1月28日(木曜日)、A.M.7:12、太平洋上空を一機の大型輸送機が参号機をぶら下げて飛んでいた。 前方に巨大な積乱雲が見える。 「前方に積乱雲が見えますが」 『レーダーで確認した。大した事は無い嵐だ、進路を維持して到着時間を厳守せよ』 「了解」 輸送機は積乱雲の中へ突っ込んだ。 A.M.7:46、第3新東京市、ミサトのマンション、 「じゃあ、松代まで行ってくるから」 ミサトは靴をはいた。 「はい・・・」 トウジからは結局何も話されなかった。 チャイムが鳴り、ドアが開きケンスケが現れた。 「おはよう御座います!」 「本日は、葛城3尉に御願いに上がりました!」 「自分を!自分をエヴァンゲリオン参号機のパイロットにしてください!」 ケンスケは開口一番にその様な言葉を発し頭を直角に下げた。 「「へ・・・・」」 「クエ・・・」 ミサト、シンジ、ペンペンは突然の事に呆気に取られた。 A.M.8:51、第1中央自動車道、トレーラー、 ミサトは先ほどから外の田園風景をどこか遠い目で眺めている。 暫くして深く溜息を付いた。 「如何したの?」 「皆の事を考えていたのよ・・・・・」 「皆?」 「ええ・・・皆、エヴァに乗る理由は様々ね・・・」 「余り悩み過ぎるのはどうかと思うわよ」 「そうは言ってもね。使徒襲来以来色んな事が有ったし・・」 「加持君の事も?」 「うっさいわねぇ」 「ふふ、そう、起動試験のプログラムの最終チェックをしているから出きれば邪魔をしないでくれる?」 「分かったわ」 P.M.0:40、第3新東京市、第3新東京市立第壱中学校、屋上、 ケンスケとシンジ、レイの3人が手すりに凭れていた。 「あ〜あ、ミサトさん俺乗せてくれないかなぁ〜、やる気だけなら俺が一番なのに」 ケンスケは天を仰いだ。 その言葉に、2人は顔を顰めた。 「ん?どうしたんだ?」 「・・・貴方は、エヴァに乗ると言う事を何も分かってない、」 「・・・・・」 「そんな貴方がエヴァに乗って戦うなんてことは許されないわ、決してね・・・」 「なんでだよ」 「・・・貴方は何故エヴァに乗りたいの?」 「そんなの、あんな格好良いロボットを自由に操れるなんて素晴らしい、男の夢にきまっているじゃないか」 レイはわざとらしく大きな溜息をついた。 「・・・エヴァを1時間動かせば、その為だけに100人以上の者がその犠牲に成って命を落とすのよ」 「・・・」 「アレだけの巨体を動かすのにどれだけのエネルギーが掛かっていると思うの?そのエネルギーを供給する為の予算は一体どこから?」 「大勢の人を自分の快楽の為に殺める事が男の夢?ふざけないで、貴方をエヴァに乗せては行けないと言うのが確信に変わったわ、・・・さよなら、」 レイはさっさとその場を去って行った。 「碇、」 シンジは、レイを追い、後には、ケンスケ一人だけが残された。 ケンスケは、何も言葉を発することができず、その場に立ち尽くしていた。 ヒカリは教室を見まわした。 「鈴原来てないわね」 「・・・そうね、」 アスカは、その理由をもはや確信しているが、だからと言って、自分からヒカリに言うわけにはいかない。 その事で、どこかいらつきを覚えていた。 「御弁当食べる?」 ヒカリはトウジの為に作ってきた弁当をアスカに渡した。 トウジにとっては少ないのだが、普通の男子よりも良く食べるアスカにとっては丁度良いサイズである。 「ん、ありがと」 アスカは、ヒカリから弁当を受け取り、食べ始めた。 「おいしいわね」 「そう、ありがと」 ヒカリは笑みを浮かべて答えた。 P.M.1:11、松代ネルフ本部付属実験施設付属滑走路、 ミサトは青筋を浮かべている。 「遅れる事2時間・・・漸くの御到着ね」 輸送機が着陸体制に入った。 「私をこんなにも待たせた男は始めてねぇ」 「デートの時は怒って帰ってたんでしょ」 いらついているミサトに対してリツコは呆れたような声で返した。 P.M.4:14、実験ケージには、黒色のエヴァ、エヴァンゲリオン制式機2番機である、参号機が拘束されていた。 トウジは黒いプラグスーツに身を包み参号機を見上げた。 「・・・なんや、凶悪な顔やな・・」 トウジはタラップを使いエントリープラグに入った。 そして、参号機にエントリープラグが挿入された。 司令室、 リツコはデーターを見ながら手元のファイルに数値を書き込んで行く。 「流石はアメリカね・・パワーだけはあるわ。それにこのシンクロ率、直にでも実戦に使えるわ。」 出力が公開スペックよりも高い。リツコは、どうせアメリカの事だから、正しい測定を行っていなかったのだろうと暗に皮肉った。 流石に、それに気付いたものはいなかったが、 「・・・そう、」 「あまり、うれしくなさそうね・・・貴方の管轄に配属されるのよ」 「確かに、そうね・・・でも、エヴァぁを4機も独占かぁ・・・その気になれば世界を征服できるわね♪」 ミサトは冗談混じりに言った。 