１月２９日（金曜日）、 昼過ぎ、シンジ達３人がトウジの見舞いにやって来ていた。 トウジは神経系統を痛めた物の外傷はかすり傷程度ですんだそうで、半月もせずに退院できるそうだ。 シンジは病室のドアをノックしてから、ドアを開ける。 トウジはベッドの上に横たわったまま首だけ３人の方に向けた。 「おう、無事やったか」 「トウジこそ」 「済まんかったな、迷惑掛けてもうて…止め様おもてもとまらへんかったんや」 「そんな事仕方ないわよ、使徒に乗っ取られちゃってたんだから」 「そう言ってもらえるとあり難いわ」 その後暫く話を続けていたが、巡回がやって来たので退散する事にした。 夜、出張から帰ってきたミサトは、ギプスと包帯をしていた。 「あっ、ミサトさん！大丈夫ですか！？」 「まね、心配かけたわね」 「無事でよかったです。」 「早速で悪いんだけど、何か食べさせてくれない？事後処理で忙しくて何も食べてないのよ」 「わかりました」 「何か作りますね」 「ありがとねん」 アスカはＬＣＬのような液体が満たされたカプセルの中に入っていた。 リツコが脇で機械を操作している。 規則正しい足音が近付いてくる…リツコはそちらに視線を向ける。 「どうだ？」 六分儀はカプセルに入ったアスカに目を向けたまま尋ねる。 「順調です。調整もほぼ終了しました」 「うむ…そうか、」 「プラグの方もごらんに成られますか？」 「後で良い、」 「わかりました」 「ダミーシステムはいつから使える？」 「…この後実験を行うつもりです。その結果次第になります」 「分かった。アスカ、そろそろ良いぞ」 アスカはゆっくりと瞼を開いた。 １月３０日（土曜日）、昼前、ミサトのマンションで３人がカレーを食べていた。 アスカはあくびを何度か繰り返している。 「なんだか眠そうね」 「あ、うん、ちょっとね」 「そっか、」 シンジが何か言おうとした時、３人の携帯が同時に鳴り、瞬時に緊張した表情に変わる。 ネルフ本部第１発令所、 「第拾四使徒を光学で捕らえました」 メインモニターに使徒が映し出された。 「目標、まもなく上陸します」 「各部隊に通告、食い止めろ」 「了解」 「１番から７５番までの部隊展開完了」 「現在第３新東京市対空防衛力、９２％です」 「チルドレンは？」 「現在こちらに向かっています。」 ミサトが発令所に駆けこんで来た。 「遅いわよ」 「ごめん！現状は！？」 「使徒が侵攻中、４分で第３新東京市上空に到達します。エヴァは７分後に出撃可能」 「間に合わない…地上防衛は破棄、時間稼ぎに駐中して、エヴァはジオフロントの直掩とするわ！」 「「了解！！」」 「…赤木博士、ダミープラグは使えるか？」 リツコはちょっと目を大きくする。 「可能です。実験もうまく行きました」 「よし、弐号機をダミープラグで起動、時間稼ぎに当てろ」 「了解」 「弐号機ダミープラグセット、軌道回路をバイパスします」 「回路接続は順調…問題ありません」 「弐号機起動します」 リツコは表示されるデータを見てそれが何を示すか判断する。 「問題ありません。全て許容範囲内です」 「よし、出撃だ」 使徒が山を越え、第３新東京市から直接見える位置まで侵攻してきた。 第３新東京市とその周辺から一斉に攻撃が仕掛けられる…しかし、その全ての砲弾やミサイルはＡＴフィールドによって阻まれ有効なダメージを当てることは出来なかった。 ダミープラグで起動した弐号機が射出され、スナイパーライフルを手に取る。 使徒の顔が光り、ビームが第３新東京市に向かった放たれる。直撃した防衛施設が消し飛び、数カ所で光の柱が現れる。 弐号機もあわせた攻撃が再開されるが、依然としてダメージを与えることは出来ない。 再び使徒がビームを放つ…その内の一つは弐号機に向けられていた。ダミープラグ故なのか、反応がやや遅れ、危うく直撃するところであった。ビームはビルを複数貫通しており、直撃していればそれだけで危険であっただろう。 その後も何度か攻撃が繰り返され、第３新東京市の主要な防衛施設は殆どが沈黙させられた。 使徒は弐号機を無視し、攻撃を一点に集中し始めた…おそらく天井都市をぶち抜きジオフロントに直接侵攻するつもりであろう。