日本、この島国に秋が訪れなくなって、はや15年、その間に、人類は再び訪れるであろう災厄を迎え撃つ準備をしていた。 第3新東京市、第2時遷都計画に基づき、建設が進められているその遥か地下に存在する秘密組織ネルフの本部、 技術塔起動実験室、そこに、青色のカラーリングをした巨人エヴァンゲリオン零号機が立っていた。 「これより起動実験を始める」 少年の声で実験が始まった。 そして、暫くして事件は起こった。 「パルス逆流!!」 「中枢神経素子にも拒絶が始まっています!」 「コンタクト停止!」 白衣を着た金髪の女性、赤木リツコ博士の指示で各職員が必死に現状を打開しようとする。 零号機が拘束具を引き千切った。 「実験中止!」 「電源を落とせ!!」 「零号機内部電源に切り替わりました!」 零号機は壁を殴り付けている。特殊装甲の壁がいとも簡単にへこみ破壊されていく。 「恐れていた事態が起こってしまったの!」 そして更に追い討ちを掛けるような事に発展した。 「オートイジェクション作動!!」 「いけない!!!」 「硬化ベークライトを!」 リツコの指示で硬化ベークライトが零号機に吹き付けられた。 巨人の頚部から後方にプラグが射出された。 硬化ベークライトが凝固を始め、零号機の動きが鈍くなり始めた。 プラグは何度か壁や天井にぶつかった。 「レイ!!」 少年が実験室に飛び出した。 プラグはロケットの燃料が切れ落下し、床に叩きつけられた。 少年は直ぐに駆け寄り、ハッチを開けようとした。 「ぐっ!」 少年は余りの熱さに手を離し、同時にサングラスが落ちた。 零号機の動きが止まった。 「くそっ!」 少年は、無理やりハッチを抉じ開けた。 掌は焼け爛れ、感覚は殆ど無い。 「レイ!」 少年は、プラグの中のシートに横たわる青い髪の少女の名を呼んだ。 レイはうっすらと目を開け美しく透き通る赤い瞳が見えた。 「大丈夫か!?」 レイはゆっくりと頷いた。 「レイ!良かった、本当に良かった」 少年はレイの無事に涙した。 3時間後、総司令執務室で少年は、リツコと横に立つ彼女の部下、伊吹マヤの報告を受けた。 少年の両手は包帯が巻かれている。 少年は新しいサングラスをかけている。 「全治2ヶ月といったところです。命に別状は有りませんが絶対安静が必要です。」 「零号機は、今しばらく凍結し、暴走の原因を調査します」 「御苦労。赤木博士、伊吹2尉、」 「はい」 二人は一礼し執務室を去った。 「碇、委員会から呼び出しが掛かっているぞ」 少年の横に立っていた白髪の男、冬月副司令が少年に告げた。 そしてこの少年こそ、このネルフの総司令碇シンジである。 「当然のことだ、行って来る」 シンジは執務室を出た。 真っ暗な空間に6人の男の姿が浮かび上がった。 ここは、3次元立体映像による国際連合の実質的最高決定機関である、人類補完委員会の通信会議である。 シンジの反対側に座る老人はキールローレンツ、世界を牛耳る者の一人である。 「碇、零号機の起動失敗、もはや、我々には時間は無いのだぞ」 「分かっています。使いたくなかった手段ですが、仕方有りません。初号機を動かします」 「初号機を?」 「パイロットはどうするのだ?君が乗るとでも言うのか?」 「いえ、私は既に起動を失敗させています。ファーストチルドレン以外にも、もう一人だけ初号機を動かせる候補がいます。」 「まあ、良かろう」 「E計画はただの目くらまし、それよりも」 シンジは報告書を見せた。 「人類補完計画第19次中間報告です」 「早いな」 「流石だな」 「予算の増額を御願いします」 「良かろう。補完計画が順調ならば、問題ない」 「では、失礼します」 シンジの姿が消えた。 