マンション、レイの部屋、 レイとレナがサルベージのプログラムを組んでいた。 たった二人でもう、完成を間近にしている。 凄いとしか言いようが無い。 ペンペンは二人の側でクッションに寝そべっている。 完全に二人に懐いている様だ。 「お母さん、そっちは如何?」 「・・もう、殆ど出来たわね」 「こっちは終わったわ」 「そう、ペンペン、レナの分が終わったそうよ」 「クエ〜」 ペンペンはレナの膝の上に移動した。 「なでなで」 ペンペンはレナに撫でられて御機嫌である。 レイは微笑ましい光景を見て、軽く笑みを浮かべた後、残りの分を仕上げる為に集中した。 夕方、プログラムは完成し、夜にやって来た冬月に報告した。 「そうか、遂に完成したか」 冬月は冷静を装っているが内心、舞い上がりそうになるほど喜んでいた。 「・・もう少し落ち着けば?」 冬月の心理はあっさりレイによって見抜かれた。 ・・・・ ・・・・ ・・・・ 「明日、碇と赤木博士が、第2新東京市に行く、その隙に行おう」 4人は頷き、冬月は、未だ残業をしているであろうマヤに電話を掛け、明日機体互換テストを行うように命じた。 貫徹が決まった技術部職員の顔が浮かぶようだ。 そして、翌日、碇は第2新東京市にリツコを連れて出張に出かけ、冬月指揮のもと、機体互換テストが開始された。 「絶対境界線突破します。」 初号機が起動した。 「た、大変です。シンクロ率上昇が止まりません!!」 マヤが悲鳴を上げ、他の署員達もパニックに近い状況になった。 「280%突破!!」 「400%を突破しました・・・・」 「エントリープラグ内を映せるか?」 「や、やってみます」 ・・・・ 「エントリープラグ内映像出ます。」 エントリープラグには、白衣と第3新東京市立第壱中学校の女子の制服が浮いていた。 (成功だな。) 職員達は言葉を失い、冬月只1名が喜んでいた。 ????、 電車が駅に止まった。 扉が開きレイは電車に乗り込んだ。 電車にはユイが乗っていた。 「あら?レイちゃん」 ユイは意外そのものと言った声を上げた。 「お母さん」 「どうしてここに来たの?」 「お母さんに司令の暴走を止めてもらうため」 「司令・・・あの人ね」 レイは頷いた。 「暫くすれば、サルベージが始まるでしょう、そのときに、一緒に出ればいいのね」 レイは頷いた。 「それまでの間、レイちゃんのこと聞かせて欲しいな」 「うん」 頷き、ユイの横に座り話を始めた。 機動実験司令室にミクが入って来た。 「冬月副司令!国際連合軍の権限であなたを殺人の容疑で拘束します。」 開口一番ミクはそう告げた。 「殺人?それはサルベージが失敗した時に言って欲しいな・・・伊吹1尉」 「は、はい」 「マギにサルベージ計画を実行させたまえ」 「は、はい」 マヤはマギにアクセスした。 「二つ関係プログラムが有りますが」 「更新履歴は?」 「2005年と、昨日のものです。」 「昨日の物を実行させたまえ」 「は、はい」 初号機に様々な信号が送られていく。 「エントリープラグ内が発光しています!!」 光が人の形になって行く。 「映像切れました。」 「自我定着しました・・・」 「マギは成功したと判断しています。」 「担架を二つケージに回せ」 「は、はい・・・」 「エントリープラグ排出されます。」 そして、エントリープラグがから、制服姿のレイと、白衣を着たユイが救出され病院に運ばれた。 「ここで起きた事は一切最高極秘事項とする。口外したものは、例外なく、銃殺刑とする」 職員達には驚きと恐怖が走った。 「どうした!復唱しろ!」 