第3新東京市立第壱中学校の屋上にシンジ、レイ、アスカの3人が立っていた。 「あんた、どっちが演技?」 「・・さあ、昔は、司令としての僕が演技だと思っていたけど・・・最近良く分からないんだ。」 シンジはどこか遠くを見ながら言った。 「そう言えば、初号機パイロットあんたの父親らしいわね」 あからさまにシンジは不機嫌な顔をした。 「あんな奴、父親じゃないよ・・・・初号機に乗れなかったら、殺してる」 その目は本気だった為に、アスカは一瞬ビクッとなった。 「シンジ君は捨てられたの、シンジ君だけじゃない、全てを」 「だから僕は、奴を見限った。でも、僕が初号機に乗れなかった以上、奴が乗るしかない」 「それ、どう言う事?」 シンジは赤い空を見た。 「・・・アスカなら話してもいいのかな?」 レイはじっとシンジの顔を見つめている。 「アスカ、これから話すこと、例えどんな事でも後悔しない?」 アスカは暫く考えた。 「しないわよ。何か凄い事隠してますってのに、聞かなかったら気になるだけじゃない」 「そうか・・・」 シンジは携帯電話を取り出してどこかに掛けた。 「私だ。第3新東京市立第壱中学校から、500メートル以内にいかなる者も近づけるな。区域内にいるものは直ちに退去させろ」 直ぐに周囲に避難勧告が発令された。 暫くして日も沈んだ。 僅かな照明が3人の姿を映し出している。 「話は15年前まで遡る。」 アスカの脳裏にセカンドインパクトが連想された。 「葛城調査隊は、南極で、第壱使徒アダムを発見した。様々な理由からそれの正体に近い物が分かった。そして、恐らくは、今のエヴァとパイロットのシンクロに似たような形で、アダムと人間の接触を行ったものと思われている。」 「え?」 「その際にアダムが暴走し、覚醒したと思われる。その時に、葛城博士はアダムのエネルギーを解放し、SS機関の膨大なエネルギーが放出されたと思われている。それがセカンドインパクト。その時の被験者が唯一の生き残りでもあるミサトさんだ」 「ミサト・・・・ミサトが、アダムと接触したって?」 「そう・・・そして、もう一人、生き残りがいた」 シンジは無表情だ。 「もう一人?」 「そう、9月12日に南極を発ち、9月13日に日本に帰国した。しかも、膨大な量の資料を抱えて」 「まさか・・」 明らかに、セカンドインパクトの発生を知っていたとしか思えない行動である。 「そう、少なくとも、その男と、その男の裏にあった組織は、接触実験は失敗する事を知っていた。恐らくは、葛城博士の行動まで予想していたんだろう。」 「そして、その男の名は、名は」 シンジの声が震えている。 「六分儀ゲンドウ」 (・・・初号機パイロット) 「その時、使徒のコアが南極の氷河の蒸発により、世界中にばら撒かれた。そして、同時に第弐使徒も目覚めた」 「第弐使徒!?」 空白の使徒、その一切の情報は封印されている。 「第弐使徒リリス、9月20日に、東京に襲来した。そしてNN兵器と核兵器の併用で、東京と引き換えに殲滅する。と、極秘資料には記されている」 「どう言う事?」 「リリスは死んでいない。」 「え?」 「リリスは、ネルフの前身、ゲヒルンに持ち込まれ、研究された。」 「そして、碇ゲンドウの指揮の下、E計画が始まった」 「E計画、そんな昔から・・・・まさか!」 「そう、エヴァは使徒のコピーだ」 「・・・エヴァが使徒のコピー・・・」 使徒と同じくATフィールドを使う巨人、確かに、そうかもしれない。 「ただし、完全なコピーではない」 「どうして?」 「使徒と、アダムが接触すればサードインパクトが起きる。正確には、それこそセカンドインパクトなんだが」 「エヴァでサードインパクト起こしてしまったら元も子もないって事か・・・」 「そして、エヴァが第3新東京市を狙ってくる理由、それは、ネルフ本部にアダムが餌として保管されているからだ」 「餌?」 