2015年7月1日(水曜日) 駅前に一人の少年が立っていた。 少年は茶色の髪に赤い瞳、白っぽい肌、中性的な容姿をしていた。 「・・・何で誰もいないんだろ」 少年は辺りを見回した。 青い車が轟音をあげながら近付いてくる。 「ハイブリッドカーかまだ現役で走ってるんだな」 青い車は少年の目の前で止まり、葛城ミサトが車から降りてきた。 「・・・ひょっとしてミサトさんですか?」 「そうよん」 「写真で見るよりずいぶん若いので驚きました。父がお世話になっています」 少年は軽く頭を下げた。 「あらん、お世辞?なかなかやるのね、ってこんな話をしてる場合じゃなかったわね、乗ってね?」 「はい」 少年は素直にミサトの車に乗った。 ミサトはアクセルを踏み込み車を走らせた。 「うわああ!!!!ぶつかるぅ〜〜!!!」 「大丈夫よん」 ミサトは直角カーブをドリフトで曲がった。 「ほらねん」 少年は気を失っていた。 「あらら、あのくらいで気を失っちゃって可愛いわね」 ミサトは法定速度80キロメートル毎時を大幅に越える速さで運転をしている。 少年はネルフ本部行きのカートレインで目を覚ました。 「あら、気付いたのね、これ、着くまでによんどいてね」 ミサトはネルフのパンフレットを手渡した。 「ネルフ・・・父のいるところですね」 「そう、国際連合直属の秘密組織、特務機関ネルフ、私達のいる所よ。」 「予想されうる使徒の再来に備え、人類の滅亡を防ぐ機関ですね」 「良く知ってるわね・・・ま、当然か」 ミサトは、少年が父から聞いているものだと思った。 「同級生に、マギをハッキングした人間がいますので」 なんか信じられない事を言った気がする。 「・・・何ですって?」 「ロシア支部のマギらしいですけどね・・・流石に本部には手も出せなかったって言ってました」 「それだって十分凄いわよ」 「僕も凄いって思ってます」 ジオフロントに入った。 「久しぶりですね」 「え?来たことあるの?」 「ええ、何年か前に」 そして、奇跡的に迷わずにケージに来ることが出来た。 「あら?ミサト、迷わずにこれたのね・・・処で、この子がサードチルドレン?」 「ええ、そうよ」 「ふ〜ん、まあ良いわ、ついてきてくれる?」 「あ、はい」 少年はリツコについてアンビリカルブリッジの上に移動した。 「そうそう、彼の同級生がロシア支部のマギをハッキングしたそうよ」 「それ本当?」 「彼も色々とネルフのこと知ってるみたいだし、そうなんじゃないの?本部には手も足も出なかったらしいけど」 「支部のセキュリティ考え直す必要がありそうね」 「真っ暗ですよ」 「ああ、それは」 ライトが一斉につき、初号機の頭部が現れた。 「これは・・・エヴァ・・・・それも初号機」 (どうやら色々と知っているようね) 『久しぶりだな』 碇が司令室に立っている。 「あ、久しぶりだね」 『出撃』 「出撃?ひょっとして僕が?」 『そうだ』 「まさか初号機で?」 『その通りだ』 「・・・・本当!?」 なにやら少年は嬉しそうだ。 『う、うむ』 「やった!」 明らかに少年は喜んでいる。 碇他リツコ、ミサトも戸惑っている。 「まあ、良いわ、こっちに来て、説明をするわ」 「はい」 リツコは少年を連れて別室に移動した。 少年は搭乗した。 『冷却完了、ケイジ内全てドッキング位置。』 『パイロット・・・エントリープラグ内コックピット位置に着きました!』 『了解、エントリープラグ挿入』 『LCL排出開始』 『プラグ固定完了、第一次接続開始!』 『エントリープラグ注水』 足元からLCLが満たされ始めた。 「これがLCLか」 LCLは直に頭の上まで満たされた。 『主電源接続、全回路動力伝達、起動スタート、シナプス挿入』 周りの壁に突然文字や幾何学模様や様々な模様が現れた。 『A−10神経接続異常なし、初期コンタクト全て問題無し。』 今度は、壁に回りの映像が映し出された。 『全ハーモニクスクリア、シンクロ率77.60%・・・暴走、有りません。』 ざわめきが聞こえる。 アスカの最高記録も71%止まりである。 『エヴァンゲリオン初号機発進準備!!』 ミサトの声が響いた。 『第一ロックボルト外せ!』 『解除、続いてアンビリカルブリッジ移動!』 周りの物体が動いていく。 『第一、第二拘束具除去』 『第3第4拘束具除去』 『1番から15番までの安全装置解除。』 『内部電源充電完了、外部コンセント異常なし。』 『エヴァンゲリオン初号機、射出口へ。』 エヴァが移動し始めた。 そして止まった。 『進路クリアー、オールグリーン!発進準備完了。』 『宜しいですね。』 ミサトが確認を取っているようだ。 『勿論だ。