「「「「「「「「りょ、了解!」」」」」」」」 「冗談じゃないわよ!私には、国際連合への報告義務があるわよ!」 「そうか、では、変更しよう、以後、一ヶ月、一切の口外を禁ずる。これを守ってもらおう」 「今月の月例報告にはするなって事?」 「そうだ、今動かれては拙いからな」 「冗談じゃないわよ!」 「では、1月間独房に入ってもらう」 「な!」 冬月は電話を取った。 「待ちなさいよ!!」 「保安部か、人を回してくれ」 「わ、分かったわよ!一月黙っていればいいんでしょう!」 「そうだ、分かってくれたのならば嬉しい」 翌日、ネルフ中央病院、特別病室、 ジオフロントからの光と風がカーテンの隙間から漏れている。 そんな良い環境の病室でユイは目を覚ました。 「ここは・・・・」 ユイの視界に、レイとシンジ、アスカとレナが入った。 「レイちゃん・・・シンジ・・・?」 「あ、あの私は、シンジとレイの友達の惣流アスカラングレーです」 多少緊張しながらアスカが自己紹介した。 「惣流キョウコさんの娘さんね」 「ママを知ってるんですか?」 「一応、同じゲヒルンに勤めていたし、日本の碇にドイツの惣流って言われた事もあったわ」 「そうなんですか」 「貴女は?」 ユイはレナに問い掛けた。 「私は、伊吹レナ、って言います」 「ああ、なるほど、レイの言っていた子ね」 レナはレイを見た。 レイは頷いていた。 「本当を言うと皆抱き締めたいんだけど、ちょっと人数が多いわね」 ユイは苦笑いをした。 第2新東京市から戻った二人の前に、冬月が立ちはだかった。 「碇、ちょっと良いか」 「何だ冬月、私は忙しい」 「最優先事項だ、病院に連れて行く」 「副司令いったい何が」 リツコは表情を変えて尋ねた 「赤木君、エヴァ初号機のメンテナンスを頼む」 「何があったんですか!?」 「後で話す。碇」 碇は取り敢えずついて行く事にした。 そして、ネルフ中央病院に到着し、病室が入っている棟に移動した。 「冬月、誰の病室だ?」 「碇と綾波だ」 「シンジとレイか?」 碇は疑問に思ったが捨て置くようにした。 「着いたぞ」 特別病室の前に立った。 「何があったというのだ」 「入れ」 冬月は碇を無理やり病室に蹴り込んだ。 「冬月!貴様この私に蹴りを!」 「いつから、そんなに偉くなったんですか?」 「なに」 碇は病室内を見た。 制服を着ているシンジとアスカ、私服のレイに良く似た少女、レナ、病院服のレイ、そしてベッドで上半身を起こして碇を睨んでいるユイ。 「ユ、ユイ!」 「貴方、いったいどう言うことなんですか?」 「くっ」 碇は拳銃を抜きレイに向けた。 「貴方!!!」 ユイの一括で碇が怯んだ。 「何を考えているんですか!!」 「うっ」 「レイちゃんを道具として扱い、必要がなくなれば殺す?そんなだから、いつまでたってもお父さんにはなれずに碇司令なのよ!」 「貴方は、私がいなくなって寂しかったんでしょう。でも、レイちゃんを道具として扱い、シンジを捨て、そして、必要となれば、呼び出し、ろくな説明も無く戦場に送り出す!そんなことが許されると思っているんですか!!」 「ちょっと待ってくれ、シンジを呼んだのはレイ」 「黙りなさい!!」 碇は萎縮した。もはや威厳も気迫も何も無い、ただ叱られるのをじっと耐えているだけである。 「私達の目的は何ですか?」 「人類の滅亡の回避でしょうが!それを、私と会うために人類を滅亡させる?しかも、ゼーレと結託し、その人類補完計画を進める?その上、レイを道具として扱い、シンジも道具としか見ていない!いいかげんにしなさい!!