結局色々あって、ユウキはマヤとの同居ではなく新居を与えられた。 家具や食器が2人分あるのは気のせいだろうか? 多分・・気のせいなのだろう。 ユウキは、今日から第3新東京市立第壱中学校に通う事に成った。 20年後の全国4位である。一般公立中学の勉強などと・・・ ユウキは、取り敢えず、問題集として赤本を持っていく事にした。 そして、教室での自己紹介、 「碇ユウキです。宜しくお願いします。」 女子の黄色い声が上がった。 ユウキはちょっと退いた。周囲の学生は優等生中の優等生ばかり、このような俗物的な者など殆どいない上に、二人の姉、ミクとレナが凄まじい眼光を光らせて見張っているので、ユウキに近付こうと言う女子は極限られた友人だけである。 「じゃあ、碇君の席はあの席に座ってくれるかな?」 その席はレイの横の席である。 そうとは知らないユウキは素直に席に座った。 そして、何故かいきなり期末試験が始まった。 ユウキは5分で解き終わり、後の40分間は寝ていた。 翌週の月曜日、廊下に順位が張り出されていた。 5教科 1 碇ユウキ 500 2 綾波レイ(追) 496 3 洞木ヒカリ 442 4 高橋セイコ 427 5 大北ジュン 410 6 順天堂テツヤ 378 【中略】 12 相田ケンスケ 346 【中略】 32 浜原ヨシト 65 欠席 鈴原トウジ 0 欠席 山田ヨウコ 0 最高 碇ユウキ 500 最低 浜原ヨシト 65 平均 326 在籍 34 受験者 32 生徒達は掲示の前でがやがやしている。 ユウキも見て吃驚した。 「嘘!」 ユウキが叫んだのは、満点だからではない、あの天才中の天才である、母綾波レイに勝ってしまった事に驚いている。 ユウキは女子からは憧れの男子からは理不尽な嫉妬の視線を受けながら教室に入った。 その瞬間、時間が止まったかに思えた。 窓際の席で、一人、レイが文庫本を読んでいたのである。 廊下に皆が集まっていた事もあり教室は物音一つしない。 ユウキは少し首を振ってから自分の席、つまりレイの横に座った。 「あ・・あの、おはよう・・」 レイは視線だけユウキに向けた。 「・・・・」 凄い緊張を感じている。 背中が汗ばんできた。 皆無視されるであろう事を当然としている。 「・・おはよう・・碇君・・」 教室中の男女が叫び声を上げた。 「な、ななに!!??」 そして、凄まじい質問攻めに去れたユウキは心身ともに疲れたまま授業に突入した。 「その頃私は・・・・」 第3新東京市立第壱中学校名物のお話しが始まった。 ユウキは、第2東京大学の赤本を解いている。 そんな中、ふと、メッセージに気付いた。 《碇君があのロボットのパイロットだって噂ホント? Y/N》 驚いたシユウキは周りを見まわすと、後ろ方の女子二人が手を振っていた。 《ねぇ、ホントなんでしょ Y/N》 (はぁ〜機密事項が駄々漏れだなこりゃ) ユウキはY、E、Sとキーボードを叩いて送信ボタンを押した。 その瞬間、教室中の生徒が驚きの声をあげ、一瞬にしてシンジはクラス中の者に取り囲まれて質問責めにあった。 「ちょっと!!授業中よ!!!」 二人の男子はユウキをただ見ているだけで、ヒカリはシンジを取り巻いている者に注意をしているが効果はない。 窓際の席のレイは寝ていた。 チャイムが鳴って休み時間になると、質問責めにあっているユウキにトウジが近付いて来た。 「転校生、ちょっと顔かせや」 (あっ、鈴原のおじさん、こんな時から黒ジャージなんだ) ロシアにジャージ文化を広げた恐るべき男、鈴原トウジロシア支部司令。 ユウキは軽く頷き、トウジについて体育館との渡り廊下の近くに来た。 