「無理ね、エヴァがアンビリカルケーブルから解き放たれない限りね」 「・・・確かにね」 「でも・・・その為に、そう言った意味ならば、SS機関の搭載実験を早まったのも頷けるわね、戦場は第3新東京市のみにあらず」 「・・・そうね」 ミサトは複雑な表情を浮かべた。 一方、司令室内にいる第1支部の人間は、汗をかいている。 それが、自分達への遠まわしの非難であると感じているからであろう。 それは、真実であるからなのか、自分達もそう思っているからなのかは分からないが、 警報が鳴った。 「如何したの!」 「分かりません!」 「主電源カット!エントリー」 突如辺りが光に飲まれた。 P.M.4:18、ネルフ本部第1発令所、 『松代で爆発事故発生、被害不明』 「救助及び第3部隊をすべて派遣、戦自が介入する前に全て処理しろ」 冬月が指示を出した。 「了解」 「事故現場に正体不明の移動物体を確認」 「パターンオレンジ、使徒とは識別できません」 「第1種戦闘配置」 『総員第1種戦闘配置』 『地対地戦用意』 ユイが司令室に入って来た。 「・・・目標は、」 「・・恐らくは、あれだろうな」 冬月が答えた。 「・・・・レイ、」 『はい、』 モニターの一つにレイの顔が映り返事をした。 「頼んだわね」 レイは真剣な表情で頷いた。 第7ケージ、零号機、 『ミサトさんは大丈夫なんですか?』 『未だ連絡が取れないの』 マヤの表情はひどい物だ。リツコも一緒に爆発に巻き込まれているからである。 零初弐号機が付属空港へと運ばれ、空輸された。 夕方、ネルフ本部第1発令所、 「野辺山にて目標の移動物体の光学で確認」 メインモニターに参号機が映し出され、発令所にざわめきが起こった。 「やはりこれか・・」 冬月は呟いた。 「そのようですね・・・」 「活動停止信号を発信、エントリープラグを強制射出」 「発信を確認」 ・・・ 「駄目です。停止信号認識しません。エントリープラグも射出されません」 「パイロットは、呼吸、心拍の反応はありますが・・・恐らく」 「厄介だな・・」 「・・・いいな?」 六分儀はユイに尋ねた。 「・・・・仕方ないですね、」 「エヴァンゲリオン参号機は現時刻を持って破棄、目標を第拾参使徒と識別する」 六分儀の宣言にマヤが泣きそうな顔をした。 「しかし!」 「予定通り、野辺山で戦線を展開、目標を撃破せよ」 ユイは軽く目を閉じて、大きく息を吐いた。 ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・ 「目標を確認」 『・・・こ、これが目標ですか?』 「ああ、そうだ。」 『でも・・・これは、これはエヴァじゃ』 『まさか使徒に乗っ取られたの?』 モニターに映る二人の表情には恐怖が混じっている。 だが、その理由は、シンジはパイロット、アスカはエヴァそのものにあった。 『・・・まさかトウジが・・・』 『くっ・・・きゃああ!!!』 弐号機が参号機に攻撃され、ビルを突き破り山に激突した。 「弐号機、目標により攻撃を受けました」 『アスカ!!』 「弐号機中破、セカンドチルドレンは脱出しました。」 参号機は弐号機に一瞥をくれた後、道を進んだ。 「レイ!御願い!」 サブモニターに映るレイは頷いた。 野辺山、零号機、 零号機はプログソードを片手に、参号機に急速に接近した。 そして、参号機が半ばカウンター気味に繰り出してきたパンチを軽く避け、そのままプログソードで頭部から胸部にかけての走行板を切り裂き、少量の赤い血が飛び出る。 零号機は直ぐに距離を取り、プログソードを正眼に構える。 参号機の切れた装甲の下では、損傷を受けた素体の部位を白い粘菌のようなものが纏わりついて修復している。 「・・・これは、ちょっと大変ね・・くっ!」 突然、参号機の手が伸びて襲いかかって来た。 間一髪で、躱す事に成功したものの、次々に連続して襲い掛かってくる。 零号機はそれらを何とか避けている。 「・・・どうすれば、」 『シンジ、零号機と共同で参号機を攻撃しろ』 「そ、そんな!で、でも、」 『シンジ君、鈴原君を救うには、参号機の動きを止める意外ないわ、使徒に乗っ取られている参号機、更に、あの粘菌のようなものが使徒の様であるから、接触するのは最短時間にすべき、そうすると、参号機を行動不能になるまでダメージを与え、動けなくなった所で、エントリープラグを無理やり引き抜くしかないわ』 『で、でも!!』 ユイが話している最中も、零号機は参号機の次々と襲いかかる攻撃を避けている。 