立場の違い2R

第21話

◆母

 2月23日(火曜日)、
 ネルフ本部でシンクロテストが行われていた。
 零号機の修復は未だ完了していないが、レイも交えてのシンクロテストになっている。
「最近シンジ君の伸びが良いですね」
「そうね…司令との関係が良い方向に影響しているのかも知れないわね」
 六分儀親子の関係が良い方向に向かっているというのは、直接関係する者達の間ではもう随分有名な話になっていた。
「良いことですね♪」
「ええ、」
 司令室のドアが開き六分儀が姿を現した。
 おはようございますとその場にいた者が口々に挨拶をする。
「ああ…様子はどうだ?」
「全員問題なし、シンクロ率もレイさんはいつも通り99%以上をマークしています、シンジ君は91%、アスカは74%と言ったところです」
 モニターに表示されている数値を見ながら六分儀にその結果を伝える。
「最近、シンジ君の伸びが特に著しいですね。何か心理的な問題が良い方向に向かったのかも知れませんね」
 これが起動試験などの大きなものならともなく、六分儀がシンクロテストなどを見に来る必要性などどこにもない。と、言うことはシンジの様子を見に来たと言うことであろう。だから、それに併せて最近の傾向も理由を臭わせながら伝える。
「そうか…」
 六分儀の視線はモニターに映るシンジに注がれている…
(でも…)
 しかし、どうしても気になるのは…六分儀が未だ計画の修正について何も言わないことである。未だ迷っていると言うことなのだろうか?
 ふとガラスに眉間に思い切り皺が寄った自分の顔が映っていたのに気付いた。
(ふふ、酷い顔ね…)


 シンクロテストが終わった後、シンジとアスカは六分儀と共に職員食堂に、レイはユイの研究室を訪れていた。
「最近、二人の仲が良いわね」
 レイはコクリと頷く、勿論二人とは六分儀親子とのことである。
「で、レイとシンジ君とはどう?」
 顔をほんのり赤くする。
「ふふ、そう。良い事ね」
「お母さん、計画はどうなっているの?もう動き始めていると思うのだけれど」
 これ以上からかわれることを回避するためなのだろうか、質問を投げかける。
「そうね…正直なところ、不透明な部分が多すぎるわね」
「お母さんはどうするの?」
「私?……そうね、一番レイのためになる選択をするわ」
「…ありがと」


 2月25日(木曜日)、
 シンジとレイが朝食を作っているときに二人の携帯が同時に鳴った。それは…使徒の襲来を報せる合図だった。
 ミサトも慌てて起き出してきて、ミサトの車で本部の急行する。
(私は出れない…)
 まだ、零号機の修復は終わっていない。
 シンジとアスカの二人で出撃になる。
(大丈夫…シンジ君もアスカも強いから)
 二人を信じようとする気持ちと…それでも、冷静に、自分がいた場合に比べて戦力が随分低下していると冷静に頭が答えを導く。
 もし、この前の使徒のような力を持っていたら勝率は極めて低い…頭を振ってそんな考えを散らそうとしたが、なかなか消えるようなものではなかった。
 零号機は未だ出せないが、一応レイも着替え発令所で待機に入る事になった。
「シンジ君、無事に戻ってきてね」
「うん、」
 シンジはエントリープラグに乗り込んだ。蓋が閉められ初号機に挿入される。
「…シンジ君…」
(私が不安になっても仕方ない…私にできるのは祈ること)


 発令所のメインモニターに、宇宙空間を背景に鳥のような光る使徒の姿が映っていた。
「目標は衛星軌道上から動きません」
「迎撃よ、初号機が前衛、弐号機は後衛で、両機と陽電子砲で攻撃よ」
『了解』
『了解』
「両機射出します」
 初号機と弐号機がそれぞれ射出される…両機の装備は両方とも陽電子砲である。
 弐号機の装備している陽電子砲はエネルギーの充填に時間が掛かるので、先に初号機の方が攻撃することになる。初号機は陽電子砲を構え使徒を狙う。
 雨雲を通しての照準だったが、多少の時間でターゲットが収束し使徒をロックすることができた。
 初号機が陽電子砲を発射する…青白い光の球が雲を突き破り使徒に向かって一直線に突き進んでいく。
 そのまま使徒に直撃するかと思われた瞬間ATフィールドが陽電子を弾いた。
「ちいっ、」
「シンジ君連射よ!!」
『はい』
 直ぐに連続して陽電子砲を次々に発射させる。弾切れまでの5発の陽電子を発射し、その全てが一直線に使徒に向かって飛んでいく。
 一発、二発、三発と弾かれる。
「だめか…」
 四発目、そして五発目も弾かれてしまった。
「駄目ですね」
「弾を補給するわカートリッジを射出して」
「了解」
「使徒に変化があります」
「え?」
 マヤの声を直後使徒が何か光を発し、その光に初号機が包まれた。
『う、うわあああ!!!!』
「シンジ君!!」


