7月25日(土曜日)、ネルフ本部、第4ケージ、初号機、 現在機体連動試験中であった。 『シンクロ率49.36%』 シンジはモニターの隅に映る弐号機のケージを見た。 第3ケージ、 アスカは弐号機の調整を手動で行っていた。 足音が近づいて来た。 アスカは弐号機からブリッジに降りて、足音の方を振り返った。 足音の正体は予想通り六分儀だった。 「アスカ、調子はどうだ?」 「はい、問題ありません」 六分儀が来た事が嬉しいのかアスカは笑顔を浮かべた。 「そうか・・・今日、時間が空いた、夕食をいっしょにどうだ?」 「はい♪」 六分儀の表情は柔らかく、シンジの前ではこんな表情は決してしない。 「私はもう行く、又後でな」 「はい☆」 六分儀はブリッジを離れていった。 司令室、 モニターの1つには、シンジの視線、つまり、六分儀とアスカの姿が映っていた。 「シンジ君・・・辛いでしょうね」 マヤは少し涙ぐんでいる。 「ねえ、リツコ、何で司令は、アスカをあんなに大事にしてるわけ?実の息子を放って置いて」 リツコは無言でモニターを見たまま答えを返さなかった。 シンクロ率は30台で大きく変動している。 「・・何にせよ、シンジ君の心理面に大きな負担をかけているわね、自分よりも父親に近い存在、簡単に言えるとしたら嫉妬、でも多分そんなに単純じゃないわね・・・」 「嫉妬だけならば、司令がシンジ君に積極的に接するだけで事は済む・・・恐らくは、複数の感情が入り交ざり、自分自身でも処理できなくなっている。戸惑いね、単なる嫉妬だけならば、こんなにシンクロ誤差が大きくなる事は無いわ・・」 リツコは答えを誤魔化した。 「戸惑いか・・・」 ミサトは自分の境遇にシンジを照らし合わせた。 「・・・そうそう、零号機の本部輸送決まったわ」 話を逸らしたのか、ふと思い出したのかリツコは全く関係の無い話を持ち出した。 「そっか」 「・・・一つ困った事があるわ」 「何?」 「・・・機体間の性能のばらつきが大き過ぎるの」 「そっか、でも、ま、試作機だから仕方ないわよ」 「・・・ええ・・・」 7月31日(金曜日)、ミサトのマンション、 今日はリツコがミサトの家に来ていた。 昼食のカレーを一口食べた。 口の中に広がる無数の味覚の不協和音、なんとも表現しがたい破滅的な味 二人の顔色が変わった。 「このカレー作ったのミサトでしょ。」 「分かる〜?」 ミサトは既に立ち直っているようでへらっとしている。 「味でね。」 (よくレトルトのカレーでこんな味が!!) リツコは心の中で叫んだ。 「シンジ君、今からでも良いから住むとこ変えなさい。こんな自堕落な同居人のせいで、一生を台無しにする事は無いわ。」 リツコは本気。 「いえ、もう慣れましたから。」 「そうよ、人間の環境適応能力を甘く見ちゃ〜いけない。シンちゃん、ここにカレー入れて。」 つまり、ミサトとの同居はかなりの環境適応が必要だと自分でも認めている訳だ。 「ほ、本気ですか?」 ミサトはカップラーメンの大盛りを前に出した。 「ドッパァ〜とね」 シンジは仕方なくその中にカレーを入れた。 「初めっからカレーが入ってるラーメンだとこの味は出ないのよねー」 ((このカレーの味は普通出せない・・・)) シンジとリツコは同じ事を考えている。 「御湯を少なめにするのがコツよ」 ミサトはカップラーメンをかき回している。 向こうでカレーを食べたペンペンが倒れた。 (?) 「そうだ、シンジ君、アスカの更新カード渡すの忘れちゃったから、明日、本部に来る前に渡しといてくれない。」 リツコはアスカのIDカードをシンジに渡した。 「・・分かりました・・」 シンジはアスカの写真を見詰めた。 「どうしたの?アスカの写真じっと見ちゃってぇ、もしかしてぇ〜」 ミサトが楽しそうにシンジをからかった。 「そ、そんなんじゃ有りませんよ。」 「ただ・・・アイツの事が分からなくて」 「・・プライドが高い子・・そう、余りにも高過ぎるくらいに・・・」 8月1日(土曜日)、昼前 シンジは本部に行く前にアスカのマンションに寄った。数多く立ち並ぶ棟の中からアスカの住んでいる棟を見つけ出し階段を上りアスカの部屋の前まで来た。 (まるでゴーストタウンみたいだ・・・・この部屋以外誰も住んでいないように見えるし・・・・) シンジは呼び鈴を押したが壊れている様で音が鳴らなかった。 「ごめん下さい・・あの・・六分儀だけど・・」 シンジはドアを開けて中に入った。 「綾波?」 アスカの部屋は、それなりに整理されているが、どうも、少女の部屋と言う雰囲気ではない。 シンジは部屋に上がった。 暫くしてバスルームからアスカが出て来た。 「なっ・・・」 その格好は、バスタオルを一枚体に巻いただけという刺激的なものであった。 「きゃっ」 「きゃああああああああああああ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!」 何か凄い衝撃を受けたような木が瞬間シンジの意識は消え去った。 ネルフ本部の医務室でシンジは目を覚ました。 「ああ、目が覚めたのね、急いで、使徒よ」 シンジは直ぐにケージに向かわされた。 (頭が痛い・・) 初号機内。 『エヴァぁ初号機発進!』 Gが掛かったがもう慣れた。 地上に出た。 『ダメッ!シンジ君避けて!』 「え?」 次の瞬間、前のビルの中程が光り、何かが、胸部に直撃し、激痛が走った。 「わああああああ!!!!!!!」 「あああああああああああああ!!!!!!」 「あうううぅぅぅぅ・・・」 シンジは意識を失った。 ネルフ本部第1発令所 「ケージに行くわ!」 ミサトは走って発令所を出て行った。 「パイロット心音微弱」 「生命維持システム最大、心臓マッサージを!」 「パルス確認!」 「プラグの強制排除急いで!」 初号機からエントリープラグが取り出された。 「LCL緊急排水」 「はい」
あとがき レイ 「碇君!!」 YUKI「大丈夫だって知っているでしょう」 レイ 「駄目、碇君は、私が守らなければ行けないの」 YUKI「それは知っていますが・・・」 レイ 「急いで、零号機を空輸するの」 YUKI「しかし・・」 レイ 「駄目なの?」 YUKI「もう暫くお待ち下さい」 レイ (涙目) YUKI「はうっ」