11月22日(日曜日)ネルフ本部、総司令執務室。 ミサトが呼び出されていた。 「葛城1尉、君のこれまでの使徒戦における指揮を評価し、3佐に昇格とする。」 「・・・有難う御座います。」 ついに佐官になった。 しかし、複雑な思いを抱きながらミサトは襟章を交換した。 「我々が日本を離れる間、ここを任せたよ」 「はい」 「では、下がれ」 「はい」 ミサトは一礼して退室した。 11月24日(火曜日)、昼過ぎ、ミサトのマンション、 土砂降りの中、シンジはレイと共にトウジ、ケンスケの2人を連れて帰宅した。 「はい、タオル」 シンジは3人にタオルを渡した。 「ありがとう」 「おお、すまんな」 「サンキュー」 「ミサトさん徹夜だったみたいで、帰って来たのは朝なんだよ。未だ寝てるかもしれないから静かにしてようよ。」 「せやな」 襖が開いてミサトが出て来た。 「「御邪魔してま〜す」」 二人が同時に言った。 「あら、いらっしゃい。」 「「ただいま」」 「おかえりなさい」 ミサトの襟章の線が2本に増えてる事に気付きケンスケの眼鏡が光った。 「御昇進おめでとう御座います!葛城3佐!」 ケンスケはミサトに対して直角に頭を下げながら言った。 「へ?・・あ、ありがとう。」 (こ、この子何物?) ミサトは内心ケンスケを怪しんだが、表情に出す事は堪えた。 「チョッチ本部まで行って来るから。」 ミサトは、出掛けて行った。 「如何したの?」 「ミサトさんは、1尉から3佐に出世したんだよ。襟章の線が1本から2本に増えてただろ」 (気づかないよそんな事) 「そう・・ミサトさん昇進してたの」 「か〜たく、この二人は、」 トウジは自分も気付いていないのにシンジやレイを非難しようとした。 「鈴原君は気づいていたの?」 「あ・・いや・・・その・・・」 「クア?」 我関せずといった感じで、ペンペンは冷蔵庫に入った。 夜、ケンスケ主催で、ミサトの昇進祝賀パーティーが開かれた。 「有難う、皆。」 現在出席者はミサト、ケンスケ、シンジ、レイ、トウジ、ペンペン?である。 「ユイさんは?」 「お母さんは外せない実験が入ってて残念だけどこれないって・・・」 「・・そうなんだ」 ペンペンはレイの膝の上で御機嫌でビール!?を飲んでいる。 「う〜ん・・・飲んでも良いのかしら?」 「い〜のい〜の、本人が飲みたがってるんだから飲ましてあげなさいよ」 「・・・わかりました。」 その時、チャイムが鳴った。 「ん?加持君かな」 そして、加持とリツコが一緒に入って来た。 「丁度、途中で一緒になってね。」 「怪しいわね・・・」 「いや、この度は御昇進おめでとう御座います、葛城3佐。」 加持が頭を軽く下げた。 「ま〜でも、これでタメ口がきけなくなるな。」 きいているのではないかな?・・・因みに横のリッちゃんは1佐なんだが・・・ねぇ、加持1尉 「ま、でも、留守を任された責任があるのよね。両司令が日本を離れるなんて事は異例の事態だから。」 「え?父さん達はどこに行ってるんですか?」 「南極よ。」 リツコが答えた。 南極海、調査艦隊旗艦、展望室。 海は赤く、所々に塩の柱が立っていた。 15年たった今も尚、一部の微生物しか生息する事が許されていない。 セカンドインパクト以前の地球は、雲の白、海と空の青、陸の茶や緑が美しく混ざり合い、美しい星だった。しかし、南極海の禍々しい赤の為に現在では・・・・・。とは言え、僅かずつ赤い範囲は縮小しており、いずれは元に戻るのであろうか。氷点下にも関わらず全く凍る気配の無い海だが。 そして、この調査艦隊は第2次セカンドインパクト調査団であり、非公式に行われた表向きの理由は、第1次セカンドインパクト調査団の報告に偽りが有る可能性があり、公式に発表した報告に疑いを持たせるのは、国際連合の信頼に関わる為、非公式に行うとの事だ。しかし、第1次セカンドインパクト調査団団長の六分儀ゲンドウが指揮を取り、尚且つ、その副官の冬月コウゾウが同行し、ネルフ関係者で団員が構成されている以上、どう考えても嘘である事は明白である。 