 シンジは六分儀と一緒に電車に乗っていた。
 ずっと二人とも黙ったままであった。
 やがて駅に到着し、六分儀に従ってシンジも電車を降りた。
 駅のホームで待っていた夫妻の元の近付く。
 六分儀が二人と会話を交わし…六分儀は頭を下げた。
「シンジを頼む」
「分かった。だが…どんなに忙しくても偶には会いに来てやれよ」
「……約束はできん」
「六分儀…」
 六分儀はシンジの方に向き直る。
「シンジ…私のように逃げない人間になってくれ」
「…お父さん…」
 アナウンスが流れ先ほどとは反対側のホームに電車が入ってくる。
「では、もう行く」
 六分儀は又弾を下げた後、一人で今入ってきた電車に乗った。
「お父さん!!」
「あ、シンジ君!」
 ドアが閉まり電車が走り出した…六分儀はドアのところに立ったままで、ガラス越しにその姿がはっきりと見える。シンジは、六分儀を追いかけ始めた。
「待って!!置いてかないで!!」
 必死に走るが加速していく電車に乗っている六分儀との間隔はどんどん開いていく。
「お父さん!!」
「僕はいらない子なの!!!!??」
 六分儀はただ黙ってシンジの姿に視線を送って来るばかりだった。
「あっ!」
 躓き、思い切りホームの地面に転んでしまう。その光景を見ても六分儀は何も反応を示さなかった。そしてそれから間もなく電車は見えなくなった。
 先生と小母さんに連れられて先生の家に行ってもまだシンジは泣き続けていた。


 シンジは真っ暗な部屋に連れて来られた。
「暗いから注意して」
 ライトが点き、シンジの目の前に紫色の巨大なロボット…初号機の頭部が現れた。
「ロボット!」
 シンジは慌ててパンフレットを調べたが、全く記載はされていなかった。
「探しても載ってないわ。」
 リツコは1歩前に出た。
「人の作り出した究極の兵器汎用人型決戦兵器人造人間エヴァンゲリオン。そして、これはその初号機。開発は超極秘裏に行われた。」
 自信に満ち、得意になっているリツコがある意味、格好良く見えた。
「これも…父の仕事ですか?」
『そうだ』
 六分儀の声がした。初号機の向こうに見える部屋のガラス越しに六分儀の姿が見える。
『久しぶりだな』
「父さん…」
『出撃』
「出撃!?でも零号機は未だ、まさか初号機を?でもアスカは未だ動かせないし、パイロットがいないわ!」
「さっき届いたわ」
「マジなの」
「でも、あのアスカでさえ、エヴァぁとシンクロするには7ヶ月も掛かったのよ。今、今日来たこの子にはとても無理よ!」
「な…」
「今は、エヴァと少しでもシンクロ可能と思われる者を乗せるしかないのよ。座っていれば良いわ。それ以上は望みません」
 シンジは六分儀を見た。
「無理だよ!こんな見たことも聞いた事も無い物にいきなり乗れだなんて。」
『説明を受けろ、お前が適任だ』
 シンジは怯える小動物のような顔でリツコとミサトの顔を見た。
「乗りなさい」
 さっきまでシンジの味方をしていたミサトはきつい口調で言った。
 再び六分儀の方を向く。
「父さん…父さんは、僕がいらなかったんじゃないの!!」
『必要だから呼んだまでだ』
 半分泣きかかっているシンジは俯いた。
「そんなのって無いよ、折角来たのに…」
『乗るなら早くしろ、でなければ、帰れ!』
 ミサトが顔を寄せてくる。
「何の為にここまで来たの?」
「初号機のパーソナルをアスカに書き換えて!」
 リツコは、もう諦めたらしく整備士達に声を送った。
『冬月、アスカを起こしてくれ』
 周りはシンジに見切りをつけ事を進めていくが、シンジは俯いたまま何もできなかった。


