立場の違い2A

第15話

◆恐怖

1月17日(日曜日)昼過ぎ、第3新東京市、ネルフ本部実験棟でハーモニクスの実験が行われていた。
「ハーモニクス検出開始」
マヤの声と共にモニターには次々に数値やグラフが表示されて行く。
・・・・
「先輩、凄いですよ、シンジ君。」
リツコはディスプレイを覗き込んだ。
《EVA−00 99.956 EVA−01 74.109 EVAー02 61.066》
「随分と伸びているわね」
「本当に凄いですよ。」
「そうね、ハーモニクスも、かなりの数値を叩き出しているし、」
「ほ〜、やるじゃない」
モニターを横から覗き見たミサトはその意味が分かっているのか分かっていないのかは分からないが、感心しているようだ。
・・・2時間後・・・
「実験を終了します。」
「御苦労様」
ミサトは労いの声をかけた。


帰り、3人が並んで歩いている。
「・・夕飯、食べに来ない?」
「ん?良いわね」
「そうだね」


碇家、リビング、
今、レイがキッチンで夕飯を作っている。
「シンジも随分シンクロ率伸びたわね」
「ん?・・そうだね、でも、アスカも伸びて来てるじゃない」
「ま、そだけどさ」
以前の追い詰められたような感じは微塵も無い。
二人とも順調に伸びている事も大きいのであろうが、やはり、それ以上に、碇親子と実際に接してみた事、そして、複数のエヴァが協力しなければならなかった使徒などが居、そして、その殲滅に自分達が活躍したと言う事が大きいのであろう。
レイが料理を運んで来た。
「運ぶの手伝ってくれる?」
・・・・・
・・・・・
二人も手伝って、テーブルの上に料理が並んだ。
「凄いわね・・・」
ユイも帰って来て4人で楽しく夕食を取った。


1月19日(火曜日)、昼、第3新東京市Dエリア
街中に突如黒い影と球状の物体が現われた。
人々は逃げ惑っている。
所々、親と逸れた子供が泣き喚いている。
『第3新東京市に緊急避難勧告が発令されました。直ちに住民の皆さんはシェルターに避難してください。』
・・・
・・・
P.M.3:51、ネルフ本部、第1発令所、
富士の電波観測所は探知せず、ATフィールドも観測されず、マギも判断を保留していた。
今、3機のエヴァを展開し一応包囲している。
「住民の避難は3分で完了します。」
「いい、未だ、接近しちゃ駄目よ、」
『はい』
『分かってるわよ』
レイはミサトの言葉に頷きで返した。
・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・
一定の距離を保ちつつ様子を見、やがて、避難は完了した。
「さて、どうしましょうか、」
「先ずは、各兵装ビルから一斉攻撃を掛けて」
「了解」
一斉攻撃が使徒に掛けられた。
着弾する直前使徒の姿が消え、ミサイルや砲弾は周囲のビルを次々に破壊した。
「使徒は!!?」
「どこへ行ったの!!?」
オペレーター達は必死にモニターに目を光らして使徒を探す。
「パターンブルー検出!!」
青葉の叫びが響いた。


地上、零号機、
「・・くる、」
零号機がその場を飛び退いた瞬間、黒い影が先程まで零号機がいた地点の傍に合った車やビルを飲み込み始めた。
影が、零号機に向かって急速に接近してくる。
「くっ」
零号機は跳躍し、高層ビルの屋上に乗った。
高層ビルは徐々に影に飲み込まれて行く。
零号機は、パレットガンを影に向けてぶっ放したが、弾が飲み込まれるだけだった。
『碇!!』
初号機がスナイパーライフルを片手に、こっちに向かってくる。
「六分儀君!!駄目!!」
『え?』
使徒は、初号機を目標に変えたようで、初号機が影に飲み込まれ始めた。
「六分儀君!!」
『シンジ!!』
「うわっ!」
「なっ、なんだよこれ!!」
零号機は初号機を救出する為に飛び出そうとしたが、とても初号機のところまで到達できない事に気付き、足を止めた。
弐号機が急速に接近して来ている。
「だめ!」
アスカには初号機しか見えていない、自分がどこに飛び込もうとしているのか全く気付いていない。
『アスカ!!』
『お、おかしいよ!!』
『アスカちゃん!!』
「きゃ!!」
ミサトやユイが叫んだ次の瞬間、弐号機が足を取られ、沈み始めた。
「くっ」
しかし、零号機の位置からではどうする事も出来ない。
『うわあああ!!!』
『きゃあああ!!!』
二人の悲鳴が響く中、両機が影に飲み込まれ、零号機に撤退命令が下った。
レイは暫く躊躇していたが最終的には、退却した。


P.M.4:46、第3新東京市市街、出張ネルフ司令部、
「使徒は直径720メートルで行動、拡大共に完全に静止しました。」
「あの球体と影・・・明らかに大きさがおかしいわ。」
日向の報告に対して、リツコが呟いた。
「では、空間が歪められているとでも?」
「そうね・・・但し、ただし、上空の球体が影、そして、地面の影のように見えるものこそが本体でしょうね」
碧南の問いにユイが答えた。
「・・・どうします?」
「それはこれから考えるのよ」


