら停車した。
「でもドライブに誘う女の子居るんか?藤木君?」
「相変わらず痛いところを付くね…椎名さん。」
ゆうひの突っ込みに藤木はただそう答えるしかなかった。

「ここに居た。藤木さん、課長がミーティングするから部屋に集まるように呼んでいますよ。」
「わかった鷹城さん。」
納車が終わり再び駐車場で一服していると唯子が藤木を呼びに来ていた。
「いったい何のミーティングだ?事件も何にも無いだろうに。」
「さあ…唯子に言われてもわかりませんよ。」
「そりゃそうだ…まあちょっとしたことだろう。」
しばらく雑談をすると、二人は1課の部屋に入った。
「着たか…じゃ始めるとするか。瞳君、薫君報告を頼むよ。」
課長が声をかけると1課の面々は席に着き仕事人の顔に変わっていた。
「さきほどの聞き込みで入った情報なのですが、明日15時に海浜公園で薬物の取引が有るそうです。」
「うちらが徳川課長に頼まれて当たっていた山なのですが。あちらも忙しいようでうちらの方に協力してくれないかと。」
瞳と薫は今回の山のことを面々に細かく話していった。
「あと容疑者の顔写真はこの男です。相手は不明ですので、両方を取り押さえればベストですが、最悪片方を確保して
ください。」
「そうそう後で今回の張りこみのコンビを発表する。全員気を引き締めていけ。それと市民のいる公園だ、拳銃は使う
な。」
瞳の説明が終わると、課長はミーティングを締めた。

一時間後
「今回の張り込みは完全に周りに溶け込んで貰うからな。藤木君と葉弓君、それと耕介君と薫君、相川君と楓君。君ら
は恋人同士の真似をして張り込んでくれ。真雪君、瞳君、唯子君は公園でのんびりする市民に紛れてくれ。では解散。
明日に備えてゆっくり休んでくれ以上。」
課長は組み合わせを発表すると全員にゆっくりと休むように告げた
「藤木さん明日はよろしくお願いしますね…」
「ああ…」
葉弓は藤木に軽く告げると足早に部屋から出て行った。
「ああ…まださっきの根に持っているな、葉弓は…明日大丈夫なんだろうな、藤木。」
真雪は苦笑しながら藤木の顔を見た。
「まあ大丈夫じゃないですかね。」
藤木は多少不安を感じていたが大丈夫だろうと感じていた。
「あら。でも女の恨みは怖いわよ、藤木さん。」
「しかし…うちも始めてみたな葉弓さんの怒ったところ。藤木さん誤ったほうが。」
藤木の言葉の後、瞳と薫は少しからかうように話し掛けた。
「ははは…。」
藤木は苦笑するしかなかった。
「よーし。今日のことを忘れるのと明日の成功のために今夜は飲むぞ!!」
「真雪さん今夜は程々ですよ…うちらは明日大仕事なのですから。」
「わかってるわかってる。じゃあ寮に戻るぞ!!」
真雪の言葉に薫は突っ込みを入れたが、真雪ははぐらかす様に答えるだけだった。
「薫…真雪さんに何言っても飲むとなったら駄目だ。」
耕介は首を横に振りながら薫に話し掛けた。
「唯子も行きます。」
「俺も。」
葉弓を除いた1課の面々は続々と部屋を後にし、さざなみ寮へ足を運ぶのであった。

第三話前編完

あとがき
今晩は日中に閲覧の方は、今日は
第二話に続き第三話も前後編になってしまいました。もうちょっと文章をまとめられないといけないなと思う今日この頃
です。(汗
今回はまあちょっと気になりだした葉弓と朴念仁の藤木のちょっとした喧嘩からどうなるかを書き出しましたが、まだま
だ悪文です。まあ我慢して読んでいただければ幸いです。
それと前回とは違い重火器ではなく車ですが話には絡んでいません。これから絡むのかな…作者にも不明です。(マテ
話が進めばまた銃火器が登場しますのでよろしくお願いします。
次回は藤木と葉弓が急接近…(ぉ
では最後に簡単な注釈で今回はこの辺で…次回をお楽しみに。

注釈
BNR34(R34型GT−R)
10代目スカイラインベースのGT−R。公証では280PSとなっているが実際には320PS〜340PS出ているという歴
代最強のGT−R。ちなみに新車だと車体本体価格が約500万もする車である。(爆






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