立場の違い

第11話

◆最後の使者

第3新東京市立第壱中学校、2−A、
タブリスは、アスカの頭の上がこよなく気に入ったようで、授業中、休み時間、場所と時を構わず、アスカの頭の上にいる。
「みゃ〜」
猫を頭の上に載せている美少女として有名に成りつつある。
「さてと、お弁当にしましょうか、シンジ、タブリスの分も作ってきたでしょうね」
「はいはい、」
シンジは鞄からアスカの弁当箱といっしょに小さなタブリス用の弁当箱を取り出した。
「宜しい」
「みゅ〜」
「今、行くよ」
タブリスの呼び掛けに答え、カヲルが弁当箱片手にやって来た。
「屋上に行きましょか」


屋上、
ケンスケとレミは離れたところで、独特の空間を作り出している。
「はい、何が良い?」
「じゃあ、その、肉団子を」
「はい、あ〜ん」
・・・・
・・・・
「熱いわね」
「本当だね」
「・・まあ、別にどうでも良いけど」
「おお、イインチョ、毎度すまんのぅ」
「い、いや、その、残飯処理だから」
どこが残飯処理なものか、他の姉妹の弁当よりも手が込んでいる。
「みゃ〜」
タブリスはシンジが作った弁当を美味しそうに食べている。


放課後、
「じゃあ、僕はここで」
カヲルは別れようとしたが、タブリスがついてこない。
「タブリス?」
「みゅ〜」
タブリスはアスカの頭の上に居座っている。
「あら?アタシといっしょの方が良いみたいね」
「タブリスゥ〜〜!」
(拙いな、)
「いやさ、アスカ、やっぱり、飼い主の元には返さなきゃ」
「ん〜、しょうがないわね」
アスカはカヲルにタブリスを返した。
「じゃあ、又明日ね」


シンジの家、
シンジは自室でカヲルとタブリスに付いて考えていた。
カヲルも怪しいが、それ以上にタブリスがあやし過ぎる。
最後の使徒、タブリス・・・まさか、そこまで直接的にとは考えにくいが・・・カヲルがゼーレがらみであれば・・・或いは・・・いや、しかしそれも・・・


夜、路上で2匹の珍獣がにらみ合っていた。
一方は、葛城家に居座る、温泉をこよなく愛するペンギン。もう一方は、怪しさ一杯の少年のパートナーであり、アスカの頭の上が大のお気に入りの猫。
「クエ〜〜〜!!」
「ミャ〜〜〜!!」
偶然出会っただけなのだが、喧嘩になっていた。
・・・・
・・・・
・・・・
ずたぼろになったペンギンが転がっていた。
「くええ〜〜〜〜・・・」


数日後、放課後、第3新東京市立第壱中学校、2−A、
「惣流さん、どうだい、これからデパートに買い物にでもいかないかい?」
「ん、良いわよ」
2人は、学校からショッピング街へ直行した。
シンジは窓から二人が学校を出た事を確認すると、諜報部に連絡を取った。
「2人と1匹の監視を」
『了解しました』
シンジは通信を切った後で、レイが不満そうな顔でこちらを見ている事に気付いた。
「・・レミと相田君も買い物に行ったわ」
「そう?」
「・・・洞木さんと鈴原君も・・・」
レイは訴えるような視線をシンジに注いでいる。
「・・僕達も行くの?」
レイは笑顔で頷いた。
「分かったよ、行こう」
2人も教室を出た。
シンジはやれやれと言った表情をしているがやはり楽しそうである。


西武百貨店、婦人服売り場、
「ん〜、この服なんか、まさに、リリンが生み出した美の極みだよ、」
「僕にぴったりだよ」
その言葉が発せられた瞬間、周囲の客店員問わず、カヲルとの距離が10メートル以上広がった。
暫くして、トイレに行っていたアスカが戻って来た。
「あれ?なんでこの周り人がいないの?」
「きっと君の美しさに皆が遠慮しているんだよ」
やっぱり誉められると嬉しいのかアスカは得意そうな笑顔を浮かべた。
頭の上ではタブリスが大きな欠伸をした。


同、紳士服売り場に、六分儀と冬月がいた。
「折角、西園寺君の娘さんの結婚式に呼ばれたのに、まともな服を持っていないでは、困るぞ」
「必要無かったので」
「私が買ってやるから・・おお、これなんか良いな」
冬月はその服の値札を見た。
「い、いや、これは少し若者向きだな、もう少し渋いのが良い」
「そうですか?」