使徒を倒さぬ限り我々に未来は無い』 『発進!!!』 ミサトの声とほぼ同時にいきなり強いGが掛かった。 「ぐぅぅぅぅ」 少しして衝撃と共に止まり、都市の中に出た。 前方に使徒がいた。 『最終安全装置解除!エヴァンゲリオン初号機リフト・オフ!!』 肩の安全装置が外された。 『死なないでね。』 ミサトの声は懇願のようにも聞こえた。 『先ずは歩く事だけを考えて。』 リツコの声が聞こえる。 「戦場で歩けって・・・佐々木が聞いたら笑うでしょうね」 初号機は瞬時に間合いを詰め、使徒の腹部にあるコアを殴った。 コアに罅が入り使徒は吹っ飛んだ。 初号機が再び間合いを詰めたとき、ATフィールドがそれを阻んだ。 「くっ、ATフィールドか・・・エヴァも使えるはずだ」 初号機もATフィールドを展開した。一方的に使徒のATフィールドを消失させた。 使徒は逃げ出した。 「逃がさない」 初号機は跳躍し、蹴りで使徒のコアを背後から貫通した。 少年は、ネルフ中央病院で検査入院した。 7月2日(木曜日) リツコは病院の廊下を走っていた。 (彼がシンジ君ではない・・・・どう言う事?・・・・では、何故初号機が動いたの?) 検査によって、少年がシンジでないことが判明したのである。 少年は追加検査を受けている。 (余り長引かせるのも得策ではないかも知れない、すぐに司令に) 総司令執務室、 「司令、とんでもない報告です。」 「何事だ?」 「初号機の乗った少年、彼はサードチルドレン碇シンジではありません」 「何?」 「では、何故初号機が動いた?」 「・・・遺伝子学的には、彼は、碇シンジの、子供に当たります」 「赤木博士、今何と言った?」 「彼は碇シンジの息子です」 「・・・・・それは無理だろう」 「ゼーレか?」 「いえ、分かりません。母親の遺伝子を調べた結果、綾波レイでした」 「・・・・・・は?」 碇が間抜けな声を上げた。 冬月はまだ認識できていない。 「更に・・・少年の持ち物の中にマギと同等の性能を誇ると推測されるノートパソコンが見つかりました。」 「マギと同等だと」 「はい・・・」 「赤木博士、君の見解は?」 「恐らくは、タイムトラベラーかと」 「未来から来たというのか?その目的は?」 「直接聞くしかありません。尚、彼の名前は、碇ユウキのようです。」 「彼は今どうしている?」 「現在、病室で待機となっております。」 「今すぐ呼べるか?」 「はい」 ネルフ中央病院、 碇ユウキは、病院の廊下から外を眺めていた。 「ジオフロントか・・・・・・でもな・・・・」 電光掲示時計の年度は、A.D.2015になっていた。 「・・・・どっきりじゃないよね・・・やっぱ・・・・ここ、本当に・・・」 マヤが迎えに来た。 「総司令執務室に呼び出しが掛かってるから来てくれるかしら」 「はい」 ユウキは渡された服に着替えた。 (2015年か・・・総司令はおじいちゃんか) 総司令執務室、 ユウキは、碇、冬月、リツコの前に立っている。 「・・・・・今、2015年ですよね」 「ええ」 「・・・・・何て説明したらいいのか・・・」 「貴方がタイムトラベラーだって事かしら?」 ユウキが驚いた表情を浮かべた。 「貴方の持ち物調べさせてもらったわ・・・マギ並みのノートパソコンを見せられてはね・・・・」 「信じてくれるんですか?」 「ええ」 「僕は、2035年よりこの2015年に飛ばされた、碇ユウキ、父は、碇シンジ、母は碇レイ、旧姓綾波レイです。」 「貴方がこの時代に来た理由は?」 「分かりません。父と母にネルフに呼ばれて、電車に乗ったんですが・・・ついた駅は、2015年でした。」 「そうか」 「ノート返してもらえますか?」 「ええ」 リツコはユウキにノートパソコンを返した。 ユウキはノートパソコンを操作した。 「これが、みんなの写真です」 端から、ユイ、白髪の碇、アスカによく似た少女、アスカ、レイによく似た少女、レイ、シンジ、ユウキが並んでいる。 「・・・・何故ユイが写っているんだ?」 「へ?」 「ユイ君は変わらないな・・・」 「あの・・・おばあちゃんがどうしたんですか?」 「いや・・・いい、それよりも、シンジはどうなったのだ?」 「そう言えば、シンジ君はどうなったのだ?」 「諜報部に捜索命令を出しますか?」 「そうだな・・・」 「で、ユウキの処遇だが・・・・」 「どうする?」 「元々チルドレンは複数形なのだ、何人いても良かろう、と言うことで、碇ユウキはサードチルドレンとして、シンジの弟と言う事にしておく」 「はい」 「処で、ユウキ、レイのことについてはどのくらい知っている?」 「え?母さんが何か?」 