 雨の中、シンジは一人で傘もささずに歩いていた。
 シンジは川原に大人用の自転車が捨ててあるのを見つけてそれにのって走り出した。
 そして、普段は通りもしない道を走り派出所の前をわざと通った。
「其処の君止まりなさい。」
 シンジは警官に呼び止められて止まった。
「その自転車は君のかな?」
「いえ…でも橋の下に捨ててあったから」
「嘘をついちゃいけないよ」
「本当です嘘じゃない」
「話は中で聞こうか」
 シンジは交番で尋問されることになった。
「名前は?」
「六分儀シンジです」
「住所は?」
「……」
「保護者の名前は?」
「六分儀、ゲンドウです」


 1時間半後、おばさんが駆け込んできた。
「シンちゃん!」
「何て事をしたの!?自転車が欲しいなら言ってくれれば良かったのに」
「…ちが…」
(違うんだ、おばさん…父さん、こんな時でも迎えに来てくれないんだね。母さん、もし母さんが生きていたら、迎えに来てくれた……?)


「……何でこんな事!」
「本当のことでしょ」
 幼いシンジが目の前に立って淡々とシンジに言い放ってきた。
「父さんは…確かにそうだったよ、父さんは、僕を捨てた…それで、身勝手に呼び戻したよ!」
「でも!でも……今は分かり合えそうなんだ…父さんと分かり合えそうなんだ…もうちょっとで」
「お父さんのこと信じてるんだ。裏切られて又捨てられるだけのに」
「違う!!」
「ふ〜ん」
 幼いシンジはまるでシンジを馬鹿にしているような目で見てくる。
「エヴァのパイロットだから必要なんでしょ、もうすぐ使徒を全部倒せる。そうしたら、もう用済みに成っちゃうよね」
「違う!!父さんは、全部終わった後でも、僕が父さんを求めていてくれたら嬉しいって言った!!」
「嘘を付いただけでしょ、僕を捨てたお父さんの言葉なんか信じられるわけないよ」
「違う!!違うよ!!」
「何の取り柄もない僕が誰かに必要にされるなんて事あるわけないよ」
「ただ、エヴァを動かせるから、エヴァのパイロットだからみんなが必要としているだけでしょ」
「違う!!」
「ミサトさんもエヴァのパイロットだから僕を引きとったんだよ。リツコさんなんかは勿論。トウジやケンスケだって、エヴァのパイロットだから付き合ってくれてるんだろ。エヴァのパイロットじゃなくなったら、僕なんかと一緒にいる理由なんかどこにもなくなっちゃうよ」
「違う!!」
「さっきから、そればっかりだね。アスカも同じ、レイだってそうさ、エヴァのパイロットじゃなくなったら、バイバイだよ。僕はいらない子だから…」
「違う!!違う!!そんな事ない!!」
「僕はいらない子なんかじゃない…僕はいらない子なんかじゃない…僕は…」
 ふと気付くと幼いシンジの姿が消え、代わりに六分儀がシンジの眼前に立っていた。
「…父さん、僕はいらない子じゃないよね…」
 しかし、六分儀は答えようとしない…代わりに拳銃を抜き、シンジの額に銃口を突きつけた。
「と、とうさん、な、なにするんだよ」
「私は必要ならば何でもする。必要ならば手駒として手懐けるために父親を装うこともな」
「父さん!!」
「そして、必要が無くなった物に用はない」
「うそだろ…ねぇ、嘘だって言ってよ」
「目障りだ」
 引き金が引かれ、何かが頭を中を貫く… 
「うわあああああああああ!!!!!!」


