Written by 小島
この作品はJANIS/ivoryより発売されている「とらいあんぐるハート2 さざなみ女子寮」を元ネタとしております。
この作品は、ネタばれを含んでいます。
この作品における方言はかなり適当です、こんなの関西弁(鹿児島弁)じゃないという方がいてもおおめに見ていただ
けると嬉しいです。
この作品は、私作のSS「たまには休日を……」シリーズの知佳視点のお話です、先に書いた耕介編、薫編の話を読ん
で頂けると少しは面白くなるかもしれません。
PiPiPiPiPiPi………カチンッ!
目覚まし時計をきってから、ベッドの上で座り込んで少しボーっとする。
だんだんと頭の中で思考が鮮明になっていき、二分くらいで完全に目が覚めるので、それから着替え始める。
まずは下着、たとえ人に見せる事はないといってもそこはそれ、可愛いものを着けたいと思うのは女の子の当然の心
理だと思う。
着替えや、お風呂に入るときにいつも思うのは、まゆおねえちゃんとわたしの胸の事、そう、まゆおねえちゃんは所謂
巨乳なのに対してわたしは………言いたくないが貧乳だ。
同じ血を引く姉妹なのにこの差は何なのか、あまり人には言わないけどこれはわたしのコンプレックスの一つだ。
あんまりわが身を嘆いても仕方ないので、少し考えてから、先月買ってきてまだ二回しか着けたことのないブルーの
上下セットを選ぶ。レースがいっぱいついていて可愛いので結構気に入っている。
次にスカートと部屋着に使っているトレーナーを着てから、今度は鏡の前に座り、髪を丁寧に梳かし始める。
わたしの髪は、ほとんど金髪といっていいくらい明るい色をした栗色のベリーロングヘアー、長い分手入れは大変だ
けど、ひそかな自慢でもあるこの髪を手入れするのは少しも苦にならなかった。
一通り梳かし終わって、いつものように二つに分けて髪の先端のほうでゴムを使ってまとめる。フェイスタオルを準備
して、さあ、洗面所へ行こっと!!
「愛おねえちゃん、おはよう」
洗面所には先に愛おねえちゃんがいた、顔を洗ったばかりなのかまだ少しぬれている顔をフェイスタオルでふきなが
ら笑顔を見せてくれる。
「おはよう、知佳ちゃん」
わたしは愛おねえちゃんが譲ってくれた洗面台で顔を洗いながら、愛おねえちゃんの笑顔ってどう表現していいかわ
からないけどすごく心が和むんだよね、なんて事を考えていたら、後ろからゆうひちゃんの声がした。
「おはようさん、二人とも」
わたしは、顔を洗う速度を上げて、急いでゆうひちゃんに場所を譲る。
「知佳ちゃん、そんなん急がんでも良かったのに」
そうわらってゆうひちゃんは、わたしの頭を軽くなでてから顔を洗い始めた。
ゆうひちゃんが洗顔を済ますのを待ってからキッチンへと向かうとき、ちらりと後ろを歩く二人を見る、今日の愛おね
えちゃんは白いトレーナーといつもの赤いスカート、ゆうひちゃんはドレープのはいた大人っぽい白のブラウスの上に白 いカーディガン、そして薄いオレンジと白のチェックのスカートを上手に着こなしている。
二人とも、美人でスタイル抜群なんだけど、愛おねえちゃんは素朴な感じの天然がすこし入っているけどお嬢様系の
美人で、ゆうひちゃんはゴージャス系の美人、お兄ちゃんはわたしが大人になった時、愛おねえちゃんに似た美人にな るって言ってくれたけど、わたしは難しいと思う、だって…その…胸が……。
二人から視線を外す、わたしと違って大きく弾むものを見て、悲しくなったから………、ガンバレわたし!!
