たまには休日を……薫の想い


Written by 小島


この作品はJANIS/ivoryより発売されている「とらいあんぐるハート2 さざなみ女子寮」を元ネタとしております。
この作品は、ネタばれを含んでいます。
この作品における方言はかなり適当です、こんなの関西弁(鹿児島弁)じゃないという方がいてもおおめに見ていただ
けると嬉しいです。
この作品は、私作のSS「たまには休日を……日曜日に耕介は」の薫視点のお話です、そちらの方を呼んで頂けると少
しは面白くなるかもしれません。






 朝、まだ目覚し時計が鳴る前にうちは目を覚ました。
 時間はまだ早朝5時、日課である朝の鍛錬に行くために着替えていると十六夜がドアをすり抜けて入ってきた。
「おはよう」
「おはようございます、薫」

 着替え終わると木刀と十六夜の本体である太刀を持って、寮の近くにあるいつもの鍛錬場所へ向かう。
 階段を降りた時、御風呂場の方で何か音がしているのが聞こえた、きっと耕介さんだろう。
 今日は日曜日だから、本当なら休みの日のはずなのに耕介さんはこうして早起きして御風呂の追炊き、朝食の準備
をしてくれている。
 ありがたいと思う反面、もう少し自分にかまって欲しいと思うのはわがままなんだろうか?
 そんな事を考えながら外へ出る、あっ、挨拶するのを忘れてしまった。
「薫、どうしました?」
 どうやら急に立ち止まってしまったらしい事に気づき頬が熱くなる、きっと今、頬が真っ赤になっているはずだ。
「なんでんなか」
 さっきよりこころもち歩きが速くなった事を気づいても止めることはできなかった。



 鍛錬を終えて寮へ戻るとキッチンのほうから味噌汁のよい香りがする。
 耕介さんは料理中にキッチンを離れる事はまず無いからきっといるだろうと思いキッチンへ向かう。
「おはようございます」
 キッチンに入ってすぐ耕介さんに挨拶をする、なんとなく自分の声が可愛げなく聞こえたのでちょっと悲しかったけど顔
には出さずに話を続けた。
「おはよう、薫。今日も早いな」
「耕介さんこそ」
「俺は仕事だからね。風呂沸いてるから入っておいで」
 これはいつもの会話、なんとなくこのやり取りがないと落ち着かなくなっている事に気づいたのは三月頃に仕事で泊り
がけで出かけたときだった。
「ありがとうございます」
 こう言いながら十六夜を渡す、なんだか耕介さんの顔が嬉しそうだったのでうちも少し幸せな気分になりながら御風呂
の準備へと向かう。



「ふぅー」
 御風呂から出ると(誰ですかサービスが足りないなんて言うのは?)思わず溜息が出た。
 原因は、御風呂場の鏡に映った私の身体だった。
 五月頃、親友の千堂といっしょに御風呂に入る機会があった、その時に見た千堂の胸……羨ましかった。
 寮に住んでる、愛さん、椎名さん、仁村さん並のサイズ、うちも小さいというわけではないけど大きくもない。
 真鳴流の葉弓さんも同じ一族と思えないほど大きかった……(弓を撃つとき邪魔じゃないかと思ったのはうちだけの
秘密です)。
 やっぱり耕介さんも大きいほうがいいんだろうか?などと考えているうちに結構時間が経っていた、早く出て耕介さん
を手伝おうとしていたのに大失敗………うぅ。