『ああああ〜〜〜!!!!』
 発令所にシンジの叫び声が木霊する。
「シンジ君!!!」
 レイが通信回線越しに呼びかけるが、ただ、頭を抱えて叫ぶだけで呼びかけに反応しない。
『シンジは!?』
「未だ大丈夫!だから急いで!」
「第5次最終接続完了!エネルギー注入完了!」
 使徒をロックオンすると同時に弐号機が陽電子砲をぶっ放す。
 陽電子の筋が一直線に使徒に向かって伸びていく…が、ATフィールドによって弾かれ四散してしまった。
「駄目ですこの距離ではエネルギーが足りません!!」
「くっ、直ぐに初号機を回収して!!」
「自動回収装置が作動しません!!」
「シンジ君!!」
 メインフロアで激しく指示や報告が飛び交っている様を、レイが必死にシンジを呼び続ける様を見ていたユイがふっと目を伏せた。
「六分儀さん…」
「それは共犯になると、言うことでいいのかな?」
「…はい」
 六分儀とユイのやり取りを聞いて冬月は小さく一つ溜息をついた。
「アスカ、ドグマに降りて槍を使え」
「ロンギヌスの槍を!!?」
「でも、しかし、エヴァとアダムの接触はサードインパクトを引き起こす可能性があり!」
「今は黙っていて!!」
 ユイがぴしゃりと言い、ミサトはそれで口ごもる…
「弐号機、最速で回収します!」
 先ほどまで叫んでいたレイはサブモニターのシンジの姿を前にして何もできない自分の無力さに肩をふるわせているだけになっていた。


「やっぱり…僕は…いらない子だったんだ」
 シンジは蹲り、涙を流して泣く。
「…シンジ、」
 アスカによく似ている。しかし、アスカではない誰かの声が聞こえた。
「……誰?」
 声の方を振り向くと、やはりアスカに似ている大人の女性が立っていた。
「……だれ?」
「シンジ…貴女はいらない子なんかじゃないわ、だからそんなこと言っちゃ駄目」
 シンジを優しく抱きしめてくれる。暖かさが伝わってくる。
「……母さん?」
「ええ、そうよ、シンジ」
「ホントに?」
「そうよ」
「…母さん!!」
 キョウコの胸の中で声を上げて泣いた。
 

「精神パルスが安定していきます!」
「どうなったの!?」
「分からないわ!」
 マヤの報告に直ぐにリツコも分析に掛かったがさっぱり分からない。
「弐号機間もなく地上に出ます」
 ロンギヌスの槍を手にした弐号機が地上に姿を現す。
「アスカ!お願い!シンジ君を助けて!」
『分かってるわよ!』
 弐号機は持って助走を付けてやり投げの要領でロンギヌスの槍を思いっきり放り投げた。
 槍は、一瞬で雨を降らせていた雲を消し飛ばし、恐ろしい速さで使徒に向かって飛んでいく。
(お願い)
 レイは槍が使徒を貫きシンジが助かることを祈った。そして、その願いが通じたのだろうか?ロンギヌスの槍は、使徒のATフィールドを容易く突き破り一瞬でその存在を消滅させた。
「使徒消滅。初号機解放されます」
「アスカ初号機を直ぐに回収して!」
『分かってるわよ!』
 ミサトの指示が終わるよりも早く弐号機は初号機に向かって走っていた。
「ケージに行きます!」
 初号機が無事回収ゲートに納められるのを確認して、レイはそう言い残して発令所を飛び出していった。
「冬月…後を頼めるか?」
「かまわんよ、だが、委員会の呼び出しまでには戻ってこいよ」
「分かっている」
「私は…無粋なことは止めておきますね」
「ありがとう」
(やれやれ…母親と父親か…)
 六分儀は二人にその言葉を投げかけて発令所を出た。