夜、とあるバーで、冬月と六分儀は飲んでいた。
「で、ナオコ君が、先生、私は、これ以上続ける勇気が有りませんと、言ってきたのでな、ワシはバシッと、そんなことでは行かん!人類の命運は君の肩に掛かっているのだ、弱音を吐くのは全てが終わってからにしろ!」
酒に酔った冬月の話を聞き流しつつ、六分儀はグラスの残りを一気に飲みほした。
・・・・・
・・・・・
・・・・・
「176万4200円になりま〜す♪」
二人の周りには厳ついお兄さんが数人立っている。
酔いは完全に覚めてしまった。
「い、いや、だな、その」
「ふっ、問題無い」


翌日、ネルフ本部、総司令執務室、
冬月は滅茶苦茶不機嫌である。
「くっ、全くもって、けしからん」
「・・さっきから・・どうかしたのか?」
「いやな、昨日ぼったくりバーでな」
「そう、良かったわね」
レイに軽く流された。
シンジの手元の2枚の報告書の内の1つには、六分儀のカードで六分儀の口座から代金が引き下ろされた後に、冬月についていた保安1課が突入し全員逮捕、関連組織は諜報部と警察の手によって根絶やしにしたことが書かれていた。
もう一つの報告書は、アスカとカヲル、タブリスに関するものだが、現在のところは、別段問題無しと成っている。
(考え過ぎかな・・・)


翌日、某所、
シンジは人を待っていた。
時間まで後少し、遅刻をするような人物ではないが・・・来たようだ。
竹下である。ガードは途中に待機させここまでは連れてきていないようだ。
「碇君、昨日、委員会からこれが届いた」
竹下がシンジに渡したファイルには、ネルフが人為的にサードインパクトを引き起こそうとしている事を初め様々な事が書かれ、人類の敵ネルフを最後の使徒が殲滅された後に、世界中の軍を集結させ、ネルフを滅ぼす事への協力を要請していた。
「戯言ですな」
「分かっている。だが、これに踊らされる国も少なくは無い。巨大な力を持つネルフを滅ぼすと言う点に限れば利害が一致する国もあるだろう」
「・・・例えば、アメリカ、中国、ロシア、フランス、イギリス、ドイツ・・・日本を除いた常任理事国ですか」
「ああ、その通りだろう」
「・・・情報を大量に流し、混乱させます。混乱が終結すれば、ゼーレに攻撃が集中します。それを避け早期に決着をつける為に、国連軍を使う筈です」
「・・・自衛隊か」
「はい、自衛隊を戦自で叩いて下さい。」
「うむ・・・自衛隊か・・・応援が無ければ容易い事だ・・だが、自衛隊だけではネルフ独力でも落とせるとは思えん。」
「ネルフ支部は全てゼーレの手に有ります」
「・・・エヴァ量産機か」
「はい、恐らくは、一斉投入に踏み切るでしょう」
「しかし、量産機全てを相手にすると成ると、戦自の保有する兵器では、とても足りんぞ」
「それは問題ありません。こちらも切り札に奥の手は残しています。ですが、万全の状態でなくてはならないことに変わりは有りません。自衛隊にエヴァの支援兵器を破壊されエヴァの活動が制限されるような事が無いようにして下さい。」
「分かった。君を信じて万全を尽くす」
「お願いします。」


第3新東京市立第壱中学校、2−A
「みゃ〜」
いつの間にやら溶けこんでいるタブリスであった。
「え〜、明日から正月休ですが、自宅でも勉強は怠らないで下さい」


帰り、
「皆でカラオケ行かない?」
「歌、歌はいいねぇ、リリンの生み出した文化の極みだよ」
「行く行く」
「わしもいくで」
「俺も」
「私も行きます」
「シンジは?」
「レイ、行こうか」
レイは頷いた。


どうもシンジは終始楽しそうではなかった。
皆何かネルフであったのだと解釈した。
(試してみるか)
「ねぇ、これから皆でネルフに行かないかな?」
「本当かい?」
「うん、レミさん、お姉さん達も呼んでくれるかな?」
レミは頷いた。


ネルフ本部、
シンジはサングラスを掛けた。
職員は、異様な目で見るが、シンジの姿を確認すると逃げるように去って行く、
「葛城3佐、案内を頼む」
「はい」
ミサトが案内を引き継いだ。


