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最終話

◆決戦

ネルフ本部、発令所、
作戦マップでは既に艦隊は日本領海に入っており、決戦までの時間はそんなに残っていない。
「後どれくらい時間がある?」
「後・・2時間です」
「スーパーマギの準備はどうだ?」
「問題ありません。」
「うむ」
スーパーマギ、ユイが発案したマギの応用で、3人の人間の脳を利用して計算させるシステムである。
これは、人道的な問題から、ユイは計画の段階で抹消したものだった。
しかし、今、全支部からの一斉ハッキングに対抗するにはこれしかなかった。
それに使用はこの1回のみ、被験者の精神への影響は少ないはずである。
被験者は、碇ユイ、赤木リツコ、そして、赤木ナオコの冷凍保存されていた遺体である。
死して尚望まぬ事を強制される。とても人道的ではない。しかし、現時点で、他にスーパーマギとして成り立つクラスの脳を持っているのはレイだけだった。レイは使えない。そこで、まさに使い捨てでナオコの遺体を使う事になったである。
「母さん、ごめんなさい」
リツコはナオコの遺体に謝った。
遺体をカプセルから取り出し車椅子に載せ、メルキオールの傍に作られた装置に運んだ。
そのとき後方のドアが開いた。
「何をやっているの?」
「あら?ナオコさん」
現れたのはナオコであった。
「「「「「えええ!!!!!」」」」」
ユイ以外のその場に居合わせた者全てが凍りついた。
ナオコは発令所内に入って来た。
リツコは車椅子に座るナオコと目の前で生きているナオコを見比べた。
目の前にいるナオコの方が老けている。
「リッちゃん、私の人形はもう要らないわよ」
「ナオコさん、どうして?」
「さあ?私にも分からないけど、目が覚めたら、本部の中の施設、カプセルの中で目を覚ましたわ。」
「使徒が世界中めちゃくちゃに荒らしまわっていたわ。ここに来た時、マギのデコーダーで全ての事を知ったの、そして、2010年に戻ったの。」
「そう言う事・・」
サードインパクトで、LCL化し、その後再構成された時に復活した。
その後、何らかの要因で冷凍保存カプセルの機能が停止し活動を再開したのだろう。
「もう、2人も過去に戻った者がいたから随分歴史が変わってしまうことを予想して、色々と準備していたのよ、と言っても、技術部の伊吹マヤさんの発明品の流用なんだけどね」
「え?私ですか?」
上から声が降ってきた。
「そう、色んな兵器があったわ、でも殆ど実用化されなかった。サードインパクト後の世界ではとても造ることは出来なかったわけね、だけど、今なら作れたわ。戦略自衛隊に新配備された兵器、対エヴァ専用兵器よ」
「マジすか?」
「ちょっと待ってくれ!」
上から加賀の声が降って来た。
「俺は聞いてないぞ」
「当然よ、日本重化学工業の一部の研究者以外は知らない事よ」
「おのれら・・・」
「こちらから先制攻撃をかけるわよ」
「そうね」
「母さん、やるわよ」
そして、3人がそれぞれ準備が整えた。
『スーパーマギ起動、これより、全支部のマギコピーにハッキングをかけます』
回線が開かれ現状がメインモニターに映された。
凄まじい勢いマギコピーをハッキングしていく、防壁が残っているのは既にドイツのマギ3のみ、
そして、中国支部のマギ7を制圧した。
それに続き瞬く間に全てのマギを支配下においた。
「す、凄い・・・」
誰が零した言葉なのか・・・それは、その場にいる者全ての気持ちであった。
そして、3人がそれぞれ外に出た。
リツコはふらついていて直ぐにマヤが支えに来た。
ナオコは知恵熱で呆っとしているようだ。
ユイは結構平気な様で司令塔に戻っている。
「情報戦が決着した以上、敵は、実力行使をして来ます。各部隊を戦闘体制に移行」
「作戦Aパートを開始します。」
長距離砲が一斉に空にその砲口を向けた。
「斉射」
光の筋が天空へと上っていった。
「全て命中、第2射用意」


国連艦隊、旗艦、
突然作戦マップから表示が消え始めた。
「何事だ!?」
「分かりません」
暫くしてマップの大半が索敵範囲外に成った。
「・・・衛星をやられたのか」
「偵察機を飛ばせ」
「了解」
「向こうも本気だな・・・」
「サードインパクトの回避、そりゃ本気になりますよ」
「ああ、だが、我々も選ばれる為には、ここで退く訳には行かない」
「はい」