トウジは拳を振り上げユウキの左頬を殴りつけた。 ユウキは訳が分からないまま後ろに吹っ飛ばされた。 「ぐっ」 「わしはなあ、お前を殴らなあかん、殴らな気が済まんのや。」 ユウキは鈴原の顔を見た。 「わしの妹はこの前の戦闘で瓦礫に挟まれて怪我したんや、敵やのおて味方が暴れて怪我させられたんや。」 因みに、陸自とサキエルの仕業である。 「・・証拠は?」 ユウキは起き上がりながら尋ねた。 「証拠ぉ?」 「初号機の行動は直線的な行動のみで、周囲に被害が及ぶとは考え難い、及んだと言うならば、その被害を証拠とともに戦争被害として公的機関に届け出るべきものであり、末端のパイロットに対する逆恨みの暴行など論外である。ましてや、世界に数人しかいないチルドレンの重要性は米国大統領をも上回るものであり、当然避けなければ行けない事態である上に、私見ではあるが、エヴァ出撃の前の戦闘、使徒と、国際連合軍での、NN地雷を含む総力戦における被害と見る事こそ妥当だと思うが」 「知るかい同じじゃ!」 「陸上自衛隊とネルフは司令系統が全く異なる別組織で」 「じゃかあしい!!」 不利になったトウジは有無を言わせずユウキに鉄拳を撃ちこんだ。 ユウキは気を失った。 ・・・・ ・・・・ ・・・・ 何か柔らかいものが顔に触れている。 ユウキは目を開けた。 レイの顔が目の前にあった。 「・・気付いた・・」 レイはどこかほっとしているようだ。 「・・あ、綾波さん?な、何を?」 「・・人工呼吸・・必要無かったわね・・」 「・・・」 ぼっと効果音付きでユウキは真っ赤になった。 「・・碇君、非常召集・・」 「・・・あ・・うん・・・行こう・・・」 シンジは起き上がり二人でネルフ本部に向かった。 ネルフ本部、ケージ、初号機、 『ユウキ君良い?』 ミサトからの通信である。 「・・あ、はい」 『敵のATフィールドを中和しつつパレットの一斉射、練習通り大丈夫ね?』 今度はリツコ。 「・・・はい・・・でも、殴った方が破壊力が強いですし、大体、劣化ウラン弾なんかじゃ貫通できなければかなりの弾煙が出るじゃないですか」 『つべこべ言わずに作戦に従いなさい!』 「・・・はい・・・」 『エヴァンゲリオン初号機発進!!』 射出され、兵装ビルから地上に出た。 今度の使徒は奇怪な形をしていた。イカとゴキブリを合わせたような使徒である。空中に浮いている。 使徒は体を起こした。 「一応行きますよ」 初号機は使徒に向けてパレットガンを撃った。使徒は見る見る弾煙に隠れて見えなくなった。 『バカ!敵が見えない!』 ミサトが叫ぶのと同時に、煙の中から2本の触手が伸びて来て吹っ飛ばされた。 ユウキは一瞬切れそうになったが、冷静に避けた。 「くっ」 更に攻撃を食らった時に、アンビリカルケーブルが切断された。 「凄い切れ味だ」 『ユウキ君!後5分しかない、早く倒さなきゃヤバイわ!』 だったら黙ってろと言いたい。 「くっ」 初号機は後方に思い切りジャンプした。 丘の中腹から使徒を見下ろした。 「行きます」 警告音が鳴った。 「え?」 モニターの隅に、トウジとケンスケが映っている。 「・・・おい・・・」 使徒が接近してくる。 『ユウキ君其処の二人を一時エヴァに収容その後、一時退却、そして再出撃よ。』 『越権行為よ!葛城1尉』 『今の責任者は私です!』 本当の責任者、冬月がこの時何を思ったかは本人以外知る由は無い。 『ユウキ君!』 ユウキの額には青筋が無数に浮かんでいる。 何とか怒りを押さえつけてミサトの指示通りホールドモードにしてエントリープラグを排出し、二人が乗り込んだ事を確認して通常モードに戻した。 