「耕介さん、おはようございます」
「お兄ちゃん、おはよー」
「耕介君、おはよう、今日もええ天気やね」
キッチンに入ってすぐ三人そろって挨拶、やっぱり挨拶は人間関係の基本だと思う。
お兄ちゃんは、料理中みたいで、ガスレンジの前に立っている。
「おはよう!!」
ちょっとだけ振り向いて笑って挨拶をするとすぐに顔を戻す、料理をしているときのお兄ちゃんは、いつも真剣だけど
どことなく楽しそうに見える。
実はお兄ちゃんが見せる表情の中で、あったかい笑顔の次にわたしが好きな表情だ。
「耕介さん、お休みなのにすいません」
「あはは、いいですよ、好きでやってんですから」
愛おねえちゃんが、少し曇った表情で、お兄ちゃんを見るけど、振り返りもせずに返事をしたお兄ちゃんはきっと回り
の人がどれだけお兄ちゃんを頼っていて、同時に心配しているか知らないんだと思う。
お兄ちゃんを責めるような、そん考えを振り払ってわたしはお兄ちゃんに明るく声を掛ける。
「お兄ちゃん、手伝うね」
「ありがとう知佳。じゃあ、これを盛り付けて、テーブルに運んでくれ」
今日の朝食のメニューは和風らしい、白いご飯と蜆のみそしる、焼き魚に鯵の干物、茄子の浅漬け、オカラの一汁三
菜だ。
わたしはお兄ちゃんに言われた通り、鯵の干物をお皿に盛り付けていく。
「あ、うちも手伝うな」
「あぁ、ありがと、もう終わりだから、運ぶの手伝ってくれ」
そう言われたゆうひちゃんは、まず、わたしが盛り付けた鯵の干物を運び始めた。
愛おねえちゃんは……姿がない、どこへ行ったんだろうと思ったら、まゆおねえちゃんを連れてキッチンに入ってき
た。
お風呂に入っていたらしい薫さんがキッチンに入ってきて、お互いに挨拶を交わした後、食事を始める。
食事はいつもよりは静かに、でもきっと何処の家より騒がしく進んでいく、まゆおねえちゃんが胸のことで薫さんをから
かったときは、その薫さんよりも小さなわたしっていったい何なのだろうかと、真剣に落ち込んでしまった(みなみちゃん やリスティがいたらお互い励ましあっただろう)。
食事が終わると昨日徹夜したらしい(もう少し健康に気を使ってくれないかなぁ)まゆおねえちゃんは部屋に戻ってい
き、残ったわたし達にお兄ちゃんはお茶を淹れる準備をしている。
それを見ながら私はちょっと罪悪感が浮かんでいた、さっきはお兄ちゃんを責めるようなことを考えていたけど、でも
結局今こうしてお兄ちゃんを頼ってしまっている。そして、今まであまり疑問に思わないでいたけど、お兄ちゃんは恋人 の薫さんとデートをしている様子がない。お兄ちゃんは鈍そうだからそうでもないと思うけど薫さんは少し歯がゆく思って いるんじゃないかな?
ちらりと、薫さんに目を向けると、その視線は常にお兄ちゃんを追っているのがわかる。
そういえば、昨日薫さんが愛おねえちゃんと話しているのを見かけたけど、その時今日は何もないからゆっくりしてよ
うかと思っているような事を言っていたような気が……。
そうだ、いつも頼りっきりのお兄ちゃんに少し恩返ししよう!!
「ねぇ、お兄ちゃん?」
「何だ、知佳?」
「あのね、お兄ちゃんが食事を用意してくれたり、掃除をしてくれたりするのは嬉しいんだけど、ここのところ、日曜日で
もお兄ちゃん働いているでしょ。たまにはちゃんと休まないと身体を壊しちゃうよ」
お兄ちゃんはちょっと困ったような表情をしている。きっと今日も寮内でする仕事を見つけた後なんだと思う。
「そうですよ、耕介さん。日曜日は耕介さんお休みなんだから、ちゃんと身体を休めないと」
「いや、別に仕事でしてる訳じゃないですよ。料理を作るのは好きだし、みんなの分を作るのは、自分の分だけ作ると材
料がもったいないからですよ」
愛おねえちゃんはずっとお兄ちゃんを心配しているみたいだから、わたしの援護射撃をしてくれた。でもお兄ちゃん、
その程度の言い訳じゃダメだよ……ここはコンボを決めないとね。
「でも耕介君、料理だけじゃないやろ。他にも日曜なのに皆の洗濯したり、寮を掃除していたりするやろ?」
今度はゆうひちゃんが味方になってくれた、ありがとうゆうひちゃん(喜)。
「……………」
お兄ちゃんは言い返せないみたい。でもまだ何か言いたそうだから、追い討ち続行!!
