立場の違い

第2話

◆再会

六分儀ネルフ本部到着の数時間前、ネルフ本部発令所、
国際連合第2方面軍、各自衛隊の将軍がやって来た。
「ふん、これが、ネルフか、金をかけているだけのことはある」
「まあ、役に立てばだがな」
「北海道から九州までの3自衛隊が集結しているんだ。これだけの軍隊が動くような事は、太平洋戦争以来だ」
「そう、太平洋戦争以来の総出撃だ。」
「実際数はともかくも戦力だけなら当時の大日本帝国軍を遥かに凌駕する戦力だ」
暫くの間、将軍達はネルフへの嫌味と国際連合軍の自慢をしていた。
「ついた早々厭味ですかな」
シンジは将軍達に声を掛けた。
「まあ、君達の出番は無い、そこで大人しく見ていてくれ」
将軍達も流石に子供扱いはしない。
「見ている。と言う意味では貴方達も同じですよ」
「何?」
「自分が戦場に出るわけではない、私達も貴方達も、卑怯者ですよ。」
「ふん、極東の魔王に同様に思われるとはなんとも嬉しいね」
「そうですか・・・司令塔に席を用意しました」
「うむ。」
3人は司令塔に上った。
「各部隊との回線開きました」
サブモニターに自衛隊の各部隊の情報が浮かび上がった。
3D作戦マップに部隊と使徒が映し出された。
「目標は海底を移動中です。上陸まで74分です。」
「目標が海面に姿を表した瞬間から、総攻撃開始」
「各部隊に通告完了」
「海上自衛隊第1艦隊及び第2艦隊作戦ポイントに移動開始。」
「陸上自衛隊各師団配置完了」
「航空自衛隊各航空部隊もいつでも出撃可能です」
「それで良い」
シンジはパイプ椅子に座り、その横に冬月が立っている。
「愚かな奴らだ」
「無知なだけだ。と言っても、私が彼ならばもう少しましな事を言うがな」
そうして時間が流れた。
「間に合うのか?」
「問題ない」
「目標、海面に出ます」
メインモニターに人型の使徒が現れた。
「作戦開始」
「戦車部隊一斉射撃」
「航空編隊対地ミサイル発射開始」
「各護衛艦ミサイル射撃開始」
凄まじい集中攻撃が続いている。
「目標微速で海岸に進行中」
「信じられん」
「やはりATフィールドかね」
「ああ、間違いない」
「間も無く上陸します」
そして使徒が上陸し戦車部隊が踏み潰され爆発していく。
「少々の味方の被害は構わん!撃てぇ!!」
戦車部隊は味方の攻撃も被弾している。
「可哀想にな」
「戦いに犠牲はつき物だ。だが、これは戦いではない」
使徒は戦車部隊を振り切り国道を第3新東京市に向けて進行していた。
ミサイルが次々に直撃した。
使徒は手から光を槍を出して、VTOL機を貫いた。
「漸く攻撃をしたな」
「敵としてみたと言うよりは、障害物としてみるようになっただけだ」
「直撃のはずだぞ!!」
「バカな!!」
将軍の一人がペンをへし折った。
「出し惜しみは無しだ!!すべてあげろ!」
「くそっ!何故だ!」
「通常兵器など何の役にも立たんのにな」
「ああ、ATフィールドの前には無意味だ」
冬月の言葉にシンジが返した。
電話が入った。
「はい」
「碇君、本部からの通告だ。これより、作戦の全権は君たちネルフに委譲された。しかし、君達ならば勝てるのかね?」
「ご心配なく、その為のネルフです」
・・・
「目標、30分で第3新東京市に到達します」
「碇、」
「心配する必要は無い、奴は分かっている」
シンジは発令所を出て行った。
「10年ぶりの親子の対面・・・・いや、対決か・・・・」


