たまには休日を……ゆうひの歌う愛の歌


Written by 小島


この作品はJANIS/ivoryより発売されている「とらいあんぐるハート2 さざなみ女子寮」を元ネタとしております。
この作品は、ネタばれを含んでいます。
この作品における方言はかなり適当です、こんなの関西弁(鹿児島弁)じゃないという方がいてもおおめに見ていただ
けると嬉しいです。
この作品は、私作のSS「たまには休日を……」シリーズのゆうひ視点のお話です、先に書いた耕介編、薫編、知佳編
の話を読んで頂けると少しは面白くなるかもしれません。






にゃーにゃーにゃーにゃーにゃー!
 最近買ったにゃんこ時計が鳴いている……あぁ、朝なんやね。………朝!!
 にゃんこ時計のスイッチを押して鳴き声を止める。
 着替えのために起き上がってベッドを出たところでふと気付く、そういえば日曜日やったねと。
 せっかくおきたんやし、顔を洗ってから朝御飯を食べよかな。
 まずは、着替えをしようかな?
 昨日のうちに決めておいた服にさっと着替える。
 今日の服はドレープ入りの白いブラウス、薄いオレンジと白のチェックのスカート、ブラウスの上には白いカーディガ
ン。
 今度は髪の手入れや、うちの髪は背中の真中ぐらいまで伸びているオレンジに近い赤茶色のウェーブヘアーや、寝
ているうちによく絡むから、朝はしっかり梳かさんと酷いことになってまう。
「♪ルルルルルル〜 ルルルルルーールルー……」
 髪を梳かしながら歌を歌う、今日はええ天気やから、自然と口から歌が溢れ出す。
「♪ルルルールル ルルルルルルル ルルル ルルル……」
 一通り梳かし終わったら、フェイスタオルを準備して、洗面所へレッツゴウや!!


 洗面所には先客が2人、愛さんと知佳ちゃんや。
「おはようさん、2人とも」
「おはようございます」
 愛さんはいつもの笑顔で挨拶を返してきてくれる。今日の愛さんは白いトレーナーといつもの赤いスカートを着てい
る。
 知佳ちゃんは、顔を洗っている最中で返事できへんから手を振って挨拶をしている。
 うちは知佳ちゃんが洗顔が終わるまで、愛さんとお話しよと思っとったら、知佳ちゃんが急いで終わらせてくれたの
か、少し袖口を濡らした状態で洗面所をあけてくれた、今日の知佳ちゃんは薄い青のスカートと黄緑色のトレーナーを
着ている。
「知佳ちゃんそんなん急がんでも良かったのに」
 うちは知佳ちゃんの頭を軽くなでてから顔を洗い始めた。
 うちの洗顔が終わるまで2人はまっとってくれたので、3人でキッチンへ向かう。
 愛さんと並んで歩きながら、にゃんこ時計の話をしているとキッチンにすぐについた。



「耕介さん、おはようございます」
「お兄ちゃん、おはよー」
「耕介君、おはよう、今日もええ天気やね」
 キッチンに入ってすぐ三人そろって挨拶。こんな風にしてると、あぁさざなみ寮に帰ってきたんやと感じる。
 耕介君は、料理中みたいや、ガスレンジの前に立っている。
 その大きな背中を見るとなんやわからんけど、安心している自分がいる。
「おはよう!!」
 耕介君はちょっとだけ振り向いて笑顔で挨拶をするとすぐに顔を戻す。真剣だけどなんやか楽しそうな表情。きっとう
ちが歌ってる時もこんな感じの表情をするに間違いあらへんと思える表情や。
「耕介さん、お休みなのにすいません」
「あはは、いいですよ、好きでやってんですから」
 愛さんが少し曇った表情で耕介君を見る。耕介君は振り返りもせずに返事をする。
 耕介君何事にも一所懸命なのはいいけど、たまにはガス抜きをせなあかんよ。
 そうこうしているうちに知佳ちゃんがいつものようにお手伝いを始める。
「お兄ちゃん、手伝うね」
「ありがとう知佳。じゃあ、これを盛り付けて、テーブルに運んでくれ」
 知佳ちゃんが、耕介君に頼まれたのか焼き魚をお皿に盛り付けていく。
「ゆうひちゃん、真雪さんを呼んできますね」
「愛さん、了解や」
 それじゃ、うちも手伝わな。
「あ、うちも手伝うな」
「あぁ、ありがと、もう終わりだから、運ぶの手伝ってくれ」
 耕介君からは、レスポンス良く返事がくる。知佳ちゃん曰く魂の兄弟らしいから、こんなことができるんやろうか?
 そんなことを考えながら、まずは知佳ちゃんが盛り付けた鯵の干物から運び始める。
 愛さんは、真雪さんを連れてキッチンに戻ってきたところみたいやね。