第3新東京市、ネルフ本部第1発令所、
戦闘が始まった。
皆作戦マップやモニターを見詰めている。


展望室、
シンジとレイの二人がジオフロントを眺めていた。
「・・・遂にここまで来たんだね」
シンジの言葉にレイは頷いた。
「・・・全部、綾波のおかげなんだ」
レイはシンジの顔を見た。
「ありがとう」
「・・・全ては碇君の為・・私はそれだけで動いて来た。」
「もう良いよ、綾波も自分の幸せを求めなくちゃ」
「・・私は、碇君が幸せに成れば、それが私の幸せなの・・」
「・・綾波・・」
シンジはレイを抱き締めた。
「・・だったら・・いっしょに幸せになろうよ、綾波と僕で」
「・・・嬉しい・・」
レイはシンジの胸に顔をうずめた。
その二人を、アスカとレナが陰から見ていた。
「あ〜あ、結局・・碇レイか・・・一時は良いとこまで行ったと思ってたけど、結局端から決まってたのね・・」
「・・アスカさん、悔しい?」
「ん?・・まあ、それなりね・・・でも、仕方ないわよ・・・アタシにはレイみたいな事出来ないから・・・」
「・・・」
「レイはシンジの為だったら喜んで命を捨てる・・・アタシにはとてもそんな事出来ないから・・」
「・・・」
「まっ、アタシはシンジなんかよりも、もっとアタシに相応しい良い男を見つけるわよ」
少し空元気が混じっている。
「頑張ってね」
レナにはこう言うしかなかった。


第1発令所、
艦隊は突破されはしたが、相当数を沈めた。
「上陸部隊、約2個師団上陸しました」
「住民の避難は?」
「既に完了しています」
「攻撃を」
『総員第2種戦闘配置』
地の利を活かした待ち伏せや集中攻撃で、各個撃破していく。
「やはり、輸送艦等を相当数沈めたのは大きいですね」
「そうだな、」
多くのミサイルが第3新東京市を目指して発射された。
「全ての対地ミサイルを注ぎ込んでいるようですね」
「迎撃しろ!」
第3新東京市及びその付属都市の付属防衛施設の対空迎撃システムを全開にしてミサイル迎撃を開始した。
「どうだ?」
マヤはマギの計算を見ている。
「大丈夫です!迎撃予定率100%です!」
ミサイルが次々に迎撃されて空中で爆発している。
マギが瞬時にミサイルの軌道を計算し、それに合わせて攻撃を仕掛けていく。
既に全てのミサイルがロックされており迎撃率は100%となり、実際全てのミサイルを迎撃して見せた。


ゼーレ、
「マギタイプの全制圧」
「国連軍の敗退も、もはや時間の問題となった」
「やはり、エヴァを使うしか無いのか」
「天城が上手く動いてくれる事を望むだけだ」


ネルフ本部のケージに繋がる通路をミクがライフルを手にケージに向かって走っていた。
そして、ケージに侵入すると同時に、5名ほど居た警備員達と20名ほどの整備士を全て射殺し、初号機に乗り込んだ。
「くふふ、これで私は神になれる」
ミクの表情は歪んでいた。


第1発令所、
「大変です!!初号機がエントリーを開始しています!!」
マヤの声に発令所は騒然となった。
「何ですって!?」
「回線繋がりました」
モニターにはミクが写っていた。
『残念だったわね、これでネルフも終わりよ』
「シンクロを開始しました!」
「ミク!止めなさい!」
ユイが叫んだ。
『婆さんに用は無いわ!』
「貴女では取り込まれてしまうわ!!」
『きゃあああ!!!!!』
ミクの悲鳴が響き渡る。
「シンクロ率200%を越え、いまなお上昇中です!!」
「シンクロを強制カットしなさい!!」
オペレーター達は大慌てでシンクロカットの操作を行った。
「駄目です!!カットできません!!」
モニターのミクの姿が消えた。
「シンクロ率カウンターストップしました・・・」


パイロット待機室、
「あのバカ・・・初号機に乗り込んで取り込まれたって?」
「流石はアスカの娘ね」
「ちょっと!それどう言う意味よ!!」
「まあまあ二人とも」
なぜかレナはケーキを食べている。
「あんたもケーキなんか食べてないで何とか言ったらどうなの!」
「・・・・家族で喧嘩しないで・・・・」
レナは泣きそうな目で訴えた。
「う」
「・・・レナ」
「ご、ごめん」
「悪かったわ」
レナはパッと笑顔に戻した。
「あっ」
「皆、仲良くね」
レイは軽くではあったが、皆笑いを零した。