「それに耕介さん、私、前にも日曜はお休みなんだから、しっかり休んでくださいって言いましたよね?」
「………確かに、そう言われたことがありました、はい」
愛おねえちゃんナイスな追い討ちだよ!!お兄ちゃんは既にタジタジみたいだからここでフィニッシュを!!
「耕介さん、すぐに無理をしていたうちが言うのもなんですが、休養はしっかり取らないとだめですよ」
やった、薫さんが止めの一撃を入れてくれるなんて。これは私たちが言うよりも大ダメージだよね☆
「そうだ、耕介様は薫と婚約までしているのに、ほとんどデートというものをしていません。たまには、薫と二人で出かけ
てきたらどうですか?」
十六夜さん、なんてナイスな発言、そう私もそう言おうかと思っていたんだよ!!
「そうそう、十六夜さんの言う通り。お兄ちゃんが今日やろうとしていたことはわたしが代わりにやるから」
お兄ちゃんも顔が赤いけど、薫さんは首まで真赤になってうつむいてる、可愛い!!
「あっ、知佳ちゃんええこと言うな。耕介君にはいつもお世話になっとるし、よし、うちも知佳ちゃんといっしょにやるな」
「そうですね、私も手伝いますから、薫さんとデート楽しんできてくださいね」
あっ、嬉しい、一人でやるつもりだったけど手伝ってもらえると本当に助かるよね、愛おねえちゃん、ゆうひちゃんあり
がとう。
そう浸っていると、薫さんが反論してきた。
「ちょっと待ってください。耕介さんがお休みするのはよかですが、うちだってさざなみ寮の一員です。うちも耕介さんの
仕事の手伝いをします」
薫さんならこういうと思ったから言い訳は既に準備してあるのだよ、クックックッ……(なんか悪役みたいだねわたし)
「あのね薫さん、薫さんにはお兄ちゃんを寮の外に連れていってほしいんだ。お兄ちゃんの事だから、寮に居たらきっと
何か仕事を見つけて始めちゃうから」
「でも………」
うーん、こう言ってもダメみたい……どうやって説得しようかな?
「薫ちゃん、まあ、ええやないの。薫ちゃんだって大学の剣道部とか仕事とかでなかなか遊んだりできないんだし、たま
にははめをはずしても?」
薫さんはやっと頷いてくれた(顔を真赤にしていて本当に可愛いな薫さん)、ゆうひちゃん本当に頼りになる!!……
…きっと半分は面白がってるだけだろうけど。
「それじゃ、二人とも着替えたら出かけちゃってね。後はわたし達でやっちゃうから」
わたしがそう締め括るとお茶会は終了となった。
お兄ちゃんと薫さんが出かけていって(ゆうひちゃんが薫さんの服を見立ててたみたいだけど、すごく可愛かったな薫
さん)、わたし達三人は仕事を分担する事にした。
「うーんと、お兄ちゃんから頼まれた仕事は…キッチンのあとかたづけ(お兄ちゃんは『これぐらいはさせてくれ』って言っ
たけどわたしが却下した)、庭掃除、寮内の掃除、洗濯を頼まれたけど……どうしよっか?」
「それじゃあ、わたしがお庭をお掃除しますね」
愛おねえちゃんはよく庭掃除をやっているみたいだし妥当かな。
「うちは……………知佳ちゃんが決めてな」
ゆうひちゃんは基本的に機械類が苦手なんだよねぇ……うーん、洗濯は、基本的に洗濯機がやってくれるからあんま
り量のないあとかたづけとセットにして、あっ、御飯を作るのもここにして……そうすると……どっちにしても機械類を扱 うんだよね……
「ゆうひちゃん寮の中のお掃除やってくれる?」
「ええよ」
「それじゃあ、始めよっか!!」
わたしはまず始めにキッチンのあとかたづけを始めた。
