早朝、碇邸、 部屋に良い香りが充満している。 シンジが起きて来た。 「ん?・・母さんおはよう」 「あら?おはよう・・もっとゆっくり寝てれば良いのに」 「体に染み付いちゃって」 軽い苦笑を浮かべた。 「そう」 「手伝うよ」 「じゃあ、お願いね」 シンジは、キッチンで調理の手伝いを始めた。 それから暫くして、レイが起きて来た。 「・・おはよう・・」 かなり眠そうである。 「あら?おはよう、早いわね」 「おはよう、綾波」 「・・手伝うの・・」 「そう、じゃあ、食器を並べてくれる?」 レイはこくんと頷き、食器を並べ始めた。 少し危なっかしい動きだったが、食器を並べ終わり、ソファーに横になって再び寝息を立て始める頃、レナが起きて来た。 「おはよう御座います」 「あらあら、おはよう、敬語なんか使わなくて良いわよ」 「おはよう」 レナはレイの姿を確認するとくすっと笑った。 そして、調理が殆ど終わる頃に碇が起きて来た。 「ユイ、おはよう」 「おはよう」 「シンジ、レナ、おはよう」 「「おはよう」」 そして、碇が席に着き、暫くして、アスカが起きて来た。 「ん〜、おはよ」 「「「おはよう」」」 そして、食卓に料理が並んだ頃漸くレイが目を覚ました。 口々に朝の挨拶を投げかけた。 レイは目を擦り、そして、最初に視覚に捕らえたのは、碇だった。 「・・・おはよう御座います・・碇司令・・・」 碇が泣きそうな表情をしたので、皆は笑った。 その日、ゼルエルが襲来した。 ネルフ本部パイロット待機室、 「私が行くわ」 「綾波、気をつけてね」 レイは頷いた。 発令所、 「じゃあ、リツコちゃん、レイちゃんを初号機に、シンジを零号機に乗せてね」 「え?あ、はい?」 「言われた通りにね」 リツコは反論しようとしたが、特に、その根拠は見当たらず、仕方なく、指示を下した。 「エントリー開始、」 「各機起動・・・・先輩これ」 「・・・・信じられないわね」 「どうしたの?」 「初号機とレイのシンクロ率が100%なのよ」 「凄いじゃない」 単純にミサトは驚くが、リツコは首を捻っている。 ユイがいないのならば、むしろ下がった方が自然なのだが・・・何故? 「出撃させろ」 威圧感90%減の碇であった。 「了解、出撃!」 3体のエヴァが射出された。 (レイがコアを介さずにシンクロしている・・・・まさか!!!) そして、一つの結論に至った。 ゼルエルが外輪山を越えた。 「各機攻撃開始!!」 初号機と弐号機が援護射撃をして、初号機が突撃した。 「速い!!」 ゼルエルが強烈な光を放ったが、ATフィールドに弾かれた。 「初号機のATフィールドが完全に弾いています」 (初号機のじゃない・・・レイ・・いえリリスのATフィールド) (覚醒している) リツコはその結論に恐れを抱き、汗を垂らした。 初号機はゼルエルのATフィールドを突き抜けコアに拳をぶつけ破砕した。 「目標沈黙!パターンブルーも消えました。」 「シンジ、レイちゃん、アスカちゃん、御苦労様、」 ユイがいるおかげでずいぶん発令所の雰囲気が良くなった。 赤木研究室、 リツコはレイを分析していた。 「間違いないわね、覚醒している。でも・・・・レイ、いえリリスは何を考えているの?」 総司令執務室、 「レイは完全に覚醒しているものと断定します。」 「うむ」 「問題ない」 「レイは私達の娘ですよ」 「し、しかし、リリスの力は危険すぎます」 「大丈夫ですよ」 「何か隠してませんか?」 「ええ」 ユイは笑顔で答えた。 「教えていただけますか?」 「う〜ん、簡単に答えを得ようとするのはいけない傾向よ、自分で答えを見つけなさい、ねえ、冬月先生」 「う、うむ」 「リツコちゃん、子供達に迷惑が掛からない方法で調べてね」 このまま聞いても何も教えてはくれまい、ここは自分で調べるしかないと言う結論至った。 「・・はい」 「処で、貴女にも聞きたかったんだけど」 「何ですか?」 碇が汗をかいている。 「私の主人がずいぶんご迷惑をおかけしたみたいで」 「え・・・・」 「・・・碇・・お前、まさか、赤木博士と・・」 碇の汗の量が増えている。 「碇、確か、ナオコ君ともそういう関係ではなかったか?」 「え?」 碇の顔から滝のように汗が流れ落ちている。 「・・・・リツコちゃん」 「は、はい・・」 「私の子供たちのこと宜しく御願いしますね」 「は、はい」 碇は涙を流していた。 「あ、そうそう、反省するまで、帰って来ないでね」 涙は滝のようになっていた。 碇邸、 「あれ?おじ様は?」 「忙しいんじゃない?」 「今、反省中よ」 「は?」 ユイは紅茶を飲んでいる。 「レナちゃん」 「はい」 「レナちゃんの戸籍はどうしたら良いの?」 「そうですね・・・伊吹姓を名乗るのはちょっと」 「碇レナになっても良いけど」 「う〜〜ん」 レナは悩んでいる。 