そして、出撃命令が出た。
量産型エヴァが現れたのである。
地上に出た。
空を飛んでいる量産型エヴァの中に1体だけ他よりも二周りほど大きいエヴァがいる。
「何だあれ?」
『・・・』
量産機が散開し、襲いかかって来た。
「く」
零号機は弾き飛ばされて兵装ビルに叩きつけられた。
「ぐ」
『碇君、零号機の装甲は初号機の70%しかないわ、かわして』
量産型エヴァの次の攻撃を零号機は間一髪でかわした。
初号機が凄まじい強力なATフィールドを展開した。
ATフィールドの衝撃波が量産型エヴァを1体破壊し、他の1体に致命的なダメージを与える。
零号機は起き上がり、アクティブソードを手に量産機に斬りかかった。
量産機はロンギヌスの槍のコピーでそれを受けた。
続いて更にもう1撃、零号機の方が戦力は上である。
一方、弐号機は2体の量産型エヴァ相手に苦戦していた。
体勢を崩した瞬間、量産型エヴァがロンギヌスの槍のコピーを弐号機に突き刺そうとした。
『く』
アスカが目を閉じた瞬間、初号機が奪い投げたロンギヌスの槍のコピーが量産型エヴァのコアを貫いた。
『レイ!』
『アスカ、もう一体は御願い』
『任しときなさい!』
1対1ならば、楽勝!
一気にアスカはラッシュを掛けた。
・・・・
・・・・
・・・・
結局自損は殆ど無しに、量産機は全て倒した。
大型のエヴァは、未だ、上空で静観している。
『・・・何のつもりかしら?』
そのエヴァから回線が開かれた。
「何?」
カヲルが映った。
「・・・カヲル君・・・」
レイから伝えられた記憶にはカヲルの情報は少ない。
『やあ、シンジ君、僕の事を覚えていてくれたのかい?』
それには答えられなかった。
『まあ、どちらでも良いさ、君達、リリンにはこの世界は任せては置けない、僕が殲滅する』
「・・どうして?」
『シンジ君、君に未来を託したのが間違いだと思ったからさ』
あんな・・・世界にして、レナや、そして、ミクを苦しめたのである。
『ざけんじゃないわよ!!!』
『やあ、アスカちゃん、久しぶりだね』
『この気持ち悪い!!絶対に殺す!!』
何があったのかは分からないがアスカはカヲルの事を知っているようだ。
『タブリス、無意味な争いは止めなさい』
『リリス・・・いや、綾波レイか・・・リリンの意思がリリスを取り込むとは俄かには信じがたいな』
「・・・カヲル君、」
『さあ、戦いの始まりだよ、』
カヲルの乗るエヴァは急降下して、先ず、零号機を狙ってきた。
瞬間、無数の攻撃がエヴァに着弾し、弾き飛ばした。
『ぐっ!な、なんだ!?』
何時のまにやら戦略自衛隊の特殊部隊が展開されていた。
大きなパラボナアンテナをつけたような車がいくつも見える。
『ナオコさんが用意してくれた対エヴァ専用兵器よ』
「母さん」
『くくく、面白い、リリンの最後の悪足掻きか』
「・・カヲル君?」
『じゃあ、僕も最後の悪足掻きをするかな』
カヲルの駆るエヴァは一気に加速して、エヴァではなく戦自の特殊部隊に攻撃を掛けた。
一斉に攻撃を掛けるが、想定していたエヴァよりも性能は各段に上であり、破壊されてしまった。
『皆!!』
ミサトの声で慌てて3人はエヴァを走らせた。
4体のエヴァはロンギヌスの槍のコピーを手にしている。
零号機と弐号機が両腕に飛び付き動きを止め、初号機が一気に胸部を貫いた。
エントリープラグも貫通し、モニターにロンギヌスの槍のコピーが見える。
カヲルを貫いている。
『ぐ・・・く・・・・』
カヲルはにやりと笑った。
『・・今度は・・・只では・・・死なないよ』
次の瞬間、カヲルとエヴァは自爆をした。
瞬時に部隊や天井都市は蒸発しジオフロント表面を掘削し多くのシェルターを崩壊させた。
・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・・
30分ほどたち、視界が開けてきた。
ジオフロントの地面には3体のエヴァが横たわっていた。