ゆうひちゃんはリビングから掃除を始めたみたい…愛おねえちゃんは外にてここからじゃ様子はわからない。
「♪君と歩く 夜道を 空で見てる星たち
風に吹かれ よりそう 夢にまでも見た瞬間(とき)
語り合う言葉は 少しぎこちないけど
笑顔で見詰め合えば それだけでいい」
随分前にゆうひちゃんと二人で出かけた時、駅前でこの歌を歌っていた人がいて、優しい感じの歌詞が気に入ってず
っと二人で聞いていたことがあった。
歌を歌いながら洗い物をしていると、ゆうひちゃんも覚えていたみたいで、一緒に歌ってくれた。
一通り洗い物が終わったら、いつもお兄ちゃんがやっているようにキッチン全体を拭きあげて、キッチンのあとかたづ
けはおしまい。
次は、洗濯をしよう!!
あっ、時間は…まだ、10時半、お昼までには洗濯が終わりそうかな?
洗濯物を入れる籠からそのまま洗濯機に入れて洗う物、網に入れて洗う物を分けて……あれ?
美緒ちゃんのはわかる。だけど何で愛おねえちゃん、まゆおねえちゃん、リスティの下着が入っているのよ!!
ちょっと愛おねえちゃんに言わなくちゃ(他の人は後回し)。
わたしは外に出て愛おねちゃんを探す……ほどもなく玄関のすぐ傍にいた。
「愛おねえちゃん!!」
「どうしたの知佳ちゃん?」
なんだか不思議そうな顔をしてわたしを見ている愛おねえちゃんに近寄ったわたしは声をひそめながら聞いた。
「ねぇ、愛おねえちゃん、いくら幼馴染みの従弟だからって、下着まで洗ってもらうのは拙いんじゃない?」
愛おねえちゃんはちょっとびっくりしたような顔をした後、顔を赤くして小声で返事してきた。
「うん、そうだね耕介さんをきっと困らせちゃったね、これから気をつけるね」
「うん、ちょっと細かいけどお兄ちゃんも男の人だし、それに洗い終わったものを見られるのとはちょっと違うでしょ?」
「うん、ありがとう知佳ちゃん」
ちょっとそんな会話をした後、愛おねえちゃんに他に洗濯物がないか聞いてから今度はゆうひちゃんを探しに寮の中
に戻った。
ゆうひちゃんも探すまでもなく廊下にいた。
「あっ、ゆうひちゃん」
「何?知佳ちゃん」
「これから洗濯するけど、下着とかある?」
「うん、今もってくるな」
ちょっとして戻ってきたゆうひちゃんの下着とゆうひちゃんがあずかっていた薫さんの下着を受け取るとわたしは洗濯
機の前に戻って、手洗いが必要な物以外を洗濯機の中に入れて、スイッチを入れる。
その後適量の洗剤と柔軟剤を入れてから手洗いのものを持ってお風呂場に持って行く。
手洗いの物というのは、冬だとセーターなどがあるが、初夏である今の時期はシルクのシャツとか以外はみんな下着
だ。
だから、今わたしの前には色々な下着がある。
愛おねえちゃんは基本的に白かベージュのシンプルな下着が中心で、ゆうひちゃんは本当に色々な物を揃えている
ようで、シンプルな物から、可愛いもの、セクシーで大胆な物、レース作りの大人っぽい物まである、色は、白、ピンク、 ブルー、グリーン、ベージュ、のように清楚系の色が多くなっている。まゆおねえちゃんは、シンプルなものがほとんど で、色は白、黒、藤色、紫のように色っぽいというか大人っぽい色が多い。
この三人の下着をわたしの胸に当てると………………悲しすぎて声が出なくなる。
薫さんの下着は、白かベージュのスポーツタイプが多い、運動部にいる人はこうなることが多いみたい、でも中には清
楚な色の可愛いのもあるから、これはおしゃれ着用なのかな?