 お風呂に入っていたらしい薫ちゃんがキッチンに入ってきて、お互いに挨拶を交わした後、食事が始める。
 美緒ちゃん達がいないせいか食事はいつもよりは静かに進む。途中真雪さんが胸のことで薫ちゃんをからかった時、
 知佳ちゃんがやけに落ちこんだ顔をしていた。まぁ、年頃やからやっぱり気になるんやろうな。
 食事が終わると昨日徹夜したらしい真雪さんは部屋に戻っていき、残ったメンバーに耕介君がお茶を入れ始める。
 やぁ、やっぱり、手際がええなぁ。うちは耕介君の手元を見て感嘆して、それから回りを見る。
 愛さんは、にこにこと笑って薫ちゃんを見ている。その薫ちゃんは常に視線で耕介君を追っている。可愛ええなぁ、そ
して知佳ちゃんは何か考え事をしているみたいや。
 何を考えてるんやろな?そう思って知佳ちゃんを見てると考え事がまとまったのか急に顔が明るくなる。
「ねぇ、お兄ちゃん?」
「何だ、知佳?」
「あのね、お兄ちゃんが食事を用意してくれたり、掃除をしてくれたりするのは嬉しいんだけど、ここのところ、日曜日で
もお兄ちゃん働いているでしょ。たまにはちゃんと休まないと身体を壊しちゃうよ」
 耕介君は困ったような表情をしてる。きっと知佳ちゃんが心配してくれる事は嬉しいんだけど、寮内の仕事で気になる
事があるんやな。
「そうですよ、耕介さん。日曜日は耕介さんお休みなんだから、ちゃんと身体を休めないと」
「いや、別に仕事でしてる訳じゃないですよ、料理を作るのは好きだし、みんなの分を作るのは、自分の分だけ作ると材
料がもったいないからですよ」
 愛さんもさっき心配そうな顔してたもんな。よしここはうちも知佳ちゃんの味方につこか!!
「でも耕介君、料理だけじゃないやろ、他にも日曜なのに皆の洗濯したり、寮を掃除していたりするやろ?」
 知佳ちゃんが目線でありがとう光線を送ってくる。うちも目線でどういたしまして光線を返す。
「……………」
 さすがに耕介君も言い返せないみたいやな。
「それに耕介さん、私、前にも日曜はお休みなんだから、しっかり休んでくださいって言いましたよね?」
「………確かに、そう言われたことがありました、はい」
 愛さん本当に心配してたんやなぁ。ここはやっぱり耕介くんは休ませなあかんな。
「耕介さん、すぐに無理をしていたうちが言うのもなんですが、休養はしっかり取らないとだめですよ」
 薫ちゃんも心配やったみたいやね。それにしても耕介君たまにはちゃんと薫ちゃんとデートせなあかんよ。
「そうだ、耕介様は薫と婚約までしているのに、ほとんどデートというものをしていません。たまには、薫と二人で出かけ
てきたらどうですか?」
 十六夜さんええ事言うな。ここは可愛ええ可愛ええ薫ちゃんのために一肌脱がな。
「そうそう、十六夜さんの言う通り。お兄ちゃんが今日やろうとしていたことはわたしが代わりにやるから」
 知佳ちゃんその我が意を得たりって表情はちょっと怖いからやめた方がええよ(汗)でも真赤な顔して俯いてる薫ちゃ
ん可愛ええな!!
「あっ、知佳ちゃんええこと言うな。耕介君にはいつもお世話になっとるし、よし、うちも知佳ちゃんといっしょにやるな」
 ここは、知佳ちゃんの作戦にのっとかなあかんな。
「そうですね、私も手伝いますから、薫さんとデート楽しんできてくださいね。」
 うん、愛さんもやってくれるんか?これだけいれば大丈夫やね。後は、薫ちゃんの説得やね。
「ちょっと待ってください、耕介さんがお休みするのはよかですが、うちだってさざなみ寮の一員です、うちも耕介さんの
仕事の手伝いをします」
 真面目な薫ちゃんらしい発言やね。でもたまにははめを外すべきやとうちは思うとるんよ。
「あのね薫さん、薫さんにはお兄ちゃんを寮の外に連れていってほしいんだ。お兄ちゃんの事だから、寮に居たらきっと
何か仕事を見つけて始めちゃうから」
 知佳ちゃんのいいわけはうまいなぁ。きっと予想してたんやろうけど……やっぱその表情怖いからやめた方がええよ
(汗)
「でも………」
 ここはうちの出番かな?
「薫ちゃん、まあ、ええやないの。薫ちゃんだって大学の剣道部とか仕事とかでなかなか遊んだりできないんだしたまに
は、はめをはずしても?」
 薫ちゃんもやっと頷いてくれたな。………後で真雪さんと作戦練らんとね。
「それじゃ、二人とも着替えたら出かけちゃってね。後はわたし達でやっちゃうから」
 知佳ちゃんが言って締め括るとお茶会はおしまいになった。


