立場の違い2A

第14話

◆嘘と沈黙

12月16日(水曜日)、昼、京都、
加持は京都市内を歩いていた。
(19年前、ここで何が始まったんだ?・・・・六分儀ゲンドウ、六分儀キョウコ、旧姓惣流キョウコ、冬月コウゾウ、3人の接点となったここ京都、ここが全ての始まりの筈だ)
加持は拳銃を抜いて、町工場の一つの中に入っていた。
埃が積もっており何年間も使われた形跡は全く無い。
「ここも、ダミーか・・・」
思わず溜め息が漏れた。
「これで、マルデゥック機関に繋がる108の機関の内107個がダミーだったか・・・」
加持は拳銃をしまった。
奥の裏口が開いた。
加持は拳銃を再び構えた。
「・・・私だ」
女の声が聞こえた。
「アンタか・・」
加持はほっとして拳銃をしまった。
「・・・お前の仕事はネルフの内偵だろうが」
「何事も自分で確かめないと気が済まない性分なものでね」
「余計な事に首を突っ込むと寿命を縮めるぞ」
「構わないさ、それよりも」
「・・・ああ、108個目もダミーだったよ」
「マルドゥック機関は存在しないか・・・」
「サードチルドレン・・・選抜は6月だが、5月には動き始めていた。」
「・・・なるほど、チルドレンを選抜しているのは、ネルフそのものか・・・それにしてはサードチルドレン到着が、使徒襲来当日とはな・・・」
「・・・・・で、お前の方は何かわかったのか?」
「・・・・上層部は、人類を守るつもりは無い」
「やはりか・・」
「ああ、だが、このままでは土壇場で分裂するな」
「お前は?」
「俺か?俺は真実の味方さ」
「冗談は止めろ」
「・・・分からないと言っておこう・・・ネルフにはまだ謎が多すぎる」
「そうか・・・注意しろよ」
「ああ」


放課後、第3新東京市、第3新東京市立第壱中学校2年A組、
レイが雑巾を絞っていた。
シンジは、その姿にどこか家庭的なものを感じていた。
(お母さんって感じなのかな?)
「め〜〜ん!」
トウジが箒を竹刀代わりにしてシンジの頭を叩いた。
「しっかりやらんかい」
ヒカリがトウジの耳を引っ張った。
「しっかりやるのは鈴原でしょうが!!!」
「か、堪忍して〜な」
「問答無用!!」
トウジはしぶしぶ掃除を再開した。
「・・・トウジって尻に轢かれるタイプだよな」
「・・・そね、」
アスカがシンジの意見を肯定した。


夕方、ネルフ本部エレベーター、
シンジとアスカがエレベーターに乗っていた。
「ねぇ、僕が父さんと会ったら何を話したら良いと思う?」
「はぁ?どうしてアタシにそんな事聞くわけ?」
「・・アスカの方が父さんについて知っていそうだから・・」
シンジは少し淋しげな顔をしながら言った。
「ん・・・かもしれないわね・・・」
「父さんってどんな人?」
「・・・そうね・・・信念の人・・・って感じかしら?」
「・・・信念?」
「・・ええ、そうね・・」
その後、シンジはその意味を考えた。


夜、ミサトのマンション、シンジの部屋、
シンジはベッドに寝転んで、色々と考えていた。
(・・・3年前、僕は父さんの前から逃げ出した・・・)
(でも・・・・・)

 
12月17日(木曜日)、A.M.10:15、第3新東京市郊外、墓地、
シンジは拳を握り締めた。
(思い切って話をしてみよう、アスカから聞いた限り・・悪い人じゃないし・・)
シンジは人影に気付いた。
キョウコの墓の前には既に六分儀がいた。
(父さん・・・)
「シンジか・・」
シンジはキョウコの墓に近寄った。
《Kyoko Rokubungi
 1974−2004》
「・・・3年ぶりだな、ここで会うのは」
あれを会うと言えればだが、
「僕はあの時、逃げ出して、その後は来てない、ここに母さんが眠っているなんてピンと来ないんだ・・・顔も覚えていないし・・・」
「人は、思い出を忘れる事で生きて行ける・・・・・しかし、決して忘れては成らない事も有る。キョウコはそのかけがいの無い物を教えてくれた。」
六分儀はシンジの方を見ずに少し上を向いている。
「私はその確認をする為にここに来ている」
「写真とかないの?」
「残ってはいない、この墓も只の飾りだ、遺体は無い。」
「全ては心の中だ。」
(僕は母さんの事は知らなくても良いって言うのか)
シンジは六分儀の傲慢さに少し腹が立った。
「今はそれで良い」
「今?」
ヘリが迎えに来た。
「時間だ、先に帰る」
六分儀はヘリの方へ歩き出した。
「父さん」
六分儀はシンジの方を振り返った。
「・・・あの、今日は嬉しかった。父さんと話せて」
「・・・そうか」
そう答え、六分儀がヘリに乗り込み、ヘリは飛び立った。
シンジはヘリが飛び去るのを見送っていた。
「・・・・信念の、人か・・・・」
小さく呟いた後、その場を去った。


