使徒を倒し、ユニゾンの特訓の為の同居の必要性は無くなったのだが、ユイが忙しいと言う事もあり、そのままレイはミサトが預かる事に成った。 レイは家事をシンジ以上に上手にこなすと言う事で、シンジの負担は大幅に軽減される事に成った。 その上、最高の家庭教師として、シンジの学習面の負担も減る事に成った。 10月16日(金曜日)、早朝、ミサトのマンション、 小気味良い包丁の音と、良い香りが漂っている。 「六分儀君、そっちはどう?」 「うん、こっちは出来たよ」 今、シンジとレイが二人でミサトも含め3人分の朝食と弁当を作っていた。 やがてできあがり、シンジが食卓の上に朝食を並べ、レイが弁当箱に弁当を積め込んでいく。 忙し過ぎるユイに代わって、小さい頃から厨房に立つ事が多かったレイの腕は、相当な物で、初めてレイの手料理を食べた時は、シンジも驚いた。 そして、良い匂いに誘われて、ミサトが起き出してくる。 「ミサトさん、おはよう」 「おはよう御座います」 「おはよ」 そして、食事を済ませ、二人は弁当を持って学校へと向かった。 第3新東京市立第壱中学校、2−A、 やはり、アスカが二人に敵意の視線を向けてくる。 「・・綾波か・・・」 シンジは、なんとなく漏らした。 「・・彼女・・可哀想ね・・」 それに、直ぐ横にいたレイが答えた。 「可哀想?」 「・・ええ、」 レイがアスカに向ける視線や、その言葉の意味はシンジには分からなかった。 夕方、ネルフ本部、 今日は、シミューレションによる訓練が行われ、それが終わって、シンジは更衣室で着替えをしていた。 『私だけど今、良いかしら?』 レイに似た声だが、こう言う話し方をするのはユイである。 「あ、はい、どうぞ」 ドアが開きユイが更衣室に入って来た。 「先ずは、お疲れ様、」 「はい」 「レイとは上手くやってるかしら?」 「あ、はい、」 シンジは軽い笑みを浮かべて返した。 「そう、それは良かったわ・・・ちょっとわるいんだけど」 「はい?」 「修学旅行、待機任務で、行けなくなっちゃうんだけど・・・」 「あ・・・そうですか」 「ごめんなさいね、何か代わりに埋め合わせするから」 「あ、いえ、そんな」 「じゃあ、これからも頑張ってね」 ユイはさっさと、更衣室を出て行った。 10月18日(日曜日)夜、第3新東京市市内のとあるレストランを貸切にして六分儀とアスカの二人が食事をしていた。 「・・アスカ、調子はどうだ?」 アスカは表情を暗くして俯いた。 「・・・司令・・」 「どうした?」 「・・アタシ・・用済みですか?」 「何の事を言っている?」 「・・・シンクロ率だって、ファーストはおろかサードにも及ばない、操縦だって・・・ファーストには遠く及ばない・・・アタシは・・・」 「アスカ、そんな事は問題ではない。」 「・・・」 「問題無い」 「・・はい、」 碇は少し眉を顰めたが、結局、終始、アスカの状況は殆ど変わらなかった。 10月19日(月曜日)第3新東京市市内、公園、 二人は、買い物の帰りで近道をするために公園を横切っていた。 「明日からは、修学旅行だったんだね・・」 「そうね・・・でも、その代わりにお母さんが、ネルフの保養施設のプールを貸切にしてくれるって」 「そうなんだ、」 「ええ」 葛城ミサト宅、 夕食の席で今、ミサトから、修学旅行に行けない事を聞かされた。 二人は沈黙で返した。 「な、なに・・・そんなに不満?」 「・・・それ、誰が決めたんですか?」 レイが抑揚をつけずに尋ねた。 「え・・作戦部長の私だけど・・・」 「・・・金曜に、お母さんから聞いたんですけど・・」 妙な沈黙が流れた。 ミサトが言い忘れていたと言う事は明らかである。 その後、ミサト1人だけ気まずい食事が続いた。 10月22日(木曜日)A.M.10:00、ネルフ本部保養施設室内プール、 ユイに連れられてやって来た。 今、シンジは更衣室で水着に着替え、二人が出て来るのを待っていた。 尚、アスカは、誘われはしたが断り、ネルフ本部で訓練を続けている。 暫くして、二人が更衣室から出てきた。 レイは白、ユイは薄水色の水着であった。 ユイはとても40が近いとは思えない、20代としか思えない、 二人の姿に見惚れ、シンジは少しぽ〜っとしてしまった。 