立場の違い2R

第14話

◆クリスマス

 12月21日(水曜日)、
 レイがカレンダーの前に立ってじぃ〜とカレンダーを見つめていた。
「どうかしたの?」
 気になったシンジは声をかけてみる。
「あ、うん…もう直ぐクリスマスって思って…」
「そうだね…でもそれが?」
「クリスマスなのに、暖かいというよりは暑いから…日本に来てるんだなぁって改めて思ったの」
「ドイツは気候が厳しいんだよね」
「ええ、ある意味日本も厳しいとも言えるかもしれないけれど、ヨーロッパは本当に冬の寒さが厳しいから」
「セカンドインパクトのせいなんだよね」
「そう、両方とも…」
「…六分儀君、確か日本ではイヴの方がメインになってるんだよね」
「え?ああ、そうだね」
「お母さんもそんな事言っていたし…イヴの日にパーティー開いていいかミサトさんに聞いてみる?」
「ミサトさんなら多分OKしてくれるよ」
「そうだといいわね」


 夕食のときに、ミサトにクリスマスパーティーの事を持ちかけてみた。
「ふ〜ん、クリスマスパーティーねぇ、良いんじゃない?で、何人くらい来るの?余裕ありそうなら明日リツコとかも誘ってみるけど」
 ここで、パーティーの中で大人がミサトただ一人と言う形になると、酒を思いっきり飲むことはできなくなる。もちろん、飲む事は飲むが、別に酒を飲む大人がいるかいないかということは非常に大きくなる…と言う事も多少は考えの中にあったのかもしれない、
「ええ、多分十分に余裕はあると思いますよ」


 12月22日(木曜日)、
 アスカといっしょに登校する途中で、二人はアスカにクリスマスパーティーの事を話した。
「ふ〜ん、クリスマスパーティーねぇ」
「どう?」
「そね…ヒカリも誘ってもいい?」
「ヒカリ…、ああ、委員長だね」
「そよ、多分鈴原も来るんでしょ」
「あ、いや、未だどうなるか…今日学校で声をかけてみるけど」
「なるほど、そう言うことね、良いんじゃないかしら?」
 レイがそう言ったのだが、シンジはその意味がいまいちよく分からず首をかしげることになった。
「ほらさ〜、あの二人って…」
「あ、そっか」
 アスカに言われてその理由が分かったようである。


 第3新東京市立第壱中学校、2−A、
 学校に着くとシンジは、トウジとケンスケの姿を探した。
 トウジに関しては未だ登校してきていないようだが、ケンスケの姿は発見したので、近付きおはようと声を掛けた。
「よう、おはよう」
「うん…ところでさ、ケンスケ、24日予定空いてるかな?」
「ん?24日…明後日か、特にないけどそれがどうかしたのか?」
「あ、うん、クリスマスパーティーを開くことになって良かったらケンスケも来ないかなって」
「クリスマスパーティーか…ミサトさんの昇進パーティーの時と同じメンバーか?」
「あ、いや、ちょっと分からないけど、あの時よりは多いと思うよ、綾波とか、あと委員長も誘うって」
「そうか」
 ケンスケの口元が少し綻ぶ。
「必ず行くよ…しかし、それにしても綾波の奴最近随分丸くと言うかそんな感じになったよな」
「そうだね」
 ケンスケの眼鏡がきらりと光った。
 又何かたくらんでるのかな?とは思ったが、下手に関わらない方が良さそうと言うこともあり、聞くのはやめた。
 暫くしてトウジも登校してきたので、トウジにも声を掛け、行くとの返答を得た。


 そして2学期の終業式が講堂で行われ、今、教室に戻ってきた。
「六分儀君、洞木さんも来るって」
「そうなんだ、じゃあ…子供は…1、2、3…」
 指折り人数を数えていく、
「6人か…後はネルフの人が何人来るかだね」
「ええ、」


 そのころ、ミサトは赤木研究室を訪れリツコにクリスマスパーティーのことを話した。
「クリスマスパーティーね…」
「そ、どうかしら?シンジ君とレイさんが美味しい料理で歓迎してくれるわよ」
「…そうね、予定は空いているし…行く事にするわ」


 夜、ネルフ本部、
 職員食堂で、六分儀とアスカが軽く話をしながら食事をとっていた。
 以前のようにアスカは鋭い棘がむき出しになっているわけではなく、随分丸く穏やかになってきている…これは、特にレイ、そしてシンジの要因が大きいのだろう…そんなことを嬉しくも思っているのであろうか六分儀は、どこか穏やかな表情でアスカと会話を交わしている。
「そうか、クリスマスパーティーか…」
 話がクリスマスパーティーに移ったのだが…そこで、アスカは六分儀を誘って良いものかどうか考えてた。
 そうする場合は、当然シンジやミサト達に許可を取らなければいけないと言うこともあるのだが、もう一つ、六分儀がその場にいては、パーティーとして余り盛り上がれないのではないかと言うこともある…
「私は予定があるから誘われようが誘われまいが、行くことはできんのだが…」
 窓の外のジオフロントに目を向けて、小さくぶつぶつ呟きながら何か考えているようである。
「どうするか……、」
 アスカは六分儀が結論を出すのをジュースを飲んで待つことにした。
「…アスカ」
「はい?」
「前日までに誰が出席するのか連絡してくれ」
「わかりました」