夕方、ミサト宅、リビング
シンジがチェロを持ち出して来て、調弦を済ました。
そして、シンジの独奏が始まった。
はっきり言って上手い。
チェロの音がリビングに響いている。
そして終わった。
「上手ね」
レイの声が聞こえた。
「え?碇・・」
「良い物を聞かせてもらったわ、」
「い、いや・・・」
恥ずかしくなってシンジは後頭部を掻いた。
「・・お礼に夕食に招待したいのだけれど・・良い?」
「え?」


豪勢な料理が碇家の食卓の上に並んだ。
肉も魚も使わずであるところがより一層凄い。
「・・碇って・・凄いや・・」
「ありがと、」
シンジに誉められ、レイは素直に喜び笑みを見せた。
「ただいま〜」
ユイが帰って来た様だ。
「おかえりなさい」
「あ、お邪魔してます。」
「あら、シンジ君いらっしゃい、」
3人での夕食と成った。
レイの料理は非常に美味しかった。
・・・・・
・・・・・
・・・・・
夕食後暫く、取り止めも無い話を続け、色々と楽しんだ。
話も一段落したところでシンジは帰る事にした。
「夕飯御馳走様。」
「良かったらいつでも来てね」
「そうね。今度はアスカちゃんとミサトちゃんも連れてきなさいね。」
「はい、では、おやすみなさい」
「「おやすみ」」
シンジは家路についた。


12月18日(金曜日)、ネルフ本部、ターミナルドグマ、
加持はレベル6のゲートの前に立っていた。
加持は、IDカードをスリットに通そうとしたが、手が止まった。
ミサトが加持の後頭部に拳銃を突き付けていた。
「やあ、二日酔いはどうかな?」
「おかげでやっと冷めたわ」
「そりゃ良かった」
「これは貴方の本当の仕事かしら?それともアルバイト?」
「さて、どっちかな?」
「ネルフ特殊監察部所属、加持リョウジであると同時に、日本政府内務省調査部所属加持リョウジでもあるわけね」
「ばればれって訳か」
「司令の命令かい?」
「いいえ、友人としての最後の忠告ね、これ以上バイトを続けると、死ぬわよ」
「・・・司令はまだ俺を利用している。まだ行けるさ・・・・」
「葛城に隠し事をしていたのは謝る。だが、司令やリッちゃんも葛城に隠し事をしている。それがこれさ」
加持はIDカードをスリットに通した。
ゲートが開いた。
7つの目の仮面をつけ、胸に二股の螺旋状の槍を突き刺され巨大に十字架に貼り付けになった白い巨人の上半身があった。
「・・・これが第壱使徒アダムね、で、どうした訳?」
ミサトは恨みの篭った視線で巨人を睨んだ。
「・・・国際連合太平洋艦隊及び弐号機の本当の任務は、アダムの輸送と護衛、だった」
「何ですって?でもどうやってこんなものを」
「その時は、まだ胎児状だった。」
「なぜ、そんな事を知っているの?」
「俺が運んでいたからさ、」
「・・・・それ本物?」
「第六使徒は、アダムを狙ってきた」
「・・・・第参使徒から第伍使徒襲来時には、アダムはここには無かったってことか・・・」
「そうだ、ドイツの第3支部にあった」
「・・・・確かに、ネルフは、甘くは無いわね・・・」

あとがき
アスカ「む〜」
レイ 「・・・どう言う事なの?」
YUKI「はい?」
レイ 「・・キスシーンが無い」
アスカ「ある訳無いじゃん」
YUKI「ま、まあ・・・」
レイ 「・・・・」
アスカ「ふ〜んだ」
レイ 「・・・さよなら」
YUKI「あっ、まって!」
アスカ「あらら、二人ともいなく成っちゃったわね。」
アスカ「と、言う事で、次回予告!」
アスカ「次回!虚数空間に飲み込まれていく初号機、それを助け様として弐号機が飛び込む!
    しかし、弐号機も影に囚われる。弐号機を出、初号機に乗り込むアスカ!
    虚数空間で、二人は何を思い、どのような行動を取るのか!
    18禁指定だから18歳未満はお断りよ!」
YUKI「勝手に決めるな!!」