ユウキの受難

◆第5話

ユウキの家、
ダンスによるアスカとのユニゾンの特訓が始まった。
(ふん、こんな奴と誰があわせられるものですか)
アスカはハイペースで飛ばした。
(アスカ母さんそんなに飛ばさないで!)
ユウキは必死で食らい付いている。
(むき〜〜〜〜!!)
更にペースを上げた。
(うわああああ!)
ユウキは全速力。
「きいいい〜〜〜!!!!」
アスカはいきなりユウキに蹴りを撃ち込んだ。
「ふご!」
ユウキは吹っ飛ばされた。
(何故??)
ユウキには何なのかさっぱり分からない。
レイがアスカに詰め寄った。
「・・何故碇君に対して暴行を加えたの?」
「暴行?冗談言わないでよ、これのどこが暴行なのよ?」
エヴァの特殊装甲を凹ます女の言う台詞ではない。
ユウキは何とか立ち上がった。
そんな中ミサトがやって来た。
「あんら?険悪な雰囲気、どうしたの?」
・・・
ユウキは事情を説明した。
・・・
「アスカ、明らかに貴女が悪いわ、でも、その理由くらい聞かせてくれても良いんじゃない?」
「きいい〜〜!!!!!」
理由を言う事が出来ないアスカは飛び出していった。
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・困ったわね・・・・ユウキ君取り敢えず追っかけてくれる?」
「私も行くわ」
そして、二人はアスカを追った。
外に出て驚いた。
アスカの通った後は、手当たりしだい破壊されていた。
「・・・マジ?」
・・・・
・・・・
・・・・
破壊された後をたどって遂にアスカに追い付いた。
アスカは公園の木を殴り付けた。
瞬間、木に亀裂が入り根元から裂けた。
(・・・使徒よりも怖いのでは?)
アスカがこちらを振り向いた。
ユウキは恐怖で全身が凍ったかのようになった。
レイも身構え、拳銃に手をかけた。
「あ〜あ、すっきりした。ん?迎えに来たの?帰るわよ」
ストレスを発散し切り、すっきりしたアスカであった。


翌日、ユウキの家、
ユウキはびくびくしながら踊った為、アスカについていく事が出来なかった。
「ふん、所詮アンタみたいな凡人じゃ、この天才たる、惣流アスカラングレー様に合わせるなんて事は出来ないのよ」
アスカは仁王立ちで言った。
ユウキは頷いた。
確かに、あの破壊力は無理である。
「だから、特別に、アスカ様、この私目にあわせてくださいませって、土下座して言ったら、あわせてあげるわよ」
(・・・・)
ユウキは、余りにアスカの性格のギャップに、理解できず戸惑った。
一体何があったのか、
「ほ〜ら、どうしたの?」
レイが間に割りこんだ。
「何よ!?」
「・・零号機の改修は、弐号機の修復を止めれば、作戦決行日の前日に完了する。貴女が碇君にあわせられないならば、私と零号機で行くわ」
アスカの顔が真っ赤に染まった。
「ふざけんじゃないわよ!この天才惣流アスカラングレー様がどうしてさがんなくちゃなん無いのよ!あわせるのはこいつでしょうが!!」
「・・・冬月副司令、どうされますか?」
レイはドアに向かって声をかけた。
冬月がドアを開けて、入ってきた。
「・・・セカンドチルドレン、君は使徒と戦う、その意味を大きく勘違いしている、そんな状態でエヴァに乗せる訳にはいかん、作戦はレイとユウキ君で行く、君は待機していたまえ」
アスカは驚いて絶句した後、ユウキとレイに凄まじい殺意をぶつけた。
ユウキは余りの恐怖に漏らしそうになった。


その後、アスカが出て行き、ユウキとレイでユニゾンの特訓を始めた。


ネルフ本部総司令執務室、
「・・如何でしょうか?」
碇は報告書を読んだ後、にやりと笑った。


夜、ユウキの家、
リツコがやって来た。
「さて、ユニゾンの出来はどう?」
「問題ありません。目標点を大きく超えています。」
「そう、では、引き続き努力して、あと、更に二人のリズムを合わせるために、排泄を除く全ての行動を共にしてもらいます」
「了解」
レイは即答した。
「・・ちょっと待ってください」
「何かしら?」
「まさか、お風呂とかもですか?」
「当然よ、夜は同じ布団で寝てもらうわ」
「ええ〜〜!!」
ユウキは反論したが、
「人類が生き残る為には一切の不安要素も残しては行けないの、分かるわね」
の一言で黙らされた。
レイは頬を桜色にして軽く笑みを浮かべ、間違い無く嬉しそうである。


バスルーム、
レイがシャワーを浴びている横でユウキは真っ赤になり湯船に使ってレイを見ないようにしている。
しかし、音がどうしても想像を掻き立ててしまう。
「ふぅ」
レイの声一つ一つに過剰な反応を示してしまう。
ユウキは自分の身体の1部分の変化に気付いた。
「ぼ、僕もう出るよ」
「・・では、私も出るわ」
「い、いや、僕が先に出るから、綾波はまだもうちょっと入っててよ」
その後、ユウキは静止するレイを振り切って風呂を出た。