その頃ミサトがヘリから身を乗り出しながら、眼下の真っ黒な使徒を見ていた。
(・・・・・・・・・・・どうすれば二人を・・・・)
ミサトはじっと考えていたが、当然何も思い付かなかった。


地上では日が暮れた頃、ネルフ本部の技術部の会議室の一つで、ユイ、レイ、リツコ、マヤの4人が対策について
話をしていた。
「両機は、生命維持モードで、およそ後9時間分しか電源は残されておりません。」
「・・・9時間・・・ね、」
「・・・初号機と弐号機間での通信は?」
「距離次第ね、この世界ではないのだから、どのような空間に成っているのか想像する事は出来ないわ」
「そうね・・・、でも、使徒が、虚数空間を維持している以上限界はある筈だわ。SS機関は、確かに、半永久動力機関、取り出せるエネルギー量は無限大・・・しかし、その出力は無限大ではないわ」
「そうですね・・・しかし・・・それだけのエネルギーをどうやって?」
「・・・瞬間的に取り出すには、核かNN、いずれかしかないわね。」
「で、でもそれじゃあ二人が!!」
「・・・成功する確率は低く、例え成功しても、二人が無事である可能性は低い最後の手ね、これを準備する事に変わりは無いわ・・・但し、実行に移る迄に、皆でもっと他の案を考えましょう。使徒を倒す為ではなく二人を助ける為に、」
ユイの言葉でリツコとマヤの表情が変わった。


1月20日(水曜日)、A.M.0:23、初号機の中でシンジは目を覚ました。
ゆっくりと上半身を起してスイッチを押した。
レーダー、ソナー、光学、など様々な探査結果が映し出された。
「ふぅ、・・・・何も映らないか・・・・・・・・・・・空間が広過ぎるんだ・・・」
シンジはもう一度スイッチを押し画面を消し、シートに上半身を倒した。
《 0:25:36》
「僕の命も後6時間足らずか・・・・・・・・・」
「・・・お腹すいたな・・・・・」
シンジはもう一度目を閉じた。


同時刻、弐号機の中で、アスカは蹲り小刻みに体を震わせていた。
「・・・助けて・・・御願い・・・・」
「・・・リツコ・・・ミサト・・・・六分儀司令・・・・・・・・・・シンジ・・・」
「・・・・助けて・・・・」
涙まで流していた様だ。
しかし、どんな作戦が実行されるにしても未だ、随分と時間がある。


A.M.1:00、ネルフ本部総司令執務室、
「いいのか?」
「ああ」
「二人を失ってもな・・・」
「問題無い」
「アスカを失えば計画は絶望的なものとなる」
「いや、」
冬月は納得が行かないと言った顔をした。
「我々が外部から2人を救う事は不可能だ。絶対にな。例え、彼女達がいくら優秀であろうとも・・・だが・・・」
冬月は六分儀が言わんとしている事が分かり漸く納得が行ったと言う顔をした。
「信じているわけだな・・・・・過信でない事を祈るよ・・・」


A.M.3:47、技術部第1大会議室、
ネルフの頭脳が集結し、必死に打開策を検討したが、結局そんなものは出てきはしなかった。
もはや時間が無い、大会議室はとてつもなく重苦しい雰囲気に包まれていた。
ユイは頭を抱えた。
いくら天才と賞賛され、自他共にそれを認めていたとしても、限界はある。
しかし、ここで限界が来るとは・・・・無力である。
「・・・ユイ博士、」
レベルが違うとは言え、同じような傾向のリツコには、ユイの今の心境がわかり、心配そうに声をかけた。
「・・・ん、大丈夫。そろそろ準備をするわ・・・」
ユイはゆっくりと立ちあがり、大会議室を出て行った。


A.M.6:11、初号機の中でシンジは再び目を覚ました。
シンジはうつろな目をして蹲った。
「・・・さむい・・・」
ヒータも切れ、LCLの温度はかなり下がっている。
スーツの電源の残量が後僅かである事を知らせる発光ダイオードの光が消えた。
「・・・・誰か・・・・助けて・・・・」


真っ暗闇の中、男女の話し声が聞こえる、どうやら男性の方は六分儀のようだ。
「男だったら、シンジ、女だったらアスカと名付けよう。」
「六分儀、シンジ。六分儀、アスカ」


シンジは母、キョウコと湖の辺を散歩をしていた。
「もう良いの?」
シンジは赤く光る小さな玉を見つけてキョウコに見せた。
「綺麗なものを見つけたわね」
「うん」
シンジは無邪気な笑顔を見せた。
「そう、良かったわね。」


シンジはガラスに引っ付いて零号機のようなものを見ていた。
部屋には六分儀と冬月ともう1人、赤毛の女性がいる。
「どうしてここに子供がいる?」
「所長のお子さんだそうです」
「六分儀、ここは託児所じゃない」
『済みません、先生。』
「キョウコ君、分かっているのか今日は君の実験なんだぞ。」
『この子達に未来の光を見せておきたくて。』