二人はユウキの余りの形相に怯えて声も出せない。 使徒が触手を初号機に振り下ろして来た。 初号機は触手を受け止め、使徒を蹴り飛ばした。 『今よ、退却して!回収ルー』 (プログナイフ装備) 初号機はプログナイフを装備した。 『!、何を考えてるの!!!』 「黙ってろ!」 ユウキは切れた。 初号機は瞬時に亜音速まで加速し、コアをプログナイフで貫いた。 「使徒殲滅、これより帰還する」 ユウキは戻ると早速尋問された。 「何故、命令を無視したの?」 「冗談じゃないですね、僕は死にたくはありません」 「・・何を、言ってるの?」 ミサトは逆切れしたのか青筋を浮かべた。 「先ずパレットガンが通用しないと言う事は最初に上申したにも関わらず黙殺され更にミサトさんが立てた作戦で僕が反対したにも関わらず実行して指摘した通り弾煙で目標が見えなくなった時にバカ?ふざけんじゃないですよバカは思いっきりミサトさんの事です更に早く倒さなきゃヤバイ?いい加減にしたら如何ですかパイロットにそんな訳の分からない事を言って集中力を削ぎ危機感を強めるような愚かな指揮官は僕は知りませんし更に民間人の保護に何故エヴァをわざわざ使うんですか?いくらでもそこら辺に暇な職員がいるでしょうがミサトさんもその一人としか言い様が有りませんよ仕事何もしてないんですからね更に撤退命令?自殺願望者ですか?ジオフロントに攻め込まれたらジエンドでしょうが何を考えているのかさっぱり分かりませんよどうせ民間人の保護を第1にとか偽善ぶった行動なんでしょうけど愚か極まりないですねサードインパクトを起こされたらその保護したものも死ぬしそれだけにはとどまらないこの4枚のプレートが重なり合う日本でサードインパクトを起こされようものなら地殻が崩壊しますその被害は地球上の全生命を絶滅させるには十分すぎますしかも自分が責任者と勘違いをして口論?小学生ですか?責任者は冬月副司令でしょうが更に口論に至っては論外も論外!!」 その後も暫く機関銃のように言いたい放題言った。 「・・・言いたい事はそれだけかしら?命令違反と上司侮辱罪で、2ヶ月営倉に入ってもらうわ、連行しなさい」 ユウキは黒服に両脇を挟まれ連行された。 数時間後、総司令執務室、 「葛城1尉を2尉に降格する」 ユウキの言った事は全て正論であり、ミサトはその上司によって罰された。 夜、ユウキは釈放されたが、ミサトの作戦指揮権がそのままだと言う事を知り、あんな愚かな作戦指揮で死にたくは無いから消えますと書き置きをして姿をくらませた。 IQ100程度の保安部や諜報部の目をくらますくらいわけなかった。 翌日、ユウキは大雨に打たれ、風邪を引き、高熱で地面に倒れた。 ユウキは目を開けた。 自宅のベッドだった。 「・・目、覚めたのね・・」 レイがベッドの横の椅子に座っていた。 「・・綾波・・」 「熱はもう下がったわ、でも、今日1日は寝ていたほうが良いわ」 「・・うん・・」 ユウキは、未来で、熱を出した時に母レイに同じ事を言われた事を思い出した。 レイは林檎を剥いている。 そう言えば包帯も全部取れている。一体何日間寝こんでいたのだろうか? 「・・はい・・」 レイは林檎を皿に載せてユウキに渡した。 「ありがとう」 ユウキは少し目を潤ませながら林檎を食べ始めたが、チャイムが鳴った。 レイは無言で部屋を出った。 「・・母さん・・」 しかし、何故レイがここにいたのかまだ分かっていないだろう。 そして、壁一枚隔てた部屋の主が誰かも気付いていないのだろう。 他人から見れば羨まし過ぎるのだろうが本人にとっては果たして如何であろうか?