2月23日(火曜日)、第3新東京市郊外、 零号機の自爆で大きなクレーターとなった場所を捜索隊がエントリープラグの捜索を行っていた。 そんな中、リツコがヘリでやってきた。 ヘリからリツコが髪を押さえながら降りて来た。 「赤木博士、」 「エントリープラグは?」 「今のところ発見されていません。」 「・・そう、」 「碇博士は西の方を探しておられます。」 「・・・」 リツコはクレーターの反対側のほうに視線を向けた。 その視線の先では、ユイが、数十人の技術職員達とともにプラグの捜索を行っていた。 「博士!!こちらへ!!」 職員の声でユイが急いで向かうと、土砂の中にエントリープラグが埋まっていて一部分だけ見えていた。 「直ぐに掘り出して!」 周囲の職員が集結して直ぐにプラグの回りの土砂をどけて掘り出す。 ハッチが地上に現れるとユイは直ぐに飛びつきハッチを開けた。 中から大量のLCLが溢れ出す。 LCLの流れが止まると直ぐに中を覗き込む。 「レッ・・・」 ユイの言葉は途中で止まった。 それを見て皆何があったのかさとる。 暫くしてユイはゆっくりとプラグのハッチを閉じた。 「・・・・私の研究室まで運んでくれるかしら?」 「・・・はい、」 ユイはとぼとぼとヘリの方に歩いていった。 現場を非常に重苦しい雰囲気が包んだ。 ゆっくりとエントリープラグが掘り出され、やってきた輸送ヘリによって丁寧に運ばれていく。 ミサトのマンション、リビング、 シンジとアスカの二人は軽く壁に背を凭れさせながら並んで座っていた。 「・・・・・」 「・・・・・」 先ほど、レイの死亡が確認されたと言う事が電話で伝えられた。 「・・・アスカ、」 「・・・何?」 「・・・碇・・・もういないんだよね・・・」 「・・・そうね・・・レイはもういないのね・・・」 二人はレイとの想い出について思いを巡らせた。 レイと一緒に過ごした時間は短かった。 しかし、仲間として友人として、大切な存在になっていた。 「・・・・」 「・・・・」 ふと時計を見るとそろそろ夕飯の支度をしなくてはいけない時間になっていた。 「あ・・夕飯何か作るね・・」 「・・アタシも手伝うわ、」 「・・ありがと、」 二人はゆっくりとキッチンに向かった。 2月24日(水曜日)、ネルフ本部、総司令執務室、 「・・・レイ君の死亡か・・・」 「・・・困ったな・・・」 色んな意味で困った事態になった。 「・・ユイくんは大丈夫だろうか?」 「彼女は強い、大丈夫だろう・・・だが、時間が掛かる事は避けられないだろう・・・」 「・・・今から行って来るよ」 「そうだな、頼んだ。」 「お前は委員会・・いや、ゼーレの方を頼む」 「問題ない」 碇特別研究室、 ユイは様々な機器を黙々と操作していた。 「・・・」 『ユイ君私だがちょっといいかな?』 「はい、どうぞ」 ユイはボタンでドアを開け冬月を中に入れた。 「・・ユイ君、辛いとは思うが・・・」 「いえ、大丈夫ですから・・・・ところで、冬月先生、相談が有るんですが」 「相談?一体何かね?まあ、何にせよ思ったより元気なようでよかったよ」 「・・・これを見ていただけますか?」 「なにかね?」 冬月はディスプレイを覗き込んだ。 「・・・これは・・驚いたよ・・・徹夜で作ったのかね?」 「はい、」 「・・・これは?いや・・しかし、」 「理論上は可能です。それに、この方が上手く準備できるのではないでしょうか?」 「・・確かにこの方法のほうが良い方法だろう・・・だが、時間が少なくないかね?」 「ええ、確かに、それが問題ですね。」 「・・・・賭けになる要素が大きい気もするが・・・六分儀にも聞いてみよう。」 「お願いします。」 