2035年、 長野県のある家で葬儀が行われていた。 亡くなったのはそこそこ売れていた小説家に過ぎない筈なのだが、小説家の息子や近所の人間は参列者に驚いた。 竹下喜一首相を初めとした閣僚を初め、著名人が続々と弔問に訪れたのである。 更には、現役各国首脳まで訪れ、周囲は厳戒態勢が敷かれ、マスコミは半径500メートル以内への進入が全面禁止された。 長い赤みがかった金髪の女性が少年に近付いた。 (かなりの美人だ。何で父さんの葬式にこんな人が来るんだ?) (青い瞳・・ハーフかなんかかな?) 「碇、ユウキ君ね」 「・・・はい・・・」 「私は、惣流アスカ、お父さんの古くからの友人、今回、貴方を引き取ることになったわ」 「・・そう・・ですか・・・」 「落ち着いたら、第3新東京市にいらっしゃい」 「・・・・はい・・・」 ユウキは軽く頷いた。 (第3新東京市か・・・・昔父さんが住んでたところだ) 数日後、ユウキはアスカから送られてきた手紙通り、駅に来た。 『2番線に政府専用列車が入ります。許可の無い方はご乗車できません』 (専用列車か・・・・この前の弔問客といい、いったい父さんは何者だったんだ?単なる小説家じゃなかったのか?) ユウキは専用列車に乗り込んだ。 専用列車は静かに走り出した。 専用列車は、2028年に第2新東京市〜第3新東京市間が開通した東京環状線に入り、速度を上げた。 2018年から、東京の再開発が開始され、世界最大企業、東京帝国グループの開発の元、凄まじい勢いで復興し、2023年には前世紀の東京に近付いた。 東京と言う都市が、いかに日本人にとって心の支えになっていたかと言うことである。 2025年に発動された、大東京圏開発計画では、仙台を第4新東京市とし、海上に第5新東京市、第6新東京市をつくり、それらの結びつきを相互に強める事で、今後80年間の開発方針の基礎にするという計画である。 その開発計画の一環で作られている環状線である。完成は、第6新東京市の完成後の話であるからまだまだ先の話である。 ユウキは、父、碇シンジの事を考えていた。 (・・・ユウキのお母さんは、天使だったんだよ・・・か・・・まさかね・・・父さんは頭がおかしくなっていたんだよ・・・母さんが死んじゃって頭がおかしくなっちゃってたんだよ・・・・) 列車が減速し始めた。 (着くのかな?) 『特別非常事態宣言発令につき、この列車は次の駅で停車します』 (特別非常事態宣言?戦争でも始まったのか?) ネルフ本部発令所 メインモニターに第拾九使徒の姿が映っている。 全体的に灰色をしていて、双頭の人型だった。 「作戦ポイントまでの誘導を」 司令塔のアスカは命令を下した。 「了解!」 ケンスケが返した。 「霧島3佐」 「はい」 マナが司令塔を振り返った。 「8thチルドレンを迎えに行きなさい」 「はい」 嬉々とした顔をしたマナはすぐに発令所を抜け出した。 「目標、3時間ほどで、第3新東京市に到達します」 マヤが報告した。 ユウキは今、駅の前の階段に座っている。 「はぁ〜、やっぱり来るんじゃなかったのかな・・・・」 (携帯も通じないし・・・・) 赤い車が物凄い速度で近付いてきてユウキの目の前で急停車した。 中からマナが降りてきた。 「碇ユウキ君ね」 「・・・はい・・・お姉さんは?」 「お姉さんだなんて嬉しい☆、でも時間がないの、早く乗って」 「あの・・お姉さんは、誰?」 「お父さんの葬式にもでてたんだけど・・・」 マナは微かに非難の混じった声で言った。 「・・・済みません」 「霧島マナよ、さっ、乗って」 「はい」 2人は車に乗った。 「しっかり捕まっててね」 マナはアクセルをめいいっぱい踏み込んだ。 「うっ・・これ・・・ガソリン車ですか」 「そうよ、F50、セカンドインパクト前のヴィンテージカーよ!」 カーブをドリフトで曲がっている。 「うわああああ!!!!」 そして国道にでて安定した。 「ユウキ君って、本当にシンジ君に似てるのね。」 