「使徒が無差別に世界中に現れたら、対応の仕様がないだろ」 「サードインパクトを避ける為に世界中をめちゃくちゃにしちゃ本末転倒って事か・・」 シンジは軽く頷いた。 「話を戻そう、ゲヒルンでは、エヴァの試作体が次々に作られ、最終的に、零号機が完成する。続いて、弐号機が完成する」 「そして、碇ユイ、僕の母さんが、最初の被験者になった、」 「ちょっと待ってよ、初号機は?」 「計画は弐号機よりも先に出来ていたが、完成はまだ後の事になる。」 「そして、母さんは、零号機のコアに取り込まれた」 「取り込まれた?」 「そう、エヴァに取り込まれた。そして、母さんを失った奴は全てを放り出して逃げた」 「僕は、冬月先生にレイと共に育てられた。」 「ファーストと?」 二人は頷いた。 「で、逃げ出した奴に代わり、ゲヒルンを動かすために仕込まれた」 「その頃だと思う、2番目の被験者、惣流キョウコが接触中に精神汚染される」 「ママが・・・」 「そして、やがて、自殺」 「その時には、エヴァを動かすための具体的な方法も分かって来ていた。惣流キョウコさんの魂は回収され、弐号機のコアに入れられる」 「弐号機?ママがいるの?」 「ああ、弐号機は言って見れば惣流キョウコさんその者とも言えるかもしれない」 「・・ママの・・・・」 アスカはぶつぶつ呟いている。 シンジはアスカに考える時間を与えた。 「送っていこう」 そして、シンジは車でミサトのマンションまでアスカを送っていった。 シンジは呼び鈴を押した。 「は〜い」 ミサトが扉を開けた。 「あら、アスカ、おかえり・・・ところで、その彼は?」 「え?」 「あら可愛いわね〜、どうしたのアスカ早速、彼氏なんかつくちゃったの?」 ミサトの視界にレイが入った。 「あれ?レイも来たの?・・・・・え?」 ミサトはシンジを凝視した。 シンジはポケットからサングラスを取り出して掛けた。 「葛城1尉、言いたい事があれば聞こうか」 シンジはにやりと笑みを浮かべた。 「い、い、碇司令!」 「辞職願いはいつでも受け付けているぞ」 シンジはレイを連れて帰っていった。 ミサトは全身の力が抜けてその場に座り込んだ。 「バカ・・・」 翌日、ネルフ本部、発令所、 司令塔にナオコが上がっている。 「リッちゃん、ミサトちゃん、帰りに飲みに行かない?」 「母さん、発令所でそんな事言わないでよ」 「良いじゃない」 リツコはこめかみを押さえている。 「そうだ、オペレーターの皆も来なさいよ」 「え?俺達も」 「そうそう、奢るから、おいなさい」 司令塔後方のドアが開き、全員が雑談を止めた。 「副司令、おはようございます」 「ああ、おはよう」 冬月だった。 「副司令、今日、帰りに飲みに行きませんか?ここにいるみんなで」 「ん、そうだな・・・行こうか」 第3新東京市立第壱中学校、校舎裏、 ケンスケとトウジが隠し撮りしたアスカの写真を売り捌いていた。 「でや?」 「そうだな、過去最高の売り上げだ。これで、新しいカメラが買える」 「しっかし、凄い人気やな」 「それだけの価値があるよ」 「せやけどさ」 「どうしたの?」 「性格はちょっとなぁ」 「まあ、あの程度の自己中心主義ならまあ、良いんじゃないか」 「ねぇ、写真見せてくれるかしら」 「へいへい」 トウジはカタログを渡したところで絶句した。 アスカが青筋を浮かべて仁王立ちしていた。 その後、保健室に二人は運ばれた。 二人はアスカの性格を見誤っていた事に気付いた。 教室、 「あれ?トウジとケンスケは?」 「さあ、」 アスカはとぼけた。 「ネルフに行くからいっしょに行く?」 