ガラス張りの展望室には、六分儀と冬月がいた。 「南極、如何なる生命の存在も許されない死の世界、まるで死海だな。」 冬月が呟いた。 「しかし、我々人類は生命として、ここにいる、生きたままな。」 「科学に守られているからな。」 「科学は人の力だよ。」 「その傲慢が、15年前の悲劇を生み出したと言う事を忘れたのか?その結果がこれだ、与えられた罰にしては余りにも大き過ぎる」 「ここは、世界で最も浄化された世界だよ。唯一人間の原罪から解放された世界なのだ。」 「俺は、罪に塗れていたとしても、人が生きている世界を望むよ。」 空母の飛行甲板には100メートルはある巨大な棒状の物がシートを掛けられて置いてあった。 11月25日(水曜日)、早朝、ネルフ本部第1発令所。 ミサトとリツコが発令所に入った。 「マヤ、現状は?」 「後42秒で目標と衛星の軌道が交錯します。」 ・・・ 主モニターに妙な物体が映った。 大きさは良く分からないが出鱈目にでかそうだ。 「これが使徒?常識を疑うわね。」 突然画面が乱れ、映像が消えた。 「ATフィールドの新しい使い方ね。」 別の衛星からの映像に切り替わった。 「司令達は?」 「使徒の放つ強力なジャミングの為現在回線は使用不可能です。」 使徒が体の一部を切り落とした。 「何?」 暫くしてスリランカの南海上に凄まじい爆発が観測された。 「・・・爆弾ね」 「ATフィールドの力まで使っているようです」 いつも通りリツコの解説にマヤが付け足した。 「・・・あれ、どのくらいの破壊力?」 マヤが計算した。 「映像からですが、あの破片で、NN兵器に匹敵します。」 「・・・本体が落ちてきたら・・・・・・考えたくも無いわね・・・」 「・・・・・」 ミサトはその頭脳をフル回転させた。 特別顧問執務室、 ミサトは、ユイに作戦案を提出した。 「・・・・2人との連絡は?」 「残念ながら、」 「・・・分かりました。作戦案を許可します。委員会と日本政府の対応には私が当ります」 「はい」 A.M.10:31、ネルフ本部、第6作戦会議室、 「作戦を通告します。」 「貴方達の仕事は、落下してくる使徒をエヴァ3体によって受け止め、コアを破壊する事です。」 ・・・・ 「受け止める?」 「ええ、それしかないの」 「・・・・・」 暫く4人とも黙っていた。 「一応、規定では遺書を書くことになっているけど、どうする?」 「必要ないわ、」 「私もいいわ」 「僕も必要ありませんから」 「・・・・そう、作戦、成功したらこ〜んな分厚いステーキ奢ってあげるから。」 ミサトはノーマルモードに戻り、親指と中指で肉の厚さを示した。 「本当!?」 シンジだけが心から喜んだふりをしたので、逆にシンとなってしまった。 「・・・」 「私、お肉嫌いだから・・・でも、御馳走してくれるというなら嬉しいわ」 レイがフォローを入れた。 「そう、じゃ何か良い店探しとくわね」 ミサトは会議室を出ていった。 A.M.11:12、女子更衣室、 アスカが、プラグスーツに着替えていた。 「・・・アスカ・・・ミスは許されないわよ・・」 自分に言い聞かせながらプラグスーツのフィットボタンを押し、スーツを体にフィットさせる。 そんなときに、レイが更衣室に入ってきた。 「・・・」 「・・・アスカ、がんばってね」 「・・わかってるわよ、そんなこと・・・言われなくたって、」 P.M.0:14、ネルフ本部、第1発令所。 「二人とも、もう避難して良いわ、ここは、私が引き受けるから。」 ミサトが言った。 「そんな、子供達だけに危ない目に遭わせる訳には行きませんよ。」 「そうですよ。ここにいても、シェルターの中にいても、サードインパクトが起こったらそれまでですから。」 「でも、ATフィールドがあるエヴァぁの中が一番安全なのよ。」 「私も付き合うわ」 「・・ユイさん・・・」 P.M.1:04、避難ラッシュも終わり、第3新東京市には、一般人はいなくなった。 P.M.1:32、使徒が遂に日本上空に到達した。 そして、ゆっくりと降下を始めた。 初号機、 『作戦スタート!!』 ミサトの声で初号機は走り始めた。 