マナはユウキの顔を凝視している。 顔貌は、殆ど同じ、髪が茶色いのと、瞳の色が赤い事くらいしか差が無い。 「髪の毛を黒く染めて、黒いカラーコンタクトをいれたら多分知ってる人は驚くよ」 「・・・・そう・・ですか・・」 「・・・・皮肉なものよね・・・」 マナは少し寂しそうに言った。 「・・・何がですか?」 「シンジ君も20年前に第3新東京市に来たのよ・・・・」 「そう・・ですか・・・・」 トンネルに入った。 「お父さんのことどのくらい知ってる?」 「・・・・殆ど・・・何も・・・知りません・・・」 「そっか〜、シンジ君何も話さなかったのか・・・」 「父はいったい何をしていたんですか?この前の葬式だって」 「・・・シンジ君はね、14年前は、世界を動かす地位にいたの」 「え!?」 ユウキは驚いた。 「国際連合安全保障理事会常任理事長・・・・それがシンジ君の肩書きよ」 「常任理事長????」 「他の理事は大国の代表・・・シンジ君は個人で大国を越える力を持っていたの」 「冗談、ですよね・・・」 「いえ・・・本当なの・・・・でも、」 ジオフロントに入った。 「うわ、ジオフロントだ」 「そうよ、ここが私達の所属する組織ネルフが存在する人類最後の砦、第3新東京市よ」 そして、駐車場に車を止め、ネルフ本部に入った。 「ネルフについて説明するわね」 ユウキは無言で頷いた。 「結成されたのは2010年、2015年から2016年にかけてあった使徒襲来、知ってるかな?」 「ええ、未知の生物相手に国連軍が総力戦で戦ったって」 「半分は正解、でも半分は不正解ね」 「国連軍は、全力で戦ったの、でも使徒相手にはNN兵器ですら歯が立たなかった。それを見越して結成されたのがネルフ、初代総司令は、碇ゲンドウ、ユウキ君のお祖父さんよ」 「・・・・」 「そして、ネルフは、エヴァンゲリオンって言うロボットみないなのを使って使徒を倒したの、その時のパイロットが、シンジ君なの」 「・・・・霧島さん・・・今日の特別非常事態宣言・・・もしかして」 「ええ、第2次使徒襲来よ」 マナは頷いた。 「・・・・僕にもパイロットになれって言うんですか?」 「多分ね・・・でも、私がユウキ君に色々と話したのは独断、今回の使徒で出撃なんて事はないと思うわよ」 「・・・・・・」 「もし、嫌なら、きっぱり断って、もしそれでアスカさんが保護者を止めるようなら私の所に来て、私はシンジ君に物凄い恩があるの」 「恩?」 「私、20年前、戦略自衛隊のスパイとして、ネルフやシンジ君と接触したの・・・で、色々あって私は戦自を裏切ったの・・・で、名前を変えて目立たないように生活していたの・・・それを助けてくれたのがシンジ君・・・・・敵だったのに助けてくれたの・・・だから、私は命をかけてシンジ君に恩を返さなくては行けないと思ってネルフに入ったの・・・でも」 マナは涙を零した。 発令所についた。 「ここが発令所の司令塔への入り口よ、私は入ることは出来ないの、ユウキ君、行ってらっしゃい」 マナは涙を拭って笑顔でユウキに言った。 「・・・・・はい」 ユウキは司令塔への入り口をくぐった。 アスカが指示を飛ばしていた。 メインモニターには、使徒と零号機、弐号機が映っていた。 アスカがユウキの方を振り返った。 「ユウキ、来なさい」 ユウキはアスカの横に立った。 「マナのことだから、どうせべらべら喋ったと思うけど」 アスカはメインフロアのマナを睨んだ。 「あれが、エヴァと使徒・・・よく見ておきなさい」 使徒に対して、2体で波状攻撃をかけている、圧倒的に押している。 最終的に弐号機がプログソードで使徒のコアを斬った。 「使徒殲滅!」 「ユウキ、ついて来なさい」 アスカはユウキを連れて発令所をでた。 「あの・・・惣流さん・・・」 「ん?アスカで良いわよ」 「アスカさん・・・僕もエヴァに乗るんですか?」 