「さて、シンジ君、早速水に入りましょうか?」 「あっ、はい、」 3人は水の中に入り、軽く泳いで水に体を慣れさせた。 ユイはちょっと水から上がって、ビーチボールを手に取った。 「はい」 ビーチボールがシンジに向かって飛んでくる。 シンジはビーチボールを受け止めた。 「六分儀君、」 「あっ、はい」 レイに投げ渡す。 そして、ユイ、シンジへとパスされる。 そのまま暫くビーチボールを使って戯れた。 その頃、浅間山火山活動調査所。 浅間山の火口の中に不審な影があるという報告を受けて、ミサトは日向を連れてここに来ていた。 「観測機降下開始」 ・・・ ・・・ 「深度650」 「深度700」 「依然反応無し」 ・・・ 「深度1800」 「もう限界ですよ。」 「壊れたらウチで弁償します。後500お願いします。」 主任が小さくガッツポーズをした。 「深度1850」 「反応がありました、分析開始!」 日向が叫んだ。 ・・・ 反応が消えた。 「大破しました」 「どう?」 「ぎりぎりですが間に合いました。パターン青です。」 ミサトは所長の方を振り返った。 「以後、この件に関する一切の指揮権はネルフが取ります。尚、過去24時間の一切の情報を封鎖します。」 一般職員を退室させると日向は直ぐに映像などの分析に掛かった。 「・・・葛城さん、これを」 モニターには使徒の幼体らしきものが映っていた。 「・・・日向君、使徒捕獲の最優先の特令何だっけ?」 「え?確か、A−17だったと思いますが・・・あれは、」 「そっ、ありがとね」 笑顔で礼を言いミサトは電話を掛ける為に部屋を出て行った。 ミサトに恋心を寄せている日向は、それだけで舞い上がり、とてつもなく重要な事を知らせ損ねた。 廊下、 ミサトは本部に電話を掛けた。 「六分儀司令に、A−17の発令を要請して」 『気をつけてください、これは通常回線です』 「分かってるわよ、さっさと特別回線に切り替えなさい」 『しかし、本気ですか?A−17は、』 「分かってるわよ、早くしなさい」 『は、はい』 ネルフ本部、総司令執務室、 「青葉2尉、用件は?」 「あっ、はい、浅間山の葛城1尉から、A−17の発令要請が」 「A−17!?」 冬月が叫んだ。 「・・こちらから打って出るか・・」 「六分儀、まさか、」 「生きた使徒、最高のサンプルだ」 ネルフ本部保養施設室内プール、 「なんですって?」 ユイは携帯でA−17発令の連絡を受けた。 「ごめんなさい、用事ができたわ、未だ暫くは二人で遊んでいて」 「あ、はい」 「行ってらっしゃい」 ユイは、本部に向かった。 「六分儀君、何か飲む?」 レイはクーラーボックスを開けてシンジに尋ねた。 「あっ、コーラを」 「はい、」 「ありがと」 シンジはコーラを受け取り飲んだ。 レイはイチゴジュースを選んだ。 A.M.11:24、人類補完委員会。 「A−17?こちらから打って出るつもりか」 「使徒を捕獲するつもりか」 「しかし、その危険は大き過ぎるのではないか?」 「左様、セカンドインパクトの二の舞とも成りかねない。」 「生きた使徒のサンプル、これがいかに重大な物であるかは自明の理です。」 「・・・良かろう、だが、失敗は許されんぞ」 「御安心を」 ユイの姿が現れた。 7人は沈黙した。 目が笑っていない。 「A−17が、発令された場合、現有資産の凍結を含む様々な命令が出される。その際の被害推定は、日本のGDP1日分、約1兆円、そして、世界中で日本企業の株、円、国債、社債が売られる。そして、関連する主要先進国の企業が大打撃を受ける。被害は最低でも10兆に達するでしょう。そして、その影響は、先進国では失業、経済不安、後復興国では、難民、避難民の発生・・・多くの人命が失われる事に成る。」 「まさか、そんな事が分からない貴方達じゃないわよね♪」 7人は汗をかいた。 「六分儀、A−17の発令は取り消しだ」 ネルフ本部、会議室、 モニターに使徒のさなぎのような物と推測されるものが映っている。 「今回、これを殲滅するためにD型装備をつけて火口に潜り直接殲滅してもらうわ。」 「作戦担当は・・」 「アタシがやるわ!!」 