『高度3000まではマギが誘導します。その後は各自、目測で動いて。』 音速に達し、衝撃波が町を破壊しながら初号機は更に速度を上げた。 前方の高圧電線を飛び越え、使徒に向けて一直線に走った。 上空に巨大な使徒が見えて来た。 凄まじい大きさである。 零号機が落下点に到達し強靭なATフィールドを展開した。 使徒のATフィールドと接触し反発しあっている。 初号機は落下点に到着した。 空は使徒の巨体に隠れ見る事は出来ない。 「碇!」 『手伝って』 初号機も両手を上に上げて構えた。 ATフィールドが共鳴し更に強靭な物へと成っていく。 シンジの体に重圧が掛かった。 「く」 零号機が使徒のATフィールドを押し返していく、それに従って初号機にかかる重圧が減る。 『今よ!』 「でえええ〜〜い!!」 零号機がATフィールドを更に一部中和し、初号機が跳躍し、プログナイフをコアに突き刺した。 火花が飛び散り、やがて、コアが輝き出した。 瞬間、全てが光に包まれた。 P.M.2:15、ネルフ本部第1発令所、 使徒は殲滅された。 副都市の一つが消え去ったが、この程度の被害で住めば御の字である。 「良くやったわ」 ユイとミサトは3人を笑顔で迎えた。 しかし、アスカは俯き拳をぎゅっと握りしめている。 「南極の司令達と回線が繋がりました」 SOUND ONLYと書かれた小型の空中スクリーンが表示された。 『葛城3尉、任務遂行御苦労』 「はい」 『初号機パイロットはいるか?』 「はい」 『活躍は聞いた。よくやったなシンジ。』 『葛城3尉、事後処理は頼んだ。』 「はい」 そして、ミサトの話が終わるとすぐにアスカはどこかへ走り去った。 「私アスカを追います。」 「あ、うん、お願い・・」 レイがすぐにアスカを追った。 ジオフロントの地底湖のほとりでアスカは涙を流して泣いていた。 レイの足音が近くで止まった。 「何?笑いに来たわけ!?」 「さぞいい気分でしょうねぇ!アタシみたいな役立たずの何の価値もない奴がただ悔しがっているのをみて、優越感に浸っていられるんだからね!!」 アスカはどこかやけくそになっている部分もあるかもしれない。 「・・・なぜ、そんなことを言うの?それに、貴方が何の価値もない?どうして?」 「あたしはエヴァに乗るしかないのよ!それしかないのよ!!・・・それだけしか・・・」 「・・・なぜ?貴女が・・人間ではないから?」 レイの目が潤む・・・ 「・・・そうよ・・・アタシは・・人じゃないのよ・・・だから・・・だから・・・」 「・・・・そんなこと・・言わないで・・・」 レイの声が涙声であることに気づいたアスカはレイの方を振り向いた。 「・・・・」 「・・・・貴女が・・・自分の存在を否定することは・・・私の存在も否定することなの・・・」 「・・・まさか・・・」 「そう・・・・私は貴女と対として生み出された存在なのよ・・・」 「・・・・」 「・・・自分に価値がないなんて言わないで・・・自分自身に自信を持って・・・」 アスカは暫くじっとレイの紅い瞳を見つめていたが、ふっと・・表情を少しゆるめた。 「・・・・・そう・・・・ごめんなさい・・・もう・・そんなことは言わないわ・・・」 その後、二人は暫くのあいだその場に二人で身を寄せ合って座っていた。
あとがき レイ 「弐号機パイロットも私のおかげで良い方向に進めそうね」 YUKI「そうですね」 レイ 「話は良いとしても、ずいぶんと遅かったわね」 YUKI「しばらくの間2Aに集中してましたから・・」 レイ 「まあ、良いわ、これで、2Rのみになったわけだし」 YUKI(でも、LAS作品も書かないとアスカにどつかれるんだろうなぁ・・・・)(溜息) レイ 「どうかしたの?」 YUKI「いえ、別に・・・」 レイ 「そう・・・ところで、私と碇君の間の進展はこれからどうなるの?」 YUKI「そうですね、のんびりとでも着実に・・・と言う感じで良いですかね?」 レイ 「ええ、それならば問題ないわ、これからを期待しているわ」 YUKI「では、がんばらせていただきます。」