対する弐号機は中和距離に入りスナイパーライフルをぶっ放す…至近距離で大口径砲弾が直撃するが…直撃した胸部の肉を少し抉ったくらいで大したダメージではない。 直ぐに反転し距離を取る…使徒がビームを次々に放ってくる。 その殆どを躱すことが出来たが、一発被弾し、胸部装甲板が吹き飛び、素体にもダメージを受けた。 使徒が地面に倒れる弐号機にとどめを刺す為にビームを放とうとしたが、飛び込んできた初号機の飛び蹴りが使徒の頭部に直撃し吹っ飛ばしビームは明後日の方向に飛んでいく。そして、使徒に零号機がプログソードで斬りかかる。肩口に食い込んだ高速で振動する刃の構成粒子が使徒の肉を切り裂いていくが、完全に切り落とす前に使徒が反応し、その腕…帯のようなそれで零号機の首を狙う。零号機はプログソードでそれを防いだのだが、プログソードの刀身に大きなひびが入ってしまった。 プログソードを使徒に投げ付け距離を取る。 使徒が追撃しようとしていたが、初号機がスナイパーライフルを中和距離内でぶっ放す…ダメージは先に弐号機が与えた物と大差ないが、そのまま攻撃をすることも出来ず零号機への攻撃は中断させることが出来た。 アスカはヘリで弐号機に向かっていた。 いつビームが飛んで来るやら…そして、同時に破壊されたビルにも気を付けなければいけない。 弐号機はダミープラグの動作が不安定になったため戦場からある程度離れたところで起動を停止している。 戦場から飛んでくる様々な破片が飛んできて金属を叩く音がする。 「あっぶないわねぇ…、大丈夫なの？」 「そう簡単に落ちるような」 パイロットが返事をした瞬間今まで当たっていた破片よりも大きい物が当たったのか凄い音と友に期待がへげ敷く揺れる。 「きゃっ、ホントに大丈夫なんでしょうね！！」 「だ、大丈夫です…」 起動停止ビルの谷間で沈黙している弐号機が見えてきた、その瞬間轟音が響きわたり、上空に黒い物が点々と見えた。 「やばいんじゃない…これ？」 「……」 次々に被弾する音がし、その内のいくつかは大きな音と激しい揺れをもたらす。 大きなダメージをもたらす破片が当たったのかまっすぐに飛べなくなり激しく揺れる。 今にも墜落するかと思われたが、パイロットの腕が良かったのか、何とか弐号機の傍に着陸することが出来た。 「ありがとね！」 アスカはヘリコプターから飛び降り、弐号機に駆け寄る。 僅か２０メートル足らずの距離であるが、それを走っている間にも小石大の破片が降り注ぎ、いくつかはアスカに当たったが、幸い大きい物に当たることはなかった。 プラグを解放し開いたところに乗り込み、プラグをセットする。 「エントリー開始、弐号機再起動」 弐号機が再起動し、シンクロが始まった瞬間、アスカの胸に鈍痛が走った。 「つぅ…痛いじゃないのよ」 『アスカ、調整するから、異常があったら言って！』 マヤの顔がモニターに表示される。 「胸が痛いからこれ何とかして、後は…だいたいいつも通りよ」 『分かったわ、部分的にフィードバックをカットするわ』 胸の痛みが和らぐ、 「よしっ、」 モニターに兵装ビルの場所が表示され、そこに向かい新形ソニックグレイブを取り出した。 ビルに飛び乗り、戦場を見る。 戦場付近のビルは全て瓦礫になっており、零号機と初号機が交互に使徒に攻撃を仕掛けている。 使徒は片腕となっており、あちこちにダメージが見られる一方、零号機と初号機は、大きなダメージこそ見えない物の小さな物を無数に受けており、動きが鈍っているように見える。 「アスカ、行くわよ」 ビルを足場に跳躍し、使徒に飛び掛かる。使徒は零号機と初号機に気を取られていたのか、弐号機への反応が遅れた。 「どおりゃぁあ！！」 ソニックグレイブを使徒の胸に突き刺す。力が妙な方向に掛かったのか、ソニックグレイブが折れてしまう。 刀身を使徒の体内に残したまま間合いを取る。先の報復に弐号機に残った帯のような腕を伸ばしてくる…間に入った初号機がプログソードでそれを弾いたが完全に逸らすことは出来ず、弐号機の左腕を深く切り裂き、アスカの左腕に激痛が走る。 