シンジとレイは発令所に来た。
「リツコ博士、一行をメインモニターに」
「は、はい」
「碇、どうしたのだ?」
「恐らくは、最後の使者だ」
「何!!」
発令所が緊迫した。
「ナオコ博士」
「はい」
「暴徒鎮圧用のグレネードどのくらいの破壊力だ?」
「気絶させるくらいです」
「威力を弱くして打てるか」
「はい」
「リツコ博士、全警報をならなくしてくれ」
「はい」
「ナオコ博士、適当な地点で、アスカにグレネードを撃て」
「あ、アスカちゃんにですか?」
「そうだ、」
「は、はい」
「碇、何を考えている?」
「直感だ」
そして、アスカにグレネードが発射されたが途中で弾かれた。
全員絶句した。
「やはりATフィールドだな、発生源は?」
「分析中です。暫くお待ちください」
「碇、どうするつもりだ?」
「初号機は?」
「いつでも出撃できます。」
「ならばいい、搭乗させ待機だ」
「は、はあ」
「司令、発生源の特定は出来ませんでした。」
「そうか、次同じ事をしても、守るとは限らないな」
「一応やってみますか?」
「そうだな」


一行、
「で、ここが」
暗闇の中で何かが光った。
「ふべっ!!!」
アスカが暴徒鎮圧用のグレネードを食らって吹っ飛んだ。
タブリスは穴の中に落ちて行った。
「「「「アスカ!」」」」


発令所、
「どうやら、駄目のようですね」
「処で、猫は?」
「穴の中に落ちたようです」
「どこに繋がっている?」
「えっと・・・・た、ターミナルドグマです」
「拙くないか?」
「サブシャフトでATフィールドの発生を確認!!!!!」
「直ちに猫を捕まえ・・いや殲滅しろ!!」
「初号機をターミナルドグマにおろせ!」


一行、
『使徒、ターミナルドグマに侵入!!直ちに追撃せよ!!繰り返す!!』
「「なんですてぇ!!!!」」
ミサトとアスカが叫んだ。
「ああ、タブリス、君はどこへ行ってしまったんだい」


ターミナルドグマ
タブリスが空中に浮いていた。
「みゃ〜!」
タブリスが発生させたATフィールドが装甲隔壁を破壊した。


発令所、
「目標!ターミナルドグマ中央に侵入!!」
「初号機ターミナルドグマ到達まであと25!」
「碇、何故そんなに落ち着いている?」
「罠があるからだ」
「そうか」
「初号機パイロット、目標は猫だ、問答無用でつぶせ」
『了解した』
「最終安全装置解除!!!!」
「ヘブンズドアが開きます!!!」
「目標!ターミナルドグマ最深層に侵入!!!」
「初号機ターミナルドグマに到達!」


ターミナルドグマ最深層、
「みゃ〜」
巨大な十字架を前にタブリスが悲しそうに泣いた。
そこにあると思われたものはそこには無かった。
暫くして初号機が到着した。
『悪いな』
初号機はATフィールドを中和してタブリスを踏み潰した。


ネルフ本部某所、
「どう言う事よ!!」
アスカが吼える。
「あの猫は、使徒だった、貴方は何者?」
「彼のパートナーですよ。」
「貴方は私達の敵なの?」
「いえ、僕は、ただ流れに身を任せて流れているだけです。いくつかの知識は、彼に教えてもらっただけです」


人類補完委員会、
「皮肉なものだ、エヴァシリーズの完成と、使徒殲滅の報が同時とはな」
「これより、ネルフを制圧する」
「しかし、ネルフの流した情報のせいで混乱状態だ」
「構わん。自衛隊がある」
「成るほど、」
「日本政府を混乱に落とし入れた上で実行する」
「いよいよ、約束の時が訪れる」

あとがき
???「いいかげんにしてくれよ!!」
YUKI「我侭な奴だ」
カヲル「これで良いんだよ、さて、立場の違いは大歓迎だよ、僕が使徒じゃない
    これで、シンジ君と僕のラブラブストーリーが」
YUKI「阿呆、」
カヲル「何がだい?何か問題があるのかい?」
YUKI「無いと思ってんのか?」
カヲル「無いさ、愛の前では如何なる障害も」
YUKI「さよなら」
カヲル「ああ〜!どこへ行くんだい?」

YUKI「さて、次が最終話です」
アスカ「お〜し、暴れるわよ〜」
YUKI「ははは、頑張ってください」
アスカ「ところで、タブリスってさ、もしかしてカ」
YUKI「はいはい、その話は置いておいて、次の最終話の話を」
アスカ「・・・・まあ良いわ、しかし、髭の不幸話が減ったわね」
YUKI「あれだけの目に会ったんだからもう良いだろ、それに、これ以上やれるほど余裕無いし」
アスカ「まあ良いわ、でも、この話後一つで終わらせられるの?謎や伏線が一杯なんだけど」
YUKI「さあ」(汗)