ユニゾン特訓開始から2日後、 「・・レイ、お弁当届けてくれる?」 レイはコクリと頷き、弁当箱を持ってシンジの部屋に向かった。 玄関で靴をはき、部屋を出て、シンジの部屋の玄関を開けて中に入る。 「ふん、その程度で良く大口を叩いてられるな」 「はぁ・・はぁ・・はぁ・・」 シンジは無茶苦茶なハイペースで引っ張りまくりアスカをばてさせた。 今、アスカは荒い息をつきながら、シンジの罵倒を猛烈な屈辱を感じながら聞いている。 前回のし返しと言った所なのだろうか? 「・・・碇君、お弁当、」 シンジは差し出された弁当を受け取った。 そして、アスカにも差し出す。 アスカは荒い息をつきながら受け取ったが、とても食べられるような状態ではなかった。 「情けないな」 キッと睨む、それが今のアスカの限界だった。 シンジとレイはダイニングでレイラの作った弁当を食べている。 やはり美味しい。 「・・・碇君、」 「・・何?」 「・・碇君は死にたいの?」 「・・・・・」 ミサトから言われた事ではあるが、レイから言われると、本当に強烈に聞こえる。 「・・・碇君が、弐号機パイロットにどういう感情を抱いているのかは知らない・・でも、それは命よりも大事な事なの?」 「・・・・」 シンジは、眉間に皺を寄せた。 それはそうなのだが・・・どうしてもアスカと合わせると言うのはしたくない、 「・・・・・」 レイはシンジの顔をじっと見詰めてくる。 「・・・私は、碇君には死んで欲しくない、生きて欲しい・・・・駄目なの?」 じっと上目使いに見詰めてくる。 「・・・・」 「・・・・」 シンジは、大きな溜息をついた。 「・・・努力はする・・・」 「・・そう、」 レイは僅かな笑みを浮かべた。 そして、暫くの休憩の後、再び、特訓が再開された。 アスカの弁当を見てみると、半分ほどは食べた様だ。 「・・・」 「セカンド、」 キッと睨んでくる。 「未だ、死にたくは無いからな・・・そっちのペースに合わせてやるよ、」 「くっ」 屈辱に全身を震わせている。 レイは部屋の隅でじっと二人のことを見つめている。 その後、シンジがアスカのペースに合わせることで、二人の動きはほぼ一致した。 「まあ、これで、大丈夫だな」 「・・いえ、」 「ん?」 「何よ!」 「もう一度、やってみて」 「・・ああ、」 「何なのよ!」 取り敢えず、レイの言う事に従い、もう一度始めからやり直す。 レイはすっと拳銃を取り出して銃口をシンジに向けてきた。 「なっ!?」 そして、引き金を引く・・・発射されたのは実弾では無く、プラスチックの玉であった。 シンジは容易く玉を交わす。 「・・だめ、ユニゾンが崩れたわ、」 「そんなの当たり前じゃない!!」 「そんな事されて、まともに踊れるわけ無いじゃないの!」 「・・では、死ぬわ」 死ぬと言う事を直接突きつけられる。 シンジは気付いた。戦うのは戦場、予定された動きなどあろう筈も無い・・・ しかし、今のアスカとそこまであわせられるとはとても思えない。 「どう言う事よ!!?」 「・・戦うのは戦場、戦場においては、何が起こるかなんて分からないわ」 「んなの!!無理に決まってんじゃないの!!」 「・・そう、それが、このユニゾンの難しさ、予め決められた通りに動きをあわせる事はまだまだ序の口でしかないわ」 「「・・・・・」」 二人は黙ったまま、訓練を再開した。 二人とも沈んでいるからか、何も無ければパーフェクトと言って良い、 しかし、何らか、例えば、レイがエアガンで撃って来る等と言う事があると、とてもとても・・結局の所未だにユニゾンの完成には程遠かった。 ネルフ本部、総司令執務室、 耕一はミサトから報告を受けていた。 「シンジ君についてですが・・・」 「彼については私のほうでちゃんと把握している。」 「いずれ君にも教える事になるが、今は未だ、その時ではない」 「・・はい、」 「今は、只現状においての最善を尽くしてくれ」 「分かりました。」 ミサトは一礼して退室した。 夜、シンジのマンション、 レイラが作った夕食を3人で食べている。 誰も言葉を発せず、無言で食事が進んで行く。 ・・・・・ ・・・・・ やがて、食事も終わり、レイが帰り二人だけになってしまった。 どちらも口を開かず、緊張した空気が流れている。 結局その日はそのまま寝る事に成った。 翌日、朝から特訓を始めたが昨日と殆ど変化は無かった。 ミサトとレイが何やら相談をしている。 「・・・一旦訓練を中断しましょう」 二人は少し首を傾げた。 「ネルフ本部でエヴァを使ってやりましょう」 そして、ネルフ本部に移動してシュミレーションを使って訓練を再開した。 『いい、さっき説明した通りマギが判断した可能性が高い36の基本パターンを体に叩き込んで』 基本パターンを叩き込んで、それに近い誤差なら修正できるようにする・・・成功率は36パターン全てをマスターして51%と言う事である。 そして、その基本パターンを叩き込み、それから修正を広げると言う訓練が行われた。 