 夢から覚めると白い天井が目に入った。
 何度目になるのだろうか、この天井はもう見慣れてしまっている。ネルフ中央病院の病室の天井である。
「夢…か」
 でも、ただの夢ではなかったのかも知れない。だけど、ただ一つだけはっきりしたことがある。悪夢を見た後、今度は良い夢を見た。はっきりと母の姿が出てきたのは、はっきりと触れあい、言葉を交わした夢など初めて……
「……母さんか、」
「キョウコがどうかしたのか?」
「え?」
 声に驚いて慌てて上半身を起こす。そうしたら、シンジが寝ていたベッドの脇の椅子に六分儀が腰掛けていた。
「父さん……」
「あ、うん…夢に母さんが出てきたんだ」
「そうか、良い夢だったか?」
「うん……母さんが出てきた夢はね」
「そうか、良かったな。それにお前も元気そうでよかった」
「あ…父さん」
「何だ?」
「僕はいらない子なんかじゃないよね」
「お前がいらない子?」
「ふっ、そんなはずはないだろう。今は食堂に行っているが、レイ君もアスカもずっとお前を心配していたぞ。今頃忙殺されているだろうが、葛城3佐や赤木博士も同じだろう。碇博士も様子を見に来たしな」
「……父さんは?父さんにとってはどうなの?」
 六分儀は黙ったまま暫く答えを返さなかったが、やがて、すっと天井を仰ぎながら呟いた。
「いらない子であれば楽だっただろうな…」
「うん…そうなんだよね」
「どうした?」
「夢の中の母さんもそう言ってた…大切だから、苦しんでるって……、あ、何言ってんだろ、夢のことなのに」
「そうだな。夢のことを持ちだして云々というのはおかしい」
「だが…あながち間違っていることではないかもしれんな」
「私はもう行く、」
「あ、うん。お仕事頑張って…」
「シンジもな…」
 最後に微笑みを残して六分儀はゆっくりと病室を出ていった。
(僕はいらない子なんかじゃない…)
 もう一度キョウコの夢の事を思い出そうとしたとき、レイとアスカが病室に入ってきた。
「あ〜、もう目ぇさめたのね」
「良かった…」
 レイはほっと息を付いている。
「心配かけてごめん」
「ううん、シンジ君がピンチになっていたのに私は何もできなかった…ごめんなさい」
「そんなのレイのせいじゃないよ」
「そう言ってくれてありがとう」
「ねぇ、ところで司令は?」
 見るとレイの手にはおにぎり、アスカの手には缶のお茶が2本あった。
「さっき行っちゃったよ」
「そう…余ってしまうわね」
「良いじゃない、アタシ達で食べましょ」
「食べ過ぎ」
「良いのって気にしない気にしない」
「そうね、はい、シンジ君」
 ふっと微笑み、シンジにおにぎりを差し出してくれる。アスカから缶のお茶も受け取ってから、二人に「ありがとう」とお礼を言った。


 やがて、アスカが用事があるからと言って帰っていくと病室はシンジとレイの二人だけになった。
「無事で良かった…」
「うん…」
「……リツコさんは精神攻撃だったって言っていたけど…」
「精神攻撃…か、あれは…使徒のせいだったんだ」
「あれって?」
 シンジは…使徒に見せされた悪夢と、その後に見たキョウコの夢をレイに話した。
「シンジ君はいらない子なんかじゃない。だって……」
「だって?」
 言いたいことは分かるけれど…ちょっとした悪戯心と、ちゃんと言葉を聞きたいと言うことからあえて聞き返した。
「……私シンジ君のことが好きだから…」
 シンジはにっこりと微笑んでレイの言葉に応えた。
「ありがとう。僕もだよ」
 今度はレイが顔を紅くする番だった。
「……シンジ君、」
「何?」
「悪夢の後…キョウコさんの夢を見たのよね?」
「うん、そうだけど…」
「シンジ君の精神パルス…途中から安定したの、多分夢が変わったからだと思う」
「そっか…」
「シンジ君…」
「何?」
「キョウコさんの夢、ただの夢じゃないと思う」
「…どういう意味?」
「だって…初号機にはキョウコさんがいるんだから…」
「…え?」
「昔のエヴァの操縦理論の一つ。エヴァに込めた魂を介して親近者がエヴァを操る。一般には事故などで亡くなってしまった人の魂をサルベージして使う」
「……それって、」
「うん、初号機にはキョウコさんの魂が宿ってるはずなの」
「…そうだったんだ…じゃあ、母さんが守ってくれたんだ」
「そう言う事ね」
 10年前詳しくは知らないが事故で、命を落としてしまったキョウコ。そのキョウコがシンジを守ってくれた。
 そして、あの夢に出てきたのは単なるシンジの幻想ではなかった。キョウコの魂がそこにあったのなら本当にキョウコだったのだろう。
 あの時、会話を交わしたのは本当にキョウコだった。もう存在しないと思っていた母は初号機の中にいた。
「嬉しそうね?」
「うん…そうだね。もう死んじゃっていなくなってしまったと思ってた母さんが、いるって分かって嬉しいんだと思う。あ、そう言うことは、零号機には?」
「ううん…零号機はもっと新しい理論が使われているから魂は入ってない」
「そうなんだ」
「あ、今度、シンジ君のお母さんに私を紹介してね」
「あ…うん。良いよ」
 具体的にどうすればいいのか分からないけれど、初号機の中に確かにいるのなら、何か方法があるはず。やっぱり、レイがどんな人なのか、キョウコに紹介したい…僕が好きな人ですとまで、はっきりと言える自信はないのだけれど…