ちなみに、みなみちゃんも薫さんと似たようなものだけど、薫さんよりは可愛いものが多くて、色のバリエーションも多く
なっている。
リスティは、やっぱり白かベージュが多くて、形もシンプルなのが多い………あれ?
リスティ少し大きくなったんだ……羨ましいな……でもまだわたしとそんなに変わらないからいいか。
美緒ちゃんはまだ子供パンツを使っている。
わたしは、サイズは違うけどゆうひちゃんに近い、でも大人っぽいのとセクシーなのはないけど。
ぬるま湯で洗剤を薄めたものにまずつけて、しばらく時間をおく事にする。
その間に今日のお昼のメニューを考える………さっき見たとき朝の御飯が残ってたからそれを使ってオムライスを作
ってみようかな。
うん、決めた!!お昼はオムライスと、野菜のコンソメスープにしよう。
考えているうちに10分ぐらいたっていたので手洗いを始める。
ゆっくりと丁寧に押し洗いをしていると…洗濯機がピーピーと洗濯終了の合図を鳴らす。
後少しで、手洗いが終わるので、先に手洗いを終わらせる事にする。
手洗いが終わった後、一回手を洗ってから洗濯機の中の洗濯物を取り出して洗濯籠に入れる。
次に手洗いをしたものを、皺を少なくする脱水に設定した洗濯機の中に入れスイッチを入れる。
さあ、この間に洗濯物を干しちゃおう!!
わたしが洗濯をしている間にゆうひちゃんは一階の掃除を終わらせたらしく二階の廊下に掃除機をかけている。
「♪君と会った あの場所 いまも覚えているよ
犬の散歩 していた 落ち葉の舞う公園」
どうやら寝ているまゆおねえちゃんに遠慮をしているらしく、小声で歌いながら楽しそうに掃除機をかけている。
「♪君の犬に吠えられ 卵落とし割ったね
途方にくれた僕に 君が声かけた」
わたしも小声で歌いながら洗濯物を干していく。
自分の物やまゆおねえちゃんの物を干すことはあったけど寮の人全員の洗濯物を干すのはこれが初めて。洗濯を干
すのって結構重労働なんだ、知らなかったな。
それに、たくさんの洗濯物を上手に干すのにもやっぱりコツがあるみたい。適当に干していたら干す場所がなくなっち
ゃったから、色々試行錯誤してようやく洗濯を干し終わった時は十二時を少し過ぎていた。
五分ほど休んでから、今度は残っていた手洗いのものを干して、それからお昼御飯の準備。
そろそろ、まゆおねえちゃんがお腹をすかせて起きてくる頃だし、急がなくっちゃ。
まずは冷蔵庫を見て、うーん、卵、白菜、大根、たまねぎ、あっ鶏肉もあった、ハムよりもこっちが良いかな?