夕方、シンジは職員食堂で夕食を取っていた。 冬月が近付いて来た。 「ちょっと良いかね?」 「・・ええ、」 冬月はシンジの対面に座った。 「調子はどうかね?」 「・・・そうですね、セカンドがもう少しマシなら簡単なんですがね」 「・・そうかね、しかしだね」 「分かっていますよ・・・死にたくは無いですからね・・」 シンジは視線をジオフロントに向けた。 「・・・」 「・・・・シンジ君、君達のような子供に人類の未来を託さなければ行けない形になっていることは、非常に情けない事だと思っている。」 (欺瞞だな) 「・・しかし、それ以外道は無いのだ・・頑張ってくれ」 「・・分かってます・・・これから訓練の続きがあるので、」 「ああ」 シンジは席を立ち、食堂を出た。 翌日、訓練終了後、 既に36パターン全てをマスターし、修正を広げる段階に入ってきた。 多少ずれがあってタイミングがずれてもそれを問題無く修正する・・ どのくらいずれるかにもよるが、相手の使徒の動きもある為、非常に難しい。 シンジは更衣室で着替えを済ませ、外へ出た。 更衣室の外にはレイが待っていた。 「・・綾波、」 レイは大きな弁当箱を持っている。 「・・・展望室で食べようか?」 レイは少し笑みを浮かべて頷いた。 展望室にやって来た。 テーブルセットにつき、弁当を広げた。 中には二人分の夕食がぎっしりと詰まっている。 早速二人は食べ始めた。 やはり、美味しい。 「・・ねぇ、綾波」 「・・何?」 「レイラさんってどんな人?」 ぴたっとレイの動きが止まった。 「あ、い、いや、そのさ、こんな事までして貰っているのに会った事も無いから・・・」 レイは驚きであろうか少し目を大きく開き、暫くして納得したかのような表情になった。 そして、直ぐに、申し訳無さそうな表情に、 「・・ごめんなさい・・」 「いや、別に良いよ・・それよりも、聞かせてくれる?」 レイはどう言う風に言えば良いのか考え始めた様だ。 ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・ レイはかなり悩んでいる。 良く分からないが、シンジの問いがレイをかなり困らせてしまった様だ。 「い、いや良いよ、それより食べよう」 流石にどこかホッとしたような表情で頷いた。 そして、作戦決行の日、 『良い、パターンの確認は問題無い?』 シンジは軽く頷く。 『ミュージックスタート!!』 音楽が流れ始めると同時に、一気に射出された。 一気に空中に出る。 使徒を確認した。 使徒がぶっ放して来たビームを交わし、射出されたスナイパーライフルを取り、ATフィールドを中和してぶっ放す。 瞬間使徒が飛び掛ってくる。 それぞれ左右に避け使徒の攻撃は地面を叩いた、兵装ビルからソニックグレイブを取りだし構える。 そして、一気につめより突く、 しかし弐号機が先ほどの使徒の攻撃でできた段差に躓いてしまいタイミングが僅かにずれてしまった。 「くっ!」 失敗した。 ソニックグレイブをコアから引きぬく、瞬時に修復してしまう。 「くそっ」 直ぐに間合いを取る、 しかし、弐号機は地面に倒れたままである。 使徒は2体で弐号機に対して攻撃を仕掛け始めた。 内部電源は刻一刻と減っていく。 「・・ソニックグレイブは・・・あそこか」 マップで確認した近くの兵装ビルからソニックグレイブを取りだし、両手に持つ、 弐号機がこちらに向けて投げ付けられた。 初号機は体捌きで弐号機を交わし一気に、間合いを詰める。 「はあああああああ!!!!」 桁外れに強力なATフィールドを一気に展開し使徒を弾き飛ばす。 防壁ビルにめり込んで動きが止まった瞬間、ソニックグレイブを同時にそれぞれのコアに突き刺す。 瞬間、使徒が爆発し、全てが光に包まれた。 誰かが傍にいる。 良く分からない・・・ (・・・誰だ?) 何かを話し掛けてきているようだ。 何か穏やかな気持ちになってくる。 (・・何、なんだ?) しかし、再びシンジの意識はまどろんで行った。 シンジは中央病院の病室で目を覚ました。 「・・・・」 誰かが傍にいた気がする。 布団の上に蒼い髪が落ちているのに気付いた。 「・・・綾波だったのか・・・」 圧縮空気が抜ける音がしてドアが開いた。 トレイに朝食を載せてレイが入ってきた。 「・・目、覚めたのね」 「・・ありがとう」 「・・いえ、構わないわ」 レイはトレイを台の上に置いた。 シンジは、朝食を食べる事にした。 午後に、本部の作戦部に顔を出して、ミサトから説明を受けた。 「御苦労様・・・」 「シンジ君のおかげで何とか助かったわ」 「・・で、どうなったんですか?」 「ええ、弐号機は大破、初号機も至近距離でアレだけの爆発の直撃を受けた事で中破したわ。アスカに関しては1週間ほど入院する事に成ったわ」 次の使徒、サンダルフォンには間に合うだろう。 「・・そうですか、」 「ええ、」 「では、この辺りで失礼します。」 シンジは退室した。