 うちは、まず薫ちゃんのコーディネイトをはじめる。薫ちゃんは素材がええからやりがいがあるんよ。
 薫ちゃんは、凛とした雰囲気のある清楚な娘やから、清楚で可愛ええ感じにまとめなあかんね。シャツは水色の半そ
でブラウス、スカートは紺のフレアスカートをうちが貸してあげた。薫ちゃんはあんまりスカートを持ってなかったから。髪
型は、髪を下ろしたほうが大人っぽいからええと思ったんやけど、髪は白いリボンでポニーテールにまとめている。でも
理由がまた可愛ええから思わず許してもうた。耕介君以外の男には見せたくないか。本当に可愛ええね。
「これなら耕介君もいちころや」
 そう言ってあげたら真赤になって恥ずかしがってた。本当に可愛ええ娘やね、薫ちゃんは。
「あっ、薫ちゃん下着の洗濯物ある?」
「はい、少し待ってください……これだけです」
「うん、確かに預かったな」



 耕介君と薫ちゃんが出かけていって、うち達3人は仕事を分担する事にした。
「うーんと、お兄ちゃんから頼まれた仕事は…キッチンのあとかたづけ、庭掃除、寮内の掃除、洗濯を頼まれたけど…
…どうしよっか?」
 うちは何をしようかな?
「それじゃあ、わたしがお庭をお掃除しますね」
 愛さんはよく庭掃除をしてるからそれがええかもな。
「うちは……………知佳ちゃんが決めてな」
 結局うちは、決まらんかったから知佳ちゃんに聞いたら、知佳ちゃんは少し考えた後こう言った。
「ゆうひちゃん寮の中のお掃除やってくれる?」
「ええよ」
「それじゃあ、始めよっか!!」