あと……。
「ケチャップが足りない……どうしよう、今から買いに行ったら間に合わない……」
「何が間に合わないって?」
突然後ろから声をかけられる。
「キャッ!」
「ソーリー、知佳、驚かしちゃったみたいだね」
「リ、リスティ、夕方まで帰ってこなかったんじゃないの?」
まだ心臓がドキドキしてる、本当にびっくりした。
「急患が入って午後の検査がキャンセルになったんだ。ところで、何が間に合わないのかな?」
「ああ、そう、お昼御飯にオムライスを作ろうかと思ったんだけど、ケチャップが足りないのよ」
「OK!!ボクが買ってくるよ」
「リ、リスティ、ダメだよ、あんまり能力を使っちゃ!!」
「No!これは非常事態だ、こういうときに使わなくちゃ持っている意味ないよ」
そ、そうかな……まッ、いっか。非常事態♪、非常事態♪
「じゃあ、ケチャップと、リスティもお昼食べる?」
「Yes」
「それじゃあ、卵と鶏肉もお願い、鶏肉はうーんこれと同じぐらいのお願いね」
「OK!!じゃあ、行ってくる」
そう言うと、リスティは外に出て行った、目立たないところまでとんでいくみたい。
さてと、あと夕飯に使えそうな物を見てみる、豚肉、人参、そういえば、ジャガイモもあったよね、それにたまねぎはお
昼に使っても残りそうだし、お米もまだあったはずだから。
夕飯はカレーにしよう、おかずはあとで考えればいいか…。
リスティはまだ帰ってくるわけもないし、それじゃあ、リスティが帰ってくる前に野菜のコンソメスープを作ろうかな。
わたしが料理を作り始めると、二階からゆうひちゃんが降りてきた。
「あっ、ゆうひちゃん、今日のお昼はオムライスと、野菜のコンソメスープだよ」
「オムライスかー、けっこう好きやね」
「あっ、良かった、わたしの好みで決めちゃったから、少し心配だったんだ」
話しているうちに野菜が洗い終わった。
「知佳ちゃん、うちも手伝うな」
「ありがとう、ゆうひちゃん」
「ええんよ、だってうちだって食べるんやから」
「じゃあ、大根の皮をむいて、五人分ぐらいの分量で扇に切り分けてくれる?」
「五人分?四人やないの?」
「うん、リスティが午後の検査がキャンセルになったから寮でご飯を食べるって」
「そっか」
ゆうひちゃんは大根、わたしはたまねぎを切りながら話をする。
切り終わったら、先に適量をはかって沸かしていたお湯に白菜、大根、たまねぎの順に入れて、コンソメで味つけす
る。
ここでリスティが帰ってきた。
「ただいま、ハイ、頼まれたもの」
「リスティ、ありがとう、そうだ愛おねえちゃん呼んできてくれる?もうすぐご飯だよって」
「Yes」
リスティが出ていった後は、わたしは卵を割って下ごしらえをする。
ゆうひちゃんには鶏肉を軽くゆでてもらう。
「あー、腹減った、耕介ー……あれ?」
まゆおねえちゃんがお腹をぼりぼり掻きながら二階から降りてきた。
「知佳、耕介は?」
「今日はわたし達が、強引に薫さんとデートするように仕向けたの」
そう聞いたおねえちゃんはまた何か悪戯を思い付いたような顔してニヤニヤ笑っている。
薫さん、災難だな…そんな事を考えつつ、スープを塩コショウで味を整える。
次にご飯を軽くレンジであっためながら先ほど作ったたまねぎのみじん切りをいためる、その後温まったご飯をフライ
パンに入れケチャップと、鶏肉を混ぜてチキンライスを作る。
そうしているうちに手を洗ってから戻ってきたらしい愛おねえちゃんと、リスティが入ってくる。
ちなみにまゆおねえちゃんは昼間っからビールを飲んでいるらしい。
ゆうひちゃんと二人で、チキンライスを卵で包みオムライスにしていく。
ゆうひちゃんはとても手際良くオムライスを完成させていく、美人で、スタイル良くて、歌が上手、さらには家事もでき
る、ゆうひちゃんは本当にすごいと思う。
そうこうしているうちに準備ができたみたい、わたしはスープの入ったお鍋を持ってテーブルへ向かう。
テーブルには先に持ってきてあったオムライスが並び、湯気を立てている。
スープを盛り付けてから食事が始まった。
お昼は何事もなく終わった、気になるのはまゆおねえちゃん、ゆうひちゃん、リスティの三人が何事かひそひそ話をし
ていた事だけど……多分薫さんがひどい目に会うような気がする………
午後からは、愛おねえちゃんは、庭の草むしりをするみたい、リスティはその手伝いをするみたい、ゆうひちゃんは自
分の部屋をかたづけるって言ってた。
まゆおねえちゃんは仕事をするみたい、大変だね人気漫画家さんも。
わたしは、まずは、お昼の後かたづけ、それからどうしようかな?