レイは私達の娘よ!あなたとは血のつながりは無いけれど、でも、貴方は、実の息子のシンジまで道具扱いをして!!貴方は、人間としての自覚は愚か、生物としての遺伝子を残そうとする本能すら捨てたんですか!!」 「冬月先生もそこに座りなさい」 何時の間にか碇は正座をしている。 「わ、私もか?」 「当然です!唯一止める事の出来る立場にありながら、止めれなかった、いえ、止めようとしなかった冬月先生も同罪です!」 冬月も碇の横に正座した。 その後、2回の休憩をはさみ、8時間に渡り2人は説教を受けた。 「貴方の役目は、父親になることです。合格条件は、レイがお父さんと呼ぶようになること、良いですね!」 碇は首を垂れるしかなかった。 「私は明日からネルフに行きます。」 ここで碇は赤木親子の事に思い至った。 「そ、それは」 「何か拙い理由でも?」 「・・・・問題ない」 しかし、思いっきり汗をかいていた。 翌日、ユイは司令補佐としてネルフに向かった。 司令補佐と言っても、実質総司令である。 発令所、 普段マヤが座る席は空席である。 リツコは首を捻っている。 一昨日のデーターは全て完全に消去されていた。 マヤに問い詰めると、マヤは顔面蒼白になり気絶したのだ。 「いったい何があったのかしら?ミサト知ってる?」 「さあ、何か初号機を使った実験らしいんだけど、突然大騒ぎになって、戒厳令が敷かれちゃったのよ」 「何なのよ?」 司令塔後方のドアが開かれた。 「おはよう御座い・・・・・」 リツコは沈黙した。 「あら、リツコちゃん、髪染めたのね」 「・・・・」 「ミサトちゃんも元気ね」 普段厳つい顔があるだけの司令塔に笑顔がある。 「誰この人?どう見ても私より年下なんだけど」 リツコの再起動には1分ほど掛かった。 「サルベージされたんですか・・・」 「ええ、それと、冬月先生が無茶苦茶なこと言ったみたいだけど、戒厳令は解除ね」 「はあ」 「誰よ?」 「妻だ」 「「「「「「えええ〜!!!!」」」」」」 碇の答えに複数の声が木霊した。 叫ばなかった者も殆ど同じ心情であろう。 「今、叫んだ者、減俸1ヶ月」 「じゃあ、総司令官も同罪ね」 「何?」 「部下の不始末は上司の責任よ」 「・・・・減俸は無しだ」 安堵の溜め息が聞こえた。 「それと、明日までに、髭そってね」 「何?」 「私の主人は髭を生やしてませんから」 「・・・・・分かった」 (碇、完全に尻に敷かれておるな) 冬月は声に出さないで笑った。 そして、引っ越し、 碇とユイまで増えると6人家族となり、明らかに狭い。その為、もっと大きな家に引っ越す事になった。 今、碇邸のリビングで皆休憩をしている。 ユイが、飲み物を持って来た。 ミサトとリツコとマヤも手伝いに来ている。 暫くして、髭を剃った碇が、大きなカプセルを複数個玄関に運んで来た。 「はあ、はあ」 「はい、貴方」 ユイは碇にジュースを渡した。 「すまん」 碇は一気にジュースを飲み干した。 「父さん、これ何?」 「タイムカプセルよ、この中に私の物が全て入ってる筈よ」 そして、タイムカプセルからは、ユイの服から、写真、シンジとレイの玩具に至るまで様々な物が出て来た。 「きゃ〜〜!!シンジ君可愛い〜〜〜!!」 マヤは顔を真っ赤にして叫んだ。 「お〜〜!!ほんと!」 「本当ね」 一方、シンジの恥ずかしい写真を片手にリビングを走り回るアスカをシンジは追いかけていた。 「やだ〜!シンジ!丸出し!」 「や、止めてよ!」 レイは、自分が写っている写真を色々と発見した。 「私が写っている」 「本当ね」 その後、ひと片づけし、夕食を取る事にした。 