 うちはまずリビングから掃除を始める事にした。
 知佳ちゃんはまず始めにキッチンのあとかたづけを始めたみたいや。愛さんは庭で、掃き掃除をしているなんだか嬉
しそうやね。
 花壇のあたりには十六夜さんと御架月君が姉弟仲良く話しているみたいや。
 窓を開けた後、部屋中に軽くはたきをかける。
「♪君と歩く 夜道を 空で見てる星たち
  風に吹かれ よりそう 夢にまでも見た瞬間(とき)
  語り合う言葉は 少しぎこちないけど
  笑顔で見詰め合えば それだけでいい」
 はたきをかけている途中キッチンにいる知佳ちゃんが歌い始めた。
 随分前に知佳ちゃんと二人で出かけた時、駅前で二人して聞いていた歌や。うちも知佳ちゃんに合わせて歌いだす。
 歌を歌いながらはたきをかけて、次に掃除機をかける、以前真雪さんが掃除機の音がうるさいって怒った事があって
(耕介君がボコボコにされた)、その後耕介君が買ってきた音の静かな掃除機だ。
 ソファの下や、テレビと壁の隙間まで満遍なく掃除機をかける。


 次は、廊下やな。
 寮の長い廊下をさっきと同じ手順で掃除を始める。
 はたきをかけ終わり、掃除機をかけ始めた頃知佳ちゃんが玄関から入ってきた。愛さんに用事があったんやろか?
「あっ、ゆうひちゃん」
「何?知佳ちゃん」
「これから洗濯するけど、下着とかある?」
「うん、今もってくるな。」
 うちの下着と、さっき預かった薫ちゃんの下着を部屋に取りに戻る。さっきは言わへんかったけど薫ちゃんはもう少し
下着に気を使った方がええね。その耕介君もその方が喜ぶと思うしな(赤面)。
 とって帰って、知佳ちゃんに渡すと知佳ちゃんは洗濯機の方へ歩いていった。
 うちは、再び掃除機をかけ始める。
 自然に口から歌が溢れ出す。何年か前のドラマの主題歌だった歌で、少女の恋を優しく歌った歌で、当時はよく歌っ
た歌だったから久しぶりに歌うと懐かしい感じがした。


 キッチンや、洗面所などを丁寧に掃除した後、フローリングの場所を雑巾がけをする。
 この間にも口からは次々と歌が溢れ出す。
 でも、それはなぜか恋する女性の気持ちを歌った歌ばかりやった。
 ちょっと、不思議だったけどすぐにわかった。うちは薫ちゃんが羨ましいんだって気付いたんや。
 そう、自分を全部ゆだねられる相手がいる薫ちゃんが羨ましいんや。
 そう思いつくとなんや心の中がスッキリした気分や。
 そうすると、ますますうちの口からは歌が溢れ出してくる。これは薫ちゃんを祝福する歌。そしてこれから見つかるは
ずのうちの恋を応援する歌や。



 そうこうしているうちに、フローリングの雑巾がけが終わり、窓の桟等を拭き終わったら次は階段や。
 さっきと同じようにはたきをかけてから、箒を使って階段を掃き下ろしていく。
 下まで降りた後掃除機で埃を吸い取ったら雑巾をかけて、これで一階の掃除は終わりや。
 それじゃあ2階の掃除をせな。


 2階に来てからうちは声を落として歌う事にする。真雪さん怖いから。
 そのことを注意しながら、まずは2階の廊下の掃除を始める。はたきをかけた後、掃除機をかけていると、知佳ちゃ
んが洗濯を干し始めた。
 うちはこの時ちょうどさっき一緒に歌った歌の2番を歌っていたところやった。
「♪君と会った あの場所 いまも覚えているよ
  犬の散歩 していた 落ち葉の舞う公園」
 知佳ちゃんも一緒に歌い始めたみたいや。やっぱり誰かと一緒に歌うのはええなぁ。
 スクールに行って一番感じたことや。後は英語ができんでも何とかなるなとか、歌は万国共通の言語なんやなとかも
強く感じた事やったけど。
「♪君の犬に吠えられ 卵落とし割ったね
  途方にくれた僕に 君が声かけた」