一通り後かたづけが終わったら、今すぐにできる事はないみたい。
うーん何をしようかな………………そうだ、洗濯機の下を掃除しよう。
前お兄ちゃんが掃除しようとして、さすがに一人じゃあ寮で使ってる大型洗濯機が動かせなくてみなみちゃんに頼んで
いた事があったっけ。
だったら、また汚れていると思うからやっといてあげよう。
よし、箒も持ってきたし、ピアスのスイッチをオフにして洗濯機を持ち上げて…今の内に掃かなくっちゃ…よし、それじ
ゃあ今度は下を拭いて………終わり、それじゃあ、洗濯機を下ろそうかな。
かさかさかさかさかさかさ………あ、あれは…
「イヤーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!ゴキブリーーーーーーーーーーーーー!!」
次の瞬間、思わず最大級に近い力を発揮していた。
恐る恐る洗濯機があるほうを振り向く…そこには無残にもひしゃげた洗濯機が宙に浮いていた。
皆がどやどやとやってくる。
「あは、あははは……」
わたしは乾いた笑い声を上げるしかできなかった。
その後わたしは、さんざんまゆおねえちゃんに怒られた……。
こんなに怒られたのは久しぶりだ。
愛おねえちゃんもかばってくれたけど、今回はわたしが全面的に悪いので、かえって愛おねえちゃんに申し訳がな
い。
ゆうひちゃんもわたしの隣で怒られていた、原因は掃除機を壊した事だ。
どうもわたしが洗濯機の掃除をしようと決めたころ、掃除機のゴミパックを換えようとした時、どうやってか知らないが
壊したみたいだ、これにはあのリスティがあきれていた。
「ゆうひは本当に機械音痴だね。ゴミパック換えるだけでどうやって壊すんだか…?」
まぁ、そうやって二人で怒られているうちに時間は過ぎて…二時間近く怒った後まゆおねえちゃんは仕事に戻っていっ
た。
愛おねえちゃんとリスティは気がつい時にはいなかった、きっとおねえちゃんを宥めるのをあきらめて草むしりに戻っ
たんだと思う。
怒られていたリビングの床の上でわたしとゆうひちゃんは精も根も尽き果てて座っていた。
二人で背中合わせに座ってボーっとしていると電話がかかってきた。
わたしがのろのろと電話に出る。
「もしもしさざなみ寮ですけど?」
『あっ知佳か?耕介だけど』
「あっ、お兄ちゃんどうしたの?」
『夕飯は寮で皆と食べようって事で意見が一致したんだけど何か買っていくものあるか?』
「うーん、特にないよ」
『それじゃあ、少し買い物してから帰るから、六時少し前になると思うよ』
『うん、待ってる、じゃあまた後で』
「またあとで」
あっ、お兄ちゃんに謝るの忘れてた。
少し休んでから、気を取り直すと、わたしはキッチンに向かう、夕飯の準備のためだ。
ゆうひちゃんは、まず部屋をかたづけてくるって言って二階に上がっていった。
まずはお米をといでおかないとね。
「ただいまーなーのだ」
「ただいまですぅ」
お米がとぎ終わって、カレーの材料を準備していると、美緒ちゃんとみなみちゃんが帰ってきた。
「あっ、美緒お帰り、一緒にテレビ見よ」
「りょうかい、今行くのだ」
美緒ちゃんは、御架月くんに呼ばれてリビングに直行したみたい。
「耕介さーん、夕飯はなんですか〜?」
みなみちゃんがキッチンに入ってくる。
「あれ、耕介さんは?」
「薫さんとデート、もうすぐ帰ってくると思うよ」
「そうなんだ、あ〜あ、わたしも相川君とデートしたかったな」
「あはは、さくらちゃんに怒られるよ、あの娘あんがい嫉妬深いみたいだから」
「あぅー」
そう、去年の暮れ、冬休み直前にみなみちゃんは相川君に告白したんだけど、結果は玉砕。相川君はその少し前に
当時一年生だった綺堂さくらちゃんと交際を始めていたみたい。