『確かに、神経接続がそのままであれば、かなりの激痛・・・それも、まさに死にそうなほどの激痛を受けるでしょうね、でも、それ以外に、彼が助かる方法は無いの、』 「くっ、」 軽くかすった。 そして、そのせいで体勢が崩れ、次の一撃が顔面にクリーンヒットし、吹っ飛ばされた。 「きゃ!」 『碇!』 「くっ」 レイは痛む鼻の辺りを押さえながらも冷静に零号機の体勢を立て直し、次の攻撃を避けた。 「・・・くっ」 間合いが余りにも違い過ぎる。 『シンジ君・・・』 ・・・・・・ 何か、シンジがぶつぶつ呟いているのが聞こえる。 ・・・・・・ 『うおおおおおお!!!』 初号機がこっちに向かって走ってくる。 2対1になれば、戦局は大きく変わる。 「今のうちに、」 避けるのが難しくなるが、少し距離を詰めておく、 「くっ」 初号機が参号機の射程距離に入ったのか、片方の手で初号機を攻撃した。 『くっ』 それを、初号機は何とか躱す。 シンジでも、攻撃方法が分かっていれば、この距離なら避けられる。 「はああ!!」 零号機は攻撃を交わし一気に参号機の懐へと飛び込み、プログソードで、右肩をぶった切る。 一気に凄まじい量の血が吹き出る。そのままプログソードを返し、左肩も切り落とす。 更に、胴を横に真っ二つにに切る。 参号機は二つに分かれ、地面へと倒れた。 参号機の状態を確認する。 粘菌のようなものが、必死に修復し様としているようで、全ての再構成に使っているようで、今は動けない、 「いけるわね」 プログソードを後部装甲版の間に差し込み、そのまま装甲版と素体を切り裂き、エントリープラグを露出させる。 手にATフィールドを集中させ粘菌状のものを弾きながらエントリープラグを掴み、引き抜く、 エントリープラグを、適当な所に置く。 初号機も近くに来ている。 『碇!』 「大丈夫、ちょっと離れていて」 『あ、うん』 「はあああ!!!」 強靭なATフィールドが展開され、参号機を包み込む。 そして、一気にその展開半径を縮め、圧縮して全てを潰した。 他のパーツも同様にして破壊した。 目標の殲滅が確認された後、シンジは直ぐに初号機を降り、参号機のエントリープラグに駆け寄った。 同じように、アスカも近くにやって来たネルフの車両から降りて来た。 シンジはハッチを回そうとしているが、なかなか開かない。 すっと、アスカの白い手が、シンジの手に添えられた。 「アスカ、」 「力込めなさいよ」 「あっ、うん」 「「んん〜〜!」」 大きな音ともにハッチが開き、LCLが流れ出してきた。 その流れが、収まると同時に二人は、エントリープラグの中に首を突っ込んだ。 黒いプラグスーツを着ているトウジがぐったりとシートに横たわっている。 「トウジ!!」 「鈴原!!」 レイがすっと、手を出してトウジに駆け寄ろうとした二人を制して、自分がトウジに近寄って脈を取るなどした。 「大丈夫、気絶しているだけよ」 レイの言葉に二人はほっと安堵の息を漏らした。 その後、トウジは掛けつけたネルフの医療部隊によって病院に搬送されて行った。 夜、松代、事故現場付近の救急基地でミサトが目を覚ました。 傍には加持がついていた。 「・・・私生きてる・・・」 「・・・加持君・・・」 「良かったな」 「・・・リツコは?」 「心配無い・・君よりは軽傷だ」 ミサトは友人の無事に軽い笑みを浮かべたが、直ぐに参号機の事を思い出した。 「・・そう・・・エヴァぁ参号機は?」 「・・・使徒として処理されたそうだ・・・」 ミサトは、はっと、目を大きく開いて直ぐに表情を暗くした。 「パイロットは無事だ。3人も別段問題は無い。」 「・・・そう・・」 「自分の療養に専念するんだな」 「・・・そうね・・・」
あとがき アスカ「なっ!何よこれ!!」 YUKI「どうかしたのか?」 アスカ「なんで、アタシの出番が少ないのよ!!」(ぶんぶん) YUKI「うがうがうが」 アスカ「もっとだせぇええ〜〜!!」(ぶんぶんぶん) YUKI「うきゅ〜〜・・・」 レイ 「・・見苦しいわよ」 アスカ「なによ!?」 レイ 「・・・とりあえず、離したほうが良いと思うわ」 YUKI(泡) アスカ「あ・・まあ良いわ・・放っときましょう」 YUKI「・・・・」 レイ 「貴女が出番が少ないのは当然、最も戦力にならない」 アスカ「なんですってええ〜〜!!」 レイ 「事実よ」 アスカ「くっ!」 レイ 「ふふふ」 アスカ「何よ!シンジはアタシのものよ!出番くらいくれてやるわ!」 レイ 「む・・無茶苦茶ね」 アスカ「くくく、羨ましい?」 レイ 「う・・うら、羨ましくはないわ・・」 アスカ「あっはっはっはっは!!」 レイ 「くぅ・・・」 アスカ「ひぃ〜っひっひっひ!」 レイ 「くっ」(足払い) アスカ「どあ!!」 レイ (逃げ去る) アスカ「くくく、シンジとのハネムーンも近いわ!!」