「いや、あまり人に言えない秘密があるからそれを知っているのかどうかと・・・」 ユウキは首を傾げた。 「思い付かないなら良い、それよりも、今後のことを知っている限り教えて欲しいのだが」 「えっと、確か、2016年の使徒襲来の集結と共に、ネルフが公開されて、おじいちゃん達が辞職して、各国の管理下に置かれて、2019年に父さんがネルフ総司令に就任して、ネルフを再び世界組織に戻して、確か、父さんは、母さん達との3角関係でもめまくって、最終的に、法律を変えて、重婚したんだ。」 それ良いなと碇は考えている。 親子揃って全くと冬月は溜息をついた。 「そう・・・、で、シンジ君のもう一人の結婚相手がセカンドチルドレン、惣流アスカな訳ね」 「はい、で、長女のレナが産まれて、次女のミクが産まれて、最後に、僕が産まれました。」 「ふむ、使徒についてはどのくらい知っている?」 「機密事項だから教えられないって、だから、ネルフの敵だと言うことぐらいしか知りません。」 「取り敢えず、シンジが見つかるまで、初号機には乗ってもらう」 「うん」 「じゃ、私が本部を案内するわ」 リツコに連れられてユウキはでていった。 「碇・・・」 「なんだ?」 「ユウキ君の母親がレイと言う事は、レイはお前の娘になる訳なのだなと思ってな」 「そうか、そうだな」 「どうやったのかはわからんがユイ君も戻ってきているようだ」 「そうだ!」 碇は立ち上がった。 「どうした?」 「ふっ、娘の見舞いに行ってきますよ、冬月先生」 「おい、こら、委員会はどうした」 発令所、 「紹介するわね、彼は、シンジ君の弟で、碇ユウキ君、サードチルドレンで、初号機の予備操縦者よ」 「まず、彼女が、私の右腕の、伊吹マヤ、2尉」 「伊吹博士ですか、お会いできて嬉しいです」 ユウキは笑みを浮かべた。 マヤの方は顔を少し赤くしている。 「で、眼鏡が、ミサトの部下、ロンゲが・・・・・マヤ」 「はい、情報部所属の青葉・・・・・2尉です」 「だ、そうよ」 ユウキは汗を浮かべ。日向と青葉は泣いていた。特に青葉は号泣。 食堂、 「で、ここで、勤務中にもかかわらずビールを飲んでいるアル中が葛城ミサト」 「リ、リツコ・・・」 「ミサト、この子は、シンジ君の弟のユウキ君よ」 「え?」 「今、諜報部と保安部がシンジ君の行方を捜索しているわ」 「・・・・・・」 人類補完委員会、 嫌味が続いている。 碇の苛つきは臨界に達した。 「申し訳ありません!!全て私の失態です!!!」 委員達が固まった。 「既に情報操作は行いました!抜かりはありません!!追加予算に関しては!勝手にご判断下さい!!補完計画は順調!!遅延はない!!以上です!!何か未だ言いたいことはありますか!!」 「「「「「・・・・」」」」」 「失礼します」 碇の姿が消えた。 「碇・・・何かあったのか?」 「補完計画に遅延はないが・・・・」 「議長、追加予算・・・どうしますかね」 「うむ・・・・」 ネルフ中央病院、特別病室、 「で、ここが、レイの病室」 「はい」 「赤木君」 「は、あえ?」 碇と冬月が立っていた。 「委員会は?」 「終わった、何も問題ない」 「はあ・・・」 4人は部屋の中に入った。 「・・・碇司令・・・」 「レイ、紹介しよう、もう一人のサードチルドレン、碇ユウキだ。」 「宜しく」 レイはじっとユウキの目を見ている。 3つの赤い瞳が向き合っている。 もう一つは眼帯の下。 「・・・宜しく・・・」 総司令執務室、 「シンジ君の行方ですが・・・・」 列車内の映像が流されている。 シンジが居眠りをしている。 黒い空間が現れシンジを飲み込みユウキを吐き出して消えた。 「・・・恐らく、ユウキ君と入れ替わったかと」 「・・・それ、歴史的に拙くないですか?」 「パラレルワールド・・・と言う物ですね」 「・・・僕、戻れるのかな・・・」 「可能性は低いわね」 ユウキは大きな溜息を付いた。 「!!ちょっと待ってよ!僕が父さんの代わりになるって事はまさか母さん達と!!」 「そうか、なるほど、そうなるな」 「問題ない」 「おじいちゃん問題おおありだよ!」 「問題ない、レイの秘密に関係するがその程度のことは問題ない」 「問題あるよ!!」 「大丈夫だ。それに、シンジがいなければ、レイの心は閉ざされたままだぞ」 「う・・・」 「赤木博士、ユウキとレイのことだが」 「・・・・マヤが適任でしょう」 「分かった。ユウキとレイは、伊吹3佐の保護下に置く物とする」 「ちょちょちょっと!!!!」 「ユウキ、レイのことは頼んだぞ」 「おじいちゃん!!!」 「ユウキ、お前はシンジの弟なのだ」 「・・・・・・父さんって呼べってか」 有る意味、父親以上の受難が始まった。