その日は随分と泣いていたけど、次の日から思いっきりバスケットに打ち込んでいるうちに気まずい思いは無くなった
みたい。
でも、今も言っていた通りあきらめてはいないみたいなんだよね。
わたしは口には出さないけど、実は相川君とさくらちゃんを応援している、自分自身が普通の人間と違うから、種族を
超えた愛を育む二人がすごく嬉しかったから。
みなみちゃんはしばらくキッチンでわたしと話していたけど、部屋に着替えに戻っていった。
みなみちゃんと話しているうちに野菜は全て切り終わったので、ご飯を炊き始めると、今度は鍋に油を引いて豚肉を
炒める。
その後お水を入れて、ジャガイモ、人参、たまねぎの順番に入れていく。
ある程度煮詰まってきたら今度はカレールーを溶かして入れる、このとき月桂樹の葉を入れると臭みが飛んでより香
りがよくなる。
蓋をして本格的に煮込み始める。
ゆうひちゃんがキッチンに入ってきた、手にはレタス、トマト、きゅうりを持っている。
どうやらサラダを作ってくれるみたいだ。
わたしは、ゆうひちゃんがサラダを作っている間に、お兄ちゃん特製の福神漬けや、ラッキョウ、などをテーブルに持
っていく。
夕飯の用意がだいたい終わったところで、お兄ちゃん達が帰ってきた。
「ただいまー」
「ただいま戻りました」
おまけ
帰ってきたお兄ちゃんに洗濯機と、掃除機の事を正直に話す。
お兄ちゃんは、少し引き攣っていたけど笑顔で許してくれた。
本当にごめんなさい、お兄ちゃん。
その頃薫さんは、まゆおねえちゃん達に尋問を受けていた。
ご愁傷様です。
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こんにちは、三度御会いできて嬉しい限りの小島です。
予告通りに知佳編をお届けします。
下着の話や、胸の話し、料理の話と、いろいろ詰め込んだら、わたしが今まで書いた中でもっとも長いSSになってし
まいました。
さて、駄文に付き合っていただきありがとうございます、「たまには休日を……」シリーズは後、ゆうひ編、愛編、真雪
編、リスティ編を予定しています、ファンの皆様には残念でしょうけど、みなみ編、美緒編、十六夜編、御架月編はあり ません、申し訳ありません。
これは、みなみ編、美緒編はあまりにもさざなみ寮との接点がないためで、十六夜編や、御架月編は内容が薄くなっ
てしまいそうだからです。
この先、ゆうひ編、愛編と書き進むうちにアイデアが出れば、十六夜編ぐらいは出すかもしれませんけど。
なお、今回作中で知佳とゆうひが歌っている歌は、高校時代私がギターをやっていた時があって、そのとき創った物
を引っ張り出してきたものです。
はっきり言って赤面ものの内容なのですが、著作権などがあるので簡単に歌詞とかを載せられないらしいので、管理
人様のアドバイスに従い急遽差し替えました。
かなり恥ずかしいので触れないでいただけると私も嬉しいです。
さて今回もこの駄文をHPに掲載をお許しくださった管理人の春日野馨様に深い感謝の念をささげつつ終わりたいと
思います。
どうもありがとうございました。
それではまたお会いしましょう、アディオス。
メールアドレス:mk_kojima2@yahoo.co.jp
主人註
歌詞掲載の件につきましてはJASRACの許可が必要ということが判明し、また、使用料を払う必要があるそうですの
で、何かほかの方法をと私のほうから提案させていただきました。
ご無理を申し上げまして小島さんにはお手数をおかけしましたことをお詫び申し上げます。
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