深夜、
レイはユウキにがっちり抱き付いて安らかな寝息を立てている。
一方ユウキの方は、寝られない。
全然寝られない。
「・・・羊が13万2264匹、羊が13万2265匹・・・駄目だ・・・・」
ユウキはレイをレナだと思いこむ事にした。
「そうだ、ここにいるは母さんじゃない、レナなんだ、レナが」
「・・碇君・・」
ぎゅっとレイが強く抱き締めてきた。
「うわ〜〜〜!!」
ユウキの大声でレイが目を覚ました。
「・・・どうかしたの?」
「え、えの、いや、その、まあ、何でも無いんだけど」
「・・そう・・」
レイは再び瞼を閉じ直ぐに寝息を立て始めた。
(・・・トイレに行きたくなって来ちゃった・・・)
しかし、しっかりロックされており身動きが取れない。
「・・・うう〜〜、母さん・・・・そんなに僕を苛めて楽しいの?・・・」
その頃、暗く広い部屋の中央で楽しいと呟いたものがいたとかいなかったとか


翌朝、
ユウキは大きな隈を作っていた。
今、朝食を食べている。
「・・・どうしたの?」
「・・・寝られなかった・・・」
レイは少し考える仕種をした。
「では、今から寝ましょう」
「はい?」
「睡眠不足は作戦の遂行に差し障る。だから」
ユウキは安堵の溜め息をついて朝食後、寝ようとしたのだが、
レイが抱き付いてきた。
「あのさ・・・これから寝るんだけど・・・」
「だから」
ユウキは首を傾げた。
「いっしょに寝なくては行けない、これは命令」
ユウキはどう言う事なのか漸く分かった。
「・・・・」


昼にやって来たリツコとミサトに事の次第を話し、ミサトに相当からかわれた物の、何とか、別の布団で寝ることにしてもらった。
レイは不満そうに頬を膨らませていた。
その表情を見てユウキは泣きたく成ってきた。
只、アスカの事も少し気にはなっていた。
今のアスカはユウキの知るアスカではない。どう言う展開に成るか予想できないのも事実であった。


ユニゾンに関してはかなり上々、ほぼ完成し、後は、微修正をするだけである。


丑三つ時、某神社、
アスカが丑の刻参りに来ていた。
だが、服装と言うか何か、いや色々と変である。
首からは十字架のペンダントをぶら下げ、鉄下駄をはき、ユウキのソフビ人形を片手に、背中に鉄杭を担ぎ、そして、何故か塊と刺繍が去れた赤装束、そして、右手には鎖付きの鉄球・・・いったい誰と戦うつもりなのだろうか・・・・
「うおおおお〜〜〜!!!!」
「くたばれえええ〜〜〜!!!」
アスカは鉄球を振り回しユウキのソフビ人形を攻撃した。
一撃でこなごなに成り、周囲の木々を破壊して行く・・・・


翌朝、ネルフ本部、
待機室に入ると、アスカが寝ていた。
「あれ?」
よっぽど疲れているのか、ぐっすりと眠っている。
口から涎を垂らして妙に可愛い。
「アスカ母さんも、寝てればなぁ〜」
ユウキは、アスカとミクを比べて見た。
良く見てみると、少しではあるがアスカの方が顔も整っている。
「う〜ん」
アスカは目を覚ました。
そして、目の前には自分の顔をじっと見詰めるユウキが・・・
ユウキは身の危険を感じたが既に遅かった。
アスカの強烈な飛び踵落としが炸裂し、沈黙させられた。


ユウキが目を覚ますとレイがアスカに詰め寄っていた。
「・・何故碇君に暴行を加えたの?」
「な、何よ!そいつがいやらしい事をしていたからでしょ!!」
「・・それが暴行を加える理由になるの?」
レイはアスカを睨みつけ、アスカは汗を掻いた。
「な、なるわよ!、そいつは女の敵なのよ!」
「・・・」
呆れたような表情を浮かべてレイはユウキの元に近寄った。
「大丈夫?」
「あ・・うん」
「ふんっ」
アスカは待機室を出て行った。
そして、レイは口を開いた。
「・・ところで、どんな嫌らしい事をしたの?」
空気が凍った。
レイの言葉は抑揚がなく単調としているが、ほぼ明確に怒りが混じっている気がする。
「あ、ははは、」
「教えて」
誤魔化そうとしたが許されなかった。
「あ、あのさ、アスカの寝顔が可愛くてさ、その、じっと見ていただけなんだけど・・・」
「・・そう・・・私は?」
「へ?」
「私は可愛くないの?」
レイはぐっと顔を近付けた。
「私はアスカよりも可愛くないの?」
「あ、あの、その、うん・・綾波は可愛いよ・・その、アスカよりも」
パッと笑顔になって抱き付いた。
「嬉しい」
ユウキは真っ赤になった。


昼の作戦は何事も無く無事成功し、二人は帰宅した。
「あ〜、おかえんなさい」
何故か家にはアスカがいた。
「・・何で?」
「なんでって、アタシの荷物ここに全部あるし、又他に移すのが面倒なだけよ、なにも、アンタの料理が美味しいからとかじゃないから」
ユウキは思いっきり顔を顰めた。
だが、その一方で、アスカが何故こんな雰囲気なのか理解できなかった。
その後、作戦が終わったのに、一緒にお風呂に入ろうとするレイをなだめるのに1時間を費やし、今、リビングで休んでいた。
ユウキは突然凄まじく嫌な気配を感じた。
「くっくっく、これからたっぷり、扱き使って上げるから覚悟しなさい」
後ろから掛けられた声にユウキは恐怖を感じた。
レイが風呂から上がり、リビングに入ってくるとアスカの雰囲気が一変した。
「あっ、もう出たの?じゃあ、次、アタシが入るから」
アスカがリビングを出て行った後、ユウキはさめざめと泣いた。