 廊下の掃除が終わったら今度は図書室、ここが一番の曲者やね。
 なにせたくさんの本棚と大量の本があるし、本の保管のために窓を開けないから埃がたまりやすい。
 うちは、窓を開けてからはたきをかけ始める。どうやら定期的に掃除をしてあったみたいで思ったよりも埃が少ない、
耕介君感謝や。
 その後、掃除機をかけて……少し吸い込みが悪いみたいやけど……大丈夫やろ。
 さて、後は雑巾をかけるだけやな。


 うちが2階の掃除を終わって降りてくると知佳ちゃんが料理を作り始めるところやった。
「あっ、ゆうひちゃん、今日のお昼はオムライスと、野菜のコンソメスープだよ」
「オムライスかー、けっこう好きやね」
「あっ、良かった。わたしの好みで決めちゃったから、少し心配だったんだ」
 よっしゃ、うちも手伝いますか!!
「知佳ちゃん、うちも手伝うな」
「ありがとう、ゆうひちゃん」
「ええんよ、だってうちだって食べるんやから。」
「じゃあ、大根の皮をむいて、5人分ぐらいの分量ので扇に切り分けてくれる?」
「5人分?4人やないの?」
「うん、リスティが午後の検査がキャンセルになったから寮でご飯を食べるって」
「そっか」
 うちたちは、材料を切りながら話をする。
 切り終わったら、先に適量をはかって沸かしていたお湯に白菜、大根、たまねぎの順に入れて、コンソメで味付けす
る。
 ここでリスティが帰ってきた。
「おかえり、リスティ!!」
「おかえりな、リスティ」
「ただいま、ハイ、頼まれたもの」
「リスティ、ありがとう。そうだ愛おねえちゃん呼んできてくれる?もうすぐご飯だよって」
「Yes」
 リスティが出ていった後は、うちは、知佳ちゃんに頼まれて、鶏肉を軽くゆでていると、真雪さんが下りてくる。
「あー、腹減った、耕介ー……あれ?」
 真雪さんがお腹をぼりぼり掻きながら質問をしてくる(どうでもいいけど真雪さんまたおやじ度アップしたみたいや
ね)。
「知佳、耕介は?」
「今日はわたし達が、強引に薫さんとデートするように仕向けたの」
 それを聞いた真雪さんの顔があきらかに悪巧みをしている表情を作る。後でうちも一口乗らせてもらおっと。
 知佳ちゃんはなんだか沈痛な表情をしながらスープに味付けしている。
 次に知佳ちゃんはチキンライスを作り始めたので、うちは隣で材料を渡したりして補佐する。
 手を洗ってから戻ってきたらしい愛さんと、リスティが入ってくる。
 ちなみに真雪さんは昼間っからビールを飲んでいるらしい。
 知佳ちゃんと二人でならんで、オムライスを完成させていく。
 実は、オムライスはうちの得意料理のひとつ。手際よく作れたんやけど、知佳ちゃんは随分と驚いてたなぁ。
 うちは最後に作ったオムライスの皿を持ち、知佳ちゃんがスープの入ったお鍋を持ってテーブルへ向かう。
 知佳ちゃんがスープを盛り付けてくれた後、昼食の始まりや。


 お昼の最中、うちは真雪さんとリスティの二人と薫ちゃんが帰ってきたときにする悪戯の相談をする。
「やっぱ、何処へいってきたか聞き出さなくちゃな」
「Yes.それとキスの1つもしてきたか聞き出さなくちゃ」
 真雪さんもリスティもこうゆう所はそっくりや。
「いや、今日はうちのコーディネイトで行ったから耕介君もたまらなくなって……ことがあるかもしれへんで」
「ナイスだ、ゆうひ!!おめーはやっぱり役に立つなー」
 真雪さんにこういうところで誉められると、自分が悪人に思えてくるのはなぜやろ?
 こんな話をしているうちに昼食が終わる。知佳ちゃんがこっちを見ては気の毒そうな表情をして溜息をついていたの
が印象的やった。