 結局、うちがキッチンに行くともう準備は終わっていて、後は食べ始めるだけだった。
 仁村さんにからかわれたりしながら(人が気にしてる胸の事を…)人数が足りないため、いつもより少し静かな朝食を
食べ終えると、仁村さんは部屋へと戻り、他の人達とお茶を飲む事になった。
 耕介さんがみんなにお茶をいれ終わり耕介さんも椅子に座ったとき知佳ちゃんが耕介さんに話し掛けた。
「ねぇ、お兄ちゃん?」
「何だ、知佳?」
「あのね、お兄ちゃんが食事を用意してくれたり、掃除をしてくれたりするのは嬉しいんだけど、ここのところ、日曜日で
もお兄ちゃん働いているでしょ。たまにはちゃんと休まないと身体を壊しちゃうよ」
 それはうちも気にしている事だった、折を見て耕介さんに言うつもりだったのでうちもこれに便乗する事にする。
「そうですよ、耕介さん。日曜日は耕介さんお休みなんだから、ちゃんと身体を休めないと」
「いや、別に仕事でしてる訳じゃないですよ、料理を作るのは好きだし、みんなの分を作るのは、自分の分だけ作ると材
料がもったいないからですよ」
 愛さんも耕介さんの事を心配していたらしく知佳ちゃんのの援護にまわったのにたいし、耕介さんはそう答えた。
「でも耕介君、料理だけじゃないやろ、他にも日曜なのに皆の洗濯したり、寮を掃除していたりするやろ?」
今度は椎名さんのが援護に入る、うちの入る隙がない(涙)。
「……………」
 耕介さんは言い返せないみたいだ。
 実際、うちも耕介さんが休みの日に洗濯・掃除・片付けなどをやっているところを見かける事が多かった。
「それに耕介さん、私、前にも日曜はお休みなんだから、しっかり休んでくださいって言いましたよね?」
「………確かに、そう言われたことがありました、はい」
 愛さんのこの言葉に耕介さんは追い詰められてきたらしい。
「耕介さん、すぐに無理をしていたうちが言うのもなんですが、休養はしっかり取らないとだめですよ」
 ようやく言えた(喜)じゃなくて、ここはしっかり休んでもらうためにだめおしをするために耕介さんに言葉をかける。
「そうだ、耕介様は薫と婚約までしているのに、ほとんどデートというものをしていません。たまには、薫と二人で出かけ
てきたらどうですか?」
 えっ、い、十六夜!!
 うちはまた顔が赤くなってきたのに気づきうつむく。
「そうそう、十六夜さんの言う通り。お兄ちゃんが今日やろうとしていたことはわたしが代わりにやるから」
 知佳ちゃん!!
「あっ、知佳ちゃんええこと言うな。耕介君にはいつもお世話になっとるし、よし、うちも知佳ちゃんといっしょにやるな」
「そうですね、私も手伝いますから、薫さんとデート楽しんできてくださいね」
 椎名さん、愛さんまでも仁村さんみたいな事を……。
 いけない、このままじゃせっかくの耕介さんのお休みがうちのために潰れちゃう。
「ちょっと待ってください、耕介さんがお休みするのはよかですが、うちだってさざなみ寮の一員です、うちも耕介さんの
仕事の手伝いをします」
「あのね薫さん、薫さんにはお兄ちゃんを寮の外に連れていってほしいんだ。お兄ちゃんの事だから、寮に居たらきっと
何か仕事を見つけて始めちゃうから」
 知佳ちゃんの言うことはもっともだけど……、私だって耕介さんとデートしたいけど……。
「でも………」
「薫ちゃん、まあ、ええやないの、薫ちゃんだって大学の剣道部とか仕事とかでなかなか遊んだりできないんだしたまに
は、はめをはずしても?」
 結局耕介さんとデートするのは嬉しい事なので椎名さんの言葉に従う事にする。
「それじゃ、二人とも着替えたら出かけちゃってね。後はわたし達でやっちゃうから」
 こうしてうちと耕介さんは、デートに行くことになった。



 うちの今の服装は、水色の半そでブラウスと、紺のフレアスカート、髪は白いリボンでポニーテールにまとめている、
髪型以外は椎名さんが『これなら耕介君いちころや』と笑いながらみたててくれた服だ(椎名さんありがとうございま
す)。
 髪型はリボンをせずにストレートの方が良いと言われたのだけど、耕介さん以外の男性に髪をおろしたところを見せ
たくないのでいつものようにポニーテールにした。
 服装に関しては、耕介さんは気にいってくれたらしい、何にも言ってくれないけど、どことなく嬉しそうな雰囲気が伝わ
ってくるのでわかる、なんだか長年連れ添った夫婦みたいで一人で勝手に照れてしまう。
 愛さんが貸してくれたらしいミニの助手席に乗って景色を眺める降りをしながら横目で耕介さんを見る。
 ミニは小さいので苦しそうだな、なんて思っていると耕介さんにリクエストを聞かれる。
「薫、どこか行きたい所あるか?」
「耕介さん、実は欲しい物があるのでデパートに行きませんか?」


 駅前デパートのALCOにつく。
 耕介さんが好きだと気づいた時から欲しかったものがある、自分だとなかなかわからないことが多いので、今日まで
見送っていたけど、耕介さんがいる今日なら買えるはずだと思いながら車を降りる。
「薫、欲しい物って?」
「実は、オートバイに乗るときのヘルメットが………」
 正直に言うのは恥ずかしかったけど、いつか耕介さんのバイクの後ろに乗って出かけたい、ずっと夢見ていたので思
いきって言ってみる。
 耕介さんは最初驚いたみたいだったけど、すぐに嬉しそうに微笑んでくれた。
「薫、バイクのメットなら専門の店に行ったほうがいい、他に買い物がないなら俺の行き付けのバイクショップに行かな
いか?」
「はい、ぜひ」