「御願いするわ、歩くより早いし」 3人は駐車場に移動し、車でネルフ本部に向かった。 「あ、アスカ、ネルフじゃ、司令とパイロットだからね」 「分かってるわよ」 シンジはサングラスを掛けた。 ネルフ本部の駐車場に止め、3人はネルフ本部に入った。 技術塔、実験司令室、 「これより、零号機再起動実験を行う そして零号機は無事起動した。 シンクロ率は最高記録の50.11%を記録した。 「続いて、弐号機の機体連動実験に入ります」 弐号機、 「ママ、ここにいるの?」 「ママ、アタシの事を守って」 『主電源接続、全回路動力伝達、起動スタート、シナプス挿入』 周りの壁に突然文字や幾何学模様や様々な模様が現われた。 『A−10神経接続異常なし、初期コンタクト全て問題無し。』 今度は、壁に回りの映像が映し出された。 『全ハーモニクスクリアー、シ、シンクロ率86.99%』 『ちょ、ちょっと、アスカどうしたのよ!』 (やっぱりママがいるのね) 「コツ、つかんじゃったみたいね」 アスカは満面の笑みを浮かべた。 その瞬間90.33%に達した。 シンジ、レイ、アスカが去った後、リツコの指揮のもと、初号機の連動実験が始まった。 いまだに、六分儀は2人と対面していない。 ネルフ本部中央回廊、 六分儀は前から歩いてくる人物に気付き歩みを止めた。 ナオコであった。 「あら?お久しぶりですわね」 「ああ」 「そうそう、ずいぶん遅れてしまいましたけれど、奥様の事お悔やみ申し上げますわ」 「くっ」 六分儀は思い切り顔を顰めた。 「・・・未だ根に持っているのか?」 「これはおかしな事を、今の貴方は私を惹き付けるだけの者はありませんわ、あるのは同情と哀れみ」 六分儀は歯を噛み締めた。 「そして、失望だけですわ」 警報が鳴り響いた。 「使徒のようですね、急がれては?」 「分かっている」 六分儀は吐き捨てるように言いケージに向かった。 「・・・やはり、未練があるのね・・・」 ナオコの呟きはこの広い空間に吸い込まれていった。 発令所、 「使徒を確認、第3新東京市に侵攻してきます。」 日向が報告した。 「初号機、搭乗を完了しました。」 「よし、初号機を出せ」 そして、初号機が射出された。 「目標内部の高温エネルギー反応!」 マヤが叫んだ。 「円周部を加速させていきます」 「初号機をリバース!」 ミサトが叫んだ。 「駄目です止まりません!」 日向が叫んだ。 「初号機との通信回線を切れ」 「え?」 シンジの命令の意味が分からないマヤが聞き返した。 「切れ」 「はい」 そして、3秒間初号機は加粒子砲を照射された。 勿論シンジが通信回線を切った理由は、六分儀の悲鳴を聞きたくなかったからである。 「初号機パイロット意識ありません」 「生命維持モードに!」 2時間後、総司令執務室、 ミサトが作戦の許可を取りに来た。 「超長距離射撃かね」 「はい、目標のレンジ外からの、高エネルギー集束体による一点突破しかありません」 「マギは?」 「賛成が3でした。」 「良かろう、やりたまえ」 「はい」 総司令個室、 シンジはサングラスを外した。 「はい」 レイがジュースを渡した。 「有り難う」 アスカはソファーにふんぞり返っていた。 「で、作戦の成功確率は?」 「64.3%だそうだ」 「ふ〜ん、」 「ま、アスカのシンクロ率が物を言っているな。」 「ふふん」 アスカは嬉しそうだ。 「ま、宜しく頼むよ」
あとがき シンジ「細かいところが何点かと、父さんとナオコさんの会話シーンが増えましたね」 YUKI「うむ」 レイ 「・・・」(今にも泣き出しそうな潤んだ瞳) YUKI「はうっ!」 シンジ「あ、綾波・・」 レイ 「・・・碇君・・・」 シンジ「ど、どうかしたの?」 レイ 「・・淋しいの・・・いっしょに寝ても良い?」 シンジ(真っ赤)