シンジの前にレイが立っている。 「碇君は何を望むの?」 「僕は・・・・やり直したい・・・全てを」 「そう、それが貴方の望みね」 「どうするの?」 「過去へ飛ぶの」 「綾波は?」 「後から行くわ、又会いましょう」 レイが微笑んだ。 シンジの意識が少しずつ薄れていった。 シンジは目を覚ました。 ベッドの上のようだ。 「ここ、どこ?」 シンジは部屋を見回した。 部屋においてある物は幼い子供向けのものが多い。 「・・・・・へ?」 シンジは自分の体を確認した。 3、4歳のようである。 「・・・・・綾波・・・・ここまで戻さなくても・・・・」 シンジは部屋にもう一つベッドが有る事に気付いた。 「ん?」 シンジはベッドの抜け出してもう一つのベッドに近寄った。 ベッドには同じくらいの女の子が寝ていた。 問題はその髪と肌、薄い青色に輝く髪と、透き通るような白い肌。 「綾波?」 (そうか・・・・僕が記憶を失う、母さんの事故の前なんだ・・・情報は手に入れたほうが良いよな・・・・綾波は後から行くって言っていたから、多分まだ戻って来ていない・・・でも、じゃあ、この綾波と僕の関係っていったい?) シンジはレイの事が気になったが、部屋を抜け出す事にした。 (ここが昔住んでいた家か・・・覚えてないな) 「シンジ」 レイと同じ声がした。 「どうしたの寝られないの?」 ユイが後ろにいて、しゃがんでシンジに目線を合わせていた。 「母さん」 シンジはユイに抱き付いて涙を流した。 「あらら、よしよし」 ユイはシンジの頭を撫でた。 「怖い夢を見たのね、もう見なくても良いようにお母さんと一緒に寝ましょう」 シンジは涙を流すだけだった。 ユイはシンジを抱っこして寝室に向かった。 寝室には碇がいた。 髭はまだ生やしていない。 「貴方、今日はシンジといっしょに寝ますから」 「何故だ?」 「怖い夢を見たらしくて泣いてばかりいるからよ」 「何だそんな事くらいで男が泣くな」 「貴方、シンジはまだ4歳なんですよ、それに、貴方こそ40手前なのに子供見たいな人なんですから」 「う・・・」 碇は言葉を詰まらせた。 「じゃ、私はシンジといっしょに寝ますから」 ユイは寝室を出て子供部屋に向かった。 「シンジ、怖い夢はもう見なくてもいいわよ」 ユイはシンジをベッドに寝かせてその横に自分も寝そべった。 「母さん、母さんは僕の言う事信じてくれる?」 「ええ、私の大切な息子と言う事なら信じてあげますよ」 「長い長い話だよ」 「ええ、聞いてるわ」 その後、シンジは全ての事を話した。 「・・ごめんなさい・・」 ユイは目を潤ませて謝った。 (う・・・か、可愛い・・・) 27歳でその可愛さは犯罪的である。 (うわ〜〜!!僕って、僕って!!) シンジの心の中はパニック状態のようである。 ・・・・ ・・・・ 漸く落ち着き、話を再開した。 「因みに搭乗実験は、明日よ、分かっていると思うけど、私は、明日エヴァに取り込まれるわ」 「母さんは知っていたの?」 「ええ、この事はあの人もまだ知らないわ」 「母さん、母さんも結構勝手な人なんだね」 「ふふふ、そうね」 ユイはいたずらっ子のように笑った。 (うわ〜〜〜!!!) ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・ そうこうして、最後にレイ事について触れる事にした。 「母さん、レイ・・・綾波って何者なの?母さんが消えた後に父さんが作ったクローンだと思っていたけど」 「レイは、私とリリスの遺伝子を組み合わせて作られた私の存在よ。エヴァに乗るには、特殊な条件を揃えなくてはならない、その中には、貪欲に愛情を求める必要があるの、でも、レイは言わばジョーカー、愛情で満たされていても、エヴァに乗れるの、だからこそ、私はレイを私たちの娘、シンジの妹として育てて来たの、でも、あの人は」 ユイは目を伏せた。 「母さん、でも、結果的には父さんの行動の方が良かったのかもしれないよ、使徒の中にはエヴァ1体じゃ倒せない使徒がいたから」 「そうね・・・私もまだ浅はかだった様ね」 シンジは笑いユイも続いて笑った。 「・・・ん・・・・う・・」 レイが目を覚ました。 「・・・お母さんに・・お兄ちゃん?」 「ごめんなさい、起こしちゃったかしら?」 「良い、又寝るから」 レイは直ぐに寝息を立て始めた。 