立場の違い2R

第10話

◆父親

11月4日(水曜日)、P.M.1:12、第3新東京市市内
シンジは公衆電話から電話をかけていた。
『はい、ネルフ本部総合通信室ですが』
「あ、あの、六分儀シンジです。父をお願いします。」
シンジは、保護者懇談会の事を伝えるつもりだった。六分儀が、そんな事に来るはずが無いとは思っていたが、どうしても、言いたくなって電話をかけていた。
『少々御待ち下さい。』
・・・
『シンジか、なんだ』
シンジは拳に力を入れた。
「あの、明日は保護者懇談会で」
『シンジ、私は忙しい、そのような事は葛城1尉に』
六分儀は、怒ると言うよりは少し呆れたような声で言い始めた。
「い、いや、その・・・」
『・・・いしかたない、何時だ?』
「え?」
『何時だと聞いている』
「あ、来週の月曜日なんだけど・・」
『・・・分かった、可能ならば行く』
シンジは笑みを浮かべた。
「あ、あの、ありがとう、父さん」


ネルフ本部、実験司令室、
「では、これより実験を開始します。」
リツコが起動ボタンに手をかけた瞬間、全ての電源が落ち、マヤを除く全ての職員が責めるような視線でリツコを見た。
「わ、わたしじゃ、ないわよ・・・多分・・・まだ・・・押してないし・・」
「そうです!私は先輩を信じます!」
マヤはリツコの味方についたが、誰もリツコに向ける視線を変え様とはしなかった。


プラグ内ではアスカがプラグの内壁を叩いていた。
「こら〜!!どうなってんのよ!!実験はどうしたのよ!!」
電源が来ていないようである。


エレベーター、
ミサトと加持が乗っていた。
突然エレベーターが止まり電気が消え、非常灯になった。
「停電?」
「又、リッちゃんが何か失敗でもやらかしたのかな」
「そうね、第2東京大学の主電源落とした事もあったしね」
リツコのマッドぶりは学生の時からだったらしい。しかし、一介の大学生がそんな実験をしても良いのだろうか・・・


総司令執務室、
六分儀が電話を持ったままの姿勢でいた。
「六分儀・・・どうした?」
「・・・空調が止まっている・・・電話の切れ方も妙だ・・・」
「・・・確かに・・・赤木博士が何かやらかしたかな?」
「今日は零号機の実験だ、このユニットまで影響が起きるとは考えにくい、発令所に急ぐぞ」
二人は非常用直通エレベーターで発令所に向かった。
独立系統の電源がついていたし、それが駄目でも、重力を使って降ろす事は出来る。


P.M.1:19、路上、
シンジとレイがネルフ本部に向かっていた。
「そう、司令が来てくれるの、良かったわね」
「うん」
「・・・・・あら?」
「どうかしたの?」
「・・・停電かしら?」
「え?」
シンジが辺りを見回すと、自動販売機等が停止し信号などが消えている。
「・・・ほんとだ・・・停電かな」
暫くそのまま歩きつづける。
「・・・まずいわね」
「どうしたの?」
「複数のブロックが停電している。しかも復旧しない・・・これは何かあったと見るのが妥当ね」
「何かって?」
「・・・それはわからないわ・・・急ぎましょう」
「あ、うん」


ジオフロントゲートに到着したが、ゲートが開かない、
「・・・非常通路は・・」
レイはマニュアルを取り出して地図どおりに進む、
そして、そこには手動のドアがあった。
「これね、」
「手動・・」
「手伝って」
「あ、うん」
二人掛かりでドアを開け中に入る。
「・・暗いね・・・」
「そうね・・」
レイは鞄の中から懐中電灯を取り出して点けた。
通路がライトに照らされる。
「行きましょう」
「うん」
二人は懐中電灯の明かりを頼りに通路を進んだ。


やがて分かれ道に差し掛かった。
「どっちに行く?」
「・・・分からない、どちらかしら・・」
「う〜ん」
「・・・こっちに行って見ましょう」
二人は右側の通路を選んだ。


そのころケージでは弐号機の発進準備が手動で行われていた。
「二人は?」
「未だです。」
「・・そうか、」
冬月は発進準備を手伝う六分儀に視線を向けた。


通路を進む二人は上り坂に成っていることに気づいた。
「・・・失敗だったようね。ごめんなさい」
「いや、仕方ないよ、戻ろう」
「ええ」
二人は来た道を戻り始めた。
そして、分かれ道で今度は左側の通路を進む。