直ぐにフィードバックが下げられるが、その分シンクロにも影響が出る。 「くっ…」 左腕は肘のやや上の部分を深く切られており、もう少しで斬り飛ばされるところだった。左腕は動かす事はできるようだが力は入らない。 『アスカ、大丈夫！？』 「ありがと、それより、気を付けなさい」 『うん』 今、零号機が使徒に斬りかかっている。ビームが放たれるが零号機はそれを躱す…後方の位置になった弐号機にビームが飛んでくる。 弐号機はビームを躱す。 「左手に力がはいんないわ！これで使える武器を頂戴！」 『…２ブロック離れたところにポジトロンライフルがあるわ！』 「わかった！」 一端戦場から離れモニターに示された兵装ビルに向かう…兵装ビルは攻撃を受けたのか半ば崩れていたが、中の円環式陽電子砲は無事であった。 モニターに鳥瞰図を表示させて射線を確保できる場所を確認し、そこに移動する。 崩れたビルの合間に２機のエヴァと交戦を続けている使徒が見える。 使徒はこちらに気付いていないようだが、２機の方はモニターに弐号機の存在が表示されているし、発令所からの支持やサポートもあるのでその存在を把握しているから遠慮なくぶっ放す。 陽電子の青白い光の球が使徒めがけてまっすぐに飛んでいく…使徒がそれに気付いたときにはもう既に遅い、回避運動を取るが回避しきれずに直撃し使徒の腰に当たる部分の肉が爆発する。 すかさず零号機が接近し、そのままえぐれた部分をプラグソードで更に拡げる…使徒が残っている腕で零号機のその右腕を斬り飛ばすが、零号機は残った左腕一本で使徒の体を腰で両断した。 上半身が滑り落ちるように地面に落ちる。どうなっているのかは分からないが、直ぐに飛ぼうとはしない…何故かは置いて置いてどうやら飛べないようである。 『行けるわ！！』 初号機がプログソードで斬りかかる。しかし、使徒は完全に反応し初号機に向けてビームをぶっ放した… 「あっ！！」 初号機に直撃するかと思った瞬間零号機が間に入り、初号機を庇った。 零号機の胸部を大きく抉ると同時にエントリープラグが射出された。 シンクロのカットが間に合ったのかどうか心配がよぎるが今はその考えを捨て陽電子砲に次弾を装填し使徒に向かった。 初号機からは、その様子が弐号機から以上によく見えていた…と言うよりも射出されたエントリープラグに当たりそうで避けなければならなかった。 「…レイ…」 今は考え無いことにする。一言ごめんと呟いて、崩れ落ちた零号機を飛び越えそのまま使徒に斬りかかった。 零号機を大破させたビームを放つ頭部に力でプログソードを食い込ませる…そして、そのまま一気にコアまで切り裂くかと言ったところで酷使したのにプログソードが耐えられなかったのか、妙な音を立てて折れてしまった。 「あっ」 しまった…とどこか一瞬呆然としてしまったが拙かった使徒の残った腕が初号機に襲いかかる…回避しきれずもう駄目かと思った瞬間、腰の辺りに強い衝撃を受け吹っ飛ばされ、既に瓦礫とかしているビルに突っ込んだ。 「つつつ、」 見てみると弐号機が使徒の腕を避けながら接近する隙を窺っていた。どうやらあの瞬間弐号機がけっ飛ばしたようだ。 かなり痛かったのでやりすぎではないかとも思うが、とりあえず感謝する。 弐号機を襲う腕に向かった短くなったプログソードを投げ付ける…そして、弾いたことで隙ができ弐号機が間合いに潜り込む…コアに陽電子砲を接着させ零距離射撃を行おうとした瞬間、コアをガードするように殻が閉じ、接着していた先の部分が破壊される…が構わずそのまま撃つ…瞬間猛烈な光が辺りを襲い、直後に衝撃波が襲ってきた。 まぶしさに思わず閉じた瞼を開けると、辺りは大きなクレーターになっており、ボロボロになった弐号機が地面に倒れている…が使徒の姿は見えない。 『パターンブルー消失、使徒殲滅しました』 青葉の声に嬉しさが込み上げてくると同時に、レイのことが心配になる。 「レイは！！？」 『既に回収されて中央病院に運ばれたわ、詳しいことは検査を待たなくちゃ行けないけど、まず大丈夫だそうよ』 ミサトの説明で沸き上がる嬉しさで今度は素直に喜んだ。 