ケージ、エヴァンゲリオンと言う巨人を押さえ込むための施設。
シンジはケージ上方の司令室に入った。
ケージには、六分儀、リツコ、ミサト、と整備士達がいる。
(罪を感じているからここに来たのだな)
『エヴァ・・・完成していたのか・・・』
『はい』
(母さんを取り込んだエヴァ、まさかその母さんがコアの中に取り込まれ、そして、今初号機に移され、初号機のコアの中にいるとは知らないだろう。あの時、全てから逃げ出したのだからな)
『・・・私に乗れというのか』
「そうだ」
六分儀達がガラス越しにシンジを見た。
『シンジ・・・』
「気安く呼ぶな、」
六分儀は黙った。
ミサトがリツコに小声で何か聞いている。
「六分儀ゲンドウ、エヴァ初号機に乗れ、そして、使徒を倒せ、これは命令だ」
六分儀は俯いた。
(そして、自らの罪を償え)
『何故、私なのだ』
「残念ながら、現時点で、初号機を動かせる可能性があるのは、貴様だけだ。」
『くっ』
「もう一度だけ言う、乗れ、」
六分儀は俯いたまま何かを考えているようだ。
暫く沈黙が流れた。
『わかった・・・・』
「赤木博士、説明を」
(これで、シナリオ通りに事が進む。零号機の損失とレイの怪我、大きかったが、何とか埋め合わせくらいは出来そうだ)
シンジはその場を離れた。


そして、発令所、
「冷却完了、ケージ内全てドッキング位置。」
「パイロット・・・エントリープラグ内コックピット位置に着きました!」
「了解、エントリープラグ挿入」
「LCL排出開始」
「プラグ固定完了、第一次接続開始!」
「エントリープラグ注水」
「心配する必要はありません、肺がLCLに満たされれば直接酸素を取り込んでくれます。」
「主電源接続、全回路動力伝達、起動スタート、シナプス挿入」
「A−10神経接続異常なし、初期コンタクト全て問題無し。」
「全ハーモニクスクリアー、シンクロ率22.63%、暴走、有りません。」
「多少低いか」
冬月が呟いた。
「当然だ。予想される範疇だ」
「エヴァンゲリオン初号機発進準備!!」
ミサトの声が響いた。
「第一ロックボルト外せ!」
「解除、続いてアンビリカルブリッジ移動!」
「第一、第二拘束具除去」
「第3第4拘束具除去」
「1番から15番までの安全装置解除。」
「内部電源充電完了、外部コンセント異常なし。」
「エヴァンゲリオン初号機、射出口へ。」
「進路クリアー、オールグリーン!発進準備完了。」
「宜しいですね。」
ミサトが確認を取った。
「勿論だ。使徒を倒さぬ限り我々に未来は無い」
シンジの無常な声が再び響いた。
「発進!!!」
初号機が射出された。
「最終安全装置解除!エヴァンゲリオン初号機リフト・オフ!!」
そして、初号機が動いた事に職員達が感動しているのも一瞬、直ぐに形勢は不利なり、使徒の光の槍で初号機の目が貫かれた。
『ぐああああ!!』
六分儀の声が木霊する。
「パルス逆流!」
「駄目です!止まりません!」
「パイロットの生死不明」
沈黙して暫くすると、初号機の目が光った。
「エヴァ、初号機、再起動・・・」
初号機が咆哮を上げた。
「勝ったな」
「ああ」
初号機は咆哮を上げ使徒に突進していく。
そして、空間障壁が初号機を妨害した。
「ATフィールド!」
「ATフィールドがある限り、使徒にダメージは与えられない」
使徒のATフィールドが弱まった。
「初号機もATフィールドを展開!使徒のATフィールドを中和していきます!」
「いえ、侵食してるんだわ」
初号機はATフィールドを切り裂いた。
「あの人が戦ってるの?」
「違うわ、暴走よ、エヴァの本能を剥き出しにした姿」
初号機が使徒に連続攻撃をかけている。
使徒は変形し初号機に取り付いた。
「まさか自爆!」
モニターが光に包まれた。
「初号機は?」
「初号機確認、パイロットの生存も確認」
「全てが始まったな」
「ああ」
司令塔の二人は前の現実ではない物を見ていた。


通信会議室の中で6人の男が再び会していた。
「15年ぶりの使徒の襲来」
「我々の先行投資が無駄にならずに済んだ」
「当然です」
「しかし、使徒とエヴァの存在をどうするつもりだ」
「お任せください、既に対処済みです」
「聞いたところによると、初号機のパイロットはあの男らしいな」
「はい、奴以外に乗ることが出来るものがいなかったのは、残念極まりない事です」
「奴は信用できん」
「分かっています。私情を除いても、御世辞にも信用に足る人物では有りません」
「ではどうするつもりだ?」
「ドイツから、弐号機とセカンドを召喚します。同時に、アダムも本部に移送し、第3新東京市での、一点防御に入るつもりです。」
「アダムをか」
「はい、防衛に戦力を分散させるのは、兵法的にも余り誉められたものではありません」
「参号機はどうする?」
「サードチルドレンはまだ見つかっていません」
「サードか」
「見つかり次第、本部への輸送となります」
「良かろう、では、あとは委員会の仕事だ」
5人の男達は消えた。


