* * * まえがき * * *
私は編み物が好きです。
「浮世の憂さ」も忘れるほど集中できるものがあれば、その時間だけは心が平穏でいられる・・・
考えてみれば、私が好きなことはそういった時間が持てるものばかりのような気がします。
例えば太極拳。
太極拳をしている時間だけは、他の事を考える余裕が無い。
だから、その数分間だけは日常から離れられる・・・
心悩まされることも、気持ちを邪魔されることも無い。
「無心」というにはほど遠いが、少なくとも憂さから逃れてはいられる。
一切の日常から放れられる時間。
映画もそうです。
映画に没頭している2時間だけは悩みを忘れていられる。
映画の中に委ねていればいいのだから・・・
そして編み物。
編んでいることに集中している時間は静かに過ぎていく。
それは数を数えるとか、編み目を間違えないようにするといった単純作業なのだが、
それでも、そのことだけに没頭できる貴重な時間なのだ。
そして、できあがりを思い描くのもこれまた楽しかったりするのだ。
私は編んで気にいらないとほどいて、納得するまで何度も編み返したりする。
でも、それでイラついたり、もどかしくなったりしない。
編む作業そのものが好きなのだ。
編んではほどいて、編んではほどいてを何度も繰り返していると、糸が細くなったり、
手垢で黒くなったりしてくる・・・
そんな私を家族のものは、「また始まった・・・」とばかりに眺めているのだが。
冬は毛糸を手元から離したことがない。
食事をとっては腹ごなしに編み、夕食後も寝るまで編み続ける・・・
夜中になっても気づかないことさえある。
編み棒を持つと時間を忘れてしまうのだ。
「あと一段だけ編んだらやめよう・・・」と思っても、その一段でやめられない。
ついつい編んで夜更かしすることになる・・・
こんなだから、急ぎの仕事を抱えている時はジレンマに陥る。
編み棒を持ったら最後とまらなくなるから、仕事にならないのだ。
仕事先から電話がかかってきて「仕事は順調に進んでいますか?」なんて言われ、
受話器と編み棒を持って焦りまくることになる。
いけない、いけない・・・
そして今年も編み物のシーズンがやってまいりました!
私の頭の中では「さあて今年はどんなのを編もうかなあ?」の思案が始まっています。
それでは改めて、このコーナーの主旨をご説明いたしましょう。
ここでは私が過去に編んだ手編みの品々を、それにまつわる思い出やエピソードをまじえながら
紹介していこう!という新連載のコーナーです。
こちらもどうぞヨロシク!
(2003年8月記)
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