「使えるな」 「ああ、あの男がいなくなったときは焦ったが、その息子はあの男以上に優秀で扱いやすい」 「何よりだ」 「しかし、もう一人の候補とは・・・だれだ?」 「「「「「う〜〜む」」」」」 一同が首を捻った。 ネルフ中央病院、特別病室、 レイがベッドに横たわっていた。 薄い青い髪、深く澄んだ赤い瞳、光り輝くかのような白い肌。 包帯を全身のいたるところに巻いているが、幸い痛み止めが効いているのか激痛は感じていない。 シンジは、サングラスを外した。 「レイ、ごめん」 「シンジ君が気にすることは無いわ」 「ごめん」 シンジは俯いた。 「大丈夫、生きているから」 「でも・・・ごめん」 「そう」 ただ沈黙が流れた。 しかし、二人には心地いい一時であった。 その後、2時間ほどシンジはレイの病室にいた。 松代、ネルフ本部松代実験場、 「葛城課長」 「あら?何」 葛城ミサト、ここ松代実験場のナンバー3である。 美しい顔、長い髪、そして、大きな胸を持つ。姉貴肌で男性職員にかなりの人気がある。 「葛城課長に辞令が出ました。」 「ふ〜ん」 「それが急なのですが、明日から本部付けを命じると」 「は?」 「使徒の襲来が近いそうです」 ミサトの表情が変わった。 「私は本部で使徒と戦えるのね」 「恐らくは、副部長に昇進となると思います」 「行ってくるわ」 「はい」 ミサトは執務室に戻り、荷物を持って、実験場を出た。 (遂に、使徒と戦える) ミサトは青く染み渡る空の向こうに何かを見ていた。 翌日、ネルフ本部、総司令執務室、 ミサトが中央に立っていた。 技術部長で友人の赤木リツコや、司令官クラスと思える白髪の老人、冬月よりも、どう見ても座っている少年が格上のように見える。 (何この子?リツコもあのじいさんも・・・) 「葛城ミサト君、」 「はい?」 少年から名を呼ばれて戸惑っている。 「君の作戦能力の高さを評価し、君を本部作戦部長とし、階級を1尉に昇格する。」 「は、はぁ」 「何か言いたい事でもあるのかね?」 冬月が聞いた。 「はぁ、中学生ですよね」 「そうだ。だが、私がネルフ総司令、碇シンジだ」 「え゛」 ミサトの顔は面白いほど引き攣った。 「葛城君、君には期待している。」 「はっ」 ミサトは背筋をピシッと伸ばした。 「では、赤木博士、君の旧友を頼む」 「はい」 リツコとミサトが退室して行った。 ・・・ 「ふぅ、やはり、甘く見られるか」 「無知は罪だと思うがな」 「そう言ってくれるとありがたい」 「レイは?」 「・・・間に合いそうに無い」 「そうか・・・」 「あの男を呼ぶ」 「・・・あの男か」 「ああ」 ネルフ本部内、 「あ〜、吃驚した。まさか、あんな子供が総司令だなんて」 「全く、ミサト、貴女、総司令の顔ぐらい覚えときなさい」 「うな事言っても、私本部初めてよ」 「はぁ〜」 「何よ」 「まあ、良いわ。本部を案内するわ。それと、子供だからと言って、碇司令に逆らわないようにね」 「分かってるわよ。極東の魔王と呼ばれる者に逆らいたくは無いわよ」 「分かっているなら良いわ」 二人は発令所に入った。 「先輩」 マヤがリツコの姿を見るなり声を掛けた。 「マヤ、新しい作戦部長を紹介するわ、葛城ミサト、私の大学時代の友人でも有るの」 「技術部所属、伊吹マヤ、2尉です。宜しく御願いします」 「宜しくねん」 「ん?」 ミサトは何かに気付いたようだ。 「どうしたの?」 「何で私が作戦部長?」 「聞いてなかったわけね」 「だってぇ・・・」 その後、日向と青葉も紹介された。 1月後、日本南海、 巨大な影が海中を移動していた。 ネルフ本部、総司令執務室、 ミサトが呼び出された。 「葛城君、第参使徒が確認された。侵攻は、3日後だ。」 「はい」 「初号機を起動させるための、パイロットを招集した。