電池をしょって地上に出た弐号機は沢山の目がついた半球状の本体に長い足が複数はえている使徒と対峙した。
「・・大きい、」
弐号機はパレットガンを構えた。
「アスカ、行くわよ」
電池を切り離しパレットガンを撃ちながら移動する。
弾はATフィールドに弾かれてしまう。
中和距離まで接近し中和した上で撃つ、弾は表皮を貫き次々に突き刺さる。
「・・コアは見えない・・・支援はなし・・困ったわね・・・」
アスカには焦りの色が見える。
刻一刻と内部電源の残量が減っていく、
「くっ!」
近くの兵装ビルを破壊し中の武器を確認する。
「ソニックグレイブ、」
十八番の装備が運良く入っていた。
「よし、」
ソニックグレイブを手にもち構える。
使徒が弐号機に向かってくる。
「アタシは負けらんないのよ〜!!」
使徒に向かって突撃し、跳躍してソニックグレイブを思い切り目玉に突き刺す。
傷から液体が噴出す。
「え?きゃあああああ!!!」
強酸性の液体が装甲版を溶かす。
弐号機は慌ててその場を飛び離れた。
「はぁ・・はぁ・・・はぁ・・・ざけんじゃないわよ」
離脱がはやかたっためダメージは軽微で済んでいる。
使徒の足を交わす。
「くっ」
その場を逃げ出すが、大きさからか速そうには見えないが逃げ切れない、
次々に襲い掛かる足を避ける。
兵装ビルを破壊し、中からスマッシュホークを取り出す。
「どおりゃああ!!」
襲い掛かる足をスマッシュホークで切断した。
飛び散る液体を交わす。
「でえやああああ!!!」
一気に間合いを詰め、攻撃を仕掛ける。
しかし、途中で電源が切れ、その場に倒れる結果になった。
「そんな・・・」
足が襲い掛かってくる。
直撃するその瞬間、零号機が弐号機を助け出した。
「なっ!」
『大丈夫?』
「なっ、なんであんたなんかに!」
『黙ってなさい』
零号機は自分の外部電池を弐号機に取り付け、弐号機が行動できるようになった。
『サポートお願い』
「何でアタシかアンタなんかのサポートを!」
『・・・好きにしなさい』
零号機は使徒と戦っている初号機の救援に向かった。
「くっ」
弐号機は兵装ビルを手当たり次第に破壊してスナイパーライフルを引っ張り出した。
初号機に襲い掛かる足をプログソードで一刀両断にし、飛び散る溶解液を強力なATフィールドで防ぐ、
『碇!』
「大丈夫?」
『あ、うん、ありがとう』
弐号機が放ったスナイパーライフルの弾が次々に使徒に突き刺さる。
「はあああ!!」
零号機はプログソードで次々とマトリエルを切り裂いていく、
初号機もパレットガンを撃ちまくる。
強力なATフィールドで溶解液を防ぐ、
やがて、使徒の中心部にまで到達し、コアを斬り、使徒を殲滅する事に成功した。


戦闘終了後、ケージ、
レイはアスカのほうによっていった。
「何!?笑いに来たわけ!?役に立ってないって!」
「いえ、御苦労様とありがとうと言いに来たの」
「なに!?ざけんじゃないわよ!!」
「・・なぜそんな事を言うの?」
「アタシなんか何の役にも立ってないじゃないの!!え〜、そんな嫌味言いに来たのアンタは!!?」
「・・・ちがうわ・・今回、コアを破壊した直後に零号機の内部電源が切れたわ、もし、貴方が弐号機で支援攻撃をしてくれなかったら、後もう少しのところで倒せなかった。あの中心部で溶解液を食らえば間違いなく零号機は跡形も無く溶かされていたわ、貴女のおかげで使徒を倒せたし、私も生き残る事ができたわ・・・だから、ありがとう、そしてご苦労様」
アスカはきょとんとした表情を浮かべた。
「・・・戦いは止めを刺したものだけの戦いではないわ、それを支援するもの、その後ろで指揮をする者、メンテナンスを行うもの、更には税金と言う形で使徒戦への費用を出す一般国民に至るまでの全ての者の戦い、人類の存亡を賭けた戦いなのよ・・・」
「・・・・」
「それじゃ、又」
レイはその場にアスカを残してその場を去った。


11月9日(月曜日)、第3新東京市立第壱中学校2−A、
シンジはぼんやりと空を眺めていた。
「・・父さん来てくれるのかな?」
「きっと来てくれるわよ」
「そうだと、いいな」
ユイがやってきた。
「こんにちは、」
「あ、こんにちは」
「お母さん、そろそろ順番だから」
「あら、そんな時間?じゃあ、行きましょうか、シンジ君又後でね」
「はい」


数分後、突然駐車場に10台ほどの黒塗りの車が雪崩れ込んできた。
生徒も職員も大慌てである。
そして、その車からは、続々と黒服が降りて来て学校の中に入っていく。
爆音を轟かせ、数機のヘリコプターがやってきて屋上に着陸した。
学校中パニック状態である。
教室に黒服が雪崩れ込んで来た。
生徒達はただ怖がって震えている。
そして、六分儀が教室に入って来た。
「・・シンジ、来たぞ」
(・・・来なかった方が良かったかも・・・)
シンジはど〜〜んとした気持ちに包まれてしまった。 

あとがき
レイ 「なかなか良い感じで話が進んでいるわね」
YUKI「確かに、」
レイ 「後は・・私と碇君の絆をより深めるだけね」
YUKI「う〜ん、それでいいのかなぁ〜?」
レイ 「問題ないわ」
レイ 「それにしても、暗闇の中の行進、一人いないだけで随分違うわね」
YUKI「それは原作と比較してと言う事?」
レイ 「ええ、そう、随分静かで穏やかな展開ね」
YUKI(う〜ん、原作の状況でアスカがいない場合は静かと言うかなんと言うか・・・)
レイ 「まあ、私と碇君との絆を邪魔しなければ問題ないわ」
YUKI「まあ、そうかもねぇ」
レイ 「YUKI、次に期待しているわ」
YUKI「了解〜」
レイ 「次は、サハクィエル・・・どうなるのかしらね?