レイはゆっくりと瞼を開いた…白い天井が目に飛び込んでくる。しかし、暗い…時間は分からないが夜のようである。 「…病院ね」 「気がついたんだ」 声を方に視線を移す…シンジが脇の椅子に座っていた。 「…ずっといてくれたの？」 「ちょっと、一回外したけど大体いたよ。ユイさんやミサトさんも来てたけど、遅くなったからもう帰っちゃったけど」 「ありがとう」 「ううん…レイだって、助けてくれてありがとう…体大丈夫？」 軽く体を動かしてみる…特に痛みはない。 「大丈夫よ」 「そう、良かった…ホント心配してたんだ」 「…アスカは？」 「大丈夫、病院の御飯が美味しくないとか何とか言ってたくらいだよ」 何となく、アスカらしいと面白みを感じ、軽く笑う 「そうだ、お腹空いてない？」 シンジに言われて気付いたのだが、結構お腹がすいている。昼食が途中だったし、当然かも知れない。 「…空いているわ」 「じゃあ、何か軽い物でも貰ってくるね」 「こんな時間だけど、良いの？」 「うん、２４時間いつでも良いって」 「そうなんだ」 「ちょっと待っててね」 シンジは病室を出ていった。 一つ大きく息を吐く…今回の使徒は本当に危なかった。もう少しで負けるところだった。本当は、負ける前に力を使わなければ行けなかったのだろうが、初号機…シンジを庇うためにそれを捨てた。それが正しかったのかどうかは分からないが、考える前に動いていた。シンジを失うのが傷付くのが嫌だった。ただそれだけが行動の理由だったのだろう。 「想いって強いのね…」 胸に手を当てその言葉を呟く…それから直ぐにシンジがおにぎりを持って戻ってきた。 「はい、おにぎりだけど良いかな？」 「ええ、ありがとう」 レイは上半身を起こしお礼を言ってからおにぎりを受け取った。 ふと目に入った時計は午前２時前を示していた。 「…シンジ君、」 「何？」 「今日は買い物行ける？」 「そうだね…昨日の今日だから、ちょっと無理かも知れないね。でも、明日は学校も休みになりそうだから、明日行こうか？」 「ええ、」
あとがき ＹＵＫＩ「なんだか、最近ゼルエル戦を書いたばっかりで…なんか、凄く書きにくかったです。はい」 レイ 「普通に倒しているわね、これも…」 ＹＵＫＩ「うぐ…」 レイ 「それに殆ど戦闘ばかりね…買い物は次回に持ち越しなの？」 ＹＵＫＩ「そ、そう言うことになりますね…」 レイ 「弐号機パイロットの目論見が失敗したし、それで許容してあげるわ」 ＹＵＫＩ「ふぅ…」 アスカ「何が失敗したって？」 レイ 「貴女の目論見よ」 アスカ「あら？アタシって何か企んでたかしら？」 レイ 「自分の胸に手を当てて考えればいいわ」 アスカ「心当たりはないわねぇ〜、まあ、仮にそんなことがあったとしてもどうせ些細な事ね」 レイ 「負け惜しみは見苦しいわよ」 アスカ「何の事かしらねぇ〜」 レイ 「自分の胸に手を当てて聞けばいいわ…そもそも、ここは２Ｒ… なのに何故貴女がこんなにも出てくるの？」 アスカ「それだけ需要があるって事よ、このアタシを必要としている存在がいるのよ」 レイ 「そんな人がいるの？ただ、貴女が目立ちたいから出ている訳ではないと言うの？」 アスカ「勿論に決まってんじゃないのよ、全世界６０億のファンがついているのよ」 レイ 「それは地球の人口よ」 アスカ「何か文句あるわけぇ？」 レイ 「…言っても無駄だから言わないことにするわ。次は碇君と私のデート…これは変えらないわ」 アスカ「ふふ、そんな目先のことばかり見ていると、あとでどうなるか分からないわよ」 レイ 「何が言いたいわけ？」 アスカ「アラエルにアルミサエル、タブリス大変そう無しとが残っているわねぇ あんまりアタシをむかっとさせると、こいつら全部一人で受け持つことになるわよ」 レイ 「………」 アスカ「まあ、何事も程々が良いって事よ、分かった？それじゃ又ね」 レイ 「……ＹＵＫＩ」 ＹＵＫＩ「はい？」 レイ 「…言わなくても分かっていると思うけれど…変なことはしない方が良いと思うわよ」 ＹＵＫＩ「後ろから撃たれたり刺されたりするような話にはしないようにします」 レイ 「なら良いわ、」