「それはユウキが決める事よ、でも、私達を救った英雄と会っておいた方が良いわね、二人のところに案内するわ」 ケージ、 2体のエヴァが戻ってきていた。 弐号機から茶色い髪、青い瞳、白っぽい肌の少女が降りて来た。 「ママ〜、こいつが8th?」 「ええ」 アスカが頷いた。 「8th?」 「エヴァに乗ることが出来る適格者をチルドレンと呼んでいて、通し番号が付けられているのよ」 「アタシは、7thチルドレン、惣流ミク、弐号機専属操縦者よ!」 「よ、宜しく」 零号機のエントリープラグが開いた。 ユウキは言葉を失った。 薄い青色の髪、赤い瞳、白い肌の少女が降りて来た。 「自己紹介しなさい」 「・・・綾波レイ、6th、零号機専属操縦者・・・」 ユウキはレイに見惚れていた。 「ユウキ?」 「あ、はい・・・僕は、碇ユウキ・・・宜しく・・」 「さてと、ユウキ、貴方にはエヴァに乗るかどうか決める権利があるわ、3日時間をあげるわ、その間に、いろんなものを見て、いろんな人と話をして、決めなさい。どちらを選んでも、ユウキを放り出すようなことはしないわ」 アスカは優しい声で言った。 「・・・はい・・」 「ママ?」 ミクは先ほどの言葉を不審に思ったようだ。 「何?」 「いま、放り出すって・・・まさか、こいつアタシ達と!」 「そうよ」 「そうよじゃないわよ!どうして獣と一緒に住まなくちゃ行けないのよ!」 「大丈夫よ、私だってシンジと一緒に暮らしてたんだから」 「え!?」 アスカの発言にユウキは驚いた。 「全然大丈夫じゃないわよ!!」 「分かったわ、ユウキ、済まないけど、レイと同居に変えるわ」 「「え!?」」 「問題ないわね」 「はい」 レイは即答した。 「ちょっと待ってよ!」 「あ、あの、アスカさん!」 「大丈夫よ、私が保証するわ」 アスカはさっさとケージを離れていった。 「・・・・」 「・・・・」 「ふんっ」 ミクはケージを離れた。 「・・・・」 「案内するわ」 レイは歩き出した。 「あ・・・うん」 ユウキはレイについて行った。 技術棟、 マヤと碧南以下、技術部のスタッフが並んでいる。 「私が技術本部長の伊吹マヤ准将よ」 とても40代とは思えない。 「私は副本部長の碧南ルイ2佐です」 「碇ユウキです」 ユウキは頭を下げた。 作戦部、 ケンスケ以下、作戦部のスタッフが並んでいる。 「いや〜、シンジの息子か〜、シンジそっくりだな」 ケンスケは珍しい者を見ているような目でシンジを見ている。 「相田3佐」 「あ、すまない、俺は作戦本部長の相田ケンスケ3佐だ。シンジとは親友だったんだ」 「碇ユウキです」 休憩所、 「休憩所・・・霧島2佐は良くここにいる」 「あれ?レイにシンジ君」 マナはジュースを飲んでいる。 「・・・本当にいたんですね」 休憩所に良くいては拙いだろうとは思ったが口にはしなかった 「何が?」 「自己紹介」 「あ、改めて、情報本部長霧島マナ2佐です」 「宜しく」 「宜しくね」 総司令執務室、 「・・・広いですね・・・・絵が書いてあるんですね・・・」 「私の趣味じゃないわよ」 アスカは少し不機嫌そうに言った。 「初代総司令、碇ゲンドウ、ユウキのお祖父さんが作らせたものよ」 「・・・悪趣味ですね」 「そうよね・・・このセフィロトの意味知ってる?」 「えっと、確か、神になるための地図でしたっけ」 「・・・そっちを知っているのね、まあ良いわ、私としては本当は消したいんだけど、色々とあってね・・・」 第3新東京市高級マンション、最上階、 「ここ」 「本当に・・・」 レイは軽く頷いた。 中に入ると、生活感が薄かった。 まず家具が殆どない、広いだけに余計に寂しい (・・・マジ?・・・でも、何となく似合ってる) 「碇君の部屋はここ」 12畳くらいの広さである。 「うん、有り難う」 ユウキは部屋に入った。 ユウキは、ベッドに横になりながら考えていた。 (ネルフとエヴァ・・・父さんか・・・・・) (綾波に・・・・ミクさんか・・・・・) 朝、ダイニング、 2人で朝食を食べている。 みそ汁、菠薐草のお浸し、南瓜の煮物・・・住んでる家の割には・・・ 「美味しいね」 「そう?」 「うん、夕飯は僕が作るから、食べてよ」 レイは軽く頷いた。 「何か嫌いなものある?」 「肉は嫌い、魚も好きじゃない」 「あ、僕と同じ」 「そう」 「綾波も瞳が赤いんだね」 「ええ」 「いじめられたりとかしなかった?」 「いじめ?・・・いいえ」 「ふ〜ん、僕は色々とあったな」 「そう」 第2新東京市、警視庁、総監室、 「ようきおったのお、ワシが鈴原トウジや」 「碇ユウキです」 「ほんまシンジによう似とるな」 「良く言われてます」 「ワシがエヴァにのったんは1回だけや、でもシンジのことはよう知っとるで」 2人は30分ほど話していた。 内務省長官室、 「俺は青葉シゲル、シンジ君がいた頃は本部のオペレーターをしていた。」 「そうですか・・・」 2人は20分ほど話していた。 防衛省長官日向マコトとは会うことが出来なかった。 マンション、 ユウキは、夕飯を作っていた。 今、芋の天ぷらを作っている。 鍋では豆腐のハンバーグができあがっている。 「碇君、手伝うことある?」 「ん、流しにあるもの洗ってくれるかな?」 レイは軽く頷いた。 ・・・・ ダイニングで2人は夕食を食べている。 「どう?」 「美味しいわ」 「良かった」 レイはもぐもぐ食べている。 夜、レイの部屋、 レイはベッドに入って考え事をしていた。 (あの料理・・・どこかで食べたことがあるような気がするのは気のせい?) 朝、ユウキの荷物が届いた。 「な、何でこんなに大量に・・・」 ユウキの荷物の総量よりも遙かに多い。 「ええと、どれがそうなのか分からなかったので手当たり次第持ってきました。」 「はあ」 「部屋は空いているから、適当に入れて」 そして、昼には運び終わった。 ユウキは一つ一つ整理している。 「まだまだだけど、当面問題になりそうなことはないし、ゆっくり片づけるか」 夜、アスカとミクが訪れた。 夕食を食べたミクの顔が変わった。 「こ、これあんたが作ったの?」 「綾波にも手伝ってもらったけど」 「信じられない・・・」 「シンジ譲りね」 一瞬ユウキの顔が曇った。 「碇君の作る料理は美味しい」 「・・・・アスカさん・・・・」 「何?」 「昔のこと・・・・使徒襲来の時のことを教えて下さい」 「良いわよ、でも機密事項が多いから全ては教えられないけど良い?」 「はい」 「じゃあ、何から話そうか・・・使徒について話すわね」 「使徒についてですか・・・」 「セカンドインパクト、知ってるわね」 「はい、隕石説が有力だったけど最近それも怪しくなってきて、真相は不明って事になってますね」 「真相は、第壱使徒アダムと呼ばれる物の調査中に起こった原因不明の大爆発・・・とネルフ職員や世界の首脳には教えられているわ」 シンジはアスカの顔を見た。 「ママ、違ったの?」 「ええ、原因不明じゃないから」 「原因?」 「そう、面倒くさいから通称で行くわね、第参使徒〜第拾七使徒と第拾九使徒以降の使徒とアダムが接触すると、サードインパクトと呼ばれる物が起こるの。」 「サードインパクトですか」 「そう、で、大きいし動き回るアダムを制御するのは不可能と言うことで、動き出す前にエネルギーを解放して卵に戻しちゃえって言って、戻したときに放出されたのエネルギーによる爆発がセカンドインパクトなのよ」 「じゃあ、セカンドインパクトは」 「人類の破滅を防ぐ苦肉の策ね、それも、上層部の対立や勢力争いのために、結局、発生する、つまり、動き出し始めた時点では公開できていなかったの。だから、甚大な被害がでた。それがセカンドインパクトの真相なの」 「で、今、そのアダムはネルフ本部の地下に封印されてるの」 「地下にですか」 「そう、使徒をおびき寄せるための餌、そして、ネルフが罠と言った所ね、世界中で無差別に戦うよりは、餌を置いて罠を仕掛けた方が良いからね」 「じゃあ、ネルフが負けたら」 「サードインパクトが発生するわね、それで人類は終わり、」 「・・・僕は乗った方が良いんですね」 「よく考えてね、私も昔は乗っていたから・・・世界を救うために、前線で戦うことを子供に強制しなくてはいけないんだったら、破滅を選んでも良いって思ってる人もいるのよ」 「・・・綾波とミクさんは何故エヴァに乗ってるんですか?」 「そんなのアタシが世界の救世主になるためにきまってんじゃない。」 「絆のため・・・私には何もないから」 「綾波・・・」 「レイ、ユウキは貴女を心配しているわよ」 レイはユウキを見た。 ユウキは軽く頷いた。 「ユウキは、レイがエヴァに乗って戦えなくなることを心配しているんじゃない、自分の悲観視するような態度を、家族として心配しているのよ」 「家族・・・」 「始まったばかりだけど、それも絆の形よ」 「家族・・・それも絆」 「そうよね、ユウキ」 ユウキは頷いた。 レイは微笑みを浮かべた。 ミクが吃驚した。 「さてと、続きね、エヴァについて話すわね。エヴァはユウキのおばあさんに当たる碇ユイ博士がその基礎を作ったの」 「おばあさんですか」 「そして、ユイ博士の死後は、日本では、赤木ナオコ博士に引き継がれ、ドイツでは、私の母親の惣流キョウコに引き継がれ、そして、量産計画が、赤木リツコ博士に引き継がれ、今は、伊吹マヤ博士に引き継がれているわ」 「伊吹さんですか・・・」 「エヴァの正体は、第壱使徒アダムの不完全なコピーよ」 「不完全?」 「使徒に対抗するには使徒の力を使うしかなかったの、だから、アダムのコピーを作った。でも完全なコピーでは、エヴァを媒介にサ−ドインパクトが起きてしまう。だからコピーの精度を落としてサードインパクトの心配を無くした変わりに、落ちた力を科学力と操縦者の技術で補った物がエヴァなのよ」 「そうなんですか・・・」 「ええ」 「エヴァの操縦にはシンクロと言って、操縦者とエヴァとの神経をつないで動かすの、だからエヴァの痛みはそのまま操縦者の痛みになるの」 「い」 「更に、シンクロ率も60%〜100%が最も適切な範囲、100%未満だと、思考と動作にタイムラグが生じてしまい、60%未満では戦闘には向かない。100%を越えると、パワーは上がって行くけれど、反応は、操縦者の思考より早く動けるわけはないから、勿体ない、その上痛みは実際よりも多く受ける。これもあまり効率がいいとは言えない。これを過剰シンクロと呼ぶの、そして、412%を突破すると、操縦者の方が持たずに溶けてしまうの」 「と、溶ける?」 「そう、で、適格者とは、訓練次第で60%〜100%のシンクロを安定して保つことが出来る素質を持つ物なの、勿論412%を越えるのは論外、最初の頃は、色々と事故があったの、溶けてしまったり、シンクロ率の極端な変動から精神崩壊を起こしたり・・・・」 「今は大丈夫なんですよね」 「それをクリアできるのがチルドレンなのよ」 「そうなんですか・・・」 ユウキの部屋 ユウキはベッドに入って考え事をしていた。 (エヴァか・・・・父さんのことが分かるかも知れない・・・・・) (母さんか・・・・天使なんかいるわけ無いじゃないか・・・・・) 「ん?」 外で何かが光っている。 シンジはベランダにでた。 月を見上げているレイが、月光に照らされて輝いていた。 (・・・・天使か・・・・綾波・・・天使みたいだな・・・翼があったら似合うかな・・・・・多分母さんも天使みたいな人だったんだろうな・・・・でも・・・・父さんは・・・頭がおかしくなってしまったんだ・・・・母さんがいなくなって・・・本当に天使だって信じ込んじゃったんだ・・・) 翌日、ネルフ本部総司令執務室 「決まったかしら?」 「ええ、僕もエヴァに乗ります。綾波の危険性も減らせるし、ミクさんの助けにもなると思うし、おまけに人類を救えるんですからね」 「本当に良いの?」 「はい」 「分かったわ、碇ユウキ、貴方を初号機専属操縦者に任命します」 「はい」