そして、ネルフ中央病院、
シンジがレイを見舞っていた。
サングラスを外したシンジはレイと楽しそうに談笑?していた。
「明日、退院できるわ」
「うん、良かったね。まだ骨折は直ってないから不便だろうけど」
「問題ないわ」
「そう」
「怪我が治ったら、レイの服を買いに行こう」
レイは少し顔を赤らめて頷いた。


シンジは、見舞いの帰り、廊下に六分儀が立っている事に気付いた。
六分儀もシンジに気付いた。
「シンジ」
「気安く呼ぶなといっただろうが!」
「・・・」
「碇司令と呼べ、良いな」
六分儀は俯いた。
わざわざ、碇の部分まで呼ばせるのは嫌がらせ以外の何者でもない。
「母さんを殺した、貴様の罪は重い」
シンジは六分儀の横を通り過ぎた。
(正しくは、お前の罪は、母さんを殺した罪ではなく、全てから逃げた罪だ)
六分儀はシンジが立ち去った後もその場に立ち尽くしていた。
「久しぶりだな」
冬月が六分儀に近付いた。
「冬月・・・」
六分儀が人工進化研究所所長を務めていた時の右腕であった人物との再会である。
「体の方は何とも無いのか?」
「ああ、問題無い」
「お前の住居はこちらで用意する。足りないものがあったら言ってくれ」
「ああ」
「少し歩くか?」
二人は病院内を散歩し始めた。
「ここを去ってからどうしていた?」
「金はあった。だが、3年と持たなかった」
「そうか・・・」
冬月はその使い道は大体予測できた。
「その後は、日雇いの仕事を探して、金を手に入れては、酒とタバコに溺れていた。」
「そして、体を壊して、入院した」
「ああ、聞いている」
「そして、弁護士がやって来た。」
「弁護士は、俺の碇姓が剥奪された事、シンジの親権を失った事、シンジに会う事は出来ない事、その他何点か必要事項を告げて、3000万円を置いて去った」
「俺は、その後、3年ほど、何も出来なかった。無気力と言うべきか、俺にとってユイがどれほど大事だったのかを改めて知らされた」
「そして、ある日、ユイの墓に参った。」
「何か見つけたのか?」
「俺は償いをしなければいけないものを見つけた」
「シンジ君とレイか」
「ああ、二人に償わなければいけないと思った。」
「だが、俺には償う方法が無かった。」
「俺が、戻ったところで、何が出来るものか、いまさら、どの面を下げて、父親だと言えるものか」
「それに、シンジの方から碇姓を剥奪したのだ。俺には会いたくもないという意思表示だ」
「そうだな・・」

あとがき
YUKI「次回予告、第3話アスカ来日」
アスカ「マジ!?」
YUKI「本当です」
レイ 「そう・・・もう来るのね」
YUKI「はい、第四使徒戦は弐号機も参戦します」
アスカ「ふっ、殆ど出遅れてないわ、これで」
レイ 「ふふふ、十分に出遅れているわ」
アスカ「むきい〜〜!!何とかしなさい!!」
YUKI「何とかって何が?」
アスカ「アタシとシンジをくっつけろって事よ!」
YUKI「大丈夫髭は無いから」
アスカ「やつはいやああああ〜〜!!!!」
碇  「セカンドチルドレン」
アスカ「なっ!なんでここに!」
碇  「お前には失望した、もう会う事もあるまい」
アスカ「なにがじゃああ!!!」
碇  「レイ、食事にしよう」
レイ 「私は人形じゃない、私は貴方じゃないもの」
碇  (泣)
YUKI「さて、これからどうなるやら」
シンジ「決めてないんですか?」
YUKI「なんか長いな・・・まっ、良いけど、使徒の数をどうしようかと思ってる」
シンジ「増やすんですか?」
YUKI「いや、減らそうと思ってるんだ。取り敢えず、アルミサエルは絶対無視だろ、
     アラエルも嫌だし、バルディエルも辛いな」
シンジ「楽に進みそうですね」
YUKI「問題はゼーレだな」
レイ 「じじい達は用済み」
アスカ「ゼーレ殺す」
YUKI「まあ、考え中と言う事で、では又」
アスカ「・・・あたしの相手は?」