「僕は・・・・・母さんがいなくなった時、その場にいたのか」
シンジが呟いた瞬間、辺りが光に包まれた。
シンジが目を開くと光の空間の中をシンジの方へ向かって光の女性が飛んで来た。
「だれ?」
光の女性はシンジを抱きしめた。
その時、その、懐かしい感じにその人物が誰であるのか分かった。
「母さん!!!」  


A.M.6:31、朝焼けの中、第3新東京市市街上空を数千機の大型爆撃機が飛行している。
零号機、
『・・作戦配置に、ついたわね。』
ミサトも、取りたくも無い指揮を取っていると言う事が分かる。
「・・待って、」
何か変化を感じたレイが作戦の開始を止めた。
『どうしたの?』
突如辺りを地震が襲った。
発令所が慌てふためく中、レイは冷静に使徒を見ていた。
地割れが起き、次々に使徒が切り刻まれた。
上空の影が真っ黒になり、次の瞬間内側から血のような赤い液体が噴出した。
そして、影を切り裂き、影の中から初号機が姿を表し、その脇から、ぐったりとした弐号機が現れ地面に落ちた。
初号機は咆哮を上げ、大気を振動させ、ビルを揺らし、地面に着地した。
いっしょに、力を失った
そして、使徒は消え去った。
辺り一面赤い血のような液体で塗れていた。
赤く染まった初号機はまさに悪魔か鬼のように見えた。
初号機が停止したことを確認し、零号機は両機の回収に入った。


A.M.6:52、ネルフ本部第2ケージ、
初号機のエントリープラグが開けられた。
「シンジ君!」
ミサトは涙ぐみながら横たわっているシンジに抱き付いた。
「・・・助かったの?」
シンジは呟いた後、気を失った。
一方、弐号機のエントリープラグからは気絶しているアスカが救出され、直ぐに中央病院に搬送された。


P.M.2:11、ネルフ中央病院病室、
シンジは目を覚ました。
視界にレイが入った。
「・・碇、」
シンジは上半身を起した。
「・・もう良いの?」
「あ・・うん」
「・・そう、良かったわね。」
レイは微笑を見せ、シンジはそのレイの笑みに魅入った。
暫くして、レイは、ゆっくりと立ち上がった。
「・・後は私が処理しておくから・・六分儀君は彼女の事御願い、」
そう言い残すと、レイはドアの方へ歩いて行った。
「・・・彼女?」
横のベッドにはアスカが寝ていた。
「・・・アスカも助かったんだ・・・」
シンジは自然に笑みを浮かべていた。


P.M.6:18、ネルフ本部第2ケージ、
初号機がシャワーを浴びて血のような液体を落としていた。
横では弐号機も同様に洗浄されている。
六分儀とリツコがカッパを来てアンビリカルブリッジの上に立って話をしていた。
「エヴァの真実をあの子たちが知ったら許してくれないでしょうね。」
「今は良い・・・・今は未だ・・・」
六分儀の呟きは、シャワーの轟音でかき消された。
「・・・確かに・・そうかもしれないわね・・・でも、何時までも隠しとおせるものでもないのよ・・・いったい、どう説明するのかしら?」
司令室からガラス越しに、ユイが二人を見詰めていた。
そして、その横でレイも同じように二人を見詰めていた。


夜、ネルフ中央病院、
月光が射し込むアスカがゆっくりと瞼を開き、蒼い瞳が現れた。
視線は暫くさまよった後シンジの顔を捉える。
「気がついたんだね。」
アスカが無事だった事が嬉しく自然にシンジは笑みを浮かべた。
そして、それを見たアスカは、堰を切ったかのように一気に涙が溢れ出した。
シンジに抱きつき、その胸で涙を流し声を上げた泣いた。
シンジは、そっと優しく、アスカを抱き締めた。
月光が優しく二人を照らしていた。

あとがき
アスカ「ふっ、まあまあ、良い感じで進んでいるじゃない」
YUKI「・・・・」
アスカ「まあ、初めてのシーンが入らなかったのは・・・って、どうしたの?」
YUKI「・・・ストック切れました。」
アスカ「はい?」
YUKI「第16話未だ全くできていません」
アスカ「さっさと作りなさい!」
YUKI「いや、今、文明の章の方を」
アスカ「そんなの放っといてさっさと2A書けぇ!!!」
YUKI「い、いや、あの、その・・・」
レイ 「ふふ」
アスカ「何よ!!?」
レイ 「人気投票を見てみると良いわ」
アスカ「ふん、決まってるじゃない2Aがトップ・・・な、なによこれ!!信じられない!!」
レイ 「ふふふ、2Rの半分も入っていないわ、」
アスカ「きいい〜〜〜!!!何とかしなさい!!」
YUKI「うがうが・・そ、そんなこと・・・言われましても、」
レイ 「ふふふ、このまま2Aは更新ストップよ、これからは立場の違いは2Rが支配するの」
YUKI「あ・・2Rも後1話しかない・・」
(銃声)×8
YUKI「ひいい〜〜〜!!!」
レイ 「早く書くの」
アスカ「書くのよ!!」
YUKI「うう〜〜〜」(滝涙)