 午後からは、愛さんは、庭の草むしりをする言うて再び庭へ。リスティはその手伝いをする言うてやっぱり外へ。知佳
ちゃんはお昼の後かたづけを始めた。
 真雪さんはお仕事をする言うてまたお部屋に、大変やね漫画家さんって。
 うちは自分の部屋をかたづけよ、思うて2階の自分の部屋に掃除機と雑巾、はたきを持ってもどる。
 こんなときもうちの口からは歌が溢れ出てくる。まるで歌を覚えたての子供みたいに純粋にただ歌う事を楽しんでいる
自分がいる。
 こんな自分は久しぶりや。そしてやっぱり恋を歌う歌がその大半を占めている。きっといつかうちにも良い人が現れる
 そんな気分になってくる。うちはきっと耕介君が好きやったんやと思う。そう、自分でも気付きはしなかったけど確かに
好きやった。今になって、失恋の痛手から回復してからになって気付くのは遅すぎる。ほんまうちは恋愛は苦手なんや
ね。
 でも、うちは耕介君に恋したことで成長した。それまであまり得意じゃなかった恋の歌が上手く歌えるようになった。だ
から今は歌おう恋の歌を。そしていつか新しい恋が芽生えるまで大切にしまっておこうこの恋の思い出を。それが一番
ええとうちは思うとる。


 うちは歌を歌いながら掃除を始める。窓をあけてはたきをかける。窓の外では愛さんとリスティが仲良く草むしりをして
いる。そういえば、十六夜さんと御架月君の姿を午前中リビングの掃除の時見かけて以来見ない。お昼のときも戻って
こなかったけど何処へ行ったんやろか?
続いて窓の桟を拭く。うちがいない間も定期的に耕介君が掃除してくれたみたいやね。ほとんど汚れていない。耕介君
感謝や。
 次にピアノを専用のクロスで吹き上げた後、調律が狂ってないか確かめる。………うん大丈夫みたいや。
 後は、掃除機をかけるだけや。
 うーん、やっぱり吸込みが悪いなぁ…………どないしたんやろ?
 何や?この窓みたいの……ゴミパック取替え表示……あかん、真赤や、これはゴミパックいうの換えなぁあかんみたい
やね。
 とにかくそのゴミパックいうのは何処にあるんやろ?やっぱり掃除用具を入れるところやろうか?
 1階に戻って探してみる、おっ、あったあった。
 さて、換えてみよか…まずは前のやつを取り出して……次に新しいやつを……どう入れるんやろ?
 うーんと、おっ書いてあった…フンフン…こうやな…向きはこうやな、それじゃあ入れてみよか……おかしいはいらへ
ん。
 …………だめや、何度やってもはいらへん……よし、こうなったらこの定規を使って隙間を広げよか。
 よし、いっちょいきますか。エイッ!!べき!……あれ、折れちゃった……「ハハ」、破片がフィルターみたいな部品をずた
ずたにしとるね…これはもう修復できそうもないね。手を引いたとき扇風機みたいなプロペラも折っちゃったみたいやし
……耕介君ごめん!!

「イヤーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!ゴキブリーーーーーーーーーーーーー!!」
 うちが呆然としていると突然、叫び声と共にものすごい衝撃がうちに襲い掛かる。び、びっくりした。
 な、何や今の知佳ちゃんの声やったみたいやけど?とにかく行ってみよか。
 うちが部屋を出るのと同時に真雪さんも部屋を出てくる……怖っ、随分と怒ってるみたいや。
 とにかく1階を目指す……知佳ちゃんは……見るも無残な姿の洗濯機の前で呆然としていた。