 12月24日(土曜日)、
 結局パーティーに出席することになったのは、シンジ、レイ、アスカ、トウジ、ケンスケ、ヒカリ、ミサト、リツコ、加持、ユイの10人であった。
 シンジとレイ、それにヒカリとアスカが手伝って、テーブルの上に料理を並べていく、美味しそうな料理がずらずらと並ぶ。
 参加者達はだいたい集まってきて後はリツコとユイを待つだけとなった。
 ちょっち遅いわね…とミサトが呟いたときにインターホンが鳴る。どうやら二人が到着したようである。
「いらっしゃ〜い」
「おじゃまします。ケーキ、持ってきたわ」
 ユイは大きな箱を抱えている。中身はケーキらしい、
「おじゃまするわね…あら、随分美味しそうね、シンジ君とレイさんが作ったの?」
「はい、」
「ささささ、ユイさんどうぞ」
 ミサトがケーキをおくために空けてあった場所の近くの席にユイを誘導する。
「じゃあ、失礼して…」
 ユイは席に座って、ケーキの箱を開けて、中から大きなケーキを取り出した。
「美味しそうですねぇ〜」
「ええ、みんなで食べましょ」
 そうして、どんちゃん騒ぎのクリスマスパーティーが開始された。
 それから暫くしてインターホンが鳴った。
「あれ?こんな時間に誰だろ…僕が出てきますね」
 シンジが玄関に行きドアを開けると、保安部の黒服が3名ほど立っていた。
「あの…何かあったんですか?」
「司令からの届け物だ」
「へ?」
 ふと見ると3人がそれぞれ大小いくつかの包装された箱を持っていた。


 それぞれにプレゼントが行き渡った後それぞれ開けてみることにした。
 シンジのものはかなり大きいし重い…サイズ的にチェロのような気もする…開けてみると、予想通りチェロであった。六分儀から初めてのプレゼント…それも、シンジの趣味に合わせてのチェロ…とても嬉しい。シンジは、じっとプレゼントのチェロを見つめた。
(父さんがチェロをか…父さんから何かプレゼントされたのなんか、初めてだな)
「良かったわね」
「うん。…ところで、碇は何だったの?」
「私は、これ、」
 レイは綺麗な銀製のブローチを見せた。
「へ〜綺麗だね」
「ええ、今度、お礼を伝えておいてくれる?」
「ん?…あ、うん、分かったよ、僕もお礼を言いたいしその時に一緒に言っておくよ」
「お願いね」


 夜も遅くなってきてお開きとなりみんな帰っていき、今、シンジとレイが片付けをしている。レイが食器を運びシンジが洗っている。
「今日は楽しかったね」
「ええ…又何かあったらやりたいわね…はい、これで、最後」
「そうだね。御苦労様」
「洗うの私も手伝おうか?」
「ううん、一人で十分だよ、代わりに、ふきんで拭いてきてくれる?」
「分かったわ」
 レイはふきんをとって、リビングに戻っていった。


 12月25日(日曜日)、
 シンジは特に何か予定があるわけではないのだが、ネルフ本部に来ていた。
 中央回廊をぶらぶらと歩いている…ここならば六分儀と会える可能性も高いだろう。礼を言うためだけに連絡を入れた上で執務室まで行くのはどうかと思ったと言うことからである。
 昼まで待ってみたものの、六分儀と会うことは無く…お腹もすいてきたし、職員食堂に向かおうとしたときに、六分儀の姿を見掛けた。
「あ、父さん」
「…シンジか…どうかしたのか?」
「ううん、特に何かある訳じゃないんだけど…その、プレゼントありがとう。ホントに嬉しかった…」
「そうか…気に入ったのなら良かった」
「あと、みんなも…特に碇と綾波がお礼を伝えてくれって」
「そうか、」
「うん」
 それだけ伝えると特に話すこともなくなって、どうしようか困っていると、シンジのお腹が鳴った。
「あ…」
 恥ずかしさから顔を赤くする。
「…これから食堂に行くが…一緒に行くか?」
「うん」

 そして職員食堂の窓際の眺めがいい席に座り、食事をとる事にした。
 シンジは六分儀にあわせて焼き鮭定食を頼んだ。
 とくにこれといってかいわをするということはなかったが、六分儀と一緒に食事をすることが出来たと言うことがシンジには嬉しかった。
「…時間だ、私はもう行く」
「あ、うん、今日は一緒に食事が出来た嬉しかったよ」
「…そうか、」
「あの…父さん、その……仕事…頑張ってね」
「…ああ、」
 六分儀はそう言い残し、職員食堂を後にした。
 シンジも未だ残っていたおつゆを最後まで飲んでから職員食堂を後にした。


 夜、総司令執務室、
「話は聞いたよ」
「そうか」
「悪いことではないが…何かあったのか?」
「いや…しいて言うほどのことはない」
「そうか、ならば良いが…今日計画の遅延について、議長から直接お小言があったぞ」
「全く…初めて行う計画がスケジュール通りに進むのならば、誰も苦労はしない」
「全くだな」
「…だが、問題が事予算にまで発展するようでは拙い…進んでいる他の計画の比重を補完計画本体に移せるか?」
「難しいな…進んでいるのはE計画くらいのものだ」
「…そうか…E計画は手を抜くわけにはいかんからな、そうすると……。何か方法がないか考えてみることにする」
「何かひらめいたらいつでも連絡してくれ」
「ああ、」

あとがき
碇  「………」
YUKI「……」(汗)
碇  「…………」
YUKI「……」(汗汗)
碇  「……………」
YUKI「た、頼むから何か言ってください」(汗汗汗)
碇  「ふっ、問題ない」
YUKI「何が…」
碇  「まあ良い、今回のこと…どうやら方向性が少しずつ変化して来ているようだな」
YUKI「そうですね…まあ、これからどういう選択をするかは分かりませんけど」
碇  「問題ない。期待しているぞ」
YUKI「あ、いや、期待されましても…」
碇  「失望はさせないで欲しいな」
YUKI「善処はいたします…」(汗)
碇  「結果を希望する」
YUKI「…りょ、りょうかいしました」(汗)