「まあ、直ぐに答えを出す必要は無いわ」 「はい」 「同じように、どちらが碇姓になるかもね」 シンジとアスカが吹き出した。 「母さん!」 「ユイさん!」 「あらあら、どうかしたの?」 確信犯碇ユイ、 レイは真っ赤になって俯いていた。 ネルフ本部、天城ミクの執務室、 ミクは巨大かつ複雑なフローシートをなぞっていた。 「おかしい、どう考えてもおかしい」 「私の影響があるはずの無い事までが変化している」 「人類補完計画、難しいか・・・」 「私は神になる!その為に今を生きている!こんなところで挫けてはいられない!」 「でも、どうしてだろ?」 「・・・・まさか他にも戻ってきている奴がいるの?」 気付くのは遅過ぎただろう。 翌々日、第3新東京市立第壱中学校、2−A、 授業参観日である。 ヒカリも、後は心の問題だけなので、一般社会にいた方が良いと判断され、今日から復帰している。 ヒカリの不便さをトウジが補っている。 父兄が集まって来た。 セカンドインパクト以前は殆どが母親であったが、片親が多いため3割ほどが父親である。兄や姉の場合もある。 そして、ユイが教室に姿をあらわした。 「うお〜、綺麗な方や〜」 ヒカリは怒鳴る代わりにトウジの耳を引っ張った。 「・・・・綾波の姉か?ひょっとして?」 ケンスケ以外もそう思っているものがいる。 「シンジ、綾波に姉なんかいたのかよ」 「え?綾波のお姉さん?」 シンジは一人目の事を考えた。 「おい、どうしたんだそんな変な顔をして?」 「いや、如何してそんな事思うのかなって?」 「だって、あの人、綾波の姉だろ」 「え?」 ユイが手を振っている。 「あ、僕の母さんだよ」 「「ナニィ!!!」」 「シンジ!どう見ても!20くらいじゃないか!」 「・・・一応、戸籍上は30後半なはずだけど」 「馬鹿な!」 教室中の視線がユイに集まっている。 ユイは微笑んでいるだけである。 「綾波に似すぎだぞ」 シンジはわざと声を落として寂しそうに言った。 「一応、母親が同じだから・・・」 トウジとケンスケはこれ以上聞く気にはならなかった。 (作戦成功) 老教師が入って来た。 「起立!」 「礼!」 「着席!」 ヒカリの声代わりのトウジが号令をかけた。 「では、・・・・あれ?」 「ひょっとして碇さんですか?」 「お久しぶりです先生」 ユイが頭を下げた。 ((((((((((どう言う関係?)))))))))) ほぼ全員が気になっていた。 「22年ぶりですかね」 「ええ」 「相変わらずのようですね」 「ええ、子供たちがお世話になっています」 「息子さんは優秀ですよ」 完全に世間話に突入中である。 「おい、委員長?とめんでええんか?」 ヒカリは頷いた。 「それは、私の大切な子ですから」 「そうですね、貴女は、桁が飛び抜けて優秀でしたからね」 「そんな事は有りませんよ」 「謙遜するところも変わってませんね」 「アインシュタイン博士には及びませんから」 ((((((((((おい〜〜!!!!)))))))))) 「私は、碇さんの方が上だと思ってるんですけどね」 ((((((((((ちょっとまてぇええええ!!!!)))))))))) 「いえいえ、そんな事は有りませんよ」 「そう言う所変わってませんね」 「御自分の主張を変えないあたり、先生も相変わらずですね」 「そうですね、碇さん、以前のように貴女が授業をやってみませんか?」 「いえ、それはちょっと・・」 「そうですか?残念です。あのクラスの平均偏差値が72まで上がったのは、碇さんのおかげだったんですが」 ((((((((((何い〜〜〜!!!)))))))))) 「私なんかじゃ時代遅れですよ」 「貴女なら時間の超越くらい出来ますよ」 「先生そんな事を言っていないで、子供達に授業を受けさせてあげてくださいよ」 「そうですね」 老教師は1息ついてから授業をはじめた。 そして終わった。 「碇・・・とんでもない親を持ったな」 「・・・・うん・・・・どっちもね・・・」 ミクは終始ユイを睨んでいた。 総司令執務室、 「そろそろ、話すべき人には話しておいたほうが良いと思うんだけど、」 「赤木博士か?」 「いえ、彼女には課題で与えましたから、ミサトちゃんとマヤちゃんね」 「君たちはどう思う?」 「加持さんにも話しておいても良いとおもうけど」 「ミサトはセカンドインパクトのトラウマ持ってるのよ、話したら、それこそ、おじ様を殺しかねないわよ」 「あら、それは自業自得よ」 「ユイ〜〜!!」 そして、2名が呼ばれた。 「来たわね、」 「はい」 「これから貴方達には真実を話します」 「え?」 「でも、先輩は?」 「一応逆上するといけないから拳銃は預からせてもらうわ」 「はい、どうぞ」 ミサトは拳銃を取り出してユイに渡した。 『すみません遅れました。』 加持が遅れてやって来た。 「加持、あんた司令部からの直接の呼び出しに遅刻するなんて」 「すみません」 加持は深く頭を下げた。 「加持さんに前に話した事とかなりダブルと思うけど、まあ聞いてて」 「了解した」 「さてと、セカンドインパクトの事は、あなたから話して貰いましょうか」 「わ、私がか」 「当然です」 「し、しかしだな」 「ふ〜ん」 「わ、分かった」 碇は一呼吸置いた。 「では、話そう・・・話は、1977年に遡る。」 その後話された内容は、次のような物であった。 死海文書を発見したゼーレはその解読を進め、そして、時代が下ると共に死海文書の記述を信じ、そして、2005年に迎える最後の終末を回避する為に動き出した。 1998年ゼーレに所属していて死海文書や裏死海文書のさわりを知った碇は、出世欲から優秀な人材をゼーレに引き入れる為にユイに接触、その後色々あり、ユイはゼーレに入り碇は大幅な出世を遂げたが、次第にユイの考えに感化されて行く。 そして、元は、ゼーレの研究者だった葛城博士は、セカンドインパクト、我々が言うところのサードインパクトを阻止するために、南極で発見された第壱使徒アダムのコピーを作り、使徒を倒すつもりだった。 が、一方碇を含め当時のゼーレ幹部は、2005年などには決して間に合わないと初めからその計画ではなく、アダムを卵まで還元し、使徒の覚醒を遅らせる計画を進めていた。 葛城博士とユイ達はアダムのコピーの原型を作り上げる技術を開発した。その際に、アダムのコピーをコントロールするのに特定の条件を満たした子供が操縦者に選ばれた。 葛城博士は、ユイの反対を押し切り、娘の葛城ミサトを被験者として、2000年に葛城調査隊を南極のアダムの元に向けた。 碇はそれに同行し何度と無く説得を試み、ユイも説得の為に訪問したが遂には受け入れられず、搭乗実験は失敗し、アダムが覚醒すると推測した碇は、アダムの還元がいつでも出来る状態にして、資料をもって日本に戻った。 その日にセカンドインパクトが起こった。 「ミサトちゃん、葛城博士は、こう言っていたわ。娘には、自分で未来を切り開く機会を与えたい。自分で未来を切り開く力をつけた強い子に育って欲しいってね」 最後にユイが付け加えた。 「次は、使徒に関して私が話すわ。」 レイが使徒と補完計画について語った。 「ここからは、私が話すわね。」 ユイが引き継いだ。 その内容は次のような物であった。 2000年9月20日、東京に使徒が現れ、ゼーレによって使徒の存在を知らされていた当時の首脳達は、核兵器とNN兵器を併用し、東京は消滅した。 後になって、それがリリスであった事に気づいたゼーレは大慌てに成ったが、運良くリリスは生き残っており、直ぐに、ここに作られていた研究所に運び込んだ。 そして、アダムだけでなくリリスのコピーも使えるようになりE計画は大幅に楽に成った。 ユイは、パイロットとしてリリスに近い存在が必要と考え、自らの遺伝子と組み合わせてレイを創り出し、娘としてシンジと一緒に育てる。 そして、コアに擬似人格を当て、人が乗れるようにして、最初に被験者にユイは志願し、結果エヴァのコアに取りこまれた。 その後、コアは初号機に移され、零号機にはコアのコピーを当てた。 「さて、私が話をしますね」 「レナちゃん?」 「暫く黙って聞いてください。」 レナが未来での出来事を語った。 「そして、歴史が変わった原因の一つが私、私は、サードインパクトの惨状に恐怖した。碇君が望む世界に出来なかった。だから、やり直したい、そう思って、過去に飛びました。そして、直ぐに歴史に干渉しました。」 「あと、天城ミクは、その、シンジ君とアスカ君の娘だ。彼女も私を説得して来たが、もともと、ゼーレとの関係を疑っていたため内容は信用しなかった。」 「あ、あの、」 「何かね?」 「その、レナちゃんは私が引き取る事になるんですか?」 「現状では、親子と言うよりは姉妹といった程度しか歳は離れていないし、レナ君が良いと言うならば、任せる」 「私はどちらでも良いです」 「私も・・・」 「養女は不可能だろうしわざわざ戸籍上の妹にする事も無い、保護者を頼む。」 「はい♪」 マヤは可愛い妹が出来たと言ったような感じで微笑んだ。 「適当な苗字を考えておいてくれ」 「はい」 「これからどうするんです?」 「補完委員会はもはや役立たずだ。ゼーレを潰すだけで良い」 「そうは行きません。自衛隊を敵に回すことになります。ネルフは、使徒のような単独の敵には強いのですが、軍隊に対しては脆く弱いですよ。」 「うむ」 「天城には何もできんだろうがな」 「マギの自立防衛だけはしておきます」 「そうだな」 「戦略自衛隊を味方につけよう」 「そうだな、もはや、エヴァテクノロジーを隠す必要もあるまい。」 話が進む中、ミサトは只じっと黙ったままだった。