 そして、バイクショップの店主の方にからかわれながらヘルメットを二人で選んだ結果、うちの髪と同じ色の無地のフ
ルフェイスヘルメットを耕介さんにプレゼントしてもらうことになった。
 耕介さんには悪いと思ったが、すごく嬉しかった。
「耕介さん、今度都合がついたらバイクに乗せてくださいね」
「あぁ、約束だ」
 その後、バイクショップで親父さん(こう呼んでくれと頼まれた)との話が弾んでしまい、お昼近くまでバイクショップで話
していた。
 親父さんはうちの事が随分と気に入ったらしく盛んに『俺が後20若かったらみすみす耕介に薫ちゃんを浚わせはしな
かったのに』と言うと、耕介さんはそんな親父さんに『だめだ、薫は俺のだ!!』と反論し、うちはそんなふいうちに顔を
真っ赤にしていた。
 これを見た親父さんは耕介さんに『やい、耕介、薫ちゃんを絶対に幸せにしろよ、もし泣かしたらただじゃおかねぇぞ』
と睨みつけていた。
 そのときの耕介さんの顔が面白かったので、ついつい大きな声をあげて笑ってしまった。

 お昼は耕介さんお勧めの御蕎麦屋さんへ。
 蕎麦の良い香りが強く、コシの強い蕎麦で、本当に美味しい。
 二人で、皆は今ごろ何を食べてるんだろうなとか、バイクショップの親父さんの事とかを話した後、御店を出て、うちは
 耕介さんに「臨海公園に行きませんか?」とたずねた。
 今日は本当に天気がいいので少し一緒に散歩したくなったから。
「今日は、良い風が吹きますね耕介さん?」
「そうだな、何かのんびりするよな」
 そういって、二人で顔を見合わせて笑い合ったりしているうちに耕介さんが懐かしい、だけど覚えていてくれて嬉しい
約束の事を話してくれた。
「あれから随分と経ったけど、のんびりとした神咲さんを見るのは久しぶりかもね」
「そういえば約束してましたね、槙原さん」
 そう二人でふざけた後、ゆっくりと散歩をしてからALCOへ戻ることにした。
「夕飯は寮で皆と食べよう」という耕介さんの意見が出たから。
 本当はもっと二人でいたいという思いも強くあったのだが、次に耕介さんのバイクで出かけるときを楽しみ待つのもい
いかなと考え直し、耕介さんに並びゆっくりと歩き始める。
 その途中耕介さんは寮へ電話して買い物の事とかを聞いている。
 相手は知佳ちゃんだろうか?
「夕飯は寮で皆と食べようって事で意見が一致したんだけど何か買っていくものあるか?」
『……………』
「それじゃあ、少し買い物してから帰るから、六時少し前になると思うよ」
『……………』
「またあとで」
『……………』
 電話の後、耕介さんと一緒に明日の朝食の材料や、日用品で足りなくなっていたものを買ってから駐車場に戻る。
 駐車場からは夕日がよく見えた。
 うちは、あんまり綺麗なその夕日につい見入ってしまった。
 不意に、後ろから抱きしめられた、大きくて暖かい身体、すぐに耕介さんだとわかる。
 うちは、耕介さんに体を預けると、目を瞑った、耕介さんがどうしたいかなぜかわかったから。そして、耕介さんの手が
 うちの顔を上に向かせ、唇に柔らかく、心地よい感触を感じた。

 帰りの車の中ではお互い夕日のように真っ赤になっていて、あまり話もしなかったが、なんとなく満たされた思いのあ
る空間だった。






おまけ
 うち達が帰ると知佳ちゃんに掃除機と洗濯機が壊れたという事を聞いた、耕介さんは引きつった笑顔で知佳ちゃんを
慰めていた。
 そして、うちは仁村さん、椎名さん、リスティ、陣内の連合軍に根掘り葉掘りデートの事を聞かれさんざんからかわれ
た。せっかくの耕介さんとの思い出がぁー(涙)。








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あとがき

 こんにちは、再び御会いできて嬉しい限りの小島です。
 前回書いた耕介編が思いのほか評判が良く、味をしめて薫編を書かせていただきました。
 ちょっと薫が明るい性格になっていますが、これは耕介と幸せな日々が続いてきた証なので、こんなの薫じゃないなん
て言わないでくださいね。

 さて、駄文に付き合っていただきありがとうございます、「たまには休日を……」シリーズは後、知佳編、ゆうひ編、愛
編、真雪編を予定しています。
 もし、私ごときのSSでよろしければ誰編が読みたいか意見をください。
 がんばって書かせていただきます、もし意見がなければ知佳編を書くことになると思います。

 それではまたお会いしましょう、アディオス。

 メールアドレス:mk_kojima2@yahoo.co.jp



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