薔薇の館に行くとまたお姉さまが来ていた。 「あ、ごきげんよう、お姉さま」 「ごきげんよう、祐巳」 なにやら楽しそうな笑みを浮かべて、どうしたのだろう? 聞いてみると「じゃーん」と言いながら大きな紙袋を取り出した。 「何ですか?」 「祐巳は、ビッグマッ○とか、知ってるよね?」 「ええ、前に食べてみたこともありますし、それで?」 「まず、これがビッグ」 と言って有名な二段重ねのハンバーガーを紙袋から取り出してテーブルの上に置いた。 まずというからには次があるのだろう、パターン的にメガマッ○か、この前売り出されたクォーター○ウンダーだろうか? 「そして、これがメガ」 二段重ねのそれぞれの肉が二段、計四段積み重なったハンバーガーをテーブルに置く。 「食べたことはないんですけど、今はレギュラーメニューになりましたね」 「そう。ここまでは、レギュラーメニュー。クォーター○ウンダーは知ってるよね?」 「はい、そっちも食べたことはないですけど」 「これが、ダブル・クォーター○ウンダー・チーズを二段重ねにしたギガ!」 そう言ってメガマッ○を拡大したような二段を二段重ねのハンバーガーをテーブルの上に置いた。これは大きい。なるほど、これを見せたかったのか。 「大きいですね」 「でしょ、こんなの一つで大の大人でも満腹って感じ」 「ですね」 「そして、この上」 えっ、上? 「これがテラ!!」 三段を三段重ねにした巨大なハンバーガーをテーブルの上に置いた。 「どう、肉だけで2.25ポンド! なんと1kg!」 「こんなの、とても食べられないですよ」 「でしょ! ほとんどパーティーサイズて感じ、いや、クォーターを買いに行ったら思わずやってみたくて特別に作って♪ってお願いしちゃったのよ」 それはファーストフード店で何ともはた迷惑な行為……店員の方々並びに来客中だったの皆さま、姉がご迷惑をおかけしました......と心の中で謝る。 「まったく。ずいぶん高かったんじゃないですか」 「まね。で、祐巳くん、君はテラの上の接頭語を知っているかね?」 「ま、まさか……」 嫌な汗がつぅっとほおを流れる。 「これがペタ!! 肉だけで4ポンド! 1.8kg!」 四段を四段重ねにしたまさにタワー的なハンバーガーをテーブルの上に置いた。もう持つのも重そうだし、ここまでやりますか!? ことばを失っていると実に楽しそうに「ふふふ。どうやら驚いたようだね」とか言ってきた。 「こんなの目にしたら誰だってことばを失っちゃいますって。ほとんどテレビで出てくる大食い大会のサイズじゃないですか」 「うん、そんな感じだね。どう? チャレンジしてみる?」 「無理ですってば」 「だよねー」 「当たり前でしょう」 「……何をしているんですか?」 ふとどこか冷ややかな声をかけられた。 振り返るとそこに祥子さまと志摩子さんが…… 「聖さま、そのハンバーガーの山脈はどうされるおつもりです?」 「え?」 「世界の八人に一人が飢餓で苦しんでいるというのに、まさか捨ててしまうなどと言うことはお考えではないですよね?」 志摩子さんからも強烈な嫌みというかそういった感じのことばをぶつけられたお姉さまは呻いて、何か言おうとしたものの結局口ごもってしまった。 しばらくして「あー……そう、薔薇の館のみんなで食べれば」とか言ったのを「薔薇の館には何人いるかご存じですよね?」とばっさりと祥子さまに斬られてしまった。 「あぅあぅ」 まったく、ここは妹としてお姉さまの窮地を救う手を考えねば……無理です。食べきれません。何食かに分けるとか、それも絶対に飽きて嫌になりそうだし…… 「しかたないですね。剣道部のみんなに協力してもらいましょう」 いつの間に来ていたのか令さまが救いの手をさしのべてくれた。 その後、薔薇の館のメンバーと剣道部のメンバーみんなでハンバーガーの山をいただくことになった。途中言っていたようにまさにパーティーサイズで、案外懇親会的な感じにもなったので、その点はよかったかもしれない。 ちなみにお姉さまは話を耳にした蓉子さまからもこってり絞られることになったそうな。