リツコが名前を呼ぶ前にアスカが志願した。 「・・・わかったわ、アスカ貴女に任せるわ・・・宜しいですね」 「ええ、がんばってね」 2時間後、浅間山に零号機と初号機、弐号機が到着した。 この周辺のみ厳戒体制が敷かれている。 弐号機にはD型装備を取り付けられている。 「アスカ、行くわよ」 ・・・・ アスカが弐号機に乗り込むのを見ながらユイはあごに指を当てて何かを考えているようである。 「さて・・・どうしましょうかね・・・」 一言つぶやいた後、ユイは司令室に向かった。 火口、 弐号機は、ケーブルにつるされ、残る2機が火口で待機している。 弐号機は、低温冷媒が入ったタンクを背中に背負っている。 冷却用のものではなく、使徒を内圧で倒す、若しくは、温度差で構成組織を破壊するためである。 ケーブルはクレーンに繋がれているもの以外に、両機がその端を持っている物がある。 これは、いざと言う時、弐号機を引っ張り上げる為のものである。 作戦が開始され、弐号機が火口に向かって下ろされていった。 弐号機、 アスカは汗をだらだらたらしながら暑さに耐えていた。 『アスカ、大丈夫?』 「この程度なんでもないわよ、ぜんぜん大丈夫よ!」 冷却機能はすでに限界に達している。 まあ、とは言えプラグだけではなく、シンクロしているエヴァも冷やさないと暑い。 極論、プラグ内が冷たく、エヴァの外が熱ければ、本当に訳の分からない感覚になるだろう。 『深度、800』 まだまだ先は長い。 (アタシがやんなきゃだめなのよ、アタシが) 浅間山、司令室、 「深度、1800」 アスカは見るからに暑そうである。 「・・弐号機の冷却能力は少し低いわね・・」 ユイは眉間にしわを寄せる。 先ほどからユイが取り仕切っている為、ミサトはやることが無く椅子にドカッと座って、モニターに目をやっている。 ・・・・ ・・・・ ・・・・ 「深度、2000、予想敵出現地です。」 『・・何も、見えないわ・・』 「予想よりも対流の流れが速いみたいですね。」 「アス」 『問題ありません!!!』 「・・・・後、どの位行ける?」 「安全深度まで200、限界深度まで700です。」 「・・・後・・600だけ行くわね。」 ・・・・ ・・・・ ・・・・ ・・・・ ・・・・ 「深度、2600、限界深度」 『まだまだ大丈夫よ!!いけるわ!!』 ユイは軽くため息をついてから続行を指示した。 「・・・初号機、零号機スタンバイ、」 サブモニターに映る両機はいつでも引き上げられる準備をしている。 ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・ ユイは、モニターをじっと見詰めた。 アスカはふらふらし始めている。 「深度、3100、敵予想出現位置です」 『・・・目標を確認したわ!』 さっきまでと一転して威勢の良い声が飛び出る。 「接触のチャンスは一度です」 「アスカちゃん、頼んだわよ」 弐号機は、使徒に接近し、繭状の薄いATフィールドを中和し、低温冷媒を一気に噴き掛けた。 一瞬で、気化し、使徒の体が内部で膨らむ圧力に耐え切れずに崩壊した。 「パターンブルー、消滅を確認」 「御苦労様」 夜、ネルフ本部、碇特別研究室 『セカンドチルドレンですが、』 「どうぞ、入って頂戴」 ドアを開いてアスカが入って来た。 「夜に呼び出してごめんなさいね・・・さっ座って」 勧められるままにアスカはソファーに腰掛けた。 「先ずは、今回の作戦の遂行ご苦労様、今回は貴女のおかげで殆ど被害を出すことなく使徒を殲滅することができたわ」 アスカは表情を緩める。 「少し話をしたいことがあるんだけど、良いかしら?」
あとがき レイ 「ふふ、良い感じなの」 YUKI「ですか」 レイ 「ええ、弐号機パイロットにもサポートが入ったようだけれど、 これなら私と碇君の絆には影響はなさそうね。歓迎するわ」 YUKI「次は・・・マトリエルでしたか」 レイ 「楽しみにしているわ」 YUKI(続きまだ書いてないこと言ったら怖いな) レイ 「どうかしたの?」 YUKI「い、いえ、何でもありません」 レイ 「そう・・・さよなら」 YUKI「それでは」