「私たちも寝ましょう」 そしてシンジは11年ぶりに母の腕の中で眠りについた。 ただ、最大の疑問は、どうして、この夫婦が夫婦になったのかであったが、聞く事は流石に憚られた。 ゲヒルン本部、起動実験室、 零号機が置かれている。 装甲などは違う。 司令室には、碇、冬月、ナオコ、の3人の大人と、シンジとレイの2人の子供がいる。 シンジとレイは並んでガラス越しにユイを見ている。 「何故ここに子供がいる?」 「所長のお子さんだそうです」 「碇、ここは託児所じゃない」 『ごめんなさい先生、私が連れて来たんです』 「ユイ君、分かっているのか?今日は君の実験なんだぞ」 『分かっています、だから10年後には世界を担う二人には見ていて欲しいんです』 「10年後、早過ぎないか?まだ14歳かそこらだぞ」 『いえ、10年後ですよ』 ユイは手を振りプラグに入った。 シンジは手を振った。 「さよなら、母さん」 シンジは小さく呟いた。 そして直ぐに警報がなりパニックに近い状態に陥った。 シンジは気を失ったレイを抱き寄せている。 大人たちは右往左往している。 「・・・・ん?・・・・」 レイが目を開いてシンジを見た。 「・・・・・碇君?」 「うん、綾波、また会えたね」 シンジは満面の笑みを浮かべた。 「・・・・こんな所に戻って来たのね」 どうやら、レイにも予想外の事だったらしい。 「アスカも戻って来ているの?」 「いえ、私達だけよ」 「そう・・・」 二人は凄まじい会話をしていたが、パニック状態だったため誰も気付かなかった。 そして、すぐさまナオコによって発案されたサルベージ計画が実行された。 レイはパソコンを操って情報を拾い集めている。 「どう?」 「性能は低いけど、ネルフと違って防壁が薄いから楽よ」 サルベージ計画の詳細が出た。 「ナオコ博士は、初めからお母さんをサルベージする気は無いわ、これでは自我境界線の回復は不可能」 「リツコさんのお母さんだよね、」 「ええ」 「母さんを殺したがっているの?」 「そうよ、ナオコ博士は、碇司令が好きなのよ」 「好きって・・・」 「だから、自分が、なりたい場所にいるお母さんを殺したがっているの、嫉妬と言う感情ね」 「そうなんだ・・・」 そして、当然のごとくサルベージは失敗、碇は失踪した。 二人は冬月がいったん預かる事になった。 朝、シンジは椅子を使って料理をしている。 レイも色々と手伝っている。 「はて?何だこの香りは?」 冬月が台所を覗いた。 「あっ、おはようございます」 レイは頭だけ下げた。 冬月は驚いている。 「もう直ぐ出来ますから」 そして、食堂、 「シンジ君、いつも料理をしているのかな?」 「そんな事は有りませんけど」 「・・・・美味いな」 「良かった。」 シンジは微笑んだ。 部屋、 「綾波、僕達名字で呼び合うのは拙いんじゃないかな?」 「・・・・そうね」 「でもさ、この時代の本当の呼び名はどうも・・・」 「お兄ちゃん?」 シンジは赤くなった。 「・・碇君が良い」 「でもさ、拙いよね」 ディスプレイには碇レイのプロフィールが映っていた。 「・・・・別に良い」 「でもさ」 「じゃあこうするわ」 通称綾波レイが設定された。 「ま、良いか」 和室、 「ユイ君がいなくなったと言うのに、随分落ち着いているんだな・・・碇、親のお前が逃げてどうする」 冬月は茶を飲んだ。 「しかし・・・・本当に4歳なのか?」 試しに、冬月は知能テストを二人にさせてみた。 結果、シンジの知能は24歳程度、レイは48歳程度(既にとっくの前に測定不能の領域)であった。 冬月は頭を抱えた。 「IQ600と1200・・・世界記録だな・・・」 ゲヒルン本部、 二人が廊下を歩いている。 「あら?貴方達は?」 ナオコがファイルを抱えて前から歩いて来ていた。 「ナオコ博士、嬉しそうですね」 「え!!」 「お母さんが消えて嬉しいのね」 「い!!!」 「まあ、自分が仕組んだんだしね」 ナオコは顔面蒼白になっている。 「嫉妬、人も消せるのね」 「怖いよね」 ナオコはファイルを床に落とした。 「ナオコ博士、気にする必要はありませんよ。母さんが望んだ事ですから、11年間エヴァの中にいることは」 「ここでの話、他言無用」 呆然とするナオコの横を二人は通り過ぎた。 