総司令執務室、 六分儀は、ユイから出されたの計画案の修正案に目を通した。 「いかがでしょうか?」 六分儀はいつものポーズで考え始めた。 「・・・どのくらいの時間が必要だ?」 「・・・そうですね・・・10日もあれば、何とか可能になると思います。」 「マギは?」 「メルキオールは、成功率が8割ほどになると言う判断を示した。」 「・・・8割か、」 「・・・・・」 「・・・・・」 「・・しかし、いざと言う時に、手持ちのカードは多い方がいい、」 「・・いいだろう、頼んだ。」 「分かりました。では早速準備に入ります」 ユイは急いで執務室を出て行った。 「・・六分儀、良かったのか?」 「・・・・ああ、つまるところ時間さえ稼げれば良いということだ。」 「確かにな」 「時計の針を戻す事は出来ない、だが、進むのを遅らせる事ならば可能だ」 「分かった。諜報部に指示を出しておこう」 「ああ、」 ミサトのマンション、 シンジ、アスカ、ミサトの3人が黙って食事を取っていた。 どこか雰囲気が重苦しい・・・ 「・・・」 ミサトは箸を置いた。 「二人とも・・レイさんのことだけど、」 二人の動きも止まる。 「レイさんは貴方達をそして私たちとこの町を守ったわ」 「「・・・」」 「私たち、そして貴方達は必ずこの町を守り、そして必ず生き延びなくては成らないのよ、」 「・・・そうね・・・それがレイの望んだ事なのよね・・・」 アスカが漸く口を開く、 「・・・碇が望んだ事・・・」 「後どれだけ使徒が来るのか分からないけど、必ず守り抜か無くてはいけないのよ」 アスカが少し不思議に思ったと言った表情をする。 「ん?どうしたの?」 「・・残っている倒さなくては成らない使徒はあと1体よ、」 それはミサトが知らなかった事へのものだったようだ。 「え?」 「・・それ、本当?」 「嘘言ってどうすんのよ・・・」 「じゃあ、その使徒を倒せば全て終わるわけね」 ミサトの声は少し弾んでいる。 「・・そうなるわね、最後の使者を倒せば、レイの望んだ事を果たしてやれるわけね」 「後・・1つか・・」 シンジの表情にも少し明るさが取り戻されたようである。 「よしっ、じゃあ、レイの望みをかなえるためにも頑張るわよぉ〜!」 「そね」 「はい」 2月25日(木曜日)、ネルフ本部、シミュレーション司令室、 ミサトとマヤの指揮のもとシミュレーションによる訓練が行われていた。 「・・やはり、零号機の損失は大きいですね・・・戦力が大きく落ちています。」 「そっか・・・で、二人は?」 「レイさんのことでシンクロ率が下がると予想していたんですが、二人とも数ポイントずつ上がっています。やる気も随分有るようですし・・・何かあったんでしょうか?」 「・・レイさんの想いを引き継いだのよ、」 マヤは少し首を傾げ・・そして、暫くしてその意味に気付いたのか、真剣な表情に成った。 「・・・そうですね・・・」 マヤはモニターに視線を戻した。 訓練終了後、更衣室にアスカが入ってきた。 「あ、アスカ!」 プラグスーツを脱ごうとしていたシンジは、慌てて止める。 「ちょっといい?」 「あ、うん、別にいいけど・・」 二人は、長椅子に並んで座った。 「シンジ、今日は随分気合入ってたわね」 「そ、そうかな?でも、アスカも今日はいつもより動きが良かったんじゃない?」 「アタシさ・・気付いたんだけど、ここの所ずっとレイに頼ってたのよ私たち・・」 「頼ってた?」 「そうよ・・・結局のところレイに任せておけば大丈夫、アタシ達がする事はレイが十分に力を発揮させられるようにする事、そんな事を考えてたんじゃないかしら?」 今までの訓練のことを考える。 ・・・否定は出来ない・・・ 「最後の使徒は、アタシ達だけで倒さなくちゃ成らないのよ」 「・・そうだね、」 「頑張らなくっちゃね・・」 「うん」 アスカは肩をシンジに預けてきた。 「あ、あすか?」 「ちょっと疲れちゃったみたい・・・こうさせてくれない?」 「うん、いいよ」 「ありがと・・」 礼を言うが早いか、アスカは静かに寝息を立て始めた。 「・・・僕もちょっと疲れたな・・・」 シンジもアスカに体を預けてお互い寄り添って寝息を立て始めた。 1時間ほどして、あまりに出てくるのが遅いので様子を見に来たミサトは、二人の姿を見て直ぐにその場を離れた。 「そね、日向君と作戦の打ち合わせでもしとくか」 ミサトは作戦部に足を向けた。 2月26日(金曜日)、人類補完委員会、 「先の零号機とファーストチルドレンを失った件で大きく戦力が落ちた」 「報告書を見る限り、これまでに来た使徒の中でも不十分と思われるような使徒もある」 「承知しております。」 「零号機を失った件に関して君達の責任は問わない、だが、このままでは拙いと言うのも事実だ。」 「どうされるおつもりで?」 「フィフスチルドレンを派遣する」 「フィフス・・ですか?しかし、乗るべき機体がありませんが?」 「伍号機も同時に輸送する」 「伍号機もですか?しかしそれでは計画に遅延が生じるのでは?」 「やむをえんだろう」 「・・そうですね、」 「六分儀、敗北は許されんぞ」 「承知しております。」 ネルフ本部、総司令執務室、 「・・・フィフスと伍号機か・・・」 「ゼーレは何を考えている?」 「読めんな・・・伍号機を戦闘タイプにすれば、計画に遅れが生じる・・・単なる戦力を整えるだけ・・・とは思わない方がよさそうだな」 「当然だ・・フィフス・・何かある。」 「問題は何があるのかだな、」 「到着次第保安部と諜報部に監視させる」 夕方、ジオフロントゲート、 訓練を終えたシンジとアスカがゲートをくぐると、銀髪に赤い瞳をした少年が立っていた。 「・・・アンタ誰?」 「僕?僕はカヲル、渚カヲル、フィフスチルドレンさ」 「フィフス?アンタが?」 「そうさ、フィフスチルドレン、5人目の仕組まれた子供さ」 「仕組まれた?」 シンジが疑問を口にする。 「ふふっ、まあ良いさ、ところで君達はこれからどうするんだい?」 「そんなの家に帰って御飯食べて寝るに決まってんでしょ、」 「そうかい、どうだい?一緒に食事でも?」 「食事?」 アスカとシンジは顔を見合わせた。 と、その時、奥からミサトが出てきた。 「あら、貴方達・・ん?貴方がフィフスチルドレンの渚君?」 ミサトは警戒の視線をカヲルに向けた。 「そうだよ、貴方は?」 「私は葛城ミサト、作戦部長、貴方の上司に当たるわ」 「そうかい、」 「・・正式な紹介は明日になるけれど、今日は色々と話さなければ成らない事があるから私と一緒にきてくれるかしら?」 「やれやれ、仕方ないね。また今度の機会と言う事だね」 カヲルはミサトと一緒に本部の中に入っていった。 「・・アタシ達は帰りましょ」 「そうだね」 二人はバス停に向かって歩き始めた。 2月27日(土曜日)、ネルフ本部、シミュレーション司令室、 カヲルの正式な紹介が終わった後3人はシミュレーションでシンクロテストをおこなっていた。 リツコは伍号機の引渡しに行っており、ミサトとマヤがテストを指揮している。 「今日届く予定の伍号機のデータとの比較ですが、」 「・・これは凄いわね。」 レイには及ばないとは言え、シンジ、アスカのいずれをも凌ぐシンクロ率である。 「これで使徒は大丈夫でしょうか?」 「そうね・・使徒はね・・」 (委員会の企みか・・一体何?) ミサトは腕組みをしながらその事について考えた。 (あれ?) 「葛城3佐、これちょっと見ていただけますか?」 「何かしら?」 ミサトはマヤの手元のモニターを覗き込んだ。 「・・彼に関して後で話があります」 「・・分かったわ。」 他の職員に気付かれないように小声でやり取りした。 総司令執務室、 「・・シンクロ率を自由に操作か・・・一体何者だ?」 「・・分からん。」 「・・・マギは?」 「回答を保留した・・・渚カヲルの過去に関しても一切引っかからん・・・まさに謎の少年だな・・・」 「調査を続ける」 「・・・老人たちは何を考えているのだ?」 「・・・・」 ターミナルドグマ、最深層、 ユイが様々な機器を忙しなく動かしていた。 「・・・ユイ君、フィフスの事について意見が聞きたいんだが・・・」 「・・彼のことですか?」 ユイは、キーボードを打ちながら、声だけで返した。 「ああ、」 「・・・可能性があるとすれば、ゼーレの切り札・・・いえ、奥の手かもしれませんね」 「・・・使徒そのものか、」 「可能性は高いと思います。確信できるほどではありませんが・・・」 「・・・目的は?」 「・・・時間調整かもしれませんね。」 「時間調整かね?」 「自分たちにとってもっとも都合のいいときに計画を発動するために・・」 「なるほど・・」 「・・・それが第1目的だと思いますが、それだけではないでしょうね。」 「老人たちのことだ、3つか4つくらいの目的があるんだろうな・・・」 「ええ、おそらく、」 ユイは磔になっている白い巨人に視線を向けた。 夕方、職員食堂、 ミサトが、シンジ、アスカ、カヲルの3人を連れてきた。 シンジはシーフードピザ、アスカは野菜カレー、ミサトはイクラ丼をそれぞれ頼み、カヲルは焼き蕎麦パンを購買で買った。 「・・・焼き蕎麦パン?」 「そう、焼き蕎麦パンは、リリンの生み出した食文化の極みだよ・・・君たちもそう思わないかい?」 リリンと言う言葉がはっきりと何を意味するかは分からないだが、なんとなく人類の事をさすと言うことはわかる。 皆取り合えずそうは思わないと言うような態度で返した。 それぞれ窓際の席に座る。 カヲルは早速焼き蕎麦パンを美味しそうに食べ始めた。 それに続いて3人もそれぞれ食べ始める。 「・・渚君、」 シンジがカヲルに声をかけた。 「カヲルでいいよ、」 「あ・・うん、カヲル君、僕もシンジでいいよ、」 カヲルは綺麗な微笑を浮かべ、一瞬シンジはその笑みに心を奪われてしまい、それを見たアスカはむっとした表情を浮かべた。 「そういえばさ、アンタ、伍号機に乗るんだっけ?」 「そうだよ、」 「伍号機はどの程度の性能なわけ?」 「そうだね・・・確か、初号機にやや劣るくらいだとか言ってたかな?本当はSS機関を乗せる予定だったらしいけれどね」 「まあ、あんなことがあったらSS機関乗せる事もできないわね、それに、時間も無いしね」 「かも知れませんね」 カヲルはジオフロントに視線を移した。
あとがき アスカ「あ〜らら、ファースト本当に死んじゃったんだ」 レイ 「許せないわ・・YUKI」 アスカ「まあまあ、」 シンジ「綾波・・」 アスカ「ま、なんにせよ、これで後は、あの変態ホモ使徒を殲滅すれば後はゼーレだけね。」 シンジ「もう直ぐだね」 レイ 「・・・そうね、」 アスカ「無愛想ねぇ・・まあ、仕方ないと言えば仕方ないけどね」 シンジ「でも、最終決戦・・どうなるのかな?」 アスカ「う〜ん・・そういや、確かに・・・戦える戦力あるのかしら?」 レイ 「・・・無いわね、」 レイ 「私を殺したのが悪いの」 アスカ「YUKI〜〜!!どうするつもりよ!!?」 シンジ「ど、どうなるんだろ・・」(汗)