 その後うち達は、さんざん真雪さんに怒られた……。
 いやー知佳ちゃんをかばおうとして、掃除機壊した事言うたら、うちまでこないな目にあうとわ……もしかしてうち墓穴
掘った?
 愛さんは、最初のうちかばってくれていたけど、通用しないと思ったらしくリスティといっしょに草むしりに戻っていった。
 そうやって二人で真雪さんに怒られているうちに時間は過ぎて…2時間近く怒った後真雪さんは仕事に戻っていった。
 怒られていたリビングの床の上でうち達が疲れ果てて、座ってボーっとしとると電話がかかってきた。
 知佳ちゃんがのろのろと電話に出る。
「もしもしさざなみ寮ですけど?」
『…………』
「あっ、お兄ちゃんどうしたの?」
『…………』
「うーん、特にないよ。」
『…………』
「うん、待ってる、じゃあまた後で」
『…………』
 どうも耕介君からみたいや……そうや、耕介君に謝っておくんやった。



 少し休んでから、知佳ちゃんが夕飯のしたくを始める。
 うちは、まずは部屋をかたづける為に2階へと上がっていく。
 はぁー、耕介君にどう謝ろうか。


 部屋の片づけが終わった後1階に下りて、サラダを作るためにレタス、トマト、きゅうりを冷蔵庫から出す。
 知佳ちゃんは後は煮込むだけでカレーができるみたいで、福神漬けなどを用意しているところや。
 どうやら、美緒ちゃんとみなみちゃんも帰ってきているみたいやし、手を洗いに行く愛さん達にも廊下で会った。後は
耕介君達だけやな。
 そして、うちはやっぱり歌を歌う、こんなにも素敵な家族がいることが嬉しいから。
 夕飯の用意がだいたい終わったところで、耕介君達が帰ってきた。
「ただいまー」
「ただいま戻りました」






おまけ
 帰ってきた耕介君に、掃除機を壊した事を謝るとすぐに薫ちゃんの元に行く。
 知佳ちゃん後は任せたで。
「さあ、薫ちゃん今日は何処に言ってきたんや?」
「薫、素直に吐いたほうが良い、楽になれるよ」
「神咲ー、耕介とキスぐらいはしてきたんだろ?正直に言え」
 ごめんな、薫ちゃんでもちょっとぐらい幸せを分けてもらってもええやろ?








=================================================
あとがき

こんにちは、「たまには……」シリーズの4作目をお届けします。
ゆうひ編、どうだったでしょうか?
関西弁をよく知らない私が書いたせいで、おかしな表現が多々あると思いますがそこはどうかご勘弁を。
今回はゆうひの歌について少し掘り下げてみました、もちろんこれは「たまには……」の中だけの設定ですのでゲーム
のゆうひと少し違うんじゃないかとお思いの方もいらっしゃられると思います。
でもそこはそれ、こういうゆうひもありだと思ってくださると私もとてもありがたいです。

さて、今回も駄文に付き合っていただきありがとうございます。「たまには休日を……」シリーズは後、愛編、真雪編、リ
スティ編を予定しています。最近来た電波のせいで真一郎とさくらのデート編も書くかもしれません(これは未定)。
ファンの皆様には残念でしょうけど、みなみ編、美緒編、十六夜編、御架月編はありません、申し訳ありません。
これは、みなみ編、美緒編はあまりにもさざなみ寮との接点がないためで、十六夜編や、御架月編は内容が薄くなって
しまいそうだからです。
この先、リスティ編、愛編と書き進むうちにアイデアが出れば、十六夜編ぐらいは出すかもしれませんけど。

なお、今回作中で知佳とゆうひが歌っている歌は、高校時代私がギターをやっていた時があって、そのとき創った物を
引っ張り出してきたものです。
かなり恥ずかしいので触れないでいただけると私も嬉しいです。

さて今回もこの駄文をHPに掲載をお許しくださった管理人様に深い感謝の念をささげつつ終わりたいと思います。
どうもありがとうございました。

それではまたお会いしましょう、アディオス。

メールアドレス:mk_kojima2@yahoo.co.jp

戻る
戻る