第3新東京市到着は、3日後だ。」 「君に迎えに行ってもらいたい」 「かしこまりました。」 ミサトはパイロットの写真を受け取り退室した。 「さ〜て、どんな子かな?」 ミサトは写真を封筒から取り出した。 「え?」 「オヤジ?」 3日後、神奈川県内の駅前に一人の男が立っていた。 青い車が男の前まで来て止まった。 車からミサトが降りて来た。 「六分儀ゲンドウさんですね」 「ああ」 六分儀は頷いた。 「私は、特務機関ネルフ作戦本部長葛城ミサト1尉です。」 「ネルフか・・・・」 「乗ってください」 六分儀は車に乗り込んだ。 ミサトは車を全力で走らせた。 後方で爆発音がして、軍隊と巨人が山の影から現れた。 「冷静なんですね」 「ああ」 「一応説明しますが、あれは使徒と呼ばれる人類の敵です」 「第3使徒、サキエル、15年ぶりだ」 ミサトは片眉を上げた。 「君は私の経歴を見ていないのか?」 「はい、」 「そうか・・・・ならば仕方なかろう、私は第壱使徒アダムを南極で見ている」 「な!!!」 ミサトが急ブレーキをかけた。 「南極で!アダムを!」 「どうした?逃げなくていいのか?」 「あ、す、済みません」 慌てて、ミサトは急発進した。 その後、カートレインにのり、地下に向かった。 「あの・・・」 「なんだ?」 「先程の話、詳しくお聞かせ願えますか?」 「ああ、問題ない」 「私は、葛城調査隊に参加していた。その時に南極でアダムを見た」 「如何して生きているんですか?」 「ああ、前日に日本に帰っていた。」 「そうなんですか」 「葛城・・・・そうか、君は博士の御嬢さんか」 「はい」 「失語症は治ったのか」 「え?」 ミサトは自分の秘密を指摘され驚いた。 「少しくらいは調べたほうが良い。私は第1次セカンドインパクト調査団団長を勤めていた」 「済みません」 「調査団で思い出した。冬月は今どうしている?」 「冬月?」 ミサトは記憶を辿った。 「ああ、副司令を勤めています」 「そうか・・・・副官か・・・・いつも変わらないな」 「あ、ネルフの総司令なんですけど、絶対に逆らわないほうが良いですよ」 「そうか」 「なんでも、極東の魔王って呼ばれてるんですよ、中学生なんですけどね」 六分儀の表情が大幅に変わった。 「いえ、ホントですってば」 「名は?」 「確か・・碇とか言ってたかな、碇シンジ」 六分儀は俯いた。 「どうかしましたか?」 「・・・息子だ・・・・」 「ええええ〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!」 ミサトの叫びがジオフロントに木霊した。 ネルフ本部に入った。 ゲートでリツコが待っていた。 六分儀の姿を確認するとリツコは頭を下げた。 「赤木、リツコです」 「赤木・・・」 「母がお世話になりました」 「そうか・・・君か・・・」 六分儀はリツコを見て、これから再会する人物に思いを走らせた。 その後、エレベーターやエスカレーターを乗り継ぎ、3人はどこかへ移動した。
あとがき アスカ「・・・どこが違うの?」 YUKI「細かいところが何箇所か」 アスカ「・・・まあ良いわ、問題なのは後半なのよね」 YUKI「おお!アスカが初めてまともな意見を!ふべっ!」 アスカ「誰が初めてよ!失礼ね!」 YUKI「攻撃されてばっかりな気がする。」 アスカ「アンタがバカだからでしょ!」 YUKI「・・・・ふん、帰る」 ・・・ アスカ「じゃあ、次回予告、第参使徒の攻撃により初号機は敗退し、第3新東京市も 壊滅的打撃を受ける。シンジはネルフ本部の自爆スイッチに手を伸ばす。 そんな時、赤き巨人が降臨した。次回第2話赤き救世主。」 YUKI「勝手に変えるな〜〜!!!」