 深夜、六分儀の姿がケージにあった。
「…キョウコ、そこで何を見ている?何を考えている?」
 勿論その問いに答える者はここにはいない。
「お前は俺の行動をどう思っているんだ?」
「シンジが見た夢とやらはお前が見せているのだとしたら…シンジをこれからも守ってくれるか?」
「……もし、俺が……いや、止めておこう。もしの話は意味がない」
 六分儀はケージを離れ、その足でユイの研究室に向かった。

あとがき
アスカ「なんかさ、最近シンジの親子の話が中心になってきてるわねぇ」
レイ 「何か企んでいるのかも知れない」
アスカ「司令が?YUKIが?」
レイ 「この場合は後者、でも、司令も何か計画について考えているのかも知れないわね」
アスカ「ま、このまま、上手く運んでさっさと完結して欲しいわね」
レイ 「どうしたの?随分積極的ね…この話はLRSなのに」
アスカ「どうやら、新しい作品を書き始めたみたいだからね、さっさとこんなの完結させて、集中して貰わなきゃ」
レイ 「最近エヴァ以外のものを描いているみたいね」
アスカ「ああ、そっちじゃないわよ、掲示板で奴が言ってたから」
レイ 「……確かに、未だ全然進んでいないみたいだけれど」
アスカ「やっと、LASを書く気になったって事ね♪」
レイ 「一言もLASだなんて言ってないと思うけれど?」
アスカ「LASに決まってるじゃない♪」
レイ 「随分自信があるわね。何か根拠でもあるの?」
アスカ「まね。だって…身をもって知っているからね」
レイ 「……何をしたの?」
アスカ「何にもしてないわよ、アタシはね♪」
レイ 「そう言えば…最近見ないわね」
アスカ「頑張って描くことに集中してるんじゃない?」
レイ 「……まあ良いわ、」
アスカ「そね。ふっふっふ…」
レイ 「……今回の鍵は母親ね」
アスカ「そうね、ママが司令と…って言うのは嫌なんだけど…今更その部分で言っても仕方ないわねぇ」
レイ 「あきらめたの?」
アスカ「誰がそんなこと言ったの?離婚って言う法的な手段もあるのよ」
レイ 「理由…が必要だと思うけれど」
アスカ「あの司令だったら理由だったら幾らでもあるでしょ〜、
    弁護士一個師団送り込んで財産も根こそぎにしてあげるから安心しなさい♪」
レイ 「どうしてそれで安心できるの?」
アスカ「アタシが安心できればいいのよ」
レイ 「………」
アスカ「ま、後はアルミサエルとナルシストホモ、ゼーレと3つで終わりだし、
    さささっと3話で終わらせて欲しいわね」
レイ 「流石にそれは無いと思うわ、アルミサエルとタブリスの間に1つ、
    ゼーレの前に1つ、ゼーレが2つにエピローグという感じで後7話くらいだと思う」
アスカ「そんなに掛かるわけないじゃない、さささっと、終わらせればいいのよ、
    下手に最後に盛り上げようとすると、YUKIのことだから本気で後1年以上掛かるわよ、」
レイ 「それはそれで困るわね」
アスカ「YUKIはどっちを選ぶか賭けない?」
レイ 「碇君を賭けるつもり?酷い人ね…」
アスカ「勝てば官軍よ!」
レイ 「まあ良いわ…でも、多分勝敗はつかいないと思うわ、2Rの位置づけ的にも、両方の中間になると思うから」
アスカ「う〜ん…それもそうね」
レイ 「早く更新されることを期待するわ」
アスカ「アタシはLASね、LAS!」