「そう言えばさ、その子誰?」 ミサトが漸くレナの事を尋ねた。 「そう言えば、レイに似てますけど」 「あんまりにも自然だったから聞けなかったけど」 「私レナって言います」 レナは笑顔を浮かべて自己紹介した。 「ふ〜ん、レナちゃんか」 ユイ&シンジ&レイの最強3人組の料理が運ばれて来た。 「うお〜〜!!おいしそ〜〜!!」 「ミサトは何食べてもおんなじでしょうが」 「凄い・・・・」 「美味しそう」 レナは今まで見た事がある食事の中で最も豪華で美味しいそうな食事に、思わず涎を垂らしてしまい、それに気付いて真っ赤になって俯いた。 「さ、流石にやるわね」 (うう〜〜!!私は嬉しい!!) 碇は涙を流して感激している。 「処でこの親父誰?」 「バカ!碇司令よ」 「ええ〜〜!!」 碇は涙を流して感動中のためミサトの問題発言に気付かなかった。 「皆さん、たっぷり食べてくださいね」 そして、その味は、正に1流レストランのそれに勝るとも劣らないほどであり、碇やレナだけでなく、リツコ、マヤ、アスカの3人も感激を覚えていた。 そして、3人が帰った後、ユイは、碇に一つの宣告をした。 「あ、レイにお父さんって呼ばれるまで貴方は私の部屋に入ってこないで下さいね」 碇ゲンドウ本日2回目の号泣。 ミサトが来るので避難していたペンペンがこそ〜っと、電信柱の陰から碇邸の方を窺った。 「クエッ♪」 敵は去った。 「あんら?」 ペンペンは聞き覚えのある声を聞き、脂汗を垂らした。 「嬉しいわね、迎えに来てくれたのねん、じゃあ、帰りましょうか」 ペンペンはぶんぶん首を振るが、ミサトに抱き抱えられてしまった。 「クエ〜〜!!」 遠ざかっていく楽園に向けて羽を伸ばし、涙を流した。 これから、更に悪化した地獄絵図が待っているのだろう。 ペンペンは、天を仰ぎ、そして、項垂れた。 翌日、人類補完委員会、 「・・・・誰だ?」 「私ですが・・・・」 「何か有ったのか?」 「まあ、それは、私のせいですかね」 ユイが姿を表した。 委員達は目を擦っている。 「お久しぶりですね、キールさん」 「・・・・・」 「・・・・・」 「・・・・・」 「・・・・・」 「・・・・・」 「・・・・・」 「・・・・・」 「・・・・・」 「・・・・・」 「「「「「なにぃぃぃぃいいいいいいいい!!!!!!!!!!」」」」」 5人の絶叫が空間に響いた。 「碇!まだ使徒は残っているんだぞ!!!」 「この責任どう取るつもりだ!!!」 「初号機なくしては使徒には勝てんぞ!!!!」 「碇!!貴様裏切ったのか!!!」 「この罪、死に値するぞ!!!!」 「あらあら、ひょっとして、私がいない事を良い事に人類補完計画でも進めてらっしゃたんですか?」 錯乱し口々に叫ぶ中、冷静に攻撃され汗を垂らしている。 「この席での偽証は死に値するんでしたよね」 5人の汗が一気に増えた。 (((((頼む使徒よ来てくれぇ!!!))))) 今、初めて彼等は使徒に祈った。 碇の机の電話が鳴った。 「冬月、今は会議中だぞ」 『使徒が現れた』 (((((よっしゃあ!!!))))) 「使徒襲来です。この話は後ほど」 二人の姿が消えた。 取り合えず、5人は安堵の溜め息をついた。 「これからどうする?」 5人が頭を悩ます中、ミクの姿が浮かび上がった。 「補完計画を放棄するつもりですか?」 「し、しかし、あの人が戻ってきたとなっては、」 「たった一人の人間に何が出来るのですか!こちらには、量産型エヴァと、タブリスがいます!」 「そ、そうだ、まだ我々にも切り札はあったのだ」