2週間後、碇はゲヒルン本部に戻って来た。 「冬月、今日から新たな計画を遂行する」 「新たな計画だと?」 「そうだ、神へのステップだ。既に委員会には報告済みだ」 「人類補完計画か・・・」 「赤木博士」 ナオコは全身に電流が流れたかと思うほどの反応を示した。 ユイの意思の事等関係なく、自分がユイを抹殺しようとしていた事実を碇に知られれば、確実に消される。 「以後、君をE計画の担当責任者とする」 「はっはい!!」 「ナオコ君、どうかしたのか?」 「いっいえ!」 ガラス越しにシンジとレイが光景を見ていた。 「そうだな、アスカもあんまりエヴァに傾倒しすぎるのも問題だし、ダミーの事も有るから綾波もここを離れたほうが良いよな」 「ドイツに行くの?」 「そうしよ」 数日後、ドイツゲヒルン支部に二人は来ていた。 そして、母親に付いて研究所に来ていたアスカと直ぐに仲良くなっていた。 今、アスカとレイがドイツ語をシンジに教えている。 「うう〜、こんなに苦労するとは思わなかったよ〜」 「まあ、国際連合の共通語が日本語だから無理して覚えなくても良いけど、」 「だって、日常生活には不便だから」 「全く、何の考えも無しにガキがドイツまで来るんじゃないわよ」 「アスカだって同い年じゃないか」 「アタシをアンタみたいな馬鹿といっしょにする気?」 「ご、ごめん」 「アンタバカ?謝るくらいなら最初からバカな真似しなきゃいいのよ」 キョウコがやって来た。 「あらあら、もう仲良くなったのね」 「うん、でもねママ、こいつバカよ」 「ひどいよ〜」 「碇君を苛めないで」 「アスカ、バカなんか言っちゃ駄目よ、さあ、謝りなさい」 「うう、」 「さあ」 「ご、ごめんなさい」 アスカは頭を下げた。 そして翌年、キョウコの搭乗実験の前日、 アスカが寝静まった後、二人は部屋を抜け出して、キョウコの部屋に向かった。 「あら?シンジ君にレイちゃん、何か用?」 シンジはドアに鍵を掛けた。 「キョウコさん、御願いがあります」 シンジは真面目な顔でキョウコに言った。 「何?」 「これから、母さんの登場実験の前日に僕が母さんに話した事をキョウコさんにも話します」 キョウコの表情が変わった。 そして、シンジはユイに話した事を脚色して話した。 「そう・・・サードインパクトか・・・・私達はただ利用されていただけなのね」 「はい、でも、キョウコさんの力が必要なんです?」 「どうして?」 「アスカの能力はパイロットとしては最強です。ゼーレの補完計画を打ち破るためにもアスカを外す事は出来ません」 「・・・予定通り私には搭乗して精神崩壊を起こせといっているの?」 「いえ、」 漸くレイが口を開いた。 「安全装置を外します。史実どおりでは、貴女はサルベージできない、だから、お母さんと同じくすべてコアに入ってもらう」 「それなら戻って来れるの?」 「はい、アスカのトラウマも小さくなります」 「そう・・・・分かったわ」 「すみません」 シンジは俯いた。 「アスカのためだし、問題は無いわ」 そして、搭乗実験前、 「アスカ、強く生きてね、」 「何よママ、まるで」 「私は弐号機で待っているわ、アスカが立派なレディになって世界を救うのを」 「ママ」 「アスカ、暫くの間お別れ、でも、大丈夫、いつも私は傍にいるわ」 「本当?」 「ええ、」 そして、研究者達はパニックに陥った。 安全装置が動かなかったのである。 「アスカ、アスカのママは役目が終わるまで、弐号機の中にいるんだよ、アスカを守るために、だから、アスカはアスカのママの手伝いをして少しでも早くキョウコさんが戻ってくるようにしなきゃ」 「ママは・・・ママは・・・何時戻ってくるの?」 「使徒と呼ばれる、人類の敵を全て撃ち滅ぼした時、その時僕らの母さんも戻ってくる」 そして年月は流れた。 一通の手紙が届いた。 「シンジ、レイ!アンタらに手紙よ!日本から」 「え?父さんかな?」 シンジは手紙を受け取った。 《シンジ、レイ、来い》 「な、何よこれ、喧嘩売ってんじゃないの!」 「違うよ、父さんは人との付き合いが余りにも苦手すぎるだけだよ」 「碇君、準備は出来たわ」 「用意良いわね・・・」 「そろそろ来る頃だと思ってたから」 「全く・・・まあ良いわ、